東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十二章第八話「雲の切れ目から」

目が覚めて、一番最初に感じたのは”白い”という事実。

風も無い。明るく、白い空は終わりが見えない。仰向けのまま起き上がると、そこには果ての見えない地平線が広がっている。

白い世界。

俺の中に居る魂の、居場所だ。

座った状態で、今までの事を思い出す。二刀流で、悪夢に全力の斬撃を食らわせていた。

……そして、その途中で悪夢に吹き飛ばされた。異常に強く、そこで意識を失ったのだろうか。

 

「あ、起きたね」

 

突然、声が掛かる。振り向けば、そこには空中にふよふよと浮かんでいる陽炎が居た。

赤い瞳を輝かせ、楽し気に笑みを浮かべている。幻夢の姿は無く、どうやら彼女一人だけの様だった。

 

「……陽炎ちゃん」

「陽炎ちゃん言うな!」

 

やはりいつも通りに突っ込んでくる陽炎は、呆れたように空中で胡坐を掻く。

その姿は、中学生の女の子が座り方を崩した直後にしか見えない。が、忘れてはならない。

この陽炎は、18歳。俺や隔よりも年上である。

 

「さてさて、軽口を叩くのも良いんだけどさ、大分ヤバい状況なの理解してるかな?」

「……うん。フルバーストに稼働を使っても全然歯が立たなかった。オーバーレイでも、まともに戦えるかどうかだよな」

「オールバーストは皆が危険すぎるから使えない。八方塞がり?」

「そうだと、思う」

 

俺が俯いたまま呟くと、陽炎が突然手を打ち鳴らした。

そちらに視線を向けると、少女はとても良い笑顔で宣言する。

 

「むっふー。しかしこの陽炎様には策があるのです!」

 

嬉しそうに。これまでで一番楽しそうに、彼女は微笑んだ。

赤い目をすっと細めて、白い歯を覗かせて。外見だけは幼くとも、その能力と人生には目を見張るものがある彼女は、期待して見つめる俺へ向かって口を開き。

 

 

――――|俺の事をよく知っている陽炎なら絶対に言わないであろう事を、告げた。《、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、》

 

 

 

 

「私の全魂を使って、|陽炎を消滅させてのオーバーレイをするんだよ!《、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、》」

 

 

☆★☆

 

悪夢に吹き飛ばされた真以外の人、妖怪達は黄金の霊力とその余波で目を覚ます。

地面に倒れているだけの自分自身。彼女らは総じて、地面に拳を叩き付ける。起き上がる。まだ死んでいないその瞳を、鋭く細めて悪夢を貫く。

 

雄叫びを上げることは出来ずとも。

彼女らはまだ生きることを諦めず、博麗悪夢という絶対的な脅威に向けてその刃を向ける。

溢れ出す殺気。レミリア、フラン、霊夢が体を震わせて立ち上がる。

妖夢は刀を支えにして。魔理沙は箒を支えにして、顔に付いた泥を拭った。

魔力も妖力も霊力も、微かに残っているのみ。それでも皆は再び空を見上げ。

 

宙に浮かんでいた博麗悪夢に衝突する、紫の炎を見た。

 

無論、それも直ぐに弾かれる。しかし、直後に襲い掛かる漆黒の半月を、悪夢は躱した。

銀の刃が二つ、曇りの空の切れ間から覗く陽光を反射する。

 

その少女は、金色の簪を輝かせ赤いマフラーをたなびかせながら、雲に覆われていた空の一部を切り裂いて降りてきたのだ。

黒い瞳が、悪夢の紅の瞳と交錯する。

誰よりも鋭い殺気が、まるで一つの武器の様に。彼女の周りに吹き荒れる紫の炎が、その少女の一言によって一瞬で変化していく。

 

「――――纏・紫炎」

 

暁。

 

明けない夜から放たれた朝は、その純黒の悪夢をも切り払う光となる為にその刃を振るう。

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