東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
隔「殴るよ?あれだけ言っておいて」
ラ「明日部活無いので頑張りますから!許してヒヤシンス♪」
隔「ちょっとフルボッコしてきます」
ラ「ちょ、やめ、うああああああああああああああ!!」
隔「・・・ふう。では、どうぞ!」
「昨日、何回起こしても起きなかったから、そのまま放置したんだけど・・・」
「うん。悪かった。すまなかった」
朝。
宿の食堂で朝食を待つ間に、俺は寝ぼけ眼を擦り暁と話していた。
昨日、結局一晩中俺は幻夢と戦っていた。
五月雨仕掛けの泡沫はやはり難しく、何故幻夢があんなに出来るのかが不思議でたまらない。
申し訳なさそうに俯く暁に理由を話し、俺はまた別の要件を切り出す。
「暁。で、今日はどうするんだ?」
「今日はね、私の実家に行ってみようと思うの。もしかしたら何か本があるかもしれないから・・・」
言いかけている途中で、朝食が運ばれてきた。
宿屋の需要があるのかどうかは微妙だが、何にせよありがたい。
俺と暁は一緒に唱和し、少し食べた処で再び話し始める。
「おばあちゃんも、何か本があったら真のそれを解けるかもしれないし。・・・私も、呪力をもっと使えたらよかったんだけど・・・」
もごもごと口ごもる暁に、俺は口の中の物を飲み込み笑いかける。
「大丈夫。暁がそんなに悩む必要も無いんだし、寧ろこんな所まで連れて来てくれたんだから」
会話は途切れる。
暫しの沈黙。少しだけ感じる虚しさ。
それでも、少し嬉しそうな暁を見ているのは俺も嬉しかった。
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再び、俺達は明乃の家に来ていた。
理由は暁の家の場所を忘れてしまった為。
11年間いなかったし、その頃五歳だし・・・!!
と震えながら呟く暁を少しイジった後である。はい。
「この里の、南西さ」
「すみません、北が分からないんですけど」
「地図の上だよ」
「地図無いじゃん!?」
「かっかっか、冗談さ。あっちの方角だよ」
やけに真面目な表情で言う明乃に突っ込むと、愉快そうに笑いながら明乃は自分の右を指さした。
そこに広がるのは大きい森。緑が生い茂るそこの奥に、どうやら暁の実家があるらしい。
「ありがとう、おばあちゃん!それじゃあね!」
「ああ、またね」
元気よく明乃に手を振った暁は、そのまま走って玄関を出て行った。
それを追いかけようとすると、いきなり明乃が俺を呼び止める。
「真・・・ちょっと、大事な話があるんじゃが」
静かな一言。
俺はゆっくりと振り向き、神妙な面持ちで俺を見据える明乃へと顔を向けた。
「実はのう・・・・」
椅子に座り直し、長く明乃はため息を吐く。
開け放たれた窓から吹き込む初夏の風。
暖かいはずのそれは、今はすっかり冷え切っている様だった。
老婆とは思えない程の眼光の鋭さ。
黒い瞳を光らせる明乃は、強く、言い切った。
「暁が真っ赤になってもじもじする魔法の言葉があるんじゃ」
「詳しく」
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「何話してたの?」
「んー?なんでもないぞ?」
森の中を歩きながら、俺と暁は軽く言葉を交わす。
下から俺の顔を覗き込んで来る暁を可愛いなと思いつつ、俺は辺りを見回す。
何か、視線を感じるのだ。
殺気を伴わない、でも、しっかりと俺達を見ている視線。
それは確信。
俺が桜ノ蕾の柄を柔く握ると同時に、辺りの雰囲気が一変する。
「!?」
暁が気づいた。
驚いた表情で腰に付けてある普通の小太刀を引き抜き、逆手に構える。
俺は桜ノ蕾の白刃を2cm程だけ空気に晒し、前を睨みつけた。
刹那。
紫色の―――――――呪力の光と、そして強い力が爆発したかのように撒き散らかされた。
巻き起こる風。
腕で顔を覆いながら、俺は後ろに一歩下がり暁は一歩前に出る。
現れたのは、180cm程の長身の人物。
男か女かは分からない。
俺と暁と驚愕に目を見開く。
何故か。それは――――
そいつは、全身を包帯で覆っていたのだった。
鋭い漆黒の眼光は、俺では無く。
隣で小太刀を構える、暁へと注がれていた。