東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
皆の魂が、俺を器として燃え上がる。
半分が紫紺、半分が深紅となった桜ノ妖は唸りを上げながら、博麗幻夢へとその刃を向ける。刹那の斬撃、しかしそれは防がれるであろう。
そう、俺だったら。
「ポゼッション!![妖夢]!!」
叫ぶ。途端に俺の左目が普段の蒼よりも透き通った蒼に変色すると同時に、俺の桜ノ妖が閃いた。
それは俺の扱っていた時よりも鋭く、速く、相手の隙を穿つ。妖夢の呼吸は幻夢をも惑わせ、本気を出しきれない漆黒の幻夢は霊力を大きく爆発させてどんどん間合いを詰めて押してくる妖夢を遠ざけようとする。
しかし、それは悪手。
黒い霊力の爆発によって、地面の砂が巻き上げられて視界が覆われる。
俺は勿論、幻夢もその状態では満足に戦えない。恐らく時間稼ぎのための物だろうが、
妖夢には、関係なかった。
俺の体に憑依した妖夢の魂は、その中でもまだ踏み込んだ。
無数の連撃は止まらない。視界の悪さ等、剣の道を歩み続けて来た妖夢には関係ない。
どんどん幻夢を押していく。幻夢は後退していくが、妖夢は絶対に逃がさない。深紅と紫紺の軌跡が一瞬で何本も描かれる中で、遂に鋭い突きが幻夢の左肩を穿つ。
その衝撃で幻夢は大きく仰け反り、吹いた突風は砂煙を全て消し飛ばした。
訪れるチャンス。それを逃さないように、俺は妖夢と意識を同調させる。
何かが、”繋がる”感覚。その瞬間に、青緑の光に桜色の光が混じる。
白い世界に、今妖夢が居るのだろうか。
その魂に宿る霊力を、俺が引き出しているとするならば。
妖夢の持つ力に、俺の力を更に上乗せできる。
「妖夢―――――――霊力全開だ!!」
強く叫ぶ。
途端に右手の桜ノ妖が轟、と大きなエネルギーを台風の様に纏う。制御するのでも脳が焼ききれそうなそれを、俺は、いや俺と妖夢は漆黒の幻夢へと叩き付けた。
凄まじい轟音が空気を震わせて、弾けたエネルギーは俺たちを強く煽る。吹き飛んでいった幻夢は地面に体を強く打ち付け、そして直ぐに立ち上がった。
その右手にあるのは、黒く渦巻く霊力。
吹き飛ばされながらも次の一撃を用意し、反撃に移ろうとする博麗幻夢。一瞬反応の遅れた俺に向けて、彼女はその右手を突き出した。
空気を切り裂く鋭い音と同時に撃たれたのは、漆黒の霊力。地面も空間も飲み込んで、全てを”破壊”する黒い霊力は直ぐに俺の眼前へと迫り。
「ポゼッション[霊夢]」
『危ないわね!!ちょっと真、少しは考えてよ!』
霊夢によって生成された結界に阻まれた。
幻夢の記憶と霊力を半端にしか出せない漆黒の幻夢は、確かに強いが相手できないほどではない。
キツイ。でも、皆の力を使えば何とか互角には戦えている。
記憶と霊力をすべて開放すれば、幻夢は俺たちの方へまた帰っていく。世界最強の力を何とか渡さないために、そして自分自身を満たしておくために漆黒の塊は幻夢を手放さない。
それでも、俺は助ける。
「霊夢!……夢想封印お願いします!」
『無茶苦茶だなもう―――――――霊符[夢想封印]!!』
何だかんだ言いつつやってくれる霊夢。
それはどこか陽炎に近しいものを感じて、俺は無意識のうちに奥歯を噛みしめていた。
しかしそれも一瞬。
自分の意思を総動員して、俺は夢想封印を弾くのに手いっぱいな幻夢へと刃を叩き付けた。
体をくの字に曲げて宙に浮かぶ幻夢。
だが、次の瞬間。
ボオッ、と赤い霊力が彼女の手の中で燃え上がった。
それは揺らめき、不明瞭な形のまま夢想封印、そして至近距離に居た俺をも弾き飛ばす。
俺はその霊力を、力を知っている。
”拒絶”、だ。
破壊も守護でも無い。無関係、関わるのを”拒絶”する幻夢の意思から生まれた唯一無二の霊力。
量は少ないが、効果は凄まじい。何もかもを受け止め、弾き飛ばす力。
桜ノ妖を地面に突き刺して俺は吹き飛ばされる状態を無くす。強引に止めたため少しだけ体が痛んだが、それを気にしている暇はない。
恐らく、[満たされようとする意志]はリスクを冒して幻夢の記憶をもう少し解放したのだ。
それによって現れるのは、今幻夢の右手の内で揺れている赤い霊力。
そして、それが段々と形を変えて――――――
現れるのは、赤い赤い薙刀。
名前は、[
拒絶を宿した幻夢の武器。一回相対した事があるが、その力は凄まじかった。
この力に対抗するには、少なくとも幻夢以上の速度が必要だ。
そして、出来るなら技術も駆け引きも。
緊張感が、張り詰める。
空気が硬直する中で、そして俺は意を決した。
「ポゼッション――――――[妖夢][レミリア][フランドール][暁][霊夢][魔理沙]」
全員憑依。
体に負担が掛かりすぎるその行為に、ミシミシと全身の筋肉は軋んだ。
でも、やらなければならない。
妖夢の剣技。
レミリアの技。
フランドールの魔力。
暁の駆け引き。
霊夢の判断力。
魔理沙の思い切り。
全てを以ってして、足りるかどうか。
俺は右手に構えた桜ノ妖を、その切っ先を地面に下す。
姿勢を低く構え、長く息を吐き。
そして、赤蛇の牙へと一歩、強く踏み込んだ。