東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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番外編です。

えっとですね、ラギアは今のところ三日間連続で5000文字以上書いて居てですね。
小説を書いてる人は分かるかもしれませんが、5000文字というのは結構な量で、大分キツイのです。
体力も精神もごりごりに削られて、死にかけます。
それが三日間と言う事で、ラギアは死にかけです。

なので今回はそんなに甘く無いと思います。すみません。

今度のイベント、(あったら)もっと甘くするので許してください・・・っ!

それでは、真隔の番外編どうぞー!


クリスマス番外編

―――――12月24日。冬。早朝。

まだ日も完全に登っていない時間に、一人の少女がベッドの上で目を覚ました。

黒く長い、寝起きだというのにも関わらず艶やかに整っている髪。腰まで届くそれを払いのければ、健康的な鎖骨がパジャマの隙間から覗き、一瞬、白いうなじが見える。

欠伸を噛み殺し、うっすらと涙の浮いた目元を袖で拭い少女はベッドから降りる。

 

その少女は、端的に、そして控え目に言って、世界最高の美少女だった。

 

大きく透き通った漆黒の瞳に、桜色の唇。

すっと高い鼻に、形の整った眉。端正な顔立ちの少女は、名前を魂魄隔(こんぱくかくり)と言う。

歳は16。高校二年生である。

跳び箱は助走なしで18段は余裕、オーバーヘッドキックや165cmの身長でダンクが出来る驚異的な身体能力に、東京大学の試験をオール満点取れるレベルの学力。

成績優秀、容姿端麗。才色兼備、文武両道。

様々な四字熟語が並び、それでも褒めたりないほどにこの少女は優秀だった。

……しかし、そんな少女にも弱点はある。

私服に着替えて、髪をとかして、顔を洗って歯を磨く。その後日課として、彼女は自身の部屋のベランダから隣の家のベランダへと移り、そして窓を開けて中に入る。

 

ベランダ越しに行ける部屋。そこの部屋の主は、天音真(あまねしん)と言う少年だ。

黒髪蒼目に、172cmの身長。身体能力は高いが運動神経はなく、跳び箱四段でも顔面から突っ込む。

勉強はそこそこで、理科だけがずば抜けている。しかし数学は苦手である。なぜなのか。

本来、この早朝なら天音真はベッドの上で寝ている。そしてそれを起こすのが隔の日課の一つだ。

 

だが、最近は一概にそうとは言えない。

隔は真の部屋に入ると、少し頬を膨らませる。絶世の美少女は拗ねても絵になるのだが、本題はそこではなく。

 

「……真のばか。最近どこ行ってんのよー!」

 

そう。

天音真が、こんな早朝からベッドの上に居ないということだ。

さて、では彼が今、どこに居るか。

 

その話を今からしよう。

 

 

☆★☆

 

早朝、バイト。

朝飯、バイト。

昼飯、バイト。

夕飯、バイト。

その後、就寝。

 

以上が最近の俺の生き方だ。死ぬ。もうはっきり率直に言わせてもらうと、死ぬ。

はっきり言うと爛漸苦とかの戦いより数倍キツイ。

 

さて、俺―――――天音真が、なにゆえバイトをしているのか。

 

それは、俺の友人である塩谷、略して塩の所為である。

彼がこの入れまくったバイトを風邪で休み、代役として俺がそこにぶち込まれたのだ。このクリスマスイヴの忙しい何日かのバイト、しかも早朝から深夜まで。

普通に過労死するレベルのバイト量をこなしつつ、俺は頑張って生きていた。

 

それもそろそろ終わり。24日、その昼前に俺は解放される。

勿論バイトの給料は全て俺が貰う事になっている。塩も今朝風邪が治ったらしいので、俺も久々に家でゆっくりと眠れるというものだ。

 

……バイト料だが、これの使い道はもう決まっている。

 

決めたのは実質塩だけれども、俺はそれに賛同した。

今日くらいは、いつもお世話になっているあいつに恩を返すのだ。

 

「天音君、塩谷の代わりお疲れさま!これ、バイト代―――――クリスマスボーナス入ってるからね――――それじゃあさようなら!また今度、是非バイトに来てね!」

「はい、ありがとうございました!」

 

給料の袋(結構重たい)を持って、俺はその家を出た。

疲労がたまりすぎて体はふわふわとしている。寝不足な頭を必死に回して、俺はとあるお店へと歩いていく。

メールで来たのだが、今日は塩の発案でクリスマスパーティーをするらしい。

楽しみだ。最近は特に楽しみなことも無かったから、全力で楽しもう。

 

ここ数日で数キロ減った体を引きずって、カラッと晴れたクリスマス・イヴの街中を俺は一歩ずつ踏みしめて歩いていく。

その空に、雲は無い。

風は強く吹いている。真冬独特の香りを感じながら、俺は背筋をぐーっと伸ばした。

 

 

☆★☆

 

「ただいまー」

 

昼過ぎ。買うものを買って、お昼ご飯は食べずに俺は帰ってきた。

やけに久々に感じる我が家。靴を脱いでコートをハンガーに引っ掛け、俺は階段を上って行く。

その時、急に階段の下から俺を呼ぶ声。そちらへ振り向けば、そこには友人の塩が立っていた。

 

「おーう!真、ありがとな!!」

「ん。塩、お前もう来てたのかい」

「いやまあ、長く楽しみたいじゃん?隔ちゃんも風邪上がりの俺の目の保養になるしな。おっと、取るつもりはさらさら無いぜ。というかお前から隔ちゃんを取るのは世界を征服するくらい無理だけどな」

「何を言ってるんだか。というか……バイト代、で買ったぞ」

「よし。それでこそ真だ。良いか、それをだな……」

 

途中で、もう俺の家に来ていた塩と小さな声で会話をする。

しかし塩の言葉は途中で消える。その目は見開かれていて、俺もそちらへと視線を向けた。

 

「………お、お帰りー」

 

そこに居たのは、赤と白の帽子を被り、肩や鎖骨が大きく露出するこれまた赤と白の服に、ミニスカートと黒く長いハイソックスを履いた黒髪ロングストレートの俺の幼馴染。

魂魄隔、サンタコスバージョンが立っていた。

腰に黒い革ベルト巻き、白いぽんぽんの付いた服の皺を伸ばす。やはり恥ずかしいのか、ちょっと顔を赤くして俯きつつ、隔は上目遣いに階段の下から俺を見上げた。

 

「ど、どうでしょうか。サンタさんですよー?」

「………似合ってる。うん」

「もう少し何か言えねえのかお前は!もっとこう、エロいとkグハアッッ!!」

 

変な事を叫んだ塩の声は、隔の放った右ストレートに吹き飛ばされて掻き消される。見事に放物線を描いて吹き飛んだそれを見送り、俺と隔は同時に息を付いた。

 

赤と白のサンタ。ミニスカートに肩の大幅な露出、小さな帽子に隔自体の魅力。

確かにエロいと言えばそうなのだけれど、それを言えば神速の拳が俺を貫くのは確実である。

だからさっきの塩の言葉を、主に最初の部分だけを聞き入れて。

俺は率直な第一印象を告げる事にした。

 

「……可愛いと思うぞ、隔」

「そ、そうですか!?いやー、ふへへへ……!嬉しいなあ」

 

急に頬を染めて、はにかんで、隔は照れたように笑った。

その最後の一言が本心からだというのが伝わってくる。長い長い、苦しみのみのバイト。その疲れを全て吹き飛ばしてくれるような隔を見て思わず笑みが浮かび、俺はそのまま言葉を続ける。

 

「ごめん、少し寝てても良いかな?力仕事とかあったら起こしてくれ。あとは、準備完了したら起こして欲しいんだけれど」

「うん!良いよ、任せて!」

 

元気よく頷いた隔。

その笑みを目に焼き付けると、俺は階段を上って自室へ。

買ってきたものを見つからないように隠すと、俺はベッドへとダイブし、

 

一秒で就寝しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「塩谷君、これ何……?」

「ああそれ?お土産だよ。……新田と俺からの」

「そうそう。ま、それは隔と真で飲みなー?」

「良いの?」

「ああ、良いぜ。精々仲良くやってくれや」

「やった、ありがとうね!!」

「良いよ良いよ。じゃあ、そろそろ真起こしてきな?」

「うんっ!」

 

「……」

「……」

 

「「ぐっへっへ………」」

 

そして時は過ぎていく。

数人の策略と共にっ!

 

☆★☆

 

塩、そして新田。

俺と隔の四人によるささやかなクリスマスパーティーは、四時ごろから始まった。

 

「いやいや、今年一年いろんな事がありましたなあ」

「これ忘年会じゃねえぞ」

「そうだねえ。あたしは真と塩がまだ続いてる事に驚きだわ」

「それは色々誤解を招きそうだよ新田ちゃん!」

「まあ、真は隔ちゃんの物だしね?」

「ふにゃーーー!!」

「……愛されてるな、真」

「いや、冗談だろあれは」

「「「この鈍感野郎が!!」」」

「ええっ!?」

「折角隔ちゃんがサンタコスしてんだぞ!」

「そうだよ!あたしだったら直ぐに押し倒して、『今夜は寝かさねーぜキリッ』だね」

「ふええ……!?」

「いやいや、急展開すぎない?」

「隔ちゃんが今まで色んなイベントがあったけど、どれだけお前にアピールしてたと思ってんだ!?」

「真は知らないところで努力してんだよ!あたしと隔ちゃんのLINE見る?」

「止めて!?それだけは止めて新田ちゃん!!」

「こんな貧相な体でサンタコスしてんだzぐぼあぐああっっ!!!」

「隔ちゃんはこれでもギリギリCはあるんだよ?あたしの方が大きいけど」

「うあああん!!もうやだこの人たち!」

「何で俺まで入ってんの!?」

 

「それはそれとして、真さんや」

「どうした塩」

「貴様、○○デレだったらどのデレが好き?ツンデレとかヤンデレとか」

「えー……?」

「隔ちゃん、聞いておきな」

「うっさい!」

「ツンデレは良いと思うよ。クーデレも」

「ふむふむ」

「だって」

「うん。……じゃないよお!」

「隔ちゃんの性格は?」

「あー、」

「ごくり」

「……!」

 

「好きだな。うん」

「おお」

「おおー」

「ふにゅう……!」

 

―――――飲み物を飲んで、食べまくって、馬鹿話をして。

気づけばもう六時。外はすっかり暗く、塩達は帰って行った。

嵐が去った。もうそれしか言えない。残された俺と隔は椅子にぐってりと座ると、隔は疲れた様子でどこからか大きな瓶を取り出した。

 

「これ、塩谷君からのお土産だって!飲もうよ!」

「ん。わかった」

 

テンションの高い隔に促されるまま、その瓶の中身を自分のコップに注ぎ入れる。ルビー色のそれは炭酸であり、喉に流し込むと奥でしゃわしゃわと弾けた。

その独特な感触と、そしてこの飲み物独特の風味に俺は首を傾げる。

どこかで嗅いだような匂い。しかし中々思い出せず、俺は隔に尋ねようとコップから視線を上げて。

 

「……隔?」

「――――――――んにゃ」

「ど、どうした。なんでそんなにフラフラしてるんだ―――――」

 

目の前で、顔を真っ赤っかにして椅子の上でふらふらしている隔を見つめた。

まるでそれはドラえもんの、のび太のお父さんの様に。

 

それは、酔っぱらいの様に。

 

そしてピンと来る。この独特な香りはアルコールの物だ。

ルビー色のこれは、シャンメリーではなくシャンパン。確か、発泡酒と言った物だった筈だ。

焦点の定まっていない瞳に、半開きの口。

 

……こいつ、お酒弱かったのか。

 

普段こいつにはお世話になっているため、弱点はないように見えていた。しかし、結構ベタな物が弱点だったのである。

ガタン、と椅子を後ろに蹴とばして、隔は突然立ち上がる。

そのまま千鳥足でテーブルを迂回して、向かいに座っていた俺の元へとやってきた。慌てふためく俺を押しとどめ、そのまま膝の上に彼女は乗っかってくる。

ミニスカサンタが超至近距離に居るという状態。しかもそれが美少女となれば、心拍数は振り切れる。

ドッドッドと強く大きく鼓動が高鳴り、虚ろな隔は俺の目の前で口を開いた。

 

「……にゃんで最近ずっと居なかったの」

「ば、バイトしてました」

「寂しかったんだよ?起きても真が居ないの。ずっとそこに居たのに居ないの。どこにも見えなくて、不安だったの」

 

ふわふわとした口調。

しかしどこか逆らえない雰囲気があり、思わず敬語で返してしまう。

服の胸元を両手でぎゅっと掴まれ、隔は俺の膝の上で時折身じろぎをする。太もも、膝に女の子特有の温もりと柔らかさがダイレクトに伝わってきて、酔っている隔に負けず劣らず俺も頬が熱くなるのを感じた。

 

「私とバイト、どっちが大事なの?」

「隔さんです」

「………むう。じゃあ、何でバイトして私を放ってたの」

 

隔の問い詰めるような視線に、俺は言葉を詰まらせる。

言う訳にはいかない。これは言えないのだ。

何とかして、話題を変える事が出来ないものか。こんな時だけ回転の速い頭を駆使して、俺は慌てて声を上げる。

 

「そういえば隔!クリスマスプレゼント的なのってあるかな!?」

「……あるよ。付いてきてー」

 

俺の袖を掴んで、膝の上からよじよじと降りた隔はそのままリビングを出て、歩き始める。

為されるがままに俺も付いていく。階段を上り、廊下を進み、辿り着いたのは俺の部屋。

何も言わず、隔はそのドアを開けて中に入っていく。何だ何だと思いつつも、俺も後ろに続いて入る。パタンと隔はドアを閉めて、そして真っすぐに俺のベッドの上へ行った。

そして、そこで両足を曲げて外に放り出しぺたんと座る。

開いたカーテンの奥から、青白い月明りだけが室内を照らす。白いベッドの上で、サンタ服を身に纏った隔のみが光で照らされている。

隔はどこからか取り出した赤く長い紐を、ゆっくりと、丁寧に、自身の体に巻き付けていく。

するするする、と俺の見ている前で、自分の体に紐を巻き付けた隔は最後に胸の前で蝶結びをする。

そして、ぽすんと背中からベッドに倒れた。呆然と俺が見入る中で、薄暗い暗闇の中、薄紅色の唇を動かして。

 

そっと、隔は囁いた。

 

「私がプレゼントだよ」

 

体が固まり、呼吸が一瞬詰まる。

ぼんやりと映る隔の頬はお酒で赤くなっており、その所為で何時もよりも艶めかしく見える。

纏う雰囲気はどこか奥深く、踏み込めばずぶずぶと埋まっていき抜け出せなくなるような底知れない物。

生唾を飲み込み、その場で静かに佇む事しか出来ず。

 

……数分か、数秒か。ずっと目を瞑っていた俺は、意を決して目を見開いた。

 

「……すう」

(寝ていらっしゃる!?)

 

しかし、隔はそのまま俺のベッドで寝ていた。

この決意は何だったのか、と少しばかり拍子抜けだが、寧ろこれは好都合だった。

 

俺は隠しておいた今日買ってきたものを取り出す。それは黒い箱で、金色の文字が刻まれていた。

それをそっと隔の横に置き、その場から離れる。

今日のパーティーの後片づけをしなければ。

 

何時もお世話になっている人への恩返し。

 

魂魄隔へ、何時ものお礼を兼てのクリスマスプレゼントを置いた俺は、満足げに階段を下りて行った。

 

☆★☆

 

―――――――翌日。12月25日、クリスマス。

 

目が覚めた俺は、下から聞こえる包丁の音で目が覚めた。

トントントン……と、規則正しくまな板とぶつかり音を立てるリズム。それを聞きながら布団の中で睡魔と戦い、俺はやっと起きる。

昨日、隔にベッドを占拠された俺はソファに余っていた布団を持ってきてリビングで寝たのだ。

目が覚めると、そこは見慣れた天井。上体を起こして見渡せば、案の定台所に隔は居た。

 

「あ、おはよー!」

 

元気よく、私服にエプロンを付けた隔はこちらへと小走りでやってくる。

 

それに合わせて、彼女の胸元では銀のネックレス(、、、、、、、)が揺れていた。

満面の笑みで、隔は俺の数歩手前で踏切って大きくジャンプ。

 

「えーいっ!」

「うわっ!?」

 

どさっ、と俺の上に飛び込んできた隔を慌てて受け止めると、俺の胸元に顔をぐりぐりとさせてから、隔は顔を上げた。

そして、何よりも綺麗で元気の良い笑顔を浮かべ、告げる。

 

「真、だーい好き!!」

 

そのまま、隔の桜色の唇が迫ってきて。

 

それは、動けずに居る俺の口元へと――――――――――

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