東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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ラ「カントリーロードって神曲だと思うんだ」
隔「いきなり何!?」


隔「え、えっと・・・五章で前書きのレギュラーになりました、隔です」
ラ「余りにも不憫だった」
隔「・・・何よ、その学校でも何かあったみたいな感じ・・・」
ラ「・・・え、えっとね?」
隔「うん」


ラ「今日、友達に『暁と隔どっちが良い?』って聞いたら・・・」
隔「うん」

ラ「『暁』ってその友達即答したんよ」

隔「むろふっしゅあああ!!!」

霊夢「じゃあ、どうぞ。真って跳び箱出来なさそうよね。」


第五章第二話「放り出されて」

圧倒的危機感。

全てを凌駕する恐怖を、純粋無垢な妖夢の寝顔に俺は感じてしまった。

足がすくむ。背筋を、冷たい汗が滝のように流れ落ちて行く。

 

白い下着姿の妖夢をなるべく見ないようにしつつ、俺はこれ以上無いくらい集中して静かにドアへと向かう。

見つかったら半殺し。悪くて斬られる。

お酒が入って居たり、寝起きだったり、恥ずかしい時だったり。

理性が消し飛んだ時の妖夢は、大体怖いか可愛いかである。

 

そろそろと、俺は堅実にドアへと近づく。

大体小説や漫画の主人公はこんな時、物音を立ててしまうが生憎俺は主人公でも、漫画や小説の中の登場人物でも無い。

よって、俺はここで無事に脱sy

 

ガタン!

 

頭の中で、勝利の方程式が見えた、その瞬間。

ずっと目を妖夢から逸らしていたため、俺は壁に結構強くぶつかってしまった。

 

(終わった)

 

脳裏を過る、一瞬の切実な思い。

刹那。

 

俺は妖夢から逃げる様に、全力で近くのクローゼットへと飛び込んだ!!

 

急いで扉を閉め、強く握る。

呼吸を殺す。物音を、絶対に立ててはならない。

 

「んにゃ・・・あれ?何か物音がした気が・・・」

 

起きた。

遂に妖夢が、起きてしまった。

 

掛け布団を自分の上からずらし、妖夢はぺたんと音を立て足を地面に付ける。

そのまま、微かな足音が室内に響き始めた。

 

「・・・なにも居ないですね。幽々子様も寝ているでしょうし・・・。ゆ、幽霊だなんて事は・・・ない・・・ですよね・・・?」

 

 

ブツブツと呟く独り言。

それが段々と震えて行く。

 

「不味いですね。いやこれは不味いですね。別に怖い訳ではないのですが、真さんが心配なので一緒に寝てあげましょうか。そうですね。これは真さんを護る為であって・・・」

 

あのう、俺ここに居るんですが。

 

「さて、流石に下着姿で行く訳には行かないので着替えましょうか。咲夜さんが服を洗ってくれるので、この部屋に付いているって言う支給用のメイド服で良いですね」

 

一人納得した声音の妖夢は、微かな足音を立てながら。

 

・・・こっちへ、向かってきた。

 

絶賛大ピンチです。

 

夢月と向き合った時よりも、俺は全力で焦っていた。

死ぬかもしれない、では無く、死ぬという確実な恐怖。

体全体が震え始める中。

遂にクローゼットのドアノブが握られ、俺は全力で力を入れて開けられない様に――――

 

 

ガチャ

 

 

無理でした。

 

 

「・・・えっと・・・こんばんは妖夢!」

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「成程、成程。つまり真さんは寝ている女の子を襲おうとする変態だったんですね」

「いやだから、紫が此処に送ったんだって・・・!」

「ほう、それなら素直に私を起こして言えば良いじゃないですか」

「斬られると思いました」

「幾らなんでもそんな直ぐに斬りませんよ!?」

 

ベッドの上に、着替えた妖夢が座り。

その下の床。

俺は正座して、必死に言い訳を続けていた。

 

 

「全く、さっきは隔さんを忘れたと思ったら直ぐこんな事を・・・」

 

腕組みをしつつ、あきれた様子で妖夢は呟く。

話題を変えるため、そして失った記憶を確かめるため、俺は急いで妖夢に話しかけた。

 

「あ、その、さ。俺が忘れた、隔って・・・どんな子?俺にとって、大事な人だったのは何となく分かるんだけどさ」

 

 

尋ねると妖夢は目を瞑り、腕を組んだまま淡々と告げ始める。

 

「そうですね、真さんが隔さんに馬乗りしたり、隔さんは真さんのズボンを下ろそうとするくらいの関係でした」

「え?俺何やってんの?」

「その様子だと、隔さんに関する記憶が全て消えているんですね・・・。まあ、貴方達は幼馴染で、とてもお互いを大事にしている間柄でした。仲が良くて、真さんは隔さんを助ける為に散々無茶をしていましたしね」

 

「・・・そう、だったのか」

「ええ」

 

一つ一つが、突き刺さる様に何かの扉をこじ開けようとしている。

心臓が、締め付けられるような感覚。

 

 

頭の中で、何かがフラッシュバックする。

 

それは、俺の隣で。

 

長い黒髪の少女が、笑って居て――――

 

弾けるような痛みが頭に走ると同時に、そのイメージは消え去った。

でも、それだけで分かる。

 

あの少女は、俺が思っていたよりもずっと大事な人だったと言う事。

 

そして、それ故に、俺のやった事が取り返しのつかない事だと言う事実。

 

・・・責めてくれれば、楽なのに。

 

いつもいつも、勝手に突っ走って、無茶ばっかしている俺を、誰も責めはしない。

寧ろ、皆庇ってくれている。

違うんだ。

 

それが、一番申し訳ないんだ。

 

いっその事、責めてくれ。

俺に幻夢や陽炎は、強い、誰かを護れる力は似合わない。

 

その理想に追いすがる為に、俺は一体どれだけの事を犠牲にしなければならないのか。

 

霊夢や夢月。

彼女等の方が、幻夢や陽炎と一緒に”戦える”

俺みたいに、その力をただ無造作に振るだけじゃ、無いのだから。

 

 

「・・・どうしたんですか?」

 

月明かりだけが差し込む室内で、沈黙を破る様に妖夢は小さく呟いた。

訝し気に、それでいてもう全てを悟っているかのような表情で。

優しい笑みを浮かべながら、彼女は再び聞いてくる。

 

 

「悩み事ですか?私で良ければ、相談に乗りますよ?」

 

 

ゆっくり、諭すように妖夢は告げる。

水溜まりに落ちる雨粒のように、それは俺の心に波紋を広げた。

 

 

「     」

 

俺は、全てを吐露してしまった。

何の関係も無い、俺とは唯の師弟。知り合いである少女に、俺は全てをさらけ出した。

 

いつまでも弱いまま。

皆に迷惑を掛けて。

自分は結局、何も出来ていなくて。

霊夢や夢月の方が優れているのに、何で自分だけこんなに恵まれているのか。

 

長い長い、話だった。

 

青白い光を放つ月が雲に隠れ、室内は僅かな明りだけが支配する。

その話を妖夢は、何も言わず、最後まで聞いてくれた。

 

 

「そうですね、私も霊夢さんや夢月さんが、幻夢さんと陽炎さんの力を使った方が強い(、、)と思います」

 

開口一番。

妖夢は、真実を告げた。

 

でも。

 

「それでも、単なる強さだけが全てでは無いんです。真さんは、例え強さが無くてもそれを補いきれるだけの優しさ(強さ)があるんですよ」

 

 

直ぐ後に、妖夢はゆっくりと言い切る。

顔を上げれば、妖夢の蒼い眼は真っすぐに俺を見据えていた。

 

「真さんは、皆を護る。だから、強いんです。それだけで良いんです。きっと真さんは、人を護る、ではなく、護る為に殺す、と言った意思になった瞬間に弱くなります。真さんの最大の強さは、『優しさ』。『武力』では無いですからね」

 

静かに、言葉が並べられていく。

淡々と。そして、優しく。

 

氷の塊の様に固まっていた俺の心が、段々と溶けて行く。

 

 

「迷惑とか。何も出来ないとか。そんな事、絶対皆は思って居ません」

 

きっぱりと、言う。

 

「私達を、助けてくれた。それだけですよ」

 

微笑んだ妖夢は、立ち上がった。

俺のすぐそばに来て、そして俺と目線を合わせる様にしゃがむ。

 

 

「それに」

 

 

そう言って、妖夢は人差し指で俺の額をトン、と小突いた。

 

 

 

 

「私は師匠ですからね。弟子の後始末は、お任せください!」

 

 

片目を閉じて、妖夢は囁いた。

俺を立ち上がらせ、俺の体を妖夢は回す。

 

「ほら、今日の事は黙ってて上げますから、早く自室に戻って下さい。誰かにバレると、また大変ですから」

「うん。・・・妖夢、ありがとう」

「いえいえ」

 

笑いかけると、彼女も笑い返してくれた。

 

そのまま俺はドアを開け、外に出る。

 

 

隔との記憶は、もう二度と手に入らない。

 

 

でも、また作り出していく事は出来る。

 

廊下の窓。

 

そこから見える夜空の端は、赤紫に染まり始めていた。

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