東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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すみません、番外編を今日書こうと思って・・・。
案も何もないまま、突き進んだ結果がこの時間です。すみません。
文字数、驚異の5851文字です。二時間くらい書いてましたね。

あ、真&隔です。はい。

後、ちょっと下ネタ入ります。ご注意ください。

・・・えっと、途中で変な名前が出てきますが。

その人と俺は関係ないのであしからず!!!

では、深夜テンションラギアの番外編、どうぞお楽しみください!


番外編「トリック・アンド・トリート」

深い微睡から解放され、柔らかいベッドの上で目を覚ます。

寝っ転がったまま欠伸をし、目元を擦って起き上がる。枕元の窓からは朝日が差し込んでおり、窓の外には白み始めた空が広がる。

今日も今日とて、学校だ。寒さに身を震わせ、俺は取り敢えず制服に着替えた。

 

黒のブレザーに、灰色の長ズボン。中には黒いセーターを着て、青い眼鏡のレンズを一度拭いて掛ける。視界がクリアになると、部屋のドアに付けているカレンダーが目に入った。

今日は、10月31日。

 

「は、ハロウィンだっけ」

 

……不確定である。昨日から隔が何か張り切っていたからイベントはあると思うのだが。

恐らく今日はハロウィン。日本のお盆と似ていて微妙に違う、そんな祭りだ。

 

鞄を持って、階段を下りていく。下から聞こえる、包丁の音。家族の居ない俺がその音を聞いてもビビらないのは最早それが日常と化しているから。

階下のリビングの奥、台所で水色のエプロンを着て、長い黒髪ストレートを揺らす少女の姿が。

 

俺が声を掛けるよりも早く俺に気づいた隔は、振り返ると俺に向かってにっこりと元気よく微笑む。

 

「おはよっ、真!」

「おはよう、隔」

 

お味噌汁の鍋をゆるりとかき混ぜながら、その傍らで隔はきんぴらごぼうを作っている。良い匂いが机まで漂ってきて、寝起きだが直ぐにお腹が空いてしまう。バッグをソファに投げ、俺は朝のニュースを付けた。

 

「……そう、そうだよ。ハロウィンだよな。良かった」

「忘れてたの?」

「いや、まあ。確証は無かったね」

「理科だけにしか頭使えないのかお前はーっ!」

 

むはーっと声を大きくしつつ、丁寧な動作で二人分の朝食を盛っていく。鮭の塩焼き、納豆、御飯にきんぴらごぼう。お味噌汁も付けば、これぞ和食と言った感じである。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

ニュースを見ながら、俺達は朝食を食べ始める。高校には徒歩で行くため、それなりの登校時間が必要になる。

しかし美味しい御飯と言うものはついつい食べ過ぎてしまうもので。

朝から二杯もご飯を食べてしまった俺は、重たいお腹をさすりながら家を出た。

 

「そうだ、真これ」

「飴?……なして?」

「真の周りの、馬鹿な友達は絶対トリックオアトリートしてくるから。飴でも投げつけちゃえ!」

「そうするか。……隔」

「ん?」

 

「トリックアンドトリート」

「……い、悪戯って!?女の子の私に、真はどんな悪戯をするの!?されちゃうの!?」

「止めろ人聞きの悪い!誰がお前みたいな絶壁にそういう悪戯するかアホ!!」

「むきー!脱いだら意外とあるんだよ!」

「馬鹿野郎!!ここで脱ごうとするなー!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

学校にて。

塩谷、別名塩が俺の椅子に来た瞬間に、俺は飴を一つ取り出し、

 

「トリックオあああああああああああ!!!」

「ないっしゅー」

 

口を開けた瞬間に、そこへ飴を全力投球。見事口へ入り、塩は悶え苦しんだ。

昼休み、もう俺は隔の作ってくれたお昼ご飯を食べ終え読書中だったため、良い暇つぶしにはなったのである。

因みに、隔とは別クラスだ。何と言うか、二年生になって初めて別れたけど、その分隔の嫉妬深さが心配である。別に隔の傍から居なくなろうとは思わないので、不安にならなくていいのだが。

 

今、あいつは何をしているだろうか。悶えて襲い掛かってくる塩を上から押さえつけつつ、俺はちらりと隔の事を考えた――――

 

 

 

――――同時刻。

お昼ご飯を食べつつ、隔は俗に言うリア充グループと一緒に食べていた。いや、食べさせられていた。

隔としては真と食べたいのだが、それを世の『俺カッコいい』グループは許してくれない。

可愛い、そして成績優秀なステータスが全てカンストしている様な彼女を放って置く訳が無いのだ。確かに一般的に見れば彼らの方が真より良いだろう。

 

だが、彼らは自分の為に死ぬ気で戦えない事を知っている。

他人の為に、自分の身をあそこまで軽視し、そして救う少年を、隔は真以外に知らないのだ。

 

故に、隔の中で男子のトップは真。人間としてもそうである。

勿論彼女は真の事が好きだ。異性として。朝は冗談で言ったが、寧ろカモン、と彼女は思っている。

 

「んでー、隔ちゃんは誰かに仮装姿見せんのー?」

(何で答えなきゃ行けないのかな……)

 

羅儀亜という、やけにじゃらじゃらちゃらちゃらしている奴が隔へと話しかける。露骨に嫌そうな顔を浮かべそうに成るのを頑張って隠した彼女は、無難に。

 

「今は無いかなー」

 

そう言った。そのままイチゴオレをストローで吸い上げ、ことんと机の上に置く。

さっきのはお断りの文句である。だがしかし、羅儀亜達はそんな事を理解しようとしない。分かっても、この隔という高嶺の花を落とすため、彼らは頑張るのだ。

 

「えー、俺隔ちゃんの仮装みたいんだけどー!」

「魔女っ娘とか?良いねー、絶対可愛いってー!もっとエロい衣装でも似合うって!」

 

(ああ五月蠅い!そんなん二年前に試してあの朴念仁は『可愛いな』しか言わなかったわ!)

 

みしっと箸が軋む。一刻も早くこの場を離脱したい隔は一気にご飯を掻き込み始め、手作りの餃子(プロ級)を一口で頬張った。

 

「んでんで、新田ちゃんはー?」

「え、私?うーん、私は……サキュバスとか?」

 

新田は隔の友達であり、リア充グループ唯一の良心である。

女子である。しかし仮装でサキュバスを選ぶ当たり、やはり隔とは格差がある。

 

成績優秀容姿端麗才色兼備文武両道。そんな隔でも勝てないのが……ッッ!!!

 

「良いねー!新田ちゃん、スタイル良いしマジ似合うっしょ!!誰かに見せたりスンのー?」

 

そう、今みたいに背もたれへ体重を掛けた時に揺れる大きい双丘である!!

ズゴゴゴ!!! と親の仇でも見る様な目で隔はイチゴオレを一瞬で飲み干しながらその双丘を睨み付ける。あれが私にもあったら。おっと、机がみしみし言っておりますね。

 

「……私、隣のクラスの天音真?にサキュバス仮装見せたいかもー!」

 

(…………悪・即・斬!!!!!)

 

お弁当箱を手早く畳みながら、脳内で三回叫ぶ。その間、約五秒。

ぎゅっ!!と強く結び終えた隔はバッグへ弁当箱を入れると直ぐに立ち上がった。

この魔性の女(親友です)から真を守らなければ。あの直ぐ落ちる童貞を守らなければ!!

 

そんな強い思いを(無い)胸に燃やし、意気揚々と立った隔へと、空気の読めない羅儀亜は話しかける。

 

「おっ、隔ちゃんどこ行くのー?」

「……用事だよ」

 

辛うじて、舌打ち+冷徹な視線を抑える隔。因みにそれをやられた男子は大体震えで動かなくなる。

美少女の睨みと言うものは、それだけで怖いのだ。

何の用事、かは言わない隔。それは断り文句なのだが、彼らは(ry

 

「じゃあ俺も付いてくよー!手伝う手伝うー!」

「俺もー!」

「おっれもー!」

「おいどんもいくでごわす」

「西郷は行かなくて良いよ。この新田さんとの会話に付き合ってくれたまえ」

 

四人……いや、三人が即座に立ち上がった。今度こそ隔は殺気を放出しかける。が、その直前。

 

「おーい、隔ー」

 

クラスのドアから、聞きなれた声がクラス内に響いた。

学校一の美少女を呼び捨て、しかも下の名前で呼んだと言う行為に驚きクラス全員の視線がそこへ集う。勿論、隔が一番早くそこへ向いたのだが。

 

「真!!」

「隔、塩が全部飴持ってったんだが。捕まえてはくれまいか」

「まっかせてー!」

 

新田が、『タイミングいいねえ。あーゆー些細な気遣い、良いよねえ』と呟く。真の手招きに、先ほどよりも明らかに機嫌のいい隔はスキップで近寄る。

ここで羅儀亜に話しかけないのは、断り文句である。

しかし!(ry

 

「俺も手伝うよー!隔ちゃん、俺と一緒に三階探そうぜ!」

「俺と一緒に二階を!」

「俺と一緒に一階を!」

「お、おいどんといっしょに屋上をさがしてほしいでごわす」

 

隔が、ぎろりと眼球をぎらつかせる。真がビビるが、振り向こうとした隔を見た瞬間に、彼の口は動いていた。

 

「おい、俺が居るのにそいつらの相手するのか?」

「!!??」

『!!!!!!??????』

 

 

完璧に恋人の発言であるッ!!

隔が驚き、羅儀亜へと振り向きかけていた頭をぎゅるん!と真へ向ける。

クラス中がざわつく。顔を真っ赤にした隔は、周りの雰囲気と真の『やってしまった』顔で何とか平静を立て直す事が出来た。一息ついてから、隔は真の右腕へと抱き着き、

 

「そーだね!いこっ、真♪」

「お、おう」

 

そのまま教室を出て行った。

 

因みに隔の最後のは演技ではない。

真のは最後まで演技である。何故分かるのか。それは彼が、極限まで鍛えられたヘタレだからだ。

 

 

教室を二人が出て行った直後。

 

さらさらさラ……と。何かが、溶けて風に運ばれていったのだった。

 

「ほらほら、西郷しっかりー」

「新田殿お…!おいどんは辛いでごわすっ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

学校から帰り、もう時刻は夜の七時。

パンプキンシチューを煮込んでいた隔は、中々上に居る真を呼べずにいた。

 

過るのは、学校の出来事。

因みに塩は飴を取って等居ない。ただ、真にそれとなく隔の情報を伝えただけである。

流石できる男、塩。生徒会書記は伊達ではない。

その後は二人っきりで屋上で談笑。機嫌良く午後の授業を終わらせた隔は、部活の助っ人をこなし真の家へ帰ってきたのだ。

 

「……仮装、真には迷惑なのかな」

 

毎年毎年、気合を入れて準備するのはいいものの真は『可愛い』としか言ってくれないのだ。

それでも十分嬉しい。嬉しいのだが。

 

やっぱり隔としては『今すぐお前を食いたい』やら言われてみたいし、押し倒されてみたいのだ。

無論羅儀亜とかにそれをやられたら無言で一瞬千撃を放つが。

やはり、そろそろエプロンと靴下のみの装備になるべきか。それとも真のワイシャツ一枚か。

あの朴念仁を振り向かせるために、肌色を増やさねば……!!

 

燃えつつも、しっかりと鍋はかき混ぜる隔。

鍋に髪の毛が入らない様にポニーテールに纏めていた髪を解き、水色のエプロンを外し。

すう、と息を吸い込んだ隔は、意を決して真を呼んだ。

 

「真、御飯ー!」

「分かったー!」

 

 

――――再び。同時刻。

 

俺は珍しくLINEを使い、塩と会話していた。

内容は、隔が仮装を見せてきた時の反応についてだ。

 

『、、、可愛いとしか言ってない』

『馬鹿野郎!!押し倒してキスくらいしろよ!きっと深い奴しても大丈夫!』

『無理だろ。俺、隔に嫌われたくないよ』

『大丈夫だって!』

『、、、えっと、耳元で?』

『「可愛いよな、隔」余韻を大事にしろよ』

『押し倒して?』

『行けそうだったらキス。無理そうだったら髪でも撫でとけ』

『了解。あいつと近づくためにも、試してみる』

『頑張れ。友達(震え)として応援してるぜ』

 

……なんて会話してんだ俺。

スマホをベッドの上に投げて、勉強机の前の椅子の背もたれに体重を全部預ける。

 

「……頑張るぞ、俺」

 

気合を入れなおす。直後に声が掛かり、俺は下へと降りて行った。

 

 

塩谷「……もう、限界以上に近づいてると思うんだがな」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

はははははは!!!

 

何にも無かったよ畜生!あれだけ変な会話したのに!

パンプキンシチュー(美味)食べて、パンプキンパイ(美味)食べて、歯磨き風呂直行ですよ!?

この妙に昂ぶった気持ち、どうするべきか。

 

お風呂の湯船に浸かりながら、やはり毎年『可愛い』しか言わなかったのが不味いか、と反省する。

毎回毎回緊張してそれしか言えないのだ。おととしの魔女っ娘(露出多め)は本当にきつかった。理性が豆腐レベルの脆さになったのは、言うまでもないだろう。

 

……しかし、今年は無いのか。ハロウィンではなく、隔の仮装を毎年楽しみにしていたのだが。

ふー、と長く息を吐く。いや、これは自業自得だろう。しょうがない。

 

俺は風呂を上がり、まだリビングに居た隔に声を掛け、少し早めに就寝した。

疲れた。もう、色々あって………

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

深夜、十一時。

そろりそろりと、何かが廊下を歩いている。時折寒そうに肌を摩りながら、一つのドアを開け、それは中に入った。

キイ……と微かに音を立て、何かは部屋の中へ。音を立てない様に極限まで注意しつつ、それはベッドの上へと乗った。

 

ぎしぎしと音を立てるベッド。四つん這いでそれは――――少女は、寝ている少年の顔に自身の顔を近づけた。

そして、ぺろりと鼻先を舌で舐める。ぴちゃ、という水音と共にピンクの舌がぬるりと動き、その行為で少年が目を覚ました。

明かりは、開け放たれたドアから差し込む廊下の光のみ。ぼんやりと霞む視界の中で、少年は手探りで眼鏡を掛けると――――一気に、言葉を失った。

 

 

 

目の前に居たのは、頬を赤らめ恥ずかしそうにしている四つん這いの魂魄隔。

長い黒髪を背中に乗せながら、隔は右手の肘から上をそっと曲げ、手首をくいっと折る。

 

黒い猫耳が、動作に合わせて一々震える。大きく開いた胸元から白い肌が艶めかしく、扇情的に映る。

白く綺麗な太ももが、黒い靴下とのアンバランスさでより美しく見える。もじもじと腰をくねらせ、しっぽがふりふりと揺れた。

 

呆気に取られる真。その瞳を真っすぐに、至近距離で見つめながら隔は小さく口を開いた。

 

「にゃ、……にゃー」

 

真の脳内が、真っ白になる。

何も考えられない。さっきまでの会話が全て吹き飛んだ。

 

だがしかし。ここで、真は勇気を振り絞る。

隔と仲良くなるために。付き合うために!

好感度がお互いにMaxという事を知らずにっっ!!!

 

真は起き上がり、隔を押し倒した。

 

「ふぇっ、あっ」

 

小さく、慌てたように声を漏らす隔。真はそれを気にせずに、しっかりと見つめ合いながら。

 

「……可愛いな、隔」

「にゃううううううっ……!?」

 

顔を真っ赤にし、目を白黒させながら声を上げる隔。さわさわと前髪を掻きあげられ、額が剥き出しになる。

そのまま、真は隔へ顔を更に近づける。お互いの吐息が微かに頬に掛かる程の距離で。

 

「………だぞ、隔」

「にゃあああああああああああああああああああああっ!」

 

小さく、呟いた。

隔が、顔を真っ赤にさせて叫び、そして気絶する。

真も隔から顔を離し、自身の熱い頬を冷ましに、部屋を出て行った。

 

 

12時。

 

 

彼らのハロウィンは終わる。トリックアンドトリート、パンプキンパイと隔への囁き。

次の日、お互いにまともに会話が出来ない時が続く。その時を狙った羅儀亜が散るのは、また別のお話……。

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