東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第六章第九話「咲き誇れ」

妖夢の腹部。太い枝の突き刺さった部分から、妖夢の淡雪の様に白い肌とは正反対の真っ赤な鮮血が噴き出す。俺の視界をそめていく血は、その枝さえも赤く染め上げて行く。

 

妖夢は、あの状態で俺を守った。

虚ろな瞳。そこに感情も理性も、自我が無かったのも見て分かる。

なのに。なのに。

 

俺があの場で、危険なこの場所で止まったからこそ、妖夢はああなってしまった―――――――

 

冷たい汗が背筋を伝う。息が出来ない。鼓動が速まり、血は熱くなり。

その時。無防備な状態の俺は、自分に襲い掛かる無限の西行妖に気づけなかった。

 

圧倒的な妖力の暴風。数の暴力。

たった一人を仕留めるために用意される、多すぎる凶器。

呆然と地面に崩れ落ちる目の前で、妖夢が顔から地面に突っ伏した。

 

 

西行妖は、俺に妖夢の後を追わせようとしているのか、無慈悲にその攻撃の手を緩めない。

フルバーストが、弱い意志によって掻き消される。

陽炎の危険信号さえも、今や遠き幻想に成りつつ。

 

俺は、そのまま、時の流れに身を任せた。

 

 

 

 

 

――――――――それは、諦めでは、無い。

 

 

 

 

「・・・ふざけんな」

 

時の流れは、消えかけた火を再び燃え上がらせる着火剤。

怒り。憎しみ。

例え、そんなのが理由でも良い。今はただ、立ち上がれ。

 

・・・立ち、上がれ。

 

 

ゴウ!! と、突如俺の体から青緑の光粒が吹き荒れた。

それは風。異常なエネルギーが、俺を包み込む。

 

鼓動が次第に大きく、強く成る。

 

光は、エネルギーは妖夢の体を包み込み、治癒していく。

 

『・・・そんな・・・私はまだ、トリガーを引いてないのに・・・!?』

 

脳内で陽炎が呟く。

襲い掛かる西行妖。だが、それは俺の体に当たった所で一斉に止まった。

 

・・・いや、突き刺しきれない。俺の肌を、1mmでさえも切り裂けない。

 

燃え上がる力。全てを焼き払い、俺の望みを叶えるが如く、俺は心の底から思いを絞り出す。

 

 

「・・・妖夢を・・・俺は、何があっても助けるって決めたんだ・・・!!」

 

それはあの夜。俺は、心の奥で誓っていた。

静かに。でも、確実に。

 

俺は。

 

誰かを失う恐怖を、知りたくない。

 

 

その思いに応えるかの様に、突然俺の腰の桜ノ蕾が震え始め、そして独りでに鞘から飛び出た。

 

俺はそれを勢いよく掴み取り、そして呟く。

 

稼働(ドライブ)

 

妖夢を治癒しながら。妖夢を、護る様に。

俺は、西行妖の枝に向けて青緑の斬撃を放った。

 

圧倒的威力を持って、斬撃は瞬く間に枝を切り裂く。

一閃。虚空に軌道が描かれるたびに、全ては崩れ落ちる。

 

もっとだ。

もっと。俺は、力が欲しい。

 

力だけが、全てじゃない。

 

それでも。

 

・・・力が無ければ、助ける事の出来ない命だって、ある!!

 

刹那、桜ノ蕾が強く大きく紫紺に輝き始めた。

暗雲に包まれた白玉楼を切り裂くように。蕾は、開花する前にの養分・・・妖力を、吸い取り始める。

 

妖夢を支配していた妖力が、一瞬で桜ノ蕾へと吸い込まれた。

俺はそれを高く天に掲げる。すると、西行妖の妖力までもがその刃に、柄に、凝縮されていく。

 

何千年もの歴史を持つ桜。呪いの桜として、無限とも言えるであろう妖力を持って居た西行妖の妖力は、数十秒も立たない内に零に成る。

 

幽々子様から貰った『桜ノ蕾』。あの人は、俺に刀を渡す時にこう言ったのだ。

 

『・・・今は唯の刀』 と。

 

解放条件は。真の力を解放する条件は、西行妖の妖力を吸い取る事。

 

「咲け」

 

妖力を失った西行妖は、結界の維持も不安定なまま漆黒の霊力を撒き散らす。

 

「・・・咲け。強く、咲け」

 

紫紺の輝きは、刃を染めて行く。

鞘に描かれた桜の蕾が。刃に描かれし蕾が。

 

 

 

 

「――――――咲き誇れ!!!」

 

 

 

今。完全に、その花弁を開く!!

 

 

 

紫紺の輝きが圧縮される。

それは無限の妖力を持って白銀の刃へと吸い込まれ、描かれた蕾の花を咲かせると同時に刃を紫紺に染め上げた。

黒き鞘が、更に宇宙の様な深みを持つ。

西行妖に刻まれた記憶が全て流れ込んで来る。暴れ狂う大樹を前に、俺は真の力を宿した刀の銘を、声高らかに告げた。

 

 

「行くぞ・・・桜ノ妖(さくらのあやかし)!!!!」

 

 

俺は桜ノ妖を横に振るう。すると、その軌跡からは幽々子様の使う様な紫色の蝶が生成され、幻想的な鱗粉を散らしながら美しく舞い続ける。

しかし、侮ることなかれ。俺はそれを無数に従え、西行妖を見据えた。

 

「・・・頼む。皆」

 

西行妖を収めるには、核を壊さなければならない。

でも、核は霊力では壊せないのだ。

 

前の俺なら、一人では無理だった。

 

だが、桜ノ妖は”妖力”を秘めている。

だから核を壊せる。俺は、戦う事が出来る様に成った。

 

紫の蝶は優雅に舞い、襲い掛かって来る枝へと降り立つ。

すると次の瞬間、圧倒的なる妖力の波動を受けた枝は爆散した。

木片を周囲に撒き散らしつつ、それは蝶の数と同じだけ起こる。

 

リイイン…

 

俺は悠々とその中を歩きつつ、桜ノ妖に霊力を流し込んだ。

違う力同士の混合。それは暴走を引き起こす。

 

紫紺の輝きが急激に高まり、雷撃の様に力を周囲へと放ち始める。

しかしそれが俺の狙い。その状態のまま俺は桜ノ妖を腰ダメに構え、そしてしっかりと斬るべき個所を見据える。

それは真っすぐ。正中線に一本だ。

 

すう、と俺は息を軽く吸い。

 

 

 

そして、強い意志を持った蒼い瞳で、俺は桜ノ蕾を睨みつけた。

 

 

 

「満開[霊妖ノ桜]」

 

腰ダメの、居合いに近い状況から上へと振り抜かれた桜ノ妖は。

 

霊力と妖力の混じった斬撃を軌跡を宙に残し、そして呪いの桜を二つに切り裂いた!!




ラ「これで次回から天久戦・・・かな」
暁「・・・真は、また強くなるの?」
ラ「迷って居るでござるよ。まあ、塩と話し合う」
暁「塩?」
ラ「多分・・・俺の友達の人・・多分・・・」
暁「・・・」
ラ「まあ、出すとしたら新しいバーストかな」
暁「そう。・・・では、また明日。さよならです」
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