東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第八章第十六話「前兆」

退院まで、後三日に成った。

もう全身の包帯は取れ、体は普通に動く。後の日々は検査みたいなものだ。

相変わらず妖夢は傍に居てくれる。しかし、どうにも隔が来てくれない。

あいつも忙しいだろうけど、それ以上に・・・何か、嫌な予感がする。

 

病院で支給される白衣に腕を通し、俺は永遠亭の裏に来ていた。

 

「・・・オーバー、レイ」

 

バギュンッ!!

軽い炸裂音と共に白と黒の霊力が体の左右から強く噴き出す。焔の様に揺らめくそれらの中で、頭の中に幻夢の声が響いた。

 

(・・・うし、じゃあロストバーストやってみよっか)

「ロストバーストって強いの?」

(簡単に言えば、真+霊力が真+霊力+私に成る)

「・・・」

 

悪夢のロストバーストでは、黒い翼が生えていた。

じゃあ幻夢とではどうなるのだろうか。二三回深呼吸をして、俺はすっと目を細める。

 

(外で、私を纏うイメージだと思う。・・・取り敢えず、どうぞ!)

「・・・ロストバースト!」

 

気合を入れて叫ぶ。

・・・しかし何も変化は無く、曇天から涼しい風が俺達に吹きつけた。

 

(出来ないね)

「出来ないね」

 

オウム返しで応える。俺はもう一度気合を入れ直し、

 

「幻夢、次は外に飛び出てみて?」

(りょかい)

 

幻夢に話しかける。そして再度、俺は強く声を張り上げた。

 

「ロストバースト!」

 

刹那、急激に力が俺の体の中から抜ける。ただの常人に戻った――――そう思ったのも束の間、圧倒的な霊力の塊が俺の体を中心に渦を巻き、白い旋風を撒き散らした。

 

「ぐっ・・・ああああ・・・っ!」

 

決して軽くは無い衝撃がビリビリと体を震わせる。強引に一体化しようとするも、それは上手くいかない。

無理だと悟ったのか、ふっと魂の力は消え俺の中に幻夢は舞い戻った。

再び体全体を包み込む暖かな霊力が戻り、安堵の息を思わず漏らす。

 

 

その後。俺達は何度繰り返すも、一回も上手くは行かなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「隔、大丈夫なの?」

「え?別に平気ですよ?」

「そう・・・?最近、90人分の仕事してたのに最近60人分くらいの仕事しかしてないし、辛そうだったから不安だと思ったのだけれど・・・」

「すみません咲夜さん!後40人分働いてきます!!!」

「待って違うの寧ろ一人分の仕事で終わらせて良いって話なの!」

 

咲夜さんの声が聞こえてはいたけど、私はそこから走って・・・そう、逃げた。

もう無理だった。

 

心臓が。

脳が。

全身が。

 

焼き尽くされたかのように痛い。

咲夜さんの言う通り、実は体調が悪い・・・と言うよりももう活動限界が近い。

 

最近殆ど寝れてないし、それこそご飯も喉を通らない。

段々と痩せて行く。肋骨も浮き彫りになって―――――――

 

 

でも、何故か身体能力は上がっている。それこそ、怖いくらいに。

 

 

この前、ちょっとした拍子に木を握力だけで折ってしまったのには本当に驚いた。

映像も・・・最近、鮮明に見え始めている。

 

脳裏に映る映像。それのノイズが取れて来ているのだ。

きっとこの映像は私の体調不全の真実へとつながっている筈。真のボロボロ具合も、見に行った時の様子も気に成る。

 

「隔ー・・・隔ーー!!」

 

ああ、咲夜さんが来てる。

・・・ごめんなさい。咲夜さん。体調は悪いけど、皆に迷惑はかけたくないんです。

 

私は一人呟き、そして紅魔館の長い長い廊下を一瞬で駆け抜けた。




次回、遂に隔が覚醒する。(多分)
真実に気づく、満月の夜。黒い刃を片手に、少女は紅い館を一人出る。

永遠亭でぐっすり眠る少年は、果たしてそれに気づけるのか。

因みに隔➡かくり
   悪夢➡あむ
   雷➡らい
   幻夢➡お母さん
   真➡ヘタレ

と読む。
それでは、また次回(。-`ω-)
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