1
「川神ィ! なぜ女子大でファントム退治なんて美味しいイベントに俺を呼ばなかった!?」
「うっさい声デカい暑苦しい。アンタは熱出して寝込んでたでしょうが」
川神舞は『クラブ』の部室で、荒沢蛮の陽に焼けた顔をぐいっと押しのけた。
大怪我とそれに起因する発熱によって一週間ほど学校を休んでいた荒沢に、その間に近所の女子大の寮の一室でUFO型ファントムを退治したことを教えたところ、顔を寄せて舞に文句を言ってきたのだ。
眼や鼻の輪郭がはっきりとした濃い顔立ちが興奮した表情で迫って来るのは、かなり鬱陶しいものがあった。
「だって川神よぉ、女子大だぜ? 女子大生だぜ? お姉さまだぜ?」
舞に押し返された荒沢は、心底悔しそうな声で女子大女子大と繰り返している。
なにやら下衆な幻想を女子大生という存在に抱いているらしい。
男というのは、つくづく馬鹿な生き物だと舞は思った。
「アンタが期待するようなことはなかったわよ。私たちが行ったの、かなり変わった部屋だったし」
「変わった部屋? どんなだよ?」
「絨毯・壁紙・家具・小物すべてピンク一色。キングサイズのベッド。女二人の相部屋」
荒沢の質問に、舞は簡潔に答えた。
件の部屋は、思い出すだけでも目がチカチカするような強烈な部屋だった。
おそらく、というか十中八九、あの部屋は愛の巣だ。
住民である二人の女子大生が、どちらも垢抜けた美人だったのが生々しかった。
あの二人が同性愛者なのか両性愛者なのか、舞にはわからない。
どちらにしても完成した関係であろうから、荒沢が行ったところで期待しているようなこと、つまり年上の女性とのラブロマンスなんぞは起きようがない。
だから舞は『グチグチ言うな』という視線を荒沢に送ったのだが――
「百合じゃねぇか! 糞っ! ほんと何で呼んでくれなかったんだよ!」
荒沢は余計に悔しげな様子で悪態をついた。
舞には意味がわからなかった。
荒沢とはもう十年の付き合いになる。故に思考パターンはそれなりに把握しているつもりだが、それでも言動の理解に苦しむことが時々ある。
「アンタ、なにを期待してるわけ?」
「いや、マジもんの百合カップルの部屋とかすっげー気にならね? やっぱ双頭ディルドあるのかとか……」
「双頭って…… もうちょっと言葉を選びなさいよ、いやらしい。あんまり下品が過ぎると去勢するわよ?」
「やめろ、お前みたいな危険人物が去勢とか言うとシャレにならん」
「あぁん?」
「ちょ、痛っ! 脇腹はやめろ! 折れてるから、裂けてるから!」
舞に右脇腹をゴツゴツと小突かれ、荒沢が悲鳴をあげる。
一週間前に黒衣の女ファントムと交戦した際、剣で肉を斬り裂かれ、ブーツの爪先で思い切り蹴りつけられた場所なのだ。
「舞お姉さま、荒沢さんはお怪我をされているのですからそれくらいに……」
荒沢に暴行を加え続ける舞に対し、橫手からおずおずと制止の声があがった。
舞がリーダーを務めるチームEのメンバー、和泉玲奈だ。
目尻の下がった柔和な顔に、困ったような微笑みを浮かべていた。
その優しげな視線を受けた舞は、毒気を抜かれたような気分になり荒沢を解放した。
「サンキュー和泉、助かった」
「荒沢さんも女性に対する言葉遣いは気を付けるべきです。舞お姉さまと仲が良いのはわかりますが、親しき仲にも礼儀あり、ですよ?」
舞の暴行を止めてもらった荒沢は、玲奈に頭を下げる。
対する玲奈は、子供に言い聞かせるような口調で荒沢に注意をした。
「おう、検討するぜ」
そう言って荒沢は、近くにあった椅子に座った。
そこへ舞が言葉を投げかける。
「改善する気はないのね。ていうか、アンタなんで部室に残ってんのよ。依頼がない日は、いつもすぐ帰るのに」
そう言って怪訝な顔をする舞に対し、荒沢は胸をそびやかし尊大な態度で答えた。
「暇潰しだ。一週間も家に引きこもってたから独りに飽き飽きしてるんだよ。というわけで川神、俺の相手をしろ」
「えぇ…… まぁ今日は私たちも暇だからいいけど。で、なに? 世間話でもしたいの?」
そう言いながら、荒沢の近くの椅子に座る舞。その隣に玲奈も腰をおろした。
「そうだな、とりあえず一条の奴は何をしているんだ?」
荒沢が、教室の端に視線を向けながら尋ねた。
そこでは、チームEの最後の一人、一条晴彦がスケッチブックを前に一心不乱といった様子で鉛筆を走らせていた。
「ああ、ファントム召喚の能力を実戦で使えるようにしようと頑張ってるみたいよ」
「へぇ、それじゃ一条もこれから前に出て戦うのか?」
質問に対する舞の答えに、荒沢は関心したような声で言った。
晴彦は自らが描いた絵を媒介してファントムを封印したり召喚したりする能力を持っているのだ。
しかし召喚能力に関しては、これまで安定して運用することができていなかった。
そのため晴彦は、封印能力のみを実戦で使用していたのだ。
それを改善しようとしているらしい。
「封印だと、玲奈に勝てないからって」
「なるほどな」
舞の言葉に、荒沢は納得したという顔をした。
玲奈はファントムを丸呑みにして封印することができる、非常に珍しい特異能力者なのだ。
直接戦闘能力はともかく、弱ったファントムを封印するという意味においては、晴彦よりずっと優れた人材なのだ。
頷く荒沢に、舞が声のトーンを落としながら話を続ける。
「アイツ、アンタと水無瀬小糸さんが受けたファントム対策局からの依頼に勝手について行って、足を引っ張っちゃったんでしょ? 玲奈がってより、そっちの方が理由として大きいみたい」
「一条君もルルちゃんも、すごく落ち込んでいました」
舞の言葉に、玲奈も補足するように付け加えた。
それを聞いて荒沢は腕を組んで難しい顔をした。
「そうか。確かに水無瀬があいつを庇って怪我したりもしたが、あの状況を突破できたのはあいつのおかげなんだがな。気にするなと言ってやった方がいいんだろうか?」
「どうでしょうね……ま、私としては晴彦が戦力になりそうだから放っておいて欲しいんだけど」
「冷てぇな」
「信頼してるのよ」
「ものは言いようだな」
荒沢は苦笑した。
そこへ、今度は舞が質問をした。
「アンタはどうなのよ、その左手」
「ああ、これか」
舞に応じるように、荒沢は左手を持ち上げた。
小指から中指にかけて包帯が巻かれていた。
「腱が切れたって聞いたけど、治りそうなの?」
「ああ、リハビリを真面目にやれば、三ヶ月くらいで日常生活に不自由がないレベルまで回復するそうだ」
「そう、よかったわね」
「これでもし動かなくなってたら、親父達に申し訳がつかねぇとこだったよ」
そう言いながら、荒沢が大げさに肩をすくめた。
そこへ玲奈が疑問符を投げかける。
「お父様、ですか?」
「おう。俺の親父はプロレスラーやってたんだよ。その影響で、俺はチビだった頃からプロレスラー目指しててさ。無理言って団体の道場で鍛えてもらったりもしてたんだ。それをダメにするのはいけないだろ?」
玲奈の質問にそう答えた荒沢は、さらに胸を張って、
「この体は、親父や、親父の後輩のレスラー達から貰ったようなもんだからよ」
と、付け加えた。
「良いお父様なんですね。少し羨ましいです」
「ああ、まあな……」
「はいはい、その話はそのへんにして」
強引に話題を変えるかのように、舞が荒沢の言葉を遮った。
そのまま言葉を続ける舞。
「荒沢、アンタいつぐらいから復帰できるの?」
「ん? 学校に依頼が来るようなファントムなら既に問題ないぞ。今週末には傷口を縫ってる糸も抜いちまうし」
「あら、案外早く治るのね。アンタが特別なだけ?」
「刃物で綺麗に斬られた傷だからな。こんなもんだろ」
「そう。後遺症が残る怪我じゃなくて本当によかったわね」
「なんだ、心配してくれてたのかよ」
「そりゃ、一応ね。アンタが頑張って体を鍛えてるの、小等部の頃から見てるわけだし」
「おいおい、よせよ。なんか恥ずかしい」
「なに照れてるのよ、気持ち悪いわね」
「気持ち悪いって、キッツいなおい。そんなだから友達が少ねぇんだよ」
「あぁん?」
「痛っ! だから脇はやめろって」
じゃれあう荒沢と舞に、玲奈が微笑みながら言葉をかけた。
「舞お姉さまと荒沢さんは、本当に仲が良いんですね。羨ましいです」
「腐れ縁で付き合いが長いだけよ。別に仲が良いわけじゃないわ」
「そうだそうだ。俺だって、本当は川神なんぞより和泉と仲良くしたいんだぜ?」
「ふふ、ありがとうございます」
肩をすくめる舞と、おべっかを使う荒沢に対し、玲奈はくすくすと笑う。
そして、何かを思いついたような表情を見せた後、荒沢に質問をした。
「荒沢さんは小等部の頃から舞お姉さまとお友達だったんですよね?」
「ああ、そうだぞ」
「舞お姉さまは、やっぱりその頃から愛くるしい女の子だったんですか?」
「うーん、どうだったかな? あんまり覚えてないけど、よく泣いてた気がするぞ」
舞の過去を尋ねられた荒沢は、そう答えた。
そこへ舞が付け加えるように言う。
「嘘だって言われそうだけど、私も昔は大人しくて内気な子だったのよ」
「私は信じます! きっと儚くも可愛らしい女の子だったんでしょうね……」
「あはは……」
幼き日の自分を想像して、うっとりとした表情を見せる玲奈に、舞は苦笑した。
そこへ荒沢がからかうような口調で言葉を投げる。
「和泉の川神好きも大概だなぁ。そこはちょっと悪趣味なんじゃねーの?」
「そんなことありません! 舞お姉さまのような凛々しく美しい方をお慕いするのは自然なことです!」
荒沢の言葉を挑発と受け取ったのか、玲奈は力強い声で舞を讃えた。
そこへ舞が、顔を赤くしながらおずおずと口を挟んだ。
「玲奈、あの、ちょっと恥ずかしい……」
「え? あぁっ! 私ったらつい!」
こんな二人を前に、荒沢はケラケラと笑う。
そこへ、ムッとした顔で舞が言った。
「そういえば、アンタも昔は泣き虫だったわよね?」
「俺が? そんなことなかったろ?」
「覚えてないの? ブルー・ジャスティスが負けた時、ワンワン泣いてたじゃないアンタ」
「ああ……ありゃ泣いても仕方ないだろ」
舞の言葉に、憮然とした表情になる荒沢。
そこへ玲奈が尋ねた。
「あの、なんの話ですか? ブルー・ジャスティス?」
「あー、昔、総合格闘技の試合でさ、日本プロレス界最強って言われてたチャンピオンが、サンビストに一分でぐちゃぐちゃにされて負けたことがあったんだよ。
あんときゃ悲しくて悲しくて三日三晩泣き続けたぜ俺は」
そう言うと、荒沢はため息をついた。
殴る蹴る投げる極める締める――総合格闘技のルールは、プロレスの技術に関して、リングのコーナーポストやロープを利用するもの以外は、ほぼ全て容認している。
そのルール下で、プロレスのチャンピオンがサンビストに負けたということは、格闘システムとしてプロレスがサンボに負けたということである。
幼き日の荒沢は、それが悲しくて泣いていたという話らしい。
「まぁ、ガキだったからなぁ」
黄昏た表情で呟く荒沢。
その直後、ハッとしたような表情で舞に顔を向けた。
「待てよ川神。そういう話なら、お前もセミーが勝つたびにガチギレしてたじゃねぇか」
「……嫌なこと思い出させないでよ」
荒沢に問い詰められた舞が、心底嫌そうな顔をした。
「セミー……?」
「おう和泉、ちゃんと説明してやるからな」
「あ、はい、お願いします」
2
舞が苦虫を噛み潰したような顔で静観する前で、荒沢は妙に真面目な表情で玲奈に語り始めた。
「よし、まずは川神がやってる中国拳法について説明しなきゃな。
和泉、南船北馬って言葉を知ってるか?」
「はい。国中を移動し続けるといった意味ですよね。
もとは中国の言葉で、南船というのは川が多い大陸南部を船で移動することを、北馬というのは大陸北部の平原を馬で旅することを表しているんだとか」
「おお、賢いな、百点。でだ、この南は船で北は馬という考え方、中国拳法の性質にも当てはまるんだ。
具体的に言うと、どのような環境で使用されることを想定して作られた技術体系かってことだな」
「船の上や馬の上で戦うための拳法があるってことですか?」
「ま、それに近いな。中国拳法ってのは数え切れないほどの流派があるんだが、地域ごとの技術傾向として、南の方は船上みたいな狭い空間での戦いを想定しているかのような技が多く、北の方は馬が駆けられるような広い平地を前提とした戦い方である場合が多いんだ」
「中国拳法の各流派は、住んでいる土地に合わせて発達したということですね」
「そういうことだ。まぁ、本当にざっくりとした傾向だから、例外はいくらでもあるんだがな。
じゃあ、それぞれの特徴を説明するぞ。まず南船、狭い空間も想定してる方からな。
狭い場所で戦うってことは、意図せず相手と近接状態になったり、周りを壁に囲まれてたりする可能性があるわけだろ?
そういう状況に対応するため、南の方の拳法は立ち止まった状態での手打ちや、相手を掴んで投げたり関節を極めたりする技術が発達してるんだ。
ちなみに空手の元になったのはこの系統の拳法だと言われている」
「そうなんですか……あれ? 空手ってキックやパンチだけで戦う武道ですよね?」
「ああ、今はな。けど昔の空手って、かなりなんでもありの武道だったんだぜ。
だけど、その方向性で進化した結果、相手を投げ転がして頭を踏み潰すっていうヤバい戦法が流行りだしたんだ。
それは流石にマズいということになって、安全性確保のため今みたいなルールに変わっていったのさ」
「へぇ、そういう歴史があったんですね」
「おう。安全性のために過激だったルールが変わっていったのは柔道と似てるな。
……っと脱線したな。次は北馬、広い空間で戦うための拳法について説明するぞ」
「はい」
「といっても、こっちはシンプルだがな。昔の中国じゃ、間合い取りの自由度が高い開放空間で戦う場合、より遠くから攻撃できる方が有利と考えられていたんだ。
結果、北部の平原では踏み込みからの打撃技術が発達したんだ。武器に例えると、剣よりも槍、槍よりも弓の方が偉いって感じだな。とにかく、間合いが広ければ偉いと」
「すごくシンプルな考え方ですね」
「大昔の格闘技はどれもそんなもんさ。ちなみに川神がやってるのはこの系統の拳法だ。あいつ、いつも殴る蹴るばっかだろ?」
「はい、力強いお姿を何度も見せてもらいました!」
「うん、よかったな。で、何が言いたいかというと、昔の川神は打撃オタクの中国拳法信者だったという話だ。
しかしそこへ、セミー君が彗星のごとく現れた」
「どんな人なのですか? そのセミーさんという方は」
「世界中で活躍してたオランダ人の空手家だ。身長二メートル十二センチ、体重百三十六キロ」
「大きいですねぇ」
「そう、大きいんだ。この大きさを武器に、セミー君はありとあらゆる打撃系格闘技の猛者に、勝って勝って勝ちまくったんだ」
「そんなに強かったんですか?」
「おう、鬼のように強かったぞ。だが、その強さのあり方が川神は気に入らなかったんだ」
「というと……?」
「さっきも言ったけど、セミー君は体の大きさを武器にしていた。その長い腕で相手の間合いの外からジャブを打ちまくるだけで戦いの主導権を握ることができたんだ。
まるで、どんな技術を修得することよりも、大きな体を持って産まれる方が重要だといわんばかりのファイトスタイルさ。それが、川神は大嫌いだったんだ」
「それは……舞お姉さまが怒るのも自然なことだと思います。中国拳法を否定されたようなものですし。
それに、体格差で勝つって、なんだか狡いです」
荒沢の説明を受けて、玲奈はぷぅと頬を膨らませながら言った。
そこへ、それまで黙って二人の会話を聞いていた舞が、苦笑しながら口を挟んだ。
「別に狡くないわよ。ルールの中で、自分の持ってるもの全てを相手にぶつける。それが、格闘技の試合なんだから。
体が大きい格闘家がそれを利用して戦うのは当然のことよ。まぁ、小さかった頃の私は狡いと怒ってたんだけどね」
そう言って、少し遠くを見るような目をした後、付け加えた。
「この事だけじゃなく、根本的にわかってなかったのよね。私も荒沢も、子供だったから」
「わかっていなかった……?」
舞の言葉に首をかしげる玲奈に、荒沢が答えた。
「ぶっちゃけて言ってしまえば、プロレスも中国拳法も、本当の意味で格闘技ではなかったってことだ」
「え……?」
驚きの表情を見せる玲奈に対して、荒沢は言葉を続ける。
「和泉、お前、プロレスの試合を観たことあるか? というかプロレスのルールとか知ってるか?」
「いえ……」
「だよなぁ。最後にプロレスの地上波放送やったの、五年以上も前だもんなぁ……」
プロレスについて全く知らないという玲奈の返答に、荒沢が顔を曇らせた。
そして数拍の間の後、気を取り直して説明を再開する。
「あー、基本的にプロレスってのは、あらかじめ定められた筋書きに沿って戦いを見せる、一種のショーなんだよ。
そのための技術には、もちろん格闘技的な要素も多く含まれてるんだが、やっぱり人と人とがリングで向き合って本気の試合を行うためのものじゃないんだ」
荒沢は、はっきりとそう言った。
そこへ、舞が補足するように言葉を続けた。
「中国拳法も同じね。試合を想定した中国拳法なんて、今はもうないわ。
古くから伝わる套路……型を伝える流派があるだけよ。ほとんど民踊みたいなものね。格闘技としては化石というか、幽霊みたいなものよ
まぁ、中国拳法を競技化した散打っていうスポーツもありはするんだけど、中身が近代格闘技と同じになってアイデンティティが消えちゃってるわ」
少し寂しそうな表情で、舞はそう言い切った。
「どういうルールの下でやるにしろ、人と人とが素手で試合をするためのシステムとして、プロレスも中国拳法も優れたものじゃないってことだ」
「でも舞お姉さまは、中国拳法でたくさんのファントムを封印していますよ?」
「それは相手が格闘技なんて知らないファントムだからだ。プロレスや中国拳法が劣るのは、今も進化し続けている近代格闘技と比べてのことだからな。格闘家のファントムとか出てきたらヤバイんじゃないか?」
「そんな……」
荒沢の言葉に、玲奈が不安げな顔をする。
もし荒沢の言う、舞の天敵となるようなファントムが現れたら――そんなことを考えてしまったのだ。
そんな玲奈に、舞が笑いかける。
「心配しなくても大丈夫よ。私も荒沢も、ファントムとの戦いを通して自分たちの技を改良しているんだから。
私たちの技術は、古かったり、見栄えがよかったりするだけじゃなく、実戦的よ?」
そう言いながら、舞はウインクをした。
「はい!」
舞の自信に満ちた表情を見て、玲奈は顔を綻ばせた。
今回の話は格闘技がテーマです。
次回はムエタイとブラジリアン柔術が登場します。