無事、
さてさて、今回一番の功績はやはり
そんなわけで後日談、現在地はレンの部屋、学とレンが小さいテーブルを挟んで、クッキーをつまんでいた。
「で、英雄譚という名のすべらない話を聞きたいんだが」
「なんか、ハードル上がってませんか!?」
叫ぶ学を冷ややかな目で見ながらレンはクッキーを1つまた口に入れる。
「上がってないよ。ほら、相手さんと戦ったときに自分の力でいけると思って戦いを挑んだら、相手さんが予想以上に強い上に自分の力が通じず、右手血だらけにされたのち、蹴りとか入れられてズタボロにされた。とかそんな話しろよ」
「妙に具体的! 何それ、実体験?」
「うん、当麻さんの」
「あぁ……納得だよ。てか、あいつまた厄介ごとに巻き込まれてんのかよ」
安定の上条である。実際、上条は気絶しているし、奴さんが約束を守ると断言できなく、笑い事ではないのだが、レンは笑っている。
「それで、英雄譚は?」
聞くことができるまで帰らせないと言わんばかりである。それを女性に言われていたなら、喜んで帰らないのだが、思春期男子に言われても何にも嬉しくない。
「ワクチンを持った初春を運んだ」
…………………………………。
「つまらん」
「あんだと!?」
学が怒るのも当然で、幻想御手で倒れた人間を救うワクチンを持った初春を運ぶ役割はかなり重要なのだ。学は褒められこそされ、つまらんの一言でぶった切られるのはおかしい。
しかし、ここで1つ皆さんに訂正を。前回、レンは英雄譚に“笑”が付かないことを願っていたと言ったが、それは嘘だ。実際は1ミクロンも願っていない。寧ろ、ここからまた事件に連鎖して少女の1人くらい救ってきてほしいと思っていた。
「本当に、お前は駄目だな。もう少し、当麻を見習えよ。あいつはな、どこからともなくシスターを拉致してきたと思ったら、似非シスターに炎で焼かれかけて、それを切り抜けたら、奇抜ファッションのお姉さんにズタボロにされたんだぞ。お前もそれぐらいやれよ」
「だから、当麻。てか、拉致!? あいつ何やってんの!?」
真実はベランダに引っかかっていたのを拾ったのだが、噂とは尾ひれが付くものなので仕方がない。
「まったく、お前は本当につまらん。水蓮が今のお前を見たら、苦笑いで励まされるぞ」
「やめて! 余裕でその場面を想像できちゃうから!」
「なら、もう少し面白いことやれよ~」
「はぁ、もう話がないなら行くぞ。俺は行くとこあんだよ」
学は話を切り上げ、立ち上がる。レンは無理やり話を切り上げた学にまたつまらないと言って、クッキーをまた1つ齧った。
「全く、あの女のところに行くのね。恨めしい、そんなにあの女が大事!?」
「え!? あ、え、あ、えっと…………」
「はいつまらん」
その後も、学はレンに何どもいじられて、つまらんの総数は100いったとか、いってないとか。
レンの部屋で学が言っていた、行くところがあるというのは、レンの部屋を抜け出す口実ではなく、本当であって学は今、病院に来ていた。
「なんで、お前も来るんだよ」
「だって、俺だって心配だもん。知らぬ仲ではないんだしいいじゃねえか」
それはそうだけどさ……、と学は思った。しかし、ここで愚痴を言ってもレンは帰らないし、そもそもそんなことを言う権利なんてない。なので学は黙った。
2人はロビーで病室の場所を聞き、そこへ向かう。後ろでナースたちが何かひそひそ話をしていたが、きっと2人には何も関係ないだろう。「彼氏さんかしら」と聞こえた気がするがそれは気のせいだ。
エレベーターに乗ってロビーで聞いた部屋に着いた。そこのプレートにが佐天涙子と書かれていた。
トントントンと3回ノック、中から元気な声が聞こえるのを待って、学とレンは部屋に入った。
「佐天、元気か?」
「あ、金田さん、白神さん」
部屋に入るとそこには、倒れる前と変わらぬ姿の佐天がベッドに座っていた。
「おお、元気そうじゃん」
「元気ですよ~。たっぷり寝たので元気いっぱいです」
力こぶしを作るように腕に力を入れる佐天。元気があることを表現したいのだろう。
「うんうん。体の方は大丈夫そうだな。それで、能力の方はどうだ?」
入って椅子に座ると同時にレンは今回来た本題を持ち出す。あまり前置きを長くすることが嫌いな上に人の気持ちを考えることが苦手なレンだからできる所業である。
「そこは、元通り
「だろうな」
「佐天、これとりあえずドーナツ買ってきた」
一切励ましの言葉とかを言わないレン。学はレンの言葉と重なる勢いでドーナツを佐天に差し出した。
「わぁ、ありがとうございます!」
「どういたしまして」
「学、人の言葉を遮るの良くない」
レンが不満げに言うと、学はレンの病室の角へ連れ出した。
(なんで、お前はすぐに本題にはいるんだよ!? もうちょっとあるだろ、先に!)
(いいじゃねえか。あいつだって言われることは分かってんだ。それならさっさと言っちゃった方がいいだろ)
(それはそうだけど、心の準備ってもんがあるだろ?)
(うるさいな。分かったよ。まぁ、どうせもう切り出さなきゃならんけど)
学はレンの言ったことの真意を聞こうとしたが、今の自分たちがいる場所を思い出し、ゆっくりと佐天の方を向いた。その視線に気づいた佐天は明らかに作り笑いをした。
(ひそひそ話なんて本人の前ですることじゃねえよ)
「おっしゃる通りで」
完全なミスだが、ここでグダグダしていても仕方がないので学は椅子に座り直し、できるだけ真剣な顔で佐天を見た。そのとき、レンにおけるちゃちゃが入った気がするが、無視だ。
「えっと、佐天、幻想御手使って、何か得れたことがあったか?」
「……初春を友達に持ててよかったとは思いました」
学は初春と佐天の間に何が起こって、どんな会話をしたのか一切知らない。興味がないわけではあるまいが、聞くのは野暮ってものだ。ちなみにレンはまったく興味がない。
「大体、さっきの口ぶりから佐天は能力を使えたっぽいし、もういいんじゃねえのか?」
「確かに能力は使えましたけど」
「ならいいじゃねえか。佐天、もしかしたら能力を持つことが幸せだと思っているならそれはお前の勘違いだ」
「「えっ?」」
いきなり出てきた言葉に佐天どころか学も驚いてしまった。
「いいか? 能力ってのは蛇足だ。いくら手から電撃が出ても、火が出ても、テレポート出来ても、それは実際必要ない。あったらいいなのいらないものだ」
その言葉はつまり、学園都市の目的、否、学園都市そのものの否定とも言える。
レンは自分が住む街に愛着がないのか、言葉を続ける。
「あったら、あったでそれはいいのかもしれんが、なかなか幸せにはなれない。核にしろ、能力にしろ、強すぎる力は、解明しきれん不可思議な力は災いを招く方が圧倒的に多い。災いを招き、不幸を呼ぶ。自分にも周りのも」
そこでレンは思考を切る。これ以上は今考えても無駄なことだ。
「レン、お前は本当に能力を嫌うな」
「ですよね。能力を欲しいと思ったこと一度もないって言ってましたし」
それは2人以外にもさまざまな人間が疑問に思っていること。レンは俯き、少し笑い。
「…………約束だしな」
と2人には聞こえない声量で言った。訊き返そうとした学だったが、その前にレンは先ほどとは違う、満面の笑みで前を向いた。
「まぁ、能力を持って、
「んな!?」
「後、別に能力がなくたってできることは山ほどあるし、そんなちっぽけなものに拘る必要ないんだよ」
「ちっぽけって…………」
この学園都市に来て、能力をちっぽけなものだと言い切れるレンに佐天は唖然した。今までレンが能力をいらないと言っていたのは全部、言い訳、諦めだと思っていたが、そうではないことをいまやっと分かった。
「佐天、言っておくが俺をなめるなよ? 俺は学に余裕で勝てるぞ?」
「いいじゃねえか……その喧嘩買ってやるよ!」
唖然していた佐天をしり目にレンと学は売り言葉に買い言葉でいつの間にか、決戦の約束をするのだった。最早、
レンと学の決戦はまた後日。とりあえずこれでレベルアッパー編は完結、かな? 禁書1巻終了後はは、テレスなんとかさんか、吸血鬼か、はたまたオリジナルの日常か、分からないけど、まぁ、それは1巻が終わってから考えよう。