東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
謁見の振りかぶる大剣は、俺の羅刹を砕き尚止まらない。
勝利を確信したのか、笑みを浮かべる謁見。しかしそれは甘い、と言う事を今から教えてやろうか。
二つに砕けた羅刹。宙を舞う羅刹へ、俺は手を翳した。
その瞬間、俺の体を覆っていた青白い霊力が黒い霊力と混ざり合い蒼い霊力に変わる。お互いの欠点をお互いでカバーし合う、混合された強く頑丈な霊力。右手に持つ羅刹がその姿を変えると同時に、左手を翳していた散っている羅刹も姿を変える。
蒼い霊力が、一瞬にして強く燃え上がる。俺は左手でも新たな刀を掴み、その銘を宣言した。
「蒼対嵐刃[羅刹]!!」
蒼白の、柄が20cm刃が50cmの短い羅刹が刹那に閃く。
瞬きをする間もなく放たれる、無数の斬撃。それは固い強固な大剣さえも粉砕し、ガードの薄くなった謁見へと俺は蹴りを打ち込んだ。
ドゴオン!! と強い音が鳴り響く。謁見は白目をむいて気絶。その向こう側に居るやつらはもう陣形を整えてはいるが、作戦に必要な人数が全然足りていなかった。
穴だらけの陣形へ俺は突っ込み、再び中心で荒らしていく。蒼対嵐刃は収まる事を知らない嵐の様に縦横無尽に相手を切り裂き続け、攻撃を弾き続けた。
数秒にも満たないその間で、俺の周りの天狗は”二人”を残して全滅した。
遠くに佇むそいつらを見ながら、俺は姿勢を立て直す。横では他の天狗が驚き、文は写真を撮り、妖夢と隔は心配そうに俺を見ている。
そして、その奥で――――レミリア様と、咲夜さん。パチュリー、美鈴にフラン。
一瞬、確かに遅くなる世界。俺を見つめているレミリア様は日傘の下で、唇だけを動かす。
『……残りは全力で相手してあげなさい』 と。
背筋を、電流が走り抜ける。これまでとは違うプレッシャーが、レミリア様の微笑と共に脊髄を駆け抜けた。
頬杖を付き、口角を少し上げる彼女の、紫の瞳が俺を鋭く射抜く。目の前には、天狗の一位と二位。
「……やるしかねえぞ、俺」
自分で自分に発破を掛け、俺は両手の羅刹を消した。
弓を持ち、構える第二位。
女の子である弓矢使いの天狗の名は、鞍馬。
ぎりぎりぎり、と弦が引き絞られる。その後ろに佇む第一位、風魔。
彼はゆっくりと腰の日本刀を抜き放ち、低空姿勢に構えた。二対一。相手は里の上位。
「
だからこそ、俺も全力を出そう。
恵から授かった能力を解き放つ。青緑の光が俺を包み込むと同時に、俺はバーストの出力を24%まで引き上げた。右腕から黒い刻印がリング状に浮かび上がり、俺の腕を中心に回り始める。
膨れ上がる霊力。キイン……と微かな音が鳴り響き、その瞬間に俺は黄金の霊力を身に纏った。
曇り空を切り裂く朝日の様に、俺の体は金色の輝きを放つ。後ずさりする鞍馬と風魔。彼らへ右手を向け、俺は叫んだ。
「霊刀[天開・羅刹]!!」
蒼い、そして強い輝きを放つ直刀が俺の右手に現れた。
俺の体には、フルバースト+ドライブによって今現在50パーセントを超える霊力が流れている。
「……ッ!!行って!!」
遠くの方で、鞍馬が矢を放った。風魔が刀を右手に持ち、暴風を纏い空を駆ける。
「行くぞ、お前ら。ちょっと覚悟しとけよ……!!」
俺は天開・羅刹を、右手のみで振り下ろす。
その瞬間。たったそれだけの動作で、風魔の能力を大幅に上回る風が吹き荒れた。
理不尽な暴力。竜巻が垂直に放たれたかの様な、災害レベルの威力を持った風圧は地面を深く抉りながら風魔と鞍馬を空へ吹き飛ばした。
膝を曲げ、全力で地面を踏み抜く。衝撃波が可視できるほどに強く、波紋状に巻き散らかされ。
瞬きの間も無く。駆け抜けた軌道上、黄金の霊力が弾けると同時に最後の天狗二人は呆気なく力尽きた。
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! と、歓声が上がる。
俺は振り向き、一礼。霊力を解こうとした、その瞬間に―――――――
ダンっ!!! と。
俺の目の前に、紅の蝙蝠の翼を広げ、深紅の神槍を持った吸血鬼が現れた。
濃密で、纏わりつくような魔力を体に纏わせる夜の帝王は、その紫の瞳を赤く輝かせる。
「……次は、私が相手何てどう?」
地面が、軋む。空気が震える。
レミリア・スカーレット。彼女の乱入に、口を挟むものは居ない。そして、先ほどまでの歓声は、最早消え去っていた。