東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

173 / 224
第十一章第七話「決戦」

翌朝。

桜ノ妖を腰に括り付け、昨日の隔との戦闘をしっかりと脳内に思い描く。陽炎や幻夢との鍛錬もこなした俺は疲れ切っていたが、それもさっきの妖夢と隔が作ってくれた朝ご飯、そしてレミリア様からの手紙で吹き飛んでいた。

 

俺達を迎えに来た文が持ってきたレミリア様の手紙。内容は、簡潔。

ただ一言。白い紙の真ん中に、『勝て』と。それだけが書かれていた。

これ以上気合の入る文も珍しいだろう。長い前置きなど必要ない。俺は強く頬を叩き、自室を出ていく。

障子を開け、玄関まで行くともう皆揃っていた。いつもの服の妖夢、白いワイシャツに水色のスカートの隔。今日は気温が暖かく、少しの薄着でも問題は無い。

 

「じゃあ、行きましょー!」

 

元気よく、文は右腕を上に突き上げる。色づいた葉は秋を知らせ、黒い和服の俺は最後尾を歩いていた。

今日の戦い。警戒すべきは隔によると三人らしい。

俺の事を敵対視する奴と、俺の事を尊敬している奴と、どうやら好意を寄せてきている奴。

その情報だけは隔に隠し通すことが出来た。俺、ナイスである。

烏合の衆、では無いらしい。俺と戦う事が勝手に決められたその日から、彼らは陣形や作戦などを立て始めたと言う。文は流石にそこまで教えてはくれなかった。

だがしかし、隔は違った。端的に、一つの事だけを俺に教えてくれる。

 

『指示を出してる人を叩くだけで勝てるから。個人技で真が負けるのは居ない筈』

 

彼女は昨日そう言った。やけに自信たっぷりに、俺の勝利を疑わずに。

自分としてはかなり不安だ。戦力の分からない相手に一人で突っ込む。いつもは殆どが感情に流されてやっているし、ある程度は分かる。

俺に立ちふさがる問題は、取りあえず数。一人づつ減らしていこう。

黒い穴から、俺達は飛び降りる。八咫烏に隔を乗せ、俺は桜ノ妖の能力で背中に紫紺の羽根を創り空を飛ぶ。

青い空は所々に白い雲を漂わせ、遠く遠くまで続いている。一度、強く羽根を振るわせ、俺は妖怪の山へと加速した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

単刀直入に言おう。

里に入った瞬間、俺は拉致られた。

 

そして今。

 

 

「天音真さんに・・・乾杯ーーーーーーーーーーーー!!!!!」

『うおおおおおおおおおおお!!!!!』

 

この状況である。

体育館の様な場所の上座に置かれ、色んな人が握手と料理と飲み物を求めたり持ってきたりしてくれる。

正直お腹が減っていたので良かったのだが、いきなり過ぎて付いていけないのが本音。

 

「これ!焼き鳥っす!」

「い、良いのか焼き鳥って!?ありがと・・・」

 

串を受け取り、口に含む。うん、美味しい。

というか、羽根の生えている人たちの前で食べる焼き鳥は複雑な物で。もっそもっそと咀嚼していると、突然一人が立ち上がる。

それと同時に、周りがシンと静まり返った。焼き鳥の残りを慌てて口に突っ込むと、俺も黙り込む。

 

「・・・真。俺達はあんたと戦う、いやぶち殺す為に

 

ヒュンッ!!!

 

里の一位、写真で見た風魔が話し始める。うわあ、あからさまな敵対視・・・と思った次の瞬間に、風魔という少年によってトリガーの引かれた隔と妖夢が一斉に食べ終わった串を風魔へと投げつけた。

鋭い音を立てて、二つの串は頬を掠め壁へと深く突き刺さる。ビイイン…と微かに震えるそれを尻目に冷や汗を流す俺と風魔。怖いですね。

 

「・・・ごほん。戦うために、この数週間本気で特訓した。食べ終わってから一時間後、勝負開始だ。準備と休憩の時間をやろう」

「あ、要らないよー」

「・・・何?」

「要らないって。皆が準備良いなら、始めよっか」

 

俺は近くにあったお握りを三つ手に持ち、立ち上がる。

風魔や他の天狗が唖然とする中、何故か笑いを堪えている文は俺の前を歩き、案内してくれた。

 

 

 

「・・・いやー!!流石真さんですねえ!天狗の気遣いをぶち壊し、更に天狗には準備の時間を与え自分は移動してきたのにも関わらず休憩なし!!昨日ハンデは?とか聞いておきつつ、ハンデを与えて行く!!!惚れますねえ!」

「いや・・・俺としては早く戦いたかっただけなんだよ。別にハンデとか考えてないしさ」

「真、作戦は分かってるよね。あとこれ、焼き鳥。美味しいよ」

 

お握りの二つ目を口に入れたところで、隔が焼き鳥とお茶を渡してくれた。ありがとう、と言った処で、つんつんと弱く突かれる。

 

そちらを向くと、そこには妖夢が居た。彼女は自身の腰に下げてある白楼剣を取り外すと、俺へと渡してきた。

 

「・・・どうぞ、お使いください。こんな事しかできませんが・・・」

「いや、ありがとう妖夢。有り難く使わせてもらうよ」

 

申し訳なさそうにしている妖夢に礼を述べ、俺は白楼剣を手に取り腰に付ける。

少しばかり嬉しそうにはにかんだ妖夢と話していると、時間は来たらしい。

 

「真!此方も準備は出来た!!」

「・・・分かった。皆、下がってて」

 

風魔が背中に長い長い刀を背負ったまま叫ぶ。軽く頷き、俺はそっちへと向いた。

 

風が、俺達の間を吹き抜ける。髪を風が巻き上げ、それが止んだ瞬間に。

 

ドゴンッ!! と力強い太鼓の音色が里中に響いた。集まっている見物客の目の前で、校庭の様に広く平らで遮蔽物が無い戦闘の舞台から、無数の妖力と霊力が燃え上がる。

 

「バースト!!」

 

出力、小手調べの10%。

ギャリイン!!と桜ノ妖と白楼剣を引き抜くと、俺は姿勢を低く構える。

 

相手は、武器を構えたまま陣形を崩さない。

明らかな誘い込み。しかし臆することなく、俺は寧ろ笑みさえ浮かべてそこへ突っ込んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。