幻想世界をバック・ドロップ!   作:セミドレス

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第九話 荒神 Ⅲ

 

 1

 

 書籍がギッシリと詰まった背の高い書架が、ずらりと四方を囲んでいる。

 並んでいる本の種類は雑多だ。

 小説もあれば図鑑や専門書もあり、自動車や工具のカタログまである。

 しかし、それらはジャンルごとに整理されている様子はない。歴史書の隣に、オートバイのメンテナンスガイドが置いてあったりする。

 混沌とした本の城――五桁の数の書籍が保管される、書庫のような部屋だ。

 荒沢蛮は、その部屋の真ん中で、床に直接正座をしていた。

 その野生的な顔に、真剣な表情を浮かべている。

 何か大きな決断をしようとしているらしく、双眸に硬い光を宿らせていた。

 そんな荒沢の顔の正面、一・五メートルほど離れた位置に、小さな影が浮遊していた。

 全高およそ二十センチの、人形かなにかのようにも見える、女性型の影である。

 水着のように露出度の高い服装から、褐色の肌が覗いていた。

 青みがかった銀色の長い髪が、丁寧に編まれた状態で背中に流れている。

 妖精型ファントムのルルが、腕を組んで宙に浮かんでいるのだ。

 ルルもまた、真剣な眼差しを荒沢に向けている。

 無言で見つめ合う二人は、何かを思い詰めた様子だ。

 緊張した空気のせいで、静かなはずの呼吸音が、やけに大きく聞こえた。

 十秒、二十秒と、重い空気の中、時計の針は進んでいく。

 そのまま三十秒が過ぎようとした時、荒沢がのっそりと動いた。

 その大きな手を上着のポケットに挿し込み、何かを取り出す。

 ごとりと音を立てて、取り出したそれを、自分とルルとのちょうど中間に置いた。

 

「防水機能の付いた、タフネス・スマートフォンです」

「…………」

 

 荒沢が、静かに口を開いた。

 しかし、ルルは何も応えない。腕を組んだまま、微かな動きすらみせない。

 そのまま、再び沈黙が訪れた。

 しかし、この沈黙は先ほどのように長くは続かなかった。

 十秒も経たないうちに、荒沢が再び動いた。

 どん、と勢いよく頭を下げたのだ。

 そのまま額を床にこすりつけながら、荒沢は叫んだ。

 

「リスクを承知の上でお願いします。これで……これでシャワーを浴びている川神の裸を撮影してきてください!」

「もっちろんオッケーだよぉ!」

「あざっす! さっすがルルさん! よっ、日本一!」

「えへへ、このまま世界一目指しちゃうよ〜?」

 

 破顔し、明るい声でくだらないやりとりを交わす二人。

 先ほどまでの重い空気は茶番であったらしい。

 そこへ、呆れと困惑が混じった声が投げかけられた。

 

「やめてください。怒った舞先輩が暴れて、この家が壊されたらどうするんですか」

 

 部屋の入口に一条晴彦が立っていた。

 その美麗な顔に、困ったような表情が浮かんでいる。

 

「晴彦は心配性だなぁ〜。もうすぐ五月だよ? 外で寝ても死にやしないって」

「安心しろ、お前が受ける被害は川神のエロ画像という形で補償してやる」

「春でも夜は冷えるし、家と画像じゃさすがに割が合いませんって」

 

 苦笑しながら、荒沢とルルの傍らに歩み寄る晴彦。

 その手には、三つのグラスが載せられた盆が握られていた。

 グラスの中身は氷で冷やされた紅茶だ。

 

「ありがとよ、一条。しっかし、聞いてはいたが凄い量の本だな」

 

 立ち上がり、晴彦からアイスティーを受け取った荒沢が、関心した様子で言った。

 この書庫とも個人図書館ともつかない空間は、晴彦の家の居間である。

 川神舞と柔術ファントムとの戦いを止めた荒沢は、和泉玲奈を家まで送った後、舞と共に晴彦の家を訪れたのだ。

 服や顔を、返り血でベッタリと汚してしまった舞の身だしなみを整えるためである。

 舞は今、血を洗い流すためにシャワーを浴びている。

 荒沢は舞が戻ってきたら、柔術ファントムと、その相棒のムエタイファントムについて詳しく話を聞かせてもらうつもりだった。

 

「失礼するぜ」

 

 そう言いながら、荒沢は部屋の中央から少し外れた位置にあたL字型のソファーに腰をおろした。

 百キロを優に超える体重に、クッションの効いた座面が深く沈んだ。

 再び周囲の本に目を走らせ始める荒沢。

 その耳元に、ルルがふよふよと近づいてきた。

 そして、小さな、しかし周囲にもしっかりと聞こえるような、絶妙な声量でささやく。

 

「すごいでしょ、これが晴彦の残念知識の源なんだよ〜」

「残念知識言うな!」

 

 ルルの言葉に対し、晴彦が顔を赤くしながらチョップを振り下ろす。

 それをひらりと避けたルルは、荒沢に告げ口をするような口調で言葉を続ける。

 

「聞いてよ蛮。晴彦ね、このあいだ玲奈ちゃんに下着の歴史を語ったら、残念知識って言われちゃったの。それで、すっごく気にしてるんだよ!」

「ぐぬぬ……」

 

 悔しそうに唸る晴彦。

 荒沢は、なだめるように語りかける。

 

「まぁまぁ、落ち着け一条。お前の知識は残念なんかじゃないぞ? ただそれを披露するタイミングが残念なだけだ」

「それって、あんまりフォローになってませんよね?」

「まぁ、お前がちょいと残念なのは事実だから仕方ない。残念なイケメン乙」

「はぁ……」

 

 荒沢の励ましたいのか貶したいのかハッキリしない言葉に、晴彦はもの憂げなため息をついた。

 そして、落ち込んだ気分を振り払うように、強引に話題を変えた。

 

「舞先輩は明日、ムエタイファントムに勝てますかね?」

 

 荒沢の表情を伺いながら、晴彦はそう尋ねた。

 舞は明日の夕方、ムエタイファントムと戦うことになっているのだ。

 

「そうだな、ムエタイ姉ちゃんの身体能力が柔術の方と同程度なら、普通に考えりゃ川神が勝つんだが……」

 

 荒沢は、少し難しい顔で答えた。

 舞は柔術ファントムに対して、身体能力で押し切る形で勝利を収めている。

 『気』の力によって強化された舞の筋力は、柔術ファントムのそれを一段上回っていた。

 おそらくムエタイファントムが相手でも、単純なパワーなら勝っているだろう。

 さらに、身長百六十センチ程度のムエタイファントムに対して、舞の上背は百六十七センチ。

 五センチ以上の身長差がある。

 舞もムエタイファントムも打撃を得意としている事を考えれば、この差は非常に大きい。

 立った状態でキックやパンチを打ち合う場合、遠くから攻撃できる側が戦いの主導権を握ることになるからだ。

 明らかになっている要素からは、舞の方が有利であるように思える。

 

「だがムエタイってのがどうもなぁ」

 

 荒沢はそうぼやいた。

 それに晴彦は首をかしげた。

 

「ムエタイってことが、そんなに気になるんですか?」

「まあな。ムエタイの技術がってより、あのファントムがタイに渡って修行してたらヤバいかもしれんと思ってな」

「どういうことですか?」

「タイの中じゃムエタイって競技は、かなり特殊な立ち位置なんだ。世界中のどの格闘技とも違う扱いを受けてる」

「扱い、ですか?」

「ああ。興行形態が珍しいタイプでな。本で読んだことはないか?」

「いえ、俺もムエタイに関しては技術的な入門書くらいしか読んだことがないです」

「そうか……」

 

 荒沢は、いったん言葉を途切れさせた。

 そして、それまで立った状態で会話していた晴彦に、座るよう視線を送った。

 それを受け、ソファーに腰掛ける晴彦。

 荒沢はグラスを口もとに運び、冷えた紅茶を一口飲み込んだ。

 そして、タイにおけるムエタイについて、ゆっくりと語り始めた。

 

 2

 

 ムエタイと他の格闘技とを分ける最大の要素は何か。

 首相撲に代表される攻撃的な技術か。

 四百年以上の歴史を誇る伝統か。

 ミドル級よりも上の階級が存在しない偏った体重制限か。

 どれも違う。

 ムエタイをムエタイたらしめている最大の要素。

 それは『賭博』である。

 首都バンコクにある『ルンピーニ』『ラチャダムヌン』の二大スタジアムを始め、百以上のムエタイ競技場がタイにはある。

 国中で、毎日ムエタイの試合が行われているのだ。

 そして、その全ての試合が、賭博の対象となっている。

 タイでムエタイの試合を見るということは、金を賭けて博打をするということなのである。

 もちろん、ボクシングを初めとして、賭博の対象となっている格闘技は世界中にある。

 しかし、ムエタイの場合、その度合いが他とは一線を画している。

 金の賭けられない試合は、まず行われないのだ。

 十歳そこそこの子供の試合にすら、金が賭けられる。

 そして、賭博に絡む試合をするということは、ファイトマネーが発生するということである。

 つまり、タイにはアマチュアのムエタイ選手が存在しないのだ。

 楽しむためのスポーツとして、あるいは自己研鑽のための武道としてムエタイをやる人間はいない。

 金を稼ぐためにやる。

 そういう競技であり、格闘技なのだ。

 さらに言えば、ムエタイは、タイの貧困層の人間が犯罪に手を染めることなく成り上がる唯一の方法でもある。

 貧しい家に生まれた子供は、五歳か六歳くらいからムエタイのジムに預けられる。

 日本なら小学校に通い始めるかどうかといった年齢の子供が、砂の詰まった麻袋を蹴って、血を流しながら脛を鍛えるのだ。

 そして、ジムの中での競争で勝ち残った子供が、十歳になるかならないかといった時期から試合を組まれるようになり、ファイトマネーを手にする。

 貧富の差から発生した異様な社会システムが、タイにおけるムエタイ興行を取り巻いているのだ。

 そこには、強烈な餓えがある。

 強くなって、金持ちになってやる――

 苛烈な目的意識を、タイのムエタイ選手達は胸に抱いているのだ。

 そのような人間が、万単位でタイには存在する。

 タイにおけるムエタイの競技人口は、多く見積もれば十万人とも言われているのだ。

 もっとも、この十万という数字は、格闘技の競技人口として特別に多いということはない。

 例えば、日本における柔道の競技人口は七十万人弱とされている。

 ムエタイの競技人口を最大限多く積もったとしても、柔道の競技人口の六分の一にも満たないのだ。

 しかし、日本にいる七十万の柔道競技者のほとんどは、アマチュアだ。

 柔道の選手として生きていこうと考えている人間など、滅多にいない。

 百人に一人もいるかどうかだ。

 ムエタイは違う。

 タイの貧困層の人間は、最初から食い扶持を稼ぐためにムエタイをやるのだ。

 貧しさに追われて、あるいはギラついた金銭欲に突き動かされて、必死に体を鍛え、技を磨く。

 それが、十万人――

 正に、現世に顕現した修羅道である。

 

 3

 

「そういう環境であのムエタイ姉ちゃんが鍛えてたらよ、川神でもちょっと危ないんじゃね? フィジカルの差を覆す総合力を身につけてるかもしれねぇ」 

 

 タイのムエタイ事情を語り終えた荒沢が、肩をすくめながら言った。

 話の内容が内容だっただけに、晴彦はやや硬い表情になっていた。

 ルルは途中で飽きてしまったのか、テーブルの上で船を漕いでいる。

 しばしの沈黙の後、晴彦がおずおずと口を開いた。

 

「あのファントムがわざわざタイに行ってムエタイを習ってきたというのは、考えにくい事じゃないですか?」

「いや、それがそうでもないんだ。一条、柔術の方の姉ちゃんが着てた()、覚えてるか?」

「はい。肩のところにロゴが入った青い柔道着ですよね」

「おう。あれな、ブラジルとアメリカにしか支部を持ってない柔術ジムの衣だぜ」

「それって……」

「ああ。多分あの姉ちゃん、海を渡って柔術習いに行ってるぜ。まぁ最近はネット通販で海外の商品を取り寄せることもできなくはないがよ、それにしたって関税が関わってくる個人輸入だ。ファントムにできるとは思えねえ」

「じゃあ、ムエタイファントムも……」

「本場でガッツリ鍛えてきてる可能性はあると思うぜ。少なくとも、あの膝蹴りと首相撲は付け焼き刃じゃなかったしな」

「…………」

 

 ムエタイファントムが柔術ファントム以上の強敵である可能性を示唆され、晴彦は表情を強張らせた。

 

「それなら、俺も……」

「ごめん、待たせたわね」

 

 晴彦が真剣な顔で何かを言おうとしたとき、シャワーを浴び終えた舞が、ガチャリとドアを開けて居間に入ってきた。

 

「ありがとうね晴彦、着替えまで用意してくれて」

 

 そう言いながら、舞は晴彦の隣に腰をおろした。

 常はポニーテールに結いあげているブロンドの髪を、シャワーを浴びた後だからか下ろしている。

 舞が着ているのは、今は家にいないらしい晴彦の母親の服だった。

 品の良いデザインの、白いワンピースだ。

 髪型と併せて、舞の雰囲気を普段より柔らかく感じさせていた。

 

「あの、舞先輩……」

 

 晴彦が舞に対して、真剣な声で話しかけた。

 

「明日は、蛮先輩と一緒に戦ってはどうですか?」

「どうしたのよ、突然?」

 

 晴彦の言葉に、怪訝な表情を見せる舞。

 そこへ、荒沢が口を挟んだ。

 

「あのムエタイの姉ちゃんが手強そうだって話をしてたんだよ。そうだな、報酬の二割を俺の取り分にしてくれるなら雇われてもいいぜ」

「いやよ。なんで私の大切な食費を、アンタなんかに譲らなきゃいけないのよ」

「ケチくせぇなぁ」

「アンタと違って苦労してるのよこっちは」

 

 舞が荒沢に、やや刺のある物言いとともに憮然とした態度を取った。

 そこへ、今度は晴彦が言葉を投げかける。

 

「舞先輩。報酬が問題なら、俺が一緒に戦います」

「え? アンタが?」

 

 驚きながら、舞は晴彦に視線を向けた。

 晴彦は直接戦闘型の特異能力者ではない。

 その上、女子高生の平均を超えているかも怪しい脆弱な体力の持ち主だ。

 とてもじゃないが、あのムエタイファントムの前に立てる人間だとは思えない。

 そういった思考を走らせる舞に、晴彦は意気込みのこもった顔で頷いた。

 

「使い魔ファントムの召喚が、そろそろ実戦で使えそうなレベルになってきましたから」

 

 そう言って、傍らに置いてあった鞄の中から、スケッチブックを取り出す晴彦。

 スケッチブックを開くと、そこには既に、一枚の絵が完成していた。

 鉛筆の力強いタッチで描かれた、翼を持つ猛々しい狼の絵だ。

 晴彦は立ち上がると、朗々とパロールを唱え始めた。

 

「前いまし今いまし先います主の戒めあれ。ザザース、ザザース、ナスザザース」

 

 舞と荒沢は、固唾をのんで晴彦を見守っている。

 二人とも、晴彦のファントム召喚を直に見るのは初めてのことだった。

 

「罪生の魔性を回生せよ。イヴォーク、マルコシアス!」

 

 晴彦がパロールを唱え終えるのと同時に、スケッチブックから巨大な炎が吹き出した。

 空中で荒れ狂っていた炎が、次第に何か特定の形に収束していく。

 そして――

 

「ワン!」

 

 炎がはじけ、一頭の犬が現れた。

 艶のある毛並みに覆われた、柴犬くらいの大きさの犬だ。

 毛の色は背中側が黒、腹や胸、顔は白だ。

 つぶらな瞳には、好奇心の強そうな光を湛えている。

 どこにでもいそうな顔立ちの犬だが、その背中から生える一対の白い翼が、ただの犬ではなくファントムであることを主張している。

 

「かわいいな」

「かわいいわね」

 

 荒沢と舞が、現れた犬を見つめながら言った。

 微妙な表情だった。

 体重が十キロあるかないか程度の大きさしか持たないファントム犬が、強い存在に見えないからだ。

 しかし晴彦は、そんな二人を気にした様子もない。

 ファントム犬を抱き上げながら淡々と説明を始めた。

 

「俺の使い魔ファントム、マルコシアスです。体は小さいですが、動きは素早いですし、鋭い牙も持っています」

 

 晴彦の説明にあわせるように、ファントム犬――マルコシアスが口を開いた。

 確かに、そこには鋭い牙があった。

 猛禽類の爪のように湾曲した、鋭い犬歯が伸びている。

 普通の犬のものより、一回りか二回り大きいようにも見えた。

 

「正面からあのファントムと戦うのは難しいかもしれませんが、不意を突いて足首にでも噛みつかせれば――」

「はいはい、ストップ」

 

 不意打ちを提案し始めた晴彦を、舞が遮った。

 

「アンタねぇ、男のくせに、なに姑息なこと考えてんのよ」

 

 晴彦に非難の眼差しを向ける舞。

 その肩に荒沢が手を乗せながら、諫めるように言葉をかけた。

 

「おいおい川神、そりゃねえだろ。一条はおまえのことを心配してるんだぜ? だいたいおまえ、ついさっき血まみれで締め落とされそうになったばかだろ。そりゃ、一条たちも不安になるさ。そういう気持ちからくる提案を無碍にするのは良くないぜ」

「……そうね。ごめんなさい、晴彦」

「いえ」

 

 舞は晴彦に頭を下げてから、再び言葉を続けた。

 

「でも、やっぱりあのファントムとは私が一人で戦うわ。合理的な考えじゃないけど、そうしなきゃいけないっていうか、そうするのが一つのルールだと思うのよ」

「……そうですか」

 

 舞の決断に、落ち込んだ表情を見せる晴彦。

 さらに舞は、少し言いにくそうに言葉を重ねる。

 

「明日、アンタと玲奈は家で休んでなさい。殴る蹴るの戦いなんて、アンタたちにとっちゃ見てて気持ちの良いもんじゃないでしょ。正直、私も見られるのはちょっと恥ずかしいわ」

「え、でも……」

「大丈夫よ、危なくなった時のために、荒沢を連れていくから」

「え、俺?」

 

 急に同行を要求され、荒沢がやや戸惑った声をあげた。

 

「なに? 文句あんの? どうせアンタ、ジムに行く以外に週末の予定ないんでしょ。いいじゃない、あの二人はアンタにも関係あるみたいだし」

「まぁ構わんが…… 俺もあの柔術の姉ちゃんには興味あるからな」

「なによそれ、いやらしい」

「いや、そういう興味じゃねえよ。柔術の寝技への興味だよ」

「やっぱりいやらしいじゃない。まぁ、いいわ。晴彦、コイツがいればアンタたちも心配ないでしょ?」

 

 荒沢と軽い遣り取りをした後、舞は晴彦の顔を覗き込んだ。

 晴彦は短い思案の後、

 

「……はい。蛮先輩、舞先輩をお願いしまう」

 

 と、荒沢に頭を下げた。

 

「おう。ま、なんだかんだ、こいつなら心配ないと思うがな」

 

 荒沢は気楽そうな言葉を口にしながら、それでも真面目な顔で晴彦に応えたのだった。

 




 今回の投稿でこの話は終わらせるつもりだったのですが、伸びてしまいました。
 格闘技の話は次回で決着すると思います。
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