東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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最終章第六話「トドメ」

一歩踏み込んだ瞬間に、赤蛇の牙が一直線に振り下ろされる。

触れる事が出来ない必殺の一撃を、俺は魔力を放出することで自分自身を真横に吹き飛ばした。

その最中に、妖力と呪力、魔力を混ぜ合わせた一撃を幻夢の右肩へと放つ。

しかし、それは当たり前の如く赤蛇の牙に弾かれた。薙刀の大振り、そこに生まれるのは下半身の大きな隙。

全力で恐怖を振り切って、俺は幻夢の間合いに入る。膝を緩く曲げると、鋭い呼吸と共に俺は蹴りを打ち放つ。それは一瞬で受け止められ、振ったのと同じ速さで弾き返される。

大きく態勢を崩す俺に向けて、赤蛇の牙が唸りを上げた。俺はその中で、ギリギリまで動かず。

 

刃が、数cmに迫ったところで僅かに体を動かした。

 

そのスレスレを通過して、地面に突き刺さる拒絶の霊力。紙一重の回避を成功させた俺に再び巡ってきたチャンスを掴むべく、桜ノ妖を十字に振りぬく。

 

幻夢の赤蛇の牙も、回避も間に合わない。妖夢と暁の魂がある状態での斬撃は速度、重さ、正確さ。どれを取っても想像を超えていくレベルだ。

初めて、幻夢にダメージと呼べる物が入る。切られた箇所から黒い霊力が吹き出していく中で、俺は距離を取る。そのまま左手の手中にグングニルを生成すると、俺は左手を前に、右手を後ろに。膝を曲げて、低く半身に構えを取った。

右足に十字傷を負った幻夢は赤蛇の牙をくるくると回し、俺へと切っ先を突きつける。

一色触発。剣呑な雰囲気と濃密な殺気が混じり合い、視界は集中状態に入り余計なものを全てカットする。やがて、小さく狭まった鮮明な視界が映る。

そしてそれが限界まで研ぎ澄まされた瞬間に、俺と幻夢は地面を蹴っていた。

 

かつての白い世界と同じように、俺たちは最初に右手の武器を振るう。

 

ぶつかる赤蛇の牙と桜ノ妖、衝撃が腕に伝わってくるよりも早く桜ノ妖は跳ね返される。

だが、その勢いを俺は利用する。外側に右腕が引っ張られる勢いを利用して、その場で急回転。

深紅と紫紺の円が俺を中心に描かれる。

薙刀を振り切ってしまい、両手と赤蛇の牙、重心が前にある幻夢の右肩へと一閃。

回避できる筈もなく、そこに傷は出来る。だが、回避できないと理解した瞬間に幻夢の放っていた左拳もまた同じように俺を傷つけていた。

右わき腹を強い電流が走ったかのような痛みが刺す。顔を顰めつつ、それでもお互いに攻撃の手は止めない。

 

赤と、紫紺と深紅。異なる三色の軌跡は無数に描かれる。それは見ている人からすれば綺麗で幻想的な物であり、俺と幻夢からすれば生と死を分ける一線。

その境界線になり兼ねない物を必死でかわす。受け流し、そして拳を刃を振るう。

交錯する殺気に、一部の隙は無い。

一瞬が命取り。瞬く間に過ぎ去る刹那に全神経を集中させ、再び無数の斬撃線が刻まれていく。

 

そして、その時は訪れた。

 

幻夢の振った赤蛇の牙が、目測を誤り地面に深く突き刺さる。

その時、俺は桜ノ妖を全力で振り上げていた。

 

これ以上ないチャンス。

 

直ぐに俺は刃を振り下ろす。全部の霊力と呪力、魔力と妖力を開放して突き進む斬撃。空気を切り裂き、風が唸る。幻夢の首へとまっすぐに襲い掛かるそれを前に、彼女は対応しようとして――――

 

ザシュッッ!!! 

 

と。

間に合わず、肉が裂け鮮血が飛び散る音が空しく響き渡った。

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