紅美鈴には秘密がある   作:テッソルムリア

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「だから私は愚者でいい」

side レミリア

 

少し遡り、咲夜が大図書館に向かっている頃

 

―――紅魔館 レミリアの私室―――

 

 

ゆるやかに流れていく午後の一時。

先ほど咲夜が淹れていった紅茶を一口。自然と息が漏れる。

紅魔館のメイド長の仕事は変わりなく、今日も完璧だ。

 

……だが、その心持まで完璧、とは言えない様子だったが。

咲夜は上手く隠しているつもりだったかもしれないが、何かに動揺しているのは感じ取れた。

これでも何百年と生きてきたのだからな。それくらいはわけなかった。

 

……まぁおそらく、ウチの母親が何かやらかしたのだろうな。

厨房でフランのためにお菓子を作っていたと咲夜は言っていたし、その時に何かあったのかもしれない。

……私には作ってくれないのだろうか。

 

それはともかく。

咲夜はそのまま下がらせたが、彼奴が素直に休むとも思えない。

―――お母様、がフランの部屋にいるなら、咲夜は恐らく大図書館に向かうだろう。

七曜の魔女に会うために。

 

 

コンコンコン

 

 

そこまで考えたときノックの音が部屋に響いた。

 

「入っていいわよ」

誰が来たのか見当がついていた私は、入室の許可を出す。

 

「失礼しますね」

 

そう言って入ってきたのは小悪魔だった。

彼女は私の側までススッと寄ってくると、ニッコリ笑顔を浮かべた。

 

 

「その様子を見るに、上手く事は運んだようだな」

「ええ、もちろんです。パチュリー様は()()()()八雲と結託いたしました。……若干強制でしたが」

「強制であろうとなかろうと構わん。結果あの三人が結びついたのならそれでいい」

「……そうでした。私としたことが」

 

そういってテヘッと笑う小悪魔。

表面上は可愛らしいが、こいつの本性を知っていればそんなことは言えん。

そのまま笑顔であざとい仕草を続けながら奴は言う。

 

「それにしても、レミリア様も悪いお方ですねぇ。まさかパチュリー様まで」

「悪魔だからな、当然だろう。必要なことなら手は抜かん」

「そうでしたそうでした……それに私も悪魔でしたね……フフフッ」

 

そういってさっきとは一変し本当に楽しそうな、それでいて底意地の悪そうな笑顔を浮かべる小悪魔。

 

……恐らく今の幻想郷での私に対する評価としては、『紅魔館の主の吸血鬼』が一般からのもの。

ある程度知っている人物ならそこに『でも少し子供っぽいお子様吸血鬼』が加わる。

……もちろんそれは紅魔館の住民も例外なく。

あのパチェでさえ、私のことをそう思っているだろう。

それでいい。

 

そのために今まで行動してきたし、お母様に対してもあれほど反発したのだから。

 

……賢者が動けば警戒される。

だが愚者が動いたところでどうこうする者はいない。

 

賢者の役割はパチェにやってもらおう。

その間にお子様吸血鬼が癇癪やワガママを言ったとしても、周りの反応は「いつものことか」で済むのだ。

その基盤……思い込みを作るために、『お子様吸血鬼』を数百年演じるのはなかなか骨が折れた。

 

私が本当に知りたいことは、賢者として目立ってしまっては辿りつけないものなのだ。

何しろ動きにくい。悪目立ちは避けたい所だ。

それに加え当時のことを知っているものは少なく、そもそも結界で分かたれた外での出来事。

幻想郷に手がかりがあるのかすら分からない。

本人に直接聞いたところで真実は得られないだろう。真実を知っているかも分からん。

 

唯一可能性のあるものとしては妖怪の賢者か。

だが彼奴に与するのは先ほど言った理由から諸刃の刃となりかねん。

何百年も待ったのに、そんなことで私の努力を崩されては敵わん。

しかし、得られるならその可能性も得たい。

だからその席はパチェに譲ったのだ。

 

「パチュリー様も不憫ですねぇ。親友と思っているお方に利用されて」

「何を言っている。私だってパチェのことは親友だと思っているぞ」

「あれ?そうなんですか。ならば何故その親友にあんな役目を?」

「親友だからこそ、だ」

「……なるほど。本当に信じられる者だから、ということですね」

「信じてなんかいないぞ?」

「えぇ……何なんですかホント」

「知っているだけだ」

「え?」

「私はパチュリー・ノーレッジという魔女を知っている。それだけだ」

「……信じてはあげないので?」

「信じる?なんだそれは?裏切られてもいいということか?私はそうはならん。だから信じん。知るだけだ」

「…………そうですね。確かにそうかも知れません」

 

「……さて、用件は済んだな?そうしたらこれが報酬だ。それを持って大図書館に戻るがいい」

「……確かに頂きました。それでは今後ともご贔屓に」

「ああ、よろしく頼む」

 

そうして小悪魔はまた、ニッコリと笑顔を浮かべるとスーッと溶けるように立ち去っていった。

 

 

 

部屋には静寂が戻り、一人の空間が広がる。

やはり小悪魔で正解だったな。

こちらもあちらもお互いの性質を理解している。

これが他の者だったら、ああまですんなりとはいかないだろう。

悪魔には悪魔、ということか。

 

 

とはいっても同じ悪魔とはいえ、フランを巻き込むわけには行くまい。

あの子はまだ経験が少なすぎる……いい意味でも悪い意味でも。

悪魔とは思えないほど無邪気に育ったフランなら、私や小悪魔とは違った道もあるだろう……

 

 

さて、恐らくこれからあの三人組は仕掛けてくるだろうな。

『ワガママなお子様吸血鬼』を納得させるために。

自分で言うのも何だが、私のワガママはなかなかだぞ?

果たしてあの三人はどう出てくるか……

なかなか楽しみじゃないか。

 

そんな考えに至り、私は一人クスクス笑いを漏らす。

早く仕掛けてこないだろうか。

そう思いながら手に取った紅茶には、意地の悪そうな悪魔が写っていた。

 

 

 

 

 




「レミリアのカリスマ性は表現したいな」

「でもそうすると(所謂)カリスマブレイクはどうしたものか…」

「周りを欺くための愚者の演技ってことにしよう」


といった感じになりました。




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