東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
久々に言いました。
もう一度、[グロ注意]!!!です!!
では、どうぞ!
悪夢の右腕に纏わりつく黒い霊力は、拳を中心に風船の様に膨らむ。
それは。例えるなら、水風船だった。その膨らんだ黒い膜の中には、悪夢の持つ霊力が最大限に溜められていく。ギチギチミチミチと音を立てて膨らみ、破裂するか破裂しないかの瀬戸際を右往左往する。
対して、良夢の左手に纏う白銀の霊力は――――光の槍。
鋭く細く。極限まで一点に全てを集約した力は、悪夢に対しての霊力の差を今や完全に埋めていた。
良夢は、霊力が悪夢よりも全然少ない。それこそ、子供と大人の筋力が違うのと同じように。
だからこそ、良夢は一つに集める事を覚えた。長年、幻夢と霖之助と共に探求した己の最大の武器。
彼女の霊力操作は、素早く繊細だ。その一瞬の作業で、一つの最大の矛を創り出す。
一点突破の良夢。
放出し、その無尽蔵で理不尽なまでの力を一気に相手にぶつける悪夢。
滅壊ノ星撃は、使用者によって形を変える。未来に居る少年が、流星の様に尾を引く拳を持つのだから。
幻夢は、煌々と星空の様に輝く一撃。怪夢は、連打に重点を置いている。
使用者によって姿形を変えるその拳には、勿論相性がある。
この場合。有利なのは、良夢だった。
彼女の右手から一条の槍が放たれる。その矛先は悪夢の滅壊ノ星撃……風船の様になっているそれを、破裂させた。
悪夢の顔が、少し憎らし気に歪む。しかし、悪夢の霊力が放たれたと言う事は滅壊ノ星撃をぶつけたも同じ。自ら良夢は悪夢の滅壊ノ星撃の霊力を体に受ける。
だけど。それは直撃ではない。
黒き霊力の衝撃波の中を、良夢の白き槍が貫く。鋭く振り抜かれる左腕。空を裂き、無防備に右手を振った状態の悪夢を良夢の滅壊ノ星撃が穿いた。
「があっ……!?」
「霊力の量だけが全てじゃないですよ、悪夢」
眼を見開く妹に対して、良夢は彼女の戸惑いを完全に切り捨てる。
悪夢は自身の霊力の量を過信していた。だから、自身よりも遥かに霊力の少ない良夢に正面から破られたことに驚きを隠せなかった。それが、隙となるのにも関わらず。
白い槍を喰らい、体をくの字に折り曲げ宙を舞う悪夢。そこへ、良夢は無慈悲に無数の霊力弾を生成、射撃した。白銀の雨が、弾幕が豪雨を切り裂き悪夢の体を何度も何度も撃つ。打つ。
ザアアアア!!! と強い音が鳴り響く。曇り空に太陽は隠され、昼間なのに世界は暗かった。
悪夢は強く背中を地面に打ち付け、やっと止まる。良夢はそれを見下して霊力弾を生成し終えた。
「……帰りなさい、悪夢。私はここで少し時間を潰していきます」
「帰る訳ないでしょ……!?お姉ちゃんを、絶対ぶっ潰すから……!!!」
呻きながら、膝をがくがくと震わせて悪夢は立ち上がった。
緑の瞳が、悪夢を貫く。黒みがかった紅い瞳を煌めかせると、悪夢は右手を上に翳した。
その瞬間に、悪夢の背中から無数の黒い腕が噴き出す。幾筋もの奔流は互いに絡み合い、肩から下の腕を創り出した。漆黒の霊力の腕。それを見て、良夢は凍り付く。
「……悪夢、それは私の能力じゃあ……!?」
「お姉ちゃん、甘いよ」
悪夢はずっと、幻夢にしか自身の能力を言っていなかった。
だって、それは余りにも卑怯で小狡いから。汚いから。醜いから。
紅い眼が良夢を見上げ、口角が引き上げられる。泥にまみれた少女は、上にあげていた右手をすっと下ろすと、叫んだ。
「私の能力は[憑依した相手の能力を複製する程度の能力]!!ずっと一緒に居たから、お姉ちゃんに憑依する時間はたっぷりあったんだ!!」
ゴオッ!! と悪夢の背中から無数の黒い腕が良夢へと襲い掛かる。
良夢は、勿論自身の能力を知っている。だからこそ、自身が絶対的なピンチに立たされていることも理解できる。良夢の能力は、自身の背中から霊力で作られた黒い腕を何本も生成する事だ。
しかし、恐ろしいのはそこではない。
真に怖いのは、その黒い腕の掌に当たってしまえばそこが
腕が向かってくる中で、良夢は悟る。妹は、本気で私を殺しに来ているのだと。
一番良夢が危惧していた事。ここで殺されるわけには行かない。
良夢も、左手を大きく薙いだ。すると途端に背中から黒い霊力の腕が飛び出し、悪夢の腕と相殺し合っていく。
ダガアン!! と、最後の一本同士が激しく相殺し合う。衝撃は強い風となって、雨粒を撒き散らした。
自身の顔を腕で覆いながら、良夢はその雨粒を耐えしのぐ。
腕にかかる衝撃が消える。手を離した、その瞬間。
悪夢の右手が、良夢の首を掴み。そして、良夢は悪夢の顔を視界に納めた。
それは、泥まみれで。眼は赤黒く濁って居て。
笑っていた。
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掴んだ。お姉ちゃんの首を、掴んだ。
私はもう一度強く地面を蹴って加速する。お姉ちゃんを崖の壁に叩き付けると、網目状に亀裂が走り抜けた。
首を潰されて、体を強く叩きつけられたお姉ちゃんの口からごぼっと黒い血が吐かれて、私に降りかかる。頬に付いたそれを舐めとりながら、私は左手を握って――――
ぐじゅり、と。
お姉ちゃんの胸に手を突っ込んで、生暖かい体内にある内臓を一つ、握りつぶした。
柔らかい肉感が、一瞬にしてはじけ飛ぶ。指と指の間から肉片が零れ落ちて、そこからも血が噴き出す。
口からは、血以外何も出ないらしい。叫ぶことも出来ていないお姉ちゃんはただただ涙を流して、私の首を掴んでいる右手を引き離そうとしていた。
だから私は、もう一度お姉ちゃんを岩壁に叩き付けた。そうしたら、お姉ちゃんは動かなくなった。
頭が割れて、中から頭蓋骨が見える。鮮血がだらだらと流れて茶色い岩の壁を赤く染め上げる。
雨がお姉ちゃんの全身を濡らして流すから、瞬く間に足元の水たまりは紅くなった。
もう一度、左腕を突っ込む。胸骨を折って砕いて、筋肉を爪で引き裂いて。
私は、弱弱しく振動する、生暖かい心臓をそっと左手で包み込んで。
―――――握りしめた。
グジュッ!!! と鮮血が胸に空いた穴から噴き出して私を赤く染め上げる。ぼとぼとと肉の塊が私の手から零れて体内に落ちていく。びくん、と跳ねた姉の体は、そのまま完全に動かなくなった。
左腕で、私はお姉ちゃんの右手を砕いた。殴った。蹴った。
お姉ちゃんの左腕は残しおいてあげよう。利き腕だから。
右腕を、首から離す。支えを失った体はずりずりと地面に崩れ落ちて、岩壁に血の痕跡を塗り付けた。
「アハハ」
自分の口が、歪む。狂った笑みが零れる。
「アハハハハハハ……アハハハハハハ!!!」
鮮血のこびりついた両手で、自身を掻き毟る。肌が削れて、血が滲む。
自分自身でも、自分が何をやっているのかも分からない私は、かたかたと体を震わせて、ただ笑っていた。
「アハハハハッハハッハハハハッハハハッハハハハハッハハハハハハハハハハ!!!!!!!アハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
豪雨が降り注ぐ。
曇り空。紅い水たまりに膝を付けて、私は喉が引き裂けそうなくらいに笑い続けた――――