東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十二章第七話「連撃の連続」

俺を見下ろす悪夢の瞳は、悲痛と失望に満ちていた。

そっと、彼女の唇が動く。声は聞こえないが、悪夢はしっかりと、

 

「こんなものか」

 

と呟いていた。

飛びかけた自分自身を必死で押しとどめる。黄金の霊力を纏った炎の三連撃。威力は俺の技の中でもかなり高い方に位置するだろうそれを、全て喰らって無傷。

いや、寧ろ全て受けに来たのか。

 

躱せたのに、躱さなかった――――?

 

それを理解した瞬間に、背筋をぞっと駆け抜ける何か。

勝てないと、どこかで理解してしまう。理不尽を目の前に戦慄する俺へ、悪夢は狙いを定め。

 

ドズンッッ! と、一瞬にして黒い霊力で生成した槍を俺に突き刺した。

結界も回避も間に合わない。仮にできていても、悪夢はそれを正面から看破する余裕があっただろう。しかし、その槍は俺の腹部に衝突したところから消えていく。

 

驚く俺自身。腹部を覆っているのは、見覚えのある赤黒い霊力。

 

『危なすぎ!! ちょっと油断しすぎかな。悪夢が強いのなんて分かりきってるんだから、全力出してもっとふんばれや!』

 

陽炎が、脳内でそう呟く。悪夢がその後も三回程霊力を打ち込んでくるも、俺には当たらず打ち砕かれる。

焦っていた心と、臆病になっていた体を落ち着かせる余裕ができた。長く息を吐いて、そして吸って。

俺は再度、黄金の霊力を纏ったまま地面を蹴り砕く。

蹴った処から放射状に地面に亀裂が入る。空中で浮かぶ悪夢へ向けて、俺は体を捻りながらの右ストレートを放った。

……わかりきっていたが、それは簡単に止められる。

 

だけど。

 

そこで、止まらない。

 

「らああっっ!!」

 

気合を込めて、集中を切らさない様に、俺は右足の蹴りを放つ。悪夢の左手と衝突した足を一瞬で引っ込め、反動を利用して左足での回転蹴り。空中での一撃は右足の蹴りよりも威力を増してはいるが、それでも全然届かない。足りない。

 

「……止めに来てるなら、もっと本気で来てよ」

「っ!!」

 

悪夢が小さく口を開く。

振られる左拳。俺の鳩尾にのめり込んだ悪夢の一撃は鋭い捻りを加えられながら俺を地面に叩きつけた。

背中を強く打ち付け、呼吸が詰まる。視界がぶれる。

トドメ、だろうか。遥か上空で、悪夢が右手を振り上げ、黒い霊力が溜まって。

 

地面に倒れ伏せる俺へと、右手が振り下ろされると同時に放たれた黒い霊力の鉄槌が目前に迫る。

回避は、出来ない。結界も、直ぐに破られる。

陽炎の能力も今はインターパル中で使えない。そんな状況で、俺は相も変わらず。

 

「切り裂、けえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

正面突破一択だった。

ギャリイイン!!!! と強く金属と金属の擦り合わされる音が鳴り響き、俺は右手に桜ノ妖を抜き放つ。左手には、渦巻く黄金の奔流が生成した魂刀[羅刹ー明ケノ夜空ー]を握りしめ。

鉄槌の向こうに見える、悪夢の落胆したような顔を一瞬だけ視界に収めると、俺は全力で両手の刀をクロスさせて切り払う。

最強の切れ味を持つ二刀。振り払われたその瞬間、鉄槌に二筋の剣閃が刻まれ。

 

ズパアアンッッ!

 

四つの欠片に成り、散った黒い鉄槌。その奥にいる悪夢へ、俺は狙いを定める。

 

黄金の霊力が、一層強く燃え上がる。二刀を包み込み、俺の体を輝かせる。

今までの最高の霊力。地面を両足で蹴り飛ばし、一瞬で悪夢との距離を零にした。

桜ノ妖から、妖力の蝶が飛び立つ。俺の体に止まった紫紺の蝶は黄金の霊力と溶け合い、異なる力の混合によりそれらは暴走を始めた。

 

強化された、限界を超えた力。超至近距離の悪夢へ向けて、全身全霊の魂を持って、俺は体を全力で捻り。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

叫び、放たれる霊力と同時に。

 

霞む斬撃を、幾筋も悪夢に衝突させる。

ギャギャギャギャ!!!! と黒い霊力と黄金の霊力が激しくエネルギーの火花を散らし弾き合う。止まる事を知らない嵐のように、斬撃は一瞬たりとも途切れない。一撃防いだら二撃が襲う。そんな凄まじい速度の連撃。

 

呼吸を挟む暇すらない。

 

その霊力と霊力のぶつかり合いの余波は、幻想郷の結界を揺らし大気を震わせる。骨が軋み。筋肉が呻く。

一心不乱に打ち続ける連撃。その終わりは見えない―――――――!!

 

 

―――――――そう。少なくとも俺には見えていなかった。

 

 

悪夢の口が、何かを言いかけて、止まる。

 

次の瞬間。

 

何かが、俺を吹き飛ばした。それしか認識できないレベルの一撃を、悪夢は俺にぶつけていた。

認識できない。悪夢の悲しそうな表情を最後に、俺の意識は。

 

 

闇に、落ちた。

 

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