白神レンが目を覚ますと不思議な空間を落ちていた。周りには機械がたくさんあるのにどこか幻想的でどこか非科学的な感じがする空間だ。一体どこに落ちているのか、この風景は何なのか、レンには何にも分からなかった。
(レン。目覚めた?)
(あれ?神様?)
聞えてきたのは先ほど色んなことがあった少女の姿をした神様の声だった。でも姿は見えない。どうやらテレパシーの様なものらしい。
(あなたにはこれからとある魔術の禁書目録の世界に行ってもらうの)
(ああ・・・・・・聞いたことあるな)
レンは友人からそういう知識を教えられて、あまり深くは知らないが一応知識は持っていた。
(それじゃ君の力について話すよ)
(そうか、頼む)
こんな会話の間でもレンはずっと落ちている。だがいくら落ちても地上には辿り着かない。どうやら神様が操作しているらしい。
(まずは君の能力、それは科学でも魔術でもない正真証明神様の加護を受けて、身体的の強化をされてるの)
(身体的強化?)
(そう。まず人間を超越した力、そして圧倒的耐久力、最後に人間離れした自己再生ね)
(えっと・・・・・・・・・・・・能力は?)
今から行くのは科学によって作られた超能力と魔術が飛び交うバトルがある、そんな話だ。レンが神様から聞いたのはそのどちらでもない上に神様の力を振えるものでもなかった。
(ないよ?君は人間離れな無能力者だから)
(えぇ!?なんか損した気分が・・・・・・・・・・・・)
まぁ、能力がある世界に行くのだから能力は欲しいと誰でも思うだろう。
(なら、1つだけアイテムをあげよう)
(どんなの?)
神様はフフッと笑った。どうやら教えてくれないらしい。レンは、はぁとため息を吐いて諦めた。
(それじゃ、ここから始まるよ。頑張って私を楽しませてね)
神様がそう言った瞬間、レンの落ちる速度は急激に上がった。
そうして世界に落ちた。
*
白神レンは父、母、妹の何の変哲もない普通の4人家族の長男として生まれた。けれど、レン自身は少し変わっていた。生まれたころから普通の人とは違うもの、例えば霊、人ならざるもの、誰もがその存在を不確かにしている存在を見ることが出来たのだ。それが原因でレンは時に不可解な行動をとり、友人がいない上に苛められていた。
それを気にしたレンの両親はそう言った迷信をまったく信じない科学の街、学園都市にレンを入れることにした。
だがレンは頑丈な上に怪我とかがすぐに治るので苛められていることなど気にしてなかったのであまり乗り気ではなかった。 だけど両親は手続きを終了させて行くことが決定してしまったので人とは違う友人にお別れを言うために公園へ訪れた。
『どうしたんだい、レン?』
「実は学園都市っていう遠い所に行くことになって、もう会えないかもしれないんだ」
2人(実際には1人と1体だが)はブランコに乗って揺れながら、それぞれ空と地面を見ている。そもそもレンが話している相手は誰なのか、それはレンにもはっきりとは分かっていない。分かっているのはレンより少し大きい少女であることと、ブランコ周辺にしか現れない自身を"ブランコの神様"と言っていることだ。
『そうか・・・・・・ならレンのはこれをあげるよ』
そう言って"ブランコの神様"が取り出したのは、木刀だった。
「へ?なんで木刀?」
それは当たり前な疑問だった。
『私はあの街を少し知っている。あの街は危険だ。だから実用的なお守りだよ』
"ブランコの神様"曰く、この木刀は神様の力を宿した神木という物から作られた特別な物らしい。レンはそれを半信半疑で聞いていた。
「でも木刀って・・・・・・折れたらどうするの?」
『大丈夫、それは神様の力を宿している。超能力と言っても所詮人間が作り出した物、そんなもんじゃこの木刀は破壊どころか傷1つ付けれないよ』
レンは木刀を両手で持ち、それを眺めた。見た目はどこにでもある普通の木刀、はたしてこれが本当に無敵なのだろうか、レンはそれを証明するために木刀をちゃんと持ち、ブランコの前にある柵を
「ふん!」
思いっきり殴った。すると柵は見事にくの字に曲がった。
『おぉ、馬鹿力だね~』
「え?あ、あぁ、これは昔からなんだ」
レンはそう言いながら2、3回木刀を振り回した。どうやらものにしたらしい。"ブランコの神様"はそれを見ながら立ち上がった。
『でも、まだむらがあるね。どれ・・・・・・・・・・・・』
"ブランコの神様"は右手をレンの顔辺りに持ってきて、魔方陣を発動させた。するとレンは光に包まれた。
「これ何?」
『矯正、これからの鍛え方によっては君はすごいことになるよ』
「ふ~ん。あ、もう帰る時間だ。それじゃ・・・・・・ばいばい」
レン木刀を大事に抱えて本当に最後のお別れを言った。"ブランコの神様"もそれに手を振って返してた。レンはそれで満足したのか走って公園から去っていった。残された"ブランコの神様"は
『君はこれから魔術と科学が飛び交う戦場に足を踏み込むんだ。頑張ってくれ』
誰もいない公園で1人呟いた。
*
学園都市、東京都の3分の1を占める人口の8割が学生という名に合った場所である。ここは高い塀で囲われており中では科学技術が外の20~30年進んでおり、街中にはルンバの進化版が走り回っている。
そして学園都市の目玉、それが超能力である。
それを目当てに入る子供も多いのだが
もちろんレンは無能力者。だがこのレンは元より超能力なんて興味はなかったので特に残念がるわけでもなく普通の小学生として一年間過ごしてきて6年生になった。
「はぁ、無能力者か~」
そう言いながらレンの横で机に突っ伏しているのは金田学、レンが学園都市に来てからずっと一緒の親友である。
「いいじゃねえか。俺もだし」
「そうじゃねえんだよ。あれ、あいつだよ」
そう言いながら学が指さしたのはたくさんの人に囲まれた青い髪が首あたりまである少女だった。
「あぁ、水蓮か」
日々野水蓮、そう呼ばれる彼女は先ほどから質問攻めにされて困っていた。彼女がそんな質問攻めにあう理由、それは彼女のレベルにある。
超能力者第3位"
空気中にある水分を操り、最高3000度から絶対零度まで温度を変化させたり、水分を核反応させて水銀や酸みたいに原子自体を変化、それを結合させることが出来る。
彼女がその能力を持つ超能力者、だからこそ誰もが憧れる。だが彼女自身、そう言った注目されるのは苦手で先ほどからずっとテンパっていた、あわあわ言っていた。
「はぁ、行くぞ学」
「あはは、そうだな」
そう言ってレンたちは面倒くさそうに立ち上がり、水蓮の方に向かった。
「みんな、その辺にしといてやれ。困ってるだろ」
「そうそう」
みんなはレンがそう言うとそれぞれ返事をしたり水蓮に謝ったりして離れていった。
水蓮は超能力者になってまだ間もないので色んな人間が休み時間や放課後に水蓮のところに来て、質問攻めにする。レンと学はそれを適度な時に止めるのが恒例行事となっていた。
「あ、ありがと。レン、学。助かったよ」
「どういたしまして」
水蓮は机に倒れ込み、一度ため息を吐いた後、「よ~し」と言って立ち上がった。
「水蓮、今日も研究所か?」
「あ、うん。ごめんね、一緒に帰りたいけど・・・・・・」
水蓮は超能力者しかも最近そうなったのでまだ研究の途中で毎日研究所に行かなければいけない。このくらいの年の子にはとても辛いことだろう。
学は暗い顔をした水蓮を見て、ニカッて笑顔を見せて
「なぁ、俺も研究所に行っていいか?」
と言った。水蓮はきょとんとした後、少し考えて
「え?でもつまらないよ、たぶん」
言い返した。だが学はそれでも諦めず、食い下がった。レンはそれを見ながら自分のランドセルを背負って嘆息した。
「本当にいいの?」
「ああ!水蓮が力を使うの見てみたいし」
「そうだな、超能力者の力見せてもらいたい」
レンはランドセルを背負ってからもう一度水蓮の机のところに戻り学に同意した。すると学の勢いも強くなり、結果多数決によってみんなで研究所に行くことになった。嫌々そうだった水蓮だったがそう決まった時はすごい嬉しそうだった。
*
水蓮の通う研究所は十三学区にあるレンたちの小学校から少し遠いところにあり、電車で2駅程移動、そこから数分歩いたら辿り着く。そこにあったのはさすが超能力者を研究所するだけあってか小学生には到底理解出来ない施設ばかりだった。
「うお~、なんか凄そうだな」
「こら、むやみに触らないの」
へいへ~いと言って学は椅子に座った。レンも気になっているようで周りをキョロキョロとしている。
「水蓮、お待たせ」
そうやって待つこと数分、白衣を着てカルテを持った女性が来た。
「あ、牧さん」
「そちらは?」
牧と呼ばれる女性はレンと学をを指さして言った。レンはそれを聞いて大きいため息を吐いた。
「水蓮、お前アポ取ってないのか?」
水蓮はそれを聞いて「アポ?」と首を傾げた。ところでアポなんて言葉使える小学生、少し調子にのっている気がする。
「あ、あ・・・・・・あれだ。約束してなかったのか?」
「え?ううん、してない」
レンはもう一度ため息を吐いた。でも今回のこれは学が無理やり決めたことなので約束がない方が当たり前である。てかどうして研究所内入れたし。
「すいません、えっと牧さん。見学いいですか?」
「え、見学?そうね・・・・・・・・・・・・」
「ね?ね?いいでしょ?おばちゃん!」
スコーンと学は頭を殴られて椅子に倒れ込んだ。そして頭を抑えて蹲った。
「すいません。それなら水蓮の研究だけでもいいので」
「う~ん、それならいいわよ」
少し眉がピクピクと動いてはいたが笑顔で許可してくれた。学は以前蹲っていた。
水蓮の研究は見ていても結構面白いものだった。
水槽が用意されて水蓮がそこから水を操る。水槽の数を増やしていきそれを繰り返す。水蓮が水で色んなものを形作ってくれたおかげで学はテンションを上げて、レンも拍手をしていた。
その次は1つの水槽が用意されて、その中にある液体の種類を変えるという実験だった。こっちは学やレンも少し参加出来た。
そうして時は過ぎていき、気がつけば完全下校時間を過ぎていた。さすがにこの時間に小学生だけで帰るのは危険だと言う牧の言葉に甘えてレンたちは車で送ってもらうことになった。
「すいませんね。至れり尽くせりで」
「いいのよ。大事な水蓮のお友達なんだから」
「大事・・・・・・」と水蓮は照れながら呟いた。その横で学は寝ている。それはそうだろう、研究所内で見学とは思えないほど騒いでいたんだ、疲れるに決まっている。
そうしてもうしばらく車は走って水蓮も疲れていたのか寝てしまった。
「超能力者は大変ですね」
「そうね。でも貴方も他人事じゃないでしょ?あなたがそうなる可能性もあるんですから」
「・・・・・・・・・・・・他人事ですよ」
レンが顔つきを変えて窓から外を見た。外には見回りをしていると思われる警備員≪アンチスキル≫が徘徊していた。
「生憎俺は低能力者にもなれないし、なる気もありませんよ」
「あら、どうして?」
牧が聞き返すとレンはニヤと笑った。その笑顔はとても小学6年生がするものではなかった。最も今の小学生は分からないが。牧もルームミラーで一瞬見えた気がした。だが気がつくと子供っぽい笑顔になっていた。
「あ、俺の寮だ。送ってくれてありがとう!」
「・・・・・・・・・・・・どういたしまして」
牧はレンのさっきの顔が気になったが先手を打たれて訊くことが出来なかった。
「ほら、起きろ2人とも」
レンは2人を揺らして起こした。水蓮は涎を垂らしながら寝ぼけてまともに喋れてないし、学は一切起きない。レンはこの日何度目か分からないため息を吐いた。
「水蓮、涎、涎」
「ふぇ?」
レンはポケットからティッシュを出して1枚手にとって、水蓮の口元を拭いた。
「ん、あいがと」
「時々お前が小6じゃないんかと思うよ」
そう言いながら水蓮を降ろしながら学の首を掴んで引きずり出した。
「それじゃ、牧さん。ありがとうございました」
「ありがとうございあした~」
「それじゃね」
牧窓から顔を出してレンたちにそう言った後、車を出した。レンが車が手のひらで覆える程小さくなったところで、学をおんぶして歩き出した。
「あ、待ってよ。レン」
「ようやく起きたか」
「うん。それより学重くない?」
「いや、重くないけど」
さすが1年前に木刀で柵をへこませただけある。小学生1人おんぶするなど一般人がペンを持つようなものなのだろう。
「とりあえずこいつ俺の部屋に置いとくけど、水蓮はどうする?」
「あ、それじゃ、お邪魔するよ」
「あいよ」
レンは学をおった状態で階段を4段跳ばしで登っていく。水蓮はそれを必死に追いかける。そうして部屋までたどり着き、鍵を開けた。
「ただいま~」
「・・・・・・・・・・・・お邪魔しま~す」
水蓮はレンを追いかけたことにより、息を切らしながらリビングまで歩いていきクッションに倒れ込んだ。
レンは水蓮が倒れ込んだクッションとは違うクッションに学を落として冷蔵庫から飲み物とお菓子を取ってきた。
「おぉ、新商品」
水蓮はレンに許可もなくお菓子の箱を開けて1つ手にとって口に含んだ。レンは特に何も言わず同じように手にとった。
「うん、おいしい」
「だな」
2人は言葉数少なくお菓子を頬張り続ける。
「・・・・・・・・・・・・ありがとね」
「何が?」
「今日、私が2人と遊べないの寂しがってるの察して来てくれたんでしょ?」
「俺はただ超能力者の能力見たかっただけだよ」
「・・・・・・ふふ、そうだね。2人は私の力を見たかったんだね」
あぁ、そうだよ。とレンは応えて飲み物を飲んだ。
水蓮はそれを見ながらもう一度、ありがとうと呟いた。