東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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すみません、投稿遅れました。
挨拶などはまた明日に・・・。
改めましてすみません。では、どうぞ!


第四章第二十七話「理想」

「お前・・・どうしてこんな事をしたんだ?」

「おっと真。そこからこっちには近づかないでね」

 

天久を強く見据えるも、それを気にする様子も無く天久は笑った。

こいしの手首を掴んだまま、不気味な程に。

 

「えっとねー、僕にも色々あるんだよね。まあ。あ、近づいたら―――――」

 

口調が、優しい物腰から人を揶揄う様な、軽い口調に代わっていく。

黒いもやの様な、それでいてとんでもなく強力な霊力を纏い。

天久は、こいしを持つ手に力を込めた。

 

グギャバギュッ!!!

 

「――――――こいつ、殺すから」

 

ビクンッ、と一度こいしが体が震える。

ひしゃげた手首、変な方向に曲がっている指や原型を留めていない拳。

痛みに叫ぶことも、恐怖で泣く事も無く。

こいしは、そのままだった。

 

「さて、じゃあ話をしようか。これは少なからず、君にも関係があるんだ」

 

何事も無かったかのように、天久は話し始める。

1%の身体能力では天久からこいしを助ける事も、そして暁を助けることも出来ない。

あいつは、本気だ。

 

背筋を冷たい汗が流れ、天久は口を開く。

 

 

 

「今、僕の体の中には、博麗悪夢が居る」

 

「!?」

 

薄々気づいていた事。

それでも目の前に、幻夢以上の霊力を持つ少女の、器となった少年が居る。

 

「君と同じさ、真。僕は彼女の力を使い、こいしを殺しに来た。君を、潰しに来たんだ」

 

こいしを持って居ない方の手で、天久は拳を創った。

 

 

「単刀直入に言う。僕と悪夢達は、」

 

 

一拍の、短い間。

 

涼しい夜風が髪を風に遊ばせ、俺達の頬を撫でて行き。

 

天久が、短く、宣言した。

 

 

 

夢幻魂歌を、使う(、、、、、、、、)

 

「なっ・・・!?」

 

夢幻魂歌。

最大の禁忌にして、この幻想郷を創りだした秘技。

 

自身の夢を、世界に反映させる―――――

 

そんな効果を持った、たった一つの希望。そして、災厄への切符。

 

2300年前、初代博麗の巫女[博麗幻夢]は夢幻魂歌を使った。

 

必要な代償は強力な夢。未来へと進む原動力。

莫大な、霊力。

 

殆どの者が使えば死ぬ。

 

幻夢も己の身を犠牲にし夢幻魂歌を発動。

 

妖力と魔力を封印しようとしていた幻想郷の賢者の目の前で、彼女は自身と友の夢だった、

 

『妖怪も人間も、全ての者が仲良く暮らせる世界』

 

を作り出した。

 

天久が言っているのも同じ事だ。

つまり、

 

 

「この世界を、僕らの理想の世界に塗り替える」

 

 

と言う事だ。

 

 

「何故人は死ななければならない?何故生まれて来なければならない?生があっても、死んだら意味が無いじゃないか。・・・僕らはね、誰かを恨んでいる訳じゃ無い。この世界が、そのものが憎いんだよ」

 

段々と、声が大きくなっていく。

 

「じゃあどうしたい?そうだ、世界を、全てを僕らが塗り替える!!誰も死なない平和な世界に!理不尽何て何一つ無い、素晴らしい世界に!僕らの、全人類の理想の世界にッ!!!」

 

ボギャッ!!

 

力を込め過ぎた天久の手により、こいしの腕が再び潰される。

 

 

「じゃあ何故こいしを殺すのか。だけど・・・理想の世界を導くのは、力のある者じゃ無ければダメだ。現実の人間は論外。じゃあ人間で一番強いのは?そう、悪夢と僕だ。他は全て意味の無い虫けら共。ゴミが幾つ集まってもゴミにしかならないしね。僕と悪夢は世界を導かなければ行けない。これは義務なんだ。でも、夢幻魂歌を本気で使えば悪夢は消滅する」

 

 

 

 

「だから、だよ。僕らは世界を上書きするだけ。世界そのものを変えるんじゃなくて、歴史を。不完全なシナリオを、完璧なシナリオに変えるだけ。そこを夢幻魂歌でやるんだ。・・・君たちは何の違和感も無く、筋書き通りに、誰も死なずに好きな人と付き合えるような完璧な人生を送れる」

 

 

 

 

長い長い話。

その言葉の奥に秘められた思いは、どれだけ大きく、小さいのか。

 

 

「夢幻魂歌は本来、描かれていた世界そのものを・・・紙の上に鉛筆で書かれていた物を消しゴムで全部消して新しく書き直すような物だ。でも僕らの夢幻魂歌は、ボールペンの上に鉛筆で上書きするような、不完全な物」

 

 

 

忌々しそうにこいしを睨みつけた天久は、吐き捨てる様に話し始める。

 

 

「こいしは無意識を操るんだ。世界は無意識にこいしを置き去りにし、こいしは無意識に世界から離れる。世界の事象から全て無関係のこいしは、”消しゴム”―――――僕たちの描いた世界を、消しかねない存在だ。だから殺す。始末する。君の目の前で。君の、手の中でッ!!!」

 

ドズンッ!!

 

突如、天久の腕から伸びた黒い霊力は棘となり、こいしの右肩を貫いた。

暗い空に赤い血が飛び散り、飛沫は頂上から20m程離れている俺にまでかかる。

そして、もう一度。

 

ドズンッ!!

 

今度は足の付け根に。

骨が、肉が抉れる。

月明かりに照らされるこいしは、まるで壊れかけの人形の様だった。

 

 

「ほら・・・救けてみろよ」

 

 

そこまでやって、天久は挑発する様に呟きこいしを勢いよく投げ捨てた。

 

 

「っ!こいしっ!」

 

俺は全力で走り、滑る様にして何とかこいしをキャッチする。

 

「こいし・・こいし!大丈夫か!?こいし!」

 

呼びかけても、返事は無い。

血はまるで洪水のように留まる事を知らず、虚ろな瞳は何も映さない。

 

俺は自身の服を無理やり切り裂き、こいしの傷へと巻き付ける。

まずは止血が最優先・・・!

 

 

「んで、僕たちの計画に一番邪魔なのが真なんだよ。何回殴っても起き上がって来るし、何をやっても全部ぶち壊される」

 

 

強く結びつけたところで、天久が俺を睨みつけて来た。

こいしを抱え、俺は立ち上がる。

 

「僕は考えた。真、君は全員助けるらしいね。こいしを助けられるかい?無理だろ?そして―――――」

 

話しつつ、天久は吊らされている暁へと歩み寄り、その白い肌に自身の指をなぞらせた。

 

 

 

「暁を、救えるかい?」

 

 

 

その五指は、まるで嘗め回すかのように暁の肌を伝い、首へ。

優しく、包み込む様に、天久は暁の華奢な首を右手で掴んだ。

 

 

「さあ真。見せてくれよ。君が絶望するところを。君が、動けなくなるところを――――――」

 

 

声も、出せない。

手も、届かない。

 

暁の首を持った手は、ゆっくりと、それでも確かに、力が籠められた。




言い忘れてましたが、この章、死人出ます。
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