東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十章第二話「記憶の旅立ち」

「吃驚したかな?まあ、君の兄弟でも無ければ血が繋がってる訳でも無いんだけどね」

「・・・天音・・・?それでお前、俺の心臓の持ち主ってことは・・・」

 

「そ!ボクは14年前の交通事故で、呆気なく君の両親と死んだ人だよ。それで、君のぼろぼろだった体に色々移植した女の子さ。綺麗に頭を打って死んでたからねえ」

 

手を打ち鳴らし、恵は笑いながらそう告げた。

そこに悲しみは見えない。呆気に取られる俺の目の前で、恵は再び話し始める。

 

「それで、まずは心臓移植によって君に行った能力・・・[恵まれる程度の能力]だね。これはまあ、その名前の通りだよ。周りの植物からは生命力を”恵んで”もらえたり、幸運に”恵まれ”たりする。[稼働]は、地球とかのエネルギーを”恵んで”貰って、それを使ってる感じだね」

 

青緑の光。

思えば、あれは全て草木から奔流と繋がっていた。

そして周りの様子。思い出す限り、使えば使うほど周りの物は枯れていっていたでは無いか。

 

「・・・隔が消えるってのは?」

「ああ、それかー」

 

恵は笑みを崩さず、人差し指を立てた。

その指先を、俺に突きつける。口が開かれ、

 

 

 

「あの子を創ったのも、その能力なんだよね」

 

 

――――そんな、言葉を紡いだ。

時間が止まった様な、そんな錯覚。

思い出せるのは最後の記憶だけ。なのに心の、魂のどこかで、何かが隔は大切だと叫んでいた。

 

「君は、両親を失った。親戚も居ない。寂しい・・・その心を埋めるために、世界は君に運命を恵んだ。優しくてお金も沢山あって、そしてなんでも出来て何でもしてくれる幼馴染を創り出した」

 

恵は言葉を止めない。

初めて逢ったはずの少女は、全てを、俺以上に俺の事を知っていた。

 

「それが魂魄隔とその家族。消えるっていうのは、当然君があの子を要らないと思えば”恵み”は直ぐに消える。魂が壊れて、その思いが段々と消えていけば・・・・彼女も、消えちゃうね」

 

無茶苦茶だった。

凄まじい力の恩恵。あの時、こいつが一緒に交通事故に会ってなければ、俺は心臓がずたぼろになったまま死んでいた。

隔も生まれず、・・・いや、”生成”されず、剣道の日本一は塗り替えられていたんだ。

あり得ない。そんな思いが胸中を渦巻くも、闇鬼や神奈子を吹き飛ばした時の燃え上がる力は偽物じゃない。

 

呑み込みきれない。

 

恵はそんな俺を知ってか知らずか、言葉を止めない。

 

「昔ね、七賢者が幻想郷を創ったの。それは知ってるよね・・・?で、君が知ってるのは八雲紫と八雲黄昏だけかな?・・・実は、天音は七賢者の一人なんだよ。君とは違う家系の、ね」

 

けらけらと、楽しそうに彼女は笑う。

思考が追い付かない。でも、俺は気づく。

 

「・・・お前、急いで話してるけど・・・もしかして、消えそうなのか・・・?」

「んー、ああ・・・そうだね。時間は無いかも」

 

恵は、左手をずっと体の後ろに隠していた。

それでもちらりと見えてしまった指先。そこから、金色の粒子がゆっくりと空へ登っていくところだった。

隠しても無駄だと思ったのか、恵は左手を白い空に向けてかざす。一瞬、儚い笑みが少女を彩る。

 

「ま、というわけで・・・なのかな?ボクはね、君と同じような性格なんだ。悪いけど、君を助けるためにボクは最後の力を使わせてもらうよ」

「何をするんだ?」

 

「簡単さ。今からちょっと、君の記憶を辿るだけ」

 

そう言って、彼女は右手を天高く掲げる。

白いワンピースの裾が激しく揺れる。風が吹き荒れ、白い世界に段々と色がついていく。

 

「魂は壊れた。もう直せない。・・・でも、破壊された箇所をそのまま塗り替える。魂の奥深くに、アクセスするよ。・・・さあ、最初は君の原点。隔だ」

 

カッ!! と、強い光が視界と世界を塗りつぶす。

 

そのまま、俺は浮遊感とともに意識を失った。

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