東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
真「本当に勉強しているし、今日も夜中の二時半に帰って来たんだ。ちょっと大目に見てやってください」
ラ「天久、良い人・・・」
真「な」
ラ「可愛い女の子の敵キャラ出したい!暁みたいなの!」
真「変態が!では、どうぞ!」
「ただまー」
「ああ・・・真・・・ぜはっ、お帰り・・・こひゅー」
「・・・ど、どうしたの霊夢」
「なんでもないわよ・・・はあ、じゃあ、早速一番手、魔理沙と妖夢肝試しに行ってらっしゃい・・・」
何故か汗だくで疲れ切っている皆を不思議に思いつつ、俺は妖夢と魔理沙に視線を送る。
・・・よりにもよって、この二人か。
「い、いいい行くぜ妖夢!」
「わ、分かってます!大丈夫大丈夫、幽霊なんて怖くない・・・!」
いや妖夢。貴方半分幽霊です・・・。
皆の輪に入って行く隔を眺めつつ、俺は心の中でツッコミを入れる。
霊夢に案内されつつ、二人は森の中へと入って行った。
直後。
・・・とんでもない叫び声が当たりに響いたのは、言うまでもない・・・。
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「はい次、暁と天久ー」
「はーい」
出て来た妖夢と魔理沙を宥めつつ、霊夢は次の人に声を掛ける。
呼ばれた暁と天久は立ち上がり、そのまま森の入口へと歩いていった。
少し緊張気味の天久に、楽しみな様子の暁。
二人はそのまま森へ入って行く。
・・・数分程、経っただろうか。
数々の脅しに驚きつつも、彼らは順調に進んでいた。
そして終盤。
最後の大仕掛けの為に、仕掛けが途絶えた頃―――――
「ねえ、暁さん」
「ん?」
徐に、天久は先を歩く暁に声を掛けた。
「真は、暁さんにとって大事な人?」
「・・・うん」
突然の問い。
歩みを止めた暁は、不思議に思いながらも頷いた。
「・・・うん。そうだよね」
天久も歩くのを止め、顔を伏せる。
「そっか・・・そうだよなあ・・・」
ぶつぶつと、何かを呟く天久。
それに首を傾げながらも、暁はじっと待つ。
澄んだ黒い瞳。しっとりとした長い黒髪。
すっと通った鼻に二重の瞼、整ったスタイル。
元々この少女は、幻想郷を破壊しようとしていた。
それは不可抗力。自身の父、呪力の達人で合った親の弟子に裏切られ暁の父は死に、幼かった暁はそいつ、黄昏に引き取られた。
暗殺や戦闘の技法。
元々あった莫大な妖力の使い方まで、普通の少女が学ぶことでは無い事を彼女はその身に、血に、叩き込まれた。
夜明けの名を持ちながら、黄昏―――夜に捕らわれた少女。
決して明ける事の無い夜。
しかしそれは、たった一人の少年によって明ける事と成る。
天音真。
暁を助け、黄昏を倒した張本人。
暁に取って大事なその人物の名を、天久は何らかの名前と織り交ぜながら呟いていく。
「うん。うん、・・・そうだよなあ」
そして、天久は顔を上げ。
にこやかに、挨拶をするかのように―――――
「
平然と、呟いた。
「え?」
暁は聞き返す。
呆然と。
でも、さっきまでは無かった警戒心を薄く孕んで。
「聞けば、暁は呪力が使えない落ちこぼれ何だっけ?」
「・・・うん」
「僕にはどうもそうは思えないんだよね。暁。君はまだ、何か隠している力があるんじゃないのか?」
「・・・!?」
突然口調が変わる天久。
その指摘に暁の表情が変わるのを、彼は見逃さない。
「うん。図星だね・・・。さて、と。僕たち・・・何と言うか・・・うん、この世界を創り直したい人たちは結構いるんだ。大切な人が死んだから。もっと偉くなりたいから。つまらないから。色んな理由で、世界を創り直したいって人はいる。でもさ、無理だよね。どんな能力を使っても」
自分で自分の理想を否定した天久は、恍惚とした表情で続きを告げる。
「でも、僕等には夢幻魂歌がある」
「夢幻・・・魂歌!?」
夢幻魂歌。
世界を、全てを、自分の夢へと。理想へと塗り替え、上書きする禁断の技。
初代博麗の巫女、博麗幻夢は皆が仲良く暮らせる世界を作る為に、現実からここだけを隔離した。
暁を闇へといざなった黄昏。
こいつも、夢幻魂歌を使おうとしていた一人であった。
「そうだよ。夢幻魂歌。まあ常人には使えないだろうけどね」
暁は身構える。
刀は今、無い。
近くに人も居ない。
「それでさ、邪魔なのが居るんだよ。天音真と博麗幻夢と陽炎。こいつらが特に邪魔でさ」
天久は笑ったまま、言い放つ。
「殺そうと思ってるんだよねー。今日集まった全員。まあ、真に近づいたのも皆を殺すためだし。友達みたいなことやって、本当に吐きそうだったよ」
夜の森に、静かに響く声。
月が雲に隠れ、暁たちを闇が包み込む。
「貴方なんかに、真を倒せる訳が無い」
「それはどうかな?」
暁はきっぱりと言い張るも、天久は即答し―――――
口角を、吊り上げた。
「あっちには幻夢が居るんだろうけどさ」
黒い、黒い、禍々しい程の霊力が天久を包み込む。
「こっちには、幻夢以上の霊力を持った博麗悪夢が居るんだ―――――」
夜の闇の中でも、その黒は煌々と漆黒の光を放つ。
「人質になって貰うよ、暁。『ロストバースト』」
刹那。
抗う間もなく暁は天久に拘束され、真と同じように悪夢の霊力を血管に流した天久はそこから立ち去った。
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「次ー、真と隔ー」
「あーい、行くぞ隔ー」
「ん、分かった」
座っていた岩から立ち上がり、俺は森の入口へと歩いた。
暁と天久がまだ見えないが、どうしているのだろうか。
この時。
俺はまだ、この後に起こる災厄を、知る事は出来なかった。