「…………で、俺はお邪魔だったのか?」
月詠が仕事(のはず)に行っており留守、部屋には怪我だらけの上条とパジャマ姿の
「え? あ! そ、そんなことないぞ。大歓迎だ」
「お前に歓迎されても、ここは先生の家だ」
とりあえず、あ~んは止めたのでレンは上条が寝ている布団の傍、禁書目録の隣に腰かけた。
「まぁ、当麻。お前はどうせ生きてるだろうと思ってたから、それ程心配してなかったんだ。それより、あれから魔術師は来たか?」
「この重傷をそれで済ますのはおかしくありませんこと!?」
「うるさい。来たのか、来てないのか、どっちだ?」
「来てねぇよ。禁書目録がいるんだから当たり前だろ」
どうやら神裂は約束をしっかりと守ってくれていたらしい。だが、それもここまで上条がこうやて目を覚ましている時点で約束は終了だ。
レンは一度禁書目録を見たあと、窓、扉と順番に見る。確証はないが、あの交渉に応じてくれたのは上条の状態を常に監視しているから、というのがレンの考えだ。起きているのに起きていないと言うイカサマができないことを分かっているから神裂は応じた。
(どうせ、この窓の外から覗いてんだろうな。完全な変態だぞ、あいつら)
頑張れば、目を合わせることも可能かも知れないが、たぶんもうあそこにはいない。すでにこっちへ向かっている。いや、もしかしたら。
「……当麻、次魔術師たちが来たらお前は確実に死ぬな」
「不吉なこと言うな」
レンは扉から目を離さず、上条に言う。その視界にちらりと入った禁書目録は俯いて悲しそうだった。
「……10万3000冊の魔道書か。禁書目録、お前は何でこんなところにいる?」
「え?」
「レン! お前、そりゃどういうことだ!?」
2人の声はほぼ同時だった。
レンは少し言い方を間違えたことを言ったあとに気がつき、困った顔で頭をかいた。
「えっと、お前は追手から逃げて、イギリスから日本の学園都市に来た。そうだよな?」
「うん」
「でもお前は魔術も超能力も使えない、ただの少女だ。そんなことできるとはそう思えない」
「でも、こうして来てるんだよ!」
「そう、そうなんだよ。だから俺は正直、お前がどうやって当麻の部屋に来たのかも、これまでどうやって魔術師たちから逃げてきたのかもどうでもいい。来ちゃったもんは仕方ない」
ここまで話している間、レンは扉から目を離していない。人の目を見て話すことは常識だとか、言われることがあるが、レンにとって今はそんな常識を無視するほどこうすることに意味がある。
(敵なんていやしない。1つしか方法を知らない彼らはそれにすがるし、諦めの悪い無知の高校生は別の方法を探す。どっちも彼女を救うために動いている)
禁書目録を守ろうとする上条も、神裂も神父も悪くない。そして自分の目的のために動く"上の人たち"もまた悪いとは一概に言えない。
「……当麻、お前が、もし禁書目録を"作った"人間だとして、どうする?」
「はぁ? 作った? どういうことだ?」
「俺なら、しっかりと調教して言いなりにする。そうじゃないと10万3000冊の魔道書なんて怖いよ」
「何が言いたいんだよ、お前?」
「もしくは、首輪でも付けるかな。適当な理由でも言って、魔術で、縛り付けの魔法とかあるだろ、きっと」
レンは冗談ながらそう言って立ち上がり、少し準備運動を行う。禁書目録が否定しないということはそういう魔術はあるらしい。
「っ!? それって……!」
「当麻、出血大サービスだ。今回は破格条件でお前の味方をしてやる」
レンはどこからともなく、木刀を取り出して、そう言った。
魔術なんていう紛い物でも科学なんていう理屈的なものでもない、正真証明、神様から貰った神木で作られた、レンの相棒。
レンはそれを持って扉へ向かい、蹴りを入れた。
扉は2つに折れて、地面に落ちていく。ちなみにここは月詠の家であり、扉は月詠が借りている家の物なのだが、レンは気にしない。
蹴りを入れた勢いのまま、レンは廊下の柵に足をのっけて、飛んできた扉を避けた2人を見た。
ステイル=マグヌス。
神裂火織。
「さぁ、魔術師さんたちよ、約束はここまでだ。ヒーローの大逆転劇まで少々前座を楽しみましょうか!」
常識なんて殴り飛ばした非常識な街、学園都市で、その中でさえも非常識とされる者たちの戦いが始まった。
「…………どういうことですか?」
「どうって、言葉のままの意味だよ。知ってんだろ? 当麻は起きた。ここからはもう好き勝手していいんだよ」
「もうタイムリミットは迫っているんです。遊んでる暇はありません」
レンの言葉を無視して部屋に入ろうとする2人。
タイムリミット、たぶん禁書目録の脳がもつ時間のことだろう。
レンは、はぁとため息をはくとともに木刀をすっと持ち上げて、神裂の腹部目掛けて大きく振るった。
しかし、木が折れる音も、骨が折れる音もない。神裂はレンの木刀が当たる前に自分で後ろに飛んだらしい。
「まだまだ」
神裂が遠く飛んだことで、攻撃範囲から外れたことを瞬時に理解したレンはそのまま後ろにいたステイル目掛けて蹴りを放つ。
こちらも感触ことあったものの、後ろに飛ばれ、衝撃を相殺された。さらに、それに加えてルーンが刻まれたカードをばら撒かれた。
「ちっ! また厄介そうなもんを」
そのカードがなんであれ、魔術には変わりない。レンはそれをできるだけ潰そうとする。しかし、敵はそれだけではない。レンの後ろから2mはある鞘に仕舞われた刀が襲ってきた。
「がっ!」
骨をへし折らんばかりの威力をくらったレンは前へ吹き飛ぶ。もしルーンのカードに刃物が付いていたならレンは切り傷だらけになってしまっただろう。
吹き飛んでしまったレンだが、それだけでは終わらない。その勢いに任せてステイルを巻き込み、アパートの廊下から飛び出した。
地面に叩き付けられる2人、レンはすぐに立ち上がり跳ぶ。間髪入れず、神裂へ攻撃を仕掛ける。普通ならアパートの2階に跳んで届くわけないのだが、そこはレン、楽々と廊下に足をつけ、神裂へ木刀を向けた。
「痛いなぁ、俺じゃなきゃ死んでたぞ」
「あなただから、やったんです」
変な信頼を得てしまっているようで、レンは木刀を持った右手の手首をくるくると回したあと、両手で柄をもち、構えた。
「まぁ、じっくり楽しもうぜ。神裂さん」
レンの意思が伝わったのか、神裂も刀に手をかけた。人1人くらいしか通ることのできない幅の廊下で少年少女が戦意を向ける。
「七閃!」
先に動いたのは神裂だった。鞘から刀を一瞬抜いたと思うと、凄まじい7つの衝撃が迫ってきた。
(魔術、いや)
普通なら、ここで避けるのが鉄則だが、レンには見えていた。神裂が刀を抜いていないことを、向かってくる衝撃は細いワイヤーであることを。
だから、レンは前へ出る。迫るワイヤーを全て左手で掴む。
ワイヤーが肉に食い込む。ワイヤーを伝い、血が溢れる。しかし、レンは顔歪めることなく、ワイヤーを止めた。
「なっ!? あなた、正気ですか!?」
「お前こそ。こんなおもちゃ使いやがって」
ワイヤーを手放したレンは神裂へ向かう。だが、そこで足元が崩れた。神裂が出した七閃が廊下を切り裂いたらしい。何度も言うが、ここは月詠が借りているアパートだ。
レンと神裂は地面に足をつく。と同時にレンは前へ踏み込んだ。それとまた同時と思える速さで木刀と鞘が激突する音がする。
がん、がんがんがんがん!
激突する音が激突する音をかき消し、既にレンと神裂の動きは確実に音とずれていた。
そして、ここでようやく廊下が地面に落ち、派手な音をたてる。しかし、それも激突音にかき消された。
ががががががががが、がん!
レンと神裂が離れ、数回、そこでやっと激突音が止む。
「やるねぇ。こっちは結構本気なのに」
そう言うわりに、レンは息1つ切らしていない。だが、それは神裂も同等だ。
レンはもう一度神裂へと踏み込もうとする。そこで後ろから炎が燃え上がり、レンを照らした。
(くそっ! あれはあまり好きじゃないんだよ)
そもそも3000度を越す炎を好きだと言うのは、そうそういないだろう。
神裂、ステイル、魔女狩りの王、2人と1体、レンはどうにか切り抜ける方法を探す。
(神裂は肉弾戦が得意、神父は、あの炎が鬱陶しいな)
誰を最優先に仕留めるか、考える。考えたが、その必要はなかった。
もう既に扉のない月詠の部屋から白いレーザーっぽいものとツンツン頭の少年が飛び出してきたからだ。
「なっ!」
さすがのレンも驚いた。首輪を解くとああなるとは思っていなかった。
だが。
レンは気を引き締める。
前座は終了。ここからは上条の、ヒーローの逆転劇だ。
超電磁砲2期、禁書8巻。見て読んで、構想してます。
フェブリの話、レン結構立ち位置難しい…………。
さてさて、次回禁書1巻終了(予定)です。
アドバイス、感想等々もらえたら嬉しいです。