東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第八章最終話「夜明けの手紙」

脳天を押さえ、まだ検査入院中の俺はベッドで呻く。

近くの椅子には未だに頬を膨らませている暁。

永遠亭の中は俺達以外は皆寝ている早朝。茜色に燃ゆる朝日の光を受け、俺は徹夜明けの眼を擦った。

 

「・・・あの」

「ん」

「何で暁はあんな朝早くからここに来てたの?」

 

寝ようと思い、俺は座っていた状態から上体を倒し寝っ転がる。

すると暁は思い出した様にポケットから便箋を取り出し、それを俺に手渡した。

 

「深夜、私の部屋に隔が来たの(、、、、、)

「――――嘘だろ!?おい、何時ごろ!?隔はどんな様子だった!?どこ行ったとかは!?」

「あっ、えっと・・・三時くらい、ちょっと苦しそうだった、最後のは分からない・・・かな」

 

飛び跳ね、捲し立てる俺に暁は丁寧に答える。

でも、と彼女は付け加え、

 

「その手紙、隔の。真になるべく早く渡してって言われて、それに大きい霊力も感じて、走って来た」

「・・・ありがとう。ちょっとだけ、読まさせて貰うね」

「うん」

 

不安げな顔で告げた。

暁にはこの状況が良く分かって無いのだろう。寝ぼけている自身の頬を殴り、おぼつかない手つきで焦りつつ便箋を乱暴に開ける。

 

中に入っていたのは、真っ白い手紙。折りたたんであるそれを手早く開き、俺は目を通し始めた。

 

『真へ

 

 私です、隔ですよ。突然ごめんね、うん。暁ちゃんだから・・・明け方くらいには届いてるかな。

 まず最初に、私を助けようとしてくれてありがとう。

 皆を傷つけちゃった私の為に頑張ってくれてありがとう。嬉しかった。

 でもね、もう手遅れなんだ。』

 

手遅れなんだ。

その文字が俺の中で反響する。

先を読もうと出来ない。手が震え、視線がそれ以上下に下がらない。

 

「真、無理しないで」

「・・・大丈夫。大丈夫だ」

 

暁の言葉に、俺は自分自身に語り掛ける。

汗を拭い、悪い予感を無視。眼鏡の位置を直し、俺は手紙を再び読み始めた。

 

 

『私の中にある・・・えっと、核だよね。

 

 

 それはもう、私の心臓に埋め込まれちゃっているのです。もうびっくり!!

 

 私を殺さなきゃ、多分私は幻想郷を滅茶苦茶にしちゃうと思う。

 私を殺せば。幻想郷は無事で、後は悪夢とかを真が殴って万事解決すると思うんだ。

 

 可笑しいね。簡単な事なのに、ちょっと涙が止まらないよ。

 もう一度真と遊びたかったな。皆とも話したかったし、高校の友達とも仲良くなりたかった。

 流石にもう一緒にお風呂には入れないかなあ。昔は良く一緒に入ってたのにね。

 最近、咲夜さんにビーフシチューの作り方教えて貰ったんだ。真と食べたかった。うん。

 後は・・・一緒に寝たかった!真と寝てると安心するんだよねえ。

 

 でも、もう全部出来ないんだよね。

 

 

 暁ちゃんにごめんって言っておいて。深夜に、しかもこんな手紙を急に渡せって言ってごめんって。

 

 きっと、幻想郷で見る朝日は綺麗なんだと思う。

 

 それを見て、私は最後にやるべき事をやって、それで、

 

 

 

 殺されるなら、真に殺されたいな。                         

 

 ・・・ごめんね、最後にこんな事言って。

 ボールペンで書いたから、消せないんだ。紙も一枚しか無いから、書き直せないんだよね。

 

 今までありがとう、真。ごめんね。私の幼馴染が真で、本当に良かった!!                                  

              最後に隔より』

  

                                    

 

 

 

ダガン!!!!

 

読み終える。言葉が、脳に染みわたる。

その瞬間。俺は拳を、ベッドに振り下ろしていた。

 

暁がビクッと肩を跳ねさせる。自分自身でも分かる。今俺が、人生で一番怒っているという事が。

 

ふざけるな。

 

ぐしゃり、と左手に持たれた便箋が握りつぶされる。今までの隔との思い出が、全部全部溢れ出す。

何で、何で隔なんだ。

噛みしめ過ぎた唇から血が垂れる。真っ白なベッドにそれは滴り落ちた。

 

『消せないんだ。紙も一枚しか無いんだ』

 

あいつは、頭が良い。

だからこそ時に本音を隠し、穏便に全てをこなして来た。

 

でも、手紙は違う。

手書きだからこそ、感情が籠る。感情が籠れば、本音がでやすくなる。

滲むような文字。隔は涙をぬぐいながら、書き直しの出来ない本音を込めた手紙を書いたのだろう。

 

俺だって、隔が幼馴染で本当に良かったと思ってる。今までを振り返っても、そしてこれからを見据えても、きっと一生変わらない。

 

でも違う。最後じゃない。

 

あいつが望み、俺が出来る事なら何でもしてやる。この手紙に、来るなとは書かれていない。

 

隔が死んで、それで悪夢が倒せたとしてもそれは万事解決じゃない。

 

どれだけ俺が、隔の事を大切に感じていると思っているんだッ!!

 

「・・・真」

 

暁が、ぽつりと呟く。

 

「真は、隔と幻想郷・・・どっちを、助けたい?」

 

分かり切っていると言った表情だった。

深呼吸をし、感情を押さえつける。ベッドから立ち上がり、俺は桜ノ妖を手に取った。

 

 

「勿論、馬鹿な幼馴染だよ」

 

「・・・そっか」

 

暁は優しくはにかんだ。

それを背に、俺は走り出す。靴底はべろんべろん。隔がどこに居るのかなんて、微塵も分かりはしない。

 

でも、空はどこまでも続いている。俺達は、同じ世界に居る。

 

扉の向こうには朝焼けの光り輝く空。強い強い決心を胸に、俺は一歩踏み出した。




最後じゃない。
決して、終わらせはしない。

少年は思いを秘め、踏み出す。

――――その前に、一人、立ちふさがる。

少女として。師として。そして、少女の願いを聞き入れた者として。

二つの銀閃が夜明けの空を薙ぐ。
少女もまた、告げる。

「私は、幻想郷を助けたいです」

次回、九章開始。
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