東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十一章最終話「血の記憶へ」

幻想郷の東の果て。

その山にある少し突き出した岩の床は西に向いていて、丁度幻想郷が見える。

私はそこに立っていた。最近降り続いている雨を全身で受け止めながら、濁り切った赤い瞳で幻想郷を見つめていた。

紫と白の巫女服が魂の状態なのにも関わらずぐったりと湿っている。岩床には雨をしのげるものが無い。なのに何で私がここに居るのか。

それは、ここが幻想郷を創った博麗幻夢が禁忌の技、『夢幻魂歌』を使った場所だからだ。

あの日の前日。私たちが壊れて行く直前に、母と会話した。珍しく、霖之助の居ない晩御飯だった。

 

そしてその晩御飯が、幻夢母さんと食べた最後の御飯だった。最後の、会話だった。

 

夢月の式神に、ここがバレた。霊夢や真が来るのも時間の問題だろう。

暴走妖もストックは少ない。でも、作る気も無い。

私の目的は唯一つなのだから。それだけで、あれだけでいいのだから。

 

豪雨に打たれながら、私はそっと目を閉じる。

そして、思い出し始める。

あの日から続く、地獄を。

 

私が存在できる、この残り少ない時間の中で――――

 

博麗の『血の記憶』を。思い出して、噛みしめよう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

俺は、白い世界に来ていた。

白玉楼で修行を終え、昼ごはんまでの時間。急に幻夢に呼ばれた俺は、素直に魂の世界へ来ていた。

幻夢はそこで胡坐を掻いていて、俺にも座るように促す。

 

「・・・楽にしていいよ」

 

正座にしていた俺は幻夢の一言で足を崩した。綺麗な漆黒の瞳を伏せる彼女に、いつもの元気は無い。

赤を基調としたチャイナドレスのような服に、金色の刺繍が映える。ぺちん、と自身の両頬を叩いた幻夢は長く息を吐き、俺の眼を真っすぐに見つめた。

 

「今まで、散々はぐらかしてきたことを話そうと思う。・・・私の過去に付いてだ。悪夢に付いても、何故あの子がああなってしまったのかも。・・・最後は予測だけど、母としても初代博麗の巫女としても責任を持って、真には話す。ずっと一緒に戦い続けてきたからね、話したいってのもあるんだけれども」

 

微笑を交え、幻夢は俺に話した。

聞き終えた処で、俺は静かに頷く。それを見た幻夢は白い世界の白い空を仰ぎ、どうせなら、と呟いた。

 

「不完全な夢幻魂歌は、確か世界の景色を変えるだけなんだよね」

「そうだけど・・・。どうしたの?急に」

「いんや。まあ、私の記憶を全部見せよう」

「・・・え、まさかそれってー!」

 

「記憶[夢幻魂歌]」

 

何の気なしに、慌てる俺を尻目に幻夢はぼそっと呟いた。

次の瞬間、幻夢から虹色の奔流が幾筋も放たれる。それは世界を彩り、景色を変えていく。俺と幻夢の姿が少し薄まったと思ったその時にはもう、世界の景色が変わっていた。

 

俺の使う不完全夢幻魂歌とは違う、不完全でも完全に近い夢幻魂歌。

恐らく歴史上最大の禁忌をいとも簡単に使って見せた幻夢は、俺に背を向けたまま告げる。

 

「見せて上げるよ。・・・私たちの、『血の記憶』を」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

幻夢と悪夢。記憶を同時に呼び起こす二人の物語は、複雑に交差している。

過去の記憶。過ぎ去ったその時を見て、傍観者の天音真は何を思うのか。

 

そっと、真は幻夢の記憶の中で右拳を握りしめた。

 

目の前に広がる、幻夢と悪夢。そして二人の少女と、霖之助の姿を見て。

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