東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第五章第十二話「深まる」

声は、驚いたようだった。

訝し気に、音が響く。

 

(・・・本当に良いんだな?お前は、戦う理由を失うんだぞ?諦めたのか?)

 

「諦めてなんかないさ。・・・だって」

 

胸の光が、急激に強くなった。

純白の閃光は暗い世界を黄金に染め上げ、俺は右手を伸ばし上にある扉へと手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「全部を護るって意思は、不可能だからこそ無限にあるんだ」

 

 

 

 

黒い世界が、打ち砕かれた。

掲げる俺の右手から黒い文字が宙へと浮き上がり、それはリングの様に俺の腕を軸に回り始める。

肘から手首まで、黄金の光を放ちながらそれは回り続け。

 

頭のてっぺんから、指の先まで。全てに、絶大な力が流れ始めた。

 

 

(・・・・ふん、良いだろう。お前がそう思うんなら、お前に力を・・・渡そう)

 

ドン!!

 

黒い文字で出来たリングが急に膨張し、炎、水、土、風、雷を纏い始める。

本能的に理解する。それは、俺の力だと。

新たな力。それは全て、皆を護る為に。

 

吸い取られていった何かが戻って来る。

何もかも。零に戻り。

 

それは、未来(プラス)へと。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

肩を落とし、暁は広い庭を歩いていた。

 

何処に何があるか。それを彼女は、すべて把握している。

 

何故なら、ここは暁の実家だからだ。

元々呪力に長けていた暁の父は、ここで道場を開いていた。

 

しかしそれも昔の話。

焼き払われたこの家を新しくしたのは、あの包帯の男だろうと、暁は思っている。

 

「・・・自分の部屋に行ってみよう」

 

どうせなら。

やる事も無い。暁は呟き、そして踵を返した。

 

 

 

自室の障子を開け、そして中に入る。

 

・・・そこは、綺麗だった。

 

手入れが行き届き、埃は殆ど無い。

暁は少し懐かしく思いながら、一歩踏み出した。

 

そして、見つける。

 

窓から差し込む光。その照らされている場所に、二刀の小太刀があるのを。

 

それにも、暁は見覚えがあった。

 

急いで駆け寄り、彼女は二刀を慌てて掴む。

落としそうになるのを必死で堪え、そして暁はその小太刀を―――――死んだ父と母の持っていた、小太刀の銘を呟いた。

 

「時雨・・・日登・・・」

 

黒き柄に、少し青みがかった銀の刃を持つ時雨。

白き柄に、少し赤みがかった金の刃を持つ日登。

 

対照的なこの二振りの小太刀は、暁の古い記憶をよみがえらせる。

微かな記憶が、暁の胸の奥からあふれ出し。

 

誰も居ない部屋、暁は一人その小太刀を抱え崩れ落ちた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

魂魄隔。

あの黒い世界から戻って、一番最初に浮かんだのはその言葉だった。

脳の中に雪崩の様に情報が流れ込む。頭がパンクするような錯覚に、俺は顔を顰めた。

 

「・・・成功、したのか?」

 

包帯の男が、ゆっくりと尋ねて来る。

頭を押さえつつ、俺は自身の右手を見下ろし。

 

「・・・成功、です」

 

何の刻印も浮かんでいない事を確かめ、呟いた。

呪縛からの解放。新たな力。

嬉しさに胸を躍らせながら、俺はずっと思っていた事を口に出した。

 

「すみません、ずっと聞きたい事があったんですけど、一つ良いですか?」

「ん?なんだ?」

 

すう、と息を吸い込み、俺は確信に近い物を得ながら舌に言葉を乗せた。

 

 

 

「あなた、暁の父さんですよね?」

 

「・・・違う」

 

「そういう割には、目元が似すぎていますよ?」

 

否定にも、力は無かった。

説得力の無さすぎる理由。しかし包帯の男―――――暁の父親は、諦めたようにため息をついた。

 

「どうして、バレルかな。明乃にもバレたし・・・。そう、私は有明。暁の父親だ」

 

あっさりと認めた有明。

頭の包帯を解くと、そこには頬や額にまで黒い刻印を刻んだ、どこか暁に似ている男の顔があった。

 

「・・・昔、ここは火事になったんだ。まあ、放火なんだが。その際に、暁は誘拐され、私は殺された。しかしだが・・・娘を残して、死ぬわけにはいかない。私は自分自身に呪いをかけ、無理やり生きた」

 

体の包帯を解いていく有明。

無残な傷跡に、黒き刻印。

火傷の痕が全体に広がるその体を忌々し気に眺めながら、有明は自嘲気味に呟く。

 

「娘の為に生きた物の、これじゃあ娘には見せられないさ。私は有明の友人として、生きていた。まあ、今日暁に会えたがね」

 

寂し気に言い切った有明は、両手を畳に着け、そして腰を折った。

 

「ありがとう。攫われた暁を助けてくれて。そしてお願いしたい。これからも、暁の傍に居てやってくれないか」

 

感謝と、お願い。

断る理由なんて、勿論あるはずがない。

 

「はい。勿論です」

 

俺は有明よりも深く腰を折り、額を畳に押し付けた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

夢月は小さい人里の茶屋で、小さくお茶を啜る。

隣であんみつを食べている早苗、夢月と同じくお茶を飲んでいる魂魄隔を見ながら。

 

彼女等は、暴走妖の調査に来ていた。

 

最近この近くで起こる怪事件。

それは妖怪、『鎌鼬』の事象と殆ど同じ。

なのだが。

 

「・・・滅茶苦茶固い暴走妖って何でしょうかね・・・むぐっ」

 

早苗はあんみつの白玉を咀嚼し、夢月へと質問を投げかけた。

 

鎌鼬は本来、風の妖怪だ。

それ故、固くない。寧ろ、柔らかい。

 

しかし今回の事件。死体は全て、切り刻まれると同時に潰されても居た。

 

それだけ固い物。鎌鼬なのか、それとも・・・。

 

「さあ・・・私には分かりません。ですが、一つだけ考えている事なら・・・それが合っていたとしたら、かなり厄介な事になりますが」

 

夢月はお茶を啜る手を休め、律儀に早苗に答える。

言葉を濁す彼女に、隔は尋ねた。

 

「その考えてる事、って何ですか?」

 

話すべきか、話さないべきか。

一瞬悩んだ夢月は、前者を選択した。

 

「・・・これはあくまで、ただの予想なのですが」

 

軽い前置き。

鋭い眼光を光らせつつ、夢月は続きを言い放つ。

 

 

「もしかしたら、妖怪と妖怪の配合種・・・ではないかと思いまして」

 

謎は深まる。

理解できなくても、それでも時は進む。




夢月、凄く使いやすいです
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