東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第九章第九話「朝は近くに」

研ぎ澄まされた黒い斬撃は俺の動かない部分、右腕へと集中する。

この状態で戦うのは圧倒的に不利だと、自分でも理解している。だから、俺はひとまずあいつから大きく距離を取る。

しかし逃げさせまい、と隔は素早く地を蹴った。だが俺も、そこまで策が無いわけではない。

さっき俺の立っていた場所に隔が近づく。その瞬間、そこに置いてあったナイフから拒絶の赤い霊力が燃え上がった。

驚き、動きが止まる。遠距離で霊力を操るのは難しい。が、幾度もお世話になったこの技は使いこなせる。

 

「八咫烏――――[(ほむら)]!!」

 

赤い赤い、大きい烏。

傍から見ればあたかも炎。大きい翼をはためかせ、そいつは隔へと突撃する。

 

一度、あいつには拒絶を使ってしまっている。故に攻撃するのは悪手と理解している彼女は、後ろへと飛び退った。

 

「満開[霊妖ノ桜]!!」

 

そこへ俺は桜ノ妖を振り下ろす。左手に流れる霊力に紫の蝶が持つ霊力が混ざり合い、暴走した強い力は長く長く紫紺の刃を伸ばした。

 

隔はそれを黒い刃で受け止める。

ギギギ、とせめぎ合う刃。散る火花。

 

・・・やがて、スパンっと黒い刃が真っ二つに切れた。

 

慌てて隔は左手の刃で桜ノ妖の軌道をずらす。

その無防備になった体へ、八咫烏の翼が叩き込まれた。

 

ドパアアンッ!! と華奢な少女の体が強く弾き飛ばされる。赤く揺らめく八咫烏は嘴を鋭く光らせ、翼を広げた。

 

折れた刃を片手に携え、彼女はそれでも起き上がる。

拒絶の攻略法。それは、時間を稼ぐことだ。

幻夢だからこそ出来た中間の能力。関わって守る、関わって壊す、その中間の関わらない。

レアケースで強い。だが、明らかに霊力の量は少ないのだ。

今も八咫烏を維持しているだけでかなり削れて行っている。早めにマックロクロスケを使わせ朝日を拝むために、俺は左拳を握りしめた。

 

「霊甲[九十九]」

 

ボウ、と鬼の角を模した物がついた手甲が左手に形成される。

青白く光るそれを隔へ向ける。刹那、放たれる圧縮された霊弾。

 

・・・右腕一本ぐらいなら、捨ててやる。

 

俺はそれの後を追うように走り始めた。新たに生成した二つの黒い刃が幾筋もの軌跡を夜空に描き、弾幕はすべて切り伏せられる。

 

その後ろから飛び出す俺。弾幕に気を取られ、ずっと遠距離で俺らしく無い戦い方をしていたが、もう我慢の限界である。

自分にはあんな戦い方は出来ない。出来るのは、近くで思いをぶつけることのみ。

 

「隔・・・ちょっと痛いかもしれないからな!」

 

俺は叫び、右腕を左腕でつかみ強引に隔へ向ける。

その構えが何なのか、彼女は一瞬で理解したらしい。急いで地面を蹴り、離れようとする。

だが、俺はそれと同時に前へ飛び出していた。彼女との距離は1mも無い。

 

「スーパー・・・ノヴァッ!!」

 

カッ!!と、白い閃光が空へ駆け上る。吹き荒れる豪風、轟く轟音。

右腕が反動で上に跳ね上げられる。走る激痛に顔を顰め、同時に俺は声を聴く。

 

遠く、遠く。

 

 

吹き飛ばされたであろう隔の、その、小さな声を。

 

「・・・闇符[マックロクロスケ]」

 

――――来た。

彼女の霊力が急激に増幅する。黒い霊力が体中からあふれ出し、夜空を覆い尽くす。

耐えろ。

あいつのそれが切れるまで、耐えるしかない。

 

右手から血がだらだらと流れ、滴り落ちる。赤い八咫烏が俺の前に翼を広げて立ちふさがる。

 

 

朝は、もう近い。

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