東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
・・・三部やるかは、未定。
第十章第一話「天音の名」
隔は、朝焼けの中を走っていた。
それも、真と暁を抱え、森の木の上を跳ねていくように。
(うん、その調子。・・・それにしてもいきなりバースト10%とはねえ。霊力の適応が高いね)
「何でかわかんないですけどね・・・よっと」
頭の中で、さっき名前を聞いたばかりの博麗幻夢と話す。
口調は軽いが、勿論全力疾走の最中。凄まじい速度で、彼女は駆けていた。
・・・数分後。突然、そんな隔の前に二つの影が立ち塞がる。
紅白の、ぼろぼろの巫女服を着ている少女。
いつものサイドテールを下し、これまた汚れた少女。
「・・・霊夢ちゃん、夢月ちゃん・・・!!」
「えっ・・・あんた、核は!?」
「真が壊してくれました。でも、その所為で・・・」
戦闘態勢を取っていた霊夢は驚き、すぐに隔へと近寄る。
すっと、真の首に手を当て脈を計る。その後、彼女は暫し悩むように唸り、
「・・・あまり、使うなとは紫に言われてるんだけど・・・」
背に腹は替えられない。そんな表情で、彼女は懐から一枚の黒い札を取り出した。
ぶつぶつと何かを呟く。それと同時に、霊夢の体からは白い光の粒子があふれ出す。
「・・・幻想空想穴」
ゴウッ!!と、宙に黒い渦が広がった。
霊夢は手早く真と暁を抱え、
「私は永遠亭に行くから、二人は少し休んでおきなさい?」
「わかりました。霊夢、お願いします」
「任されたわよ、夢月」
そのまま、渦へと身を投げた。
ズズ・・・とその黒い穴は閉じ、夢月が隔へと振り向く。
その顔には、微笑みが浮かんでいた。
「私、お腹すいちゃいました。次人里見つけたら、寄っちゃいませんか?」
それも全て、隔を思って。
誰も責める人は居ない。その嬉しさとやり切れなさを胸に、隔はそっとうなずく。
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「もう、そんな驚く何て酷くない?ボクだって女の子だし、傷つくよ?」
「アエエエエエエエエエエ!!??ナンデ!?お前だれ!?」
「ドーモ真サン。ボクっ娘デス」
ショートカットの女の子はくるりくるりと宙を舞う。
胡坐を掻いた状態で大きく後ろに滑った俺は、記憶を掘り返そうと頭に手を当てるが、
「・・・何も思い出せない、かな?」
「!!」
最後の、あの一瞬。
朝日を見つめていたあの瞬間以外の記憶が、一つもなかった。
勿論、俺は目の前のこいつに見覚えは無い。
隔の事も、暴走妖だったと言う事と容姿以外覚えていない。
「魂の、破壊・・・」
「そ。まあ、しょうがないよね」
少女は肩を竦める。
全てを見透かしているような態度。その軽そうな表情は、しかし直ぐに引っ込んだ。
「というか。君の魂がぶっ壊れたせいで、折角助けた隔ちゃんも消滅するんだけど」
「・・・おい、どういうことだ」
「はいはい、隔ちゃん絡みになると直ぐ切れるの止めなー?・・・んと、自己紹介が未だだったねえ」
少女はそう言うと、白いワンピースの裾を翻しながらそこでくるりと一回転。
にこり、と笑みを浮かべ――――衝撃の一言を、放った。
「ボクの名前は天音