東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第九章第二話「朝日の元で」

妖夢は直ぐに動いた。

痛いであろう右腕を強引に動かし、楼観剣の射程を伸ばし真横に一閃。

 

ここでは引けない。

さっき、確かに俺は最低の事をした。でも、

 

「ここで負けたら、止まったら、もう二度とあいつには会えなくなる・・・・!!」

 

それが一番嫌な事。

ぎりっと奥歯を噛みしめ、俺はそれを引き抜いた桜ノ妖で受け止める。

同時に襲い掛かる白楼剣。結界を生成し斬撃を防ぐ。

 

ダンッ、と地面を踏み抜く。妖夢との距離を零に縮め、炎を纏った蹴りを再び放つ。

 

しかし。

 

「獄神剣[業風神閃斬]」

 

感情を失った、いや押し殺したような声音で妖夢は呟く。

刹那襲い掛かる神速の斬撃。実体のある刃に加え、想像を絶する速度で刀が振られたことによって生み出された鎌鼬が更に俺を斬りつける。

俺は霊力を血液に長し、体全体に回す。つまりは出血が酷いと霊力は外に漏れだし、格段に弱くなってしまう。

 

斬撃を扱う妖夢には、短期決戦。相手の肌に触れ、少し動かすだけで出血する刃は天敵だ。

 

妖夢の技に怯まず、俺は蹴りを叩き込む。

確実に当たった。でも、そこに手応えは無い。

 

「・・・人符[現世斬]」

 

声は、真後ろから聞こえた。

急いで結界を背後に生成し、左側に燃える黒い霊力を妖夢に向かって放つ。

 

しかし妖夢は、その霊力事俺を切り裂いた。

 

激痛が灼熱と共に背中を駆け抜ける。生暖かい液体が背を伝うのが、ゆっくりになった世界で認識できる。

速い。

 

頭では理解していた。それでも挑んだ。

だからこそ思い知らされる実力の差。あれだけ俺の攻撃を喰らっても尚、本気を出せば俺なんか余裕で超えられる強さ。

 

・・・後、三回。

 

出し惜しみして――――

 

「インフレー・・・ションッ・・・!」

 

――――勝てる相手じゃない。

 

右手を後ろに回し、自ら楼観剣に掌を突き刺す。

痛みが神経を走り抜ける。目の前がはじける様な感覚の奥で、妖夢が驚き、眼を見開いていた。

これでもう、あいつは逃げられない。

更に深く突き刺す。右手からは血がだらだらと零れ、意識は朦朧と霞む。

 

「真さん・・・真さんっ!冷静になって下さい!止めて下さいそんな事っ!!」

 

妖夢の蒼い瞳に感情が戻る。殺気が薄れる。

 

それでも、俺は最早止まれなかった。

 

「ビッグ・・・バンッ!!」

 

 

 

 

右腕から白い閃光が放たれ、世界を真っ白に覆い尽くす。

音が聞こえない。鼓膜は張り詰め、何も聞こえない。

 

ただただ理不尽に世界を破壊する暴風が、荒れ狂い周囲を焼け野原に変えて行く霊力が炸裂した。

 

諸刃の剣。余りの威力に俺自身も強く後方に吹き飛ばされ、右腕から地面に崩れ落ちる。

キーン…と耳の奥で高い音が響く。認識すると同時に、全身の痛みが神経を刺激した。

 

全身が業火で焼かれている。血だらけでひしゃげた右腕は微塵も動かず、ぶっ倒れたまま首だけ上げるとそこには何も無い。

さっきまであった森は半分以上が吹き飛んでいる。地面は深く深く抉れ、そこだけ空には雲が無い。

 

意識が落ちて行く。そんな中、強引に俺は立ち上がる。

あいつの所に。隔の所に、行かなきゃいけない。

 

震える両足。俺はゆっくり、一歩踏み出し、

 

 

・・・ドサ、とその場に崩れ落ちた。

 

 

限界だった。

もう体は動かない。瞼は自然に閉じられ、俺の背中から朝日が差し込む。

 

そんな中。

そんな中で。

 

朝日に照らされ、妖夢は――――立って居た。

 

楼観剣は地面に落ちている。しかし、しっかりと白楼剣は左手に握りしめられていた。

 

彼女はすっとそれを振り上げ、俺へと照準を合わせる。

 

動け・・・

 

コオオ…と霊力が集まる。

 

動けよ・・・

 

桜色の光が銀の刃を染め、朝日を反射する。

 

動けよ・・・動けよ・・・!

 

妖夢の蒼い眼に浮かぶ、一瞬の躊躇。

 

動けよ・・・!!俺の体・・・ッッ!!!

 

指先すら、ピクリとも動かない。

倒れる俺へと。妖夢の、白楼剣は振り下ろされ。

 

 

――――そこで、俺の意識は無くなった。

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