東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第十二章第十六話「だから―――だから」

何かが吹っ切れたのか。

俺の叫びが終わると同時に、悪夢は全力で地面を蹴り砕いた。

それに合わせて、戦闘態勢に入る霊夢達。俺の後ろで魔力や妖力が吹き荒れて、攻撃の準備が一瞬で整う。

……が、俺はその中で一歩踏み出し、霊夢達の最前線に立った。そして、呟く。

 

「行くぞ、幻夢……!オーバーレイ!」

 

準備されていた魔力や妖力が、その呟きと同時に全て吹き飛ばされる。

俺の右半身は白い霊力を。左半身は黒い霊力を燃え上がらせ、全力全開の霊力の波動が地面に触れずに亀裂を入れていく。暴風にも見間違えるほどに霊力が吹き荒れる中で、俺は悪夢の振りかぶった右腕に合わせて、右拳を握りしめた。

 

ぐっ、と一瞬力を溜める。膝や腰、背中の筋肉をしならせながら放つ拳は、悪夢の拳と衝突し、止まる。

 

今までなら確実に押し負けていた正面攻撃。

しかし、自身の失った部分を補いつつ、長い長い戦闘の疲労を引きずる悪夢は今や俺と同じ程度の霊力しか出す事が出来ない。

衝撃波が大気を振るわせる中で、自身の左腕を黒い霊力にした悪夢はその腕を強靭な刃に再形成する。

空気を裂き、振るわれる黒い刃。俺は左拳を開き、冷静に呟く。

 

「――――来い、黒大剣[鬼丸]」

 

ゴオオ!! と黒い”破壊”の霊力が渦を巻き、生成されるのは2m程度の巨大な刃を持つ漆黒の大剣。

瞬時に生成された鬼丸の柄を握りしめると、身長よりも大きいそれを俺は左腕一本で振るった。

ダガン!と甲高い音を立てて、悪夢の左腕に生成された刃の腹に鬼丸は切り込みを入れ、滑り、火花を散らしながら刃の半分から上を斬り飛ばした。

刀の呼吸。繋ぎ目。妖夢から言われていた事がしっかりと頭の中で響いている。

教えは届いている。

悪夢は左腕が切られたことに一瞬顔を歪めると、一瞬で元の腕を生成する。仮初の黒い腕は、やろうと思えばどんな形にも生成できる事を忘れてはならない。

 

だけど、それは俺の持つ鬼丸にも言えることだ。

俺は人生で会った最悪の混沌を思い浮かべながら、破壊の大剣を再生成する。

その柄はぐんと伸び、俺の身長程に。その刃は折れ曲がり、滑らかな鋭さを携える。

漆黒の大剣は、破壊をもたらす純黒の大鎌へ。左手でそれを放り投げ、右手で掴み直し、一閃。

 

ボッ!! と横薙ぎに黒い線が引かれる。空間をも裂く様な一撃を悪夢は黒い左手で受け止めると、右腕で霊力弾を生成。至近距離―――ほぼ零距離での射撃。

俺の腹部を貫くかと思われた一撃は、しかし寸前で”守護"の白い霊力に阻まれる。

霊力弾を外し、生まれた隙に俺は蹴りを叩き込んだ。

 

悪夢は蹴られた部位を抑えながら、後ろに大きく跳び退る。それを追いかけずに、俺も鎌を空気に散らした。

 

お互いの強い意志を宿した視線が交錯する。

悪夢が左拳を握りしめ、俺は右拳を握りしめた。

 

「……私は、私のやった事が最悪の事だって思ってる。後悔してる。変えたいとも思ってる。……のに、夢幻魂歌は使えない。――――――私の思いは、幻想なのかな、って。自信が無くなってきて。それでも、私はお母さんが死んだのも自分がお姉ちゃんを殺したのも許せなくて。こんなのになった世界を恨み始めて。それでまた、変えたいと思って」

 

どぽん、どぽん、どぽんと悪夢の左腕が黒く膨らんでいく。

最大出力、限界まで溜めている滅壊ノ星撃。俺は溜めている隙を狙わずに、寧ろ自身の霊力を強く激しく燃え上がらせる。

 

「わかんないよ、もう。耐えられないから、だから―――――」

 

どぷんっ、と。悪夢の左腕が限界まで霊力を溜め込んだ上で、掲げられる。

俺は体を全力で捻り、固く強く握りしめた右拳を左手に押し付ける。そこから吹き上がる、白と黒の尾。

まるで流星の様に。いや、それよりも遥かに大きい彗星の様に。

 

俺の最大最高の一撃は唸りを轟かせ、霊力の余波を撒き散らしながら、その準備を終える。

 

今にも爆発しそうな二つの力。

それらは悪夢の言葉と共に、

 

「――――――だから、終わらせて、真―――――」

 

解き放たれる。

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