二次創作紀行~とある魔術の禁書目録~   作:鮪瓜

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レンの異常性が垣間見える話。


第18話

非常識な戦いが外で続いている裏で上条は禁書目録(インデックス)と向き合い、考えていた。

 

(レンが言ってたこと……禁書目録に魔術が……)

 

考える。

 

レンは破格条件で協力すると言った。なら、さっきの情報もかなり重要なはずだ。

 

上条は思い出す。

 

今回の問題は、禁書目録の記憶がもたないこと。完全記憶能力を持つ彼女の脳は10万3000冊にその容量のほとんど、数字で表すなら85%を占められており、1年しか記憶できないということ。

(待てよ。15%で1年なら、完全記憶能力を持つ人間は6年しか生きれないってことになるんじゃないか?)

 

完全記憶能力を持つ人間を禁書目録以外知らない上条だが、そんな話は聞いたことがない。

 

(その情報自体が嘘? なら、1年しか記憶がもたないというのが、魔術か?)

 

脳に魔術を仕掛ける。言葉にすれば簡単だが、それは可能だろうか? 

 

(いや、魔術に関して、俺は何にも知らない。そこに時間を割くのは無駄なことだ)

 

だから、魔術は脳に仕掛けることできる、という仮説で上条は思考を進める。ただ、脳に直接ではなく、脳に近いところから、人が触れることができるところから作用させているはずだと考える。しかも、それは普段他人からは見えないところのはずだ。

 

上条は禁書目録の顔を眺める。人から見えないところ、というと思いのほかある。しかし、上条はある一点を見つめた。

 

「な、なんなのかな、とうま」

 

口紅などつけていない薄いピンク色、照れて少し尖がっている。そう、唇。正確には口の中に魔術があると上条は確信した。

 

「禁書目録、口の中見せてくれないか?」

 

「………………どうしてかな?」

 

「あ、あ~と、少し見てきたいなぁって」

 

距離が開いた。禁書目録がざっと後退した。

 

「とうまはもしかして、変態?」

 

「ちがっ! 俺は至って普通だ!」

 

「普通の人はいきなり口の中を見せてくれなんて言わないかも」

 

「あ、いや、それはだな」

 

上条は右手を伸ばして、禁書目録に近づく。しかし、同じ距離分、禁書目録は後ろに逃げた。また近づくが、また離れる。追う、逃げる、近づく、離れる。現在の図は変質者と被害者に近い。というか、上条が変質者認定されてるのを踏まえて考えると、まさにそれな気さえする。

 

「待て、禁書目録。何かよからぬ誤解をしていないか? 違う、俺の個人的な趣味でお前の口の中に興味があるわけじゃない!」

 

「なら、理由を教えてほしいかも」

 

うぅ! と上条は言葉を詰まらせる。

 

そもそも、真実を禁書目録に話してはいけない、という決まりはなく、それといった理由もない。なら別に話してもいいのではないか。そうすれば、上条の誤解も解けて、いいこと尽くし、とまではいかないまでも、後々の関係を円満に近づけれるかもしれない。

 

「禁書目録、あとで、あとで全部話すから、ここは俺の言う通りにしてくれないか」

 

しかし、如何せん時間がない。今はレンが外で魔術師たちとの戦いをたのし、もとい、時間を稼いでくれているが、それもいつまでもつか分からない。なので、上条は禁書目録に真剣にお願いした。俗にいう、ジャパニーズ土下座である。

 

「…………うぅ、分かった」

 

上条の誠意が伝わったようで禁書目録は顔を真っ赤にしながら口を開いた。その中には綺麗な歯が並んでいる。そしてその奥、喉の奥、そこに漫画やアニメで見る紋章が真っ黒に刻まれていた。

 

(ビンゴだっ!)

 

「ほ、ほうは、ほうひひ?」

 

翻訳すると「とうま、もういい?」だが、上条は原因を発見できた喜びから、聞こえているが、聞き取れなかった。

 

「禁書目録、少し我慢してくれ」

 

「ふぇ!?」

 

女の子の口の中を見るだけでも十分おかしいのに、あろうことか、上条はそこに手を入れた! もはや、勇者と呼べる。しかし、RPGに出てくる勇者がこんな変質者だった場合、その勇者に救われた世界に救いがないのでやっぱり勇者ではない。

 

もがく禁書目録には我慢をしてもらうとして、上条は喉の奥にある紋章に右手で触れる。

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)――魔術だろうと、超能力だろうと、異能を全て打ち消すことができる力を持つ上条当麻の右手だ。

 

(もう、少し……!)

 

上条の右手がそれに触れた瞬間、何かが割れる音がした。

 

 

 

 

友人が降ってきた。

 

レンはそれを見上げながら、正確には上条の落下地点まで走りながら、そこでやっと気が付いた。

 

(先生のアパート、ボロボロだ!? てか、廊下も階段もねぇ!?)

 

それをやったのは神裂ではあるのだが、レンもその原因の一端を担っているのは確かである。それにしても、無自覚に周りを破壊するとは怖いものである。

 

「て、そうじゃない!」

 

レンはアパートの方に持って行かれそうな意識をどうにか現在の問題――上条落下に戻し、上条をキャッチした。上条は高校生であり、その体重は奪われてたりしない限り、60kgを超えている。それが3m近い場所から降ってきたのだから、キャッチしようものなら、怪我を負ってもおかしくはないのだが、そこはレン、まるで投げたボールをキャッチするように、なんでもない顔で上条をキャッチした。

 

「大丈夫か!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。それより……」

 

上条はさっきまでいた月詠の部屋を見る。レンもそれにつられるように顔を向ける。そこには禁書目録がいた。いつも笑顔などなく、目には何かしらの魔法陣が浮き出ている。

 

「なるほど、成功、なのか?」

 

「あぁ、禁書目録に仕掛けられてた魔術は壊した、けど」

 

それを破壊することで発現する別の魔術があった。しかもあのレーザーで上条が飛ばされてきた。それはあのレーザーが非殺傷なのではなく、幻想殺しが打ち消せる異能の許容量を超えていたか。

 

(いや、間違いなく後者だ)

 

ここで非殺傷なんて、殺されることがないなんて、それはあまりにも楽観的過ぎる。上条を見てみろ、もう包帯ぐるぐるだ。1つ間違えたなら死んでいた。むしろ、今までのものよりやばいものだと考えるのが利口的だ。

 

相手にするのは10万300冊の魔道書、そこにどんな魔術が詰め込まれてるか、レンには想像もつかないが、それだけあれば、この世の魔術全て使えると言われても納得してしまう。それを相手にするのだ、気が気でない。

 

(禁書目録の強さは未知数、果てしなく上過ぎて見えないという厄介もんだ。ここは、1度や2度死ぬ覚悟は決めておかないとな)

 

「あの子に何をした!」

 

木刀を構えるレン。しかし、そこに横やりが入った。

 

轟ッ! と燃え盛る巨人――魔女狩りの王(イノケンティウス)がレンに向かってくる。

 

「あぶね! お前、何しやがんだよ!」

 

「黙れ! 僕が訊いているんだ! あの子に何をした!」

 

「知らねえよ!」

 

魔女狩りの王は再度レンに向かう。レンはその追撃をしのぎながら禁書目録の方を見る。

 

(こんなこと、してる暇ねえのに! 何がしたいんだ、あの赤髪エセ神父!)

 

そう毒づいた瞬間、空間が歪んだ。目がおかしくなったのかと思ったレンだが、そうではなかった。空間を歪ませた犯人、いや原因は禁書目録だった。

 

空間は歪み、そしてひび割れ、先ほどのレーザーが上条に向かい放たれた。どう考えても普通じゃない。途方になく桁外れで、異常で異例、超凡で非凡な現象が今、レンの目の前で起こっていた。

 

「当麻!」

 

「くっ!」

 

上条はぎりぎり幻想殺しのある右手を突出し、レーザーを防ぐ。しかし、それはやはり幻想殺しでは消し去ることができず、どんどん上条は後退していく。

 

「ど、竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)、そんな。そもそもなんであの子が魔術を」

 

「あんたらは騙されてたんだよ、下っ端! そもそも禁書目録が魔術を使えないなんておかしいだろ!」

 

魔術というのは、禁書目録が言っていた通りならば、学園都市の開発を受けていない才能なしだけが扱うことができるもののはずだ。なのに禁書目録は魔術を使えない。むしろ、神裂たちがそれを何故鵜呑みにしていたのか、レンは分からない。

 

「――『(セント)ジョージの聖域』は侵入者に効果が見られません。他の術式へ切り替え、引き続き『首輪』保護のため侵入者の破壊を継続します」

 

 

あの状態になってから初めて聞いた禁書目録の声、同じもののはずなのに、別物にしか思えなかった。

 

「い、い、加減にしろ、エセ神父! 現実を見ろ! 手を伸ばせば助けたい人を助けれるんだ。これ止めろ!」

 

「黙れ! 僕は曖昧な可能性なんていらない。その子の記憶を消せば、とりあえず命を助けることはできる。僕はそのためなら誰でも殺す。いくらでも壊す! そう決めたんだ、ずっと前に」

 

その答えにレンは憤りを覚えた。それは正義でも、悪でもない。ただの自棄だ。諦めて逃げて、問題を問題とせず、打開案を考えず、妥協案を持ち続ける。

 

曖昧な可能性を必要としないなんて、魔術師としてはどうか分からないが、科学者としては落第どころか、後ろ指差されて笑われ者だ。

 

「とりあえず、だぁ?」

 

レンはまたキャラでもないことをしようとした。しかしその前に上条が言葉を発した。

 

「ふざけやがって、そんなつまらねぇことはどうでもいい! 理屈も理論もいらねぇ、たった1つだけ答えろ、魔術師!」

 

そこで上条は息を吸う。

 

 

「てめぇは、禁書目録を助けたくないのかよ?」

 

 

レーザーに耐えながら上条は続ける。

 

「てめぇらは、ずっと待ってたんだろ? 禁書目録の記憶を奪わなくても済む、禁書目録の敵に回らなくて済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最高に最高なハッピーエンドってやつを!」

 

いや、それを魔術結社の上層部は望んでない。とは言わない。レンは空気を読める子だ。

 

「ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を! 英雄がやってくるまでの場つなぎじゃねぇ! 主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ! 他の何者でもなく他の何物でもなく! てめぇのその手で、たった1人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!?」

 

上条が来た時点で、上条が首輪を破壊した時点でもう無理じゃ、ともレンは言わない。レンはやっぱり空気の読める子である。

 

「ずっとずっと主人公になりたかったんだろ! 絵本みてぇに映画みてぇに、命を賭けてたった1人の女の子を守る、そんな魔術師になりたかったんだろ! だったらそれは全然終わってねぇ! 始まってすらいねぇ! ちょっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!」

 

少年の10年をちょっとと表すのはどうかと思うが、レンは口にしない。レンは確実に空気の読める人間である。

 

 

「手を伸ばせば届くんだ。いい加減始めようぜ、魔術師!」

 

 

長話が過ぎた。上条の右手は嫌な音を立て、指は変な方向を向いた。そして上条の手は弾かれ、レーザーは上条を殺さんと襲い掛かってきた。

 

「Salvare000!」

 

上条の顔を狙ったレーザーはその声のあと、上条の頭上をさらに超えて、空を切り裂くような弧を描き、地面と垂直になった。

 

一体何が起こったのか。それは起こった後の状況を見ても分かる。

 

日本語でなかった声は女性つまり神裂のものだ。そして彼女は刀の柄を掴んでいる。つまり、彼女はレンと戦ったとき使った七閃か、魔術を使用し、禁書目録の足元を崩し、レーザーを逸らしたのだ。

上に放たれたレーザーはどんどん消えていき、純白の羽へと姿を変え、夏の夜に、まるで雪のように降り注ぎ始めた。

 

「気を付けて。それは竜王の殺息。伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です」

 

「ドラゴン? おいおい、そんなもんまでいんのかよ、そっちは」

 

「余波の光の羽が当たっただけでも危険です」

 

降ってくる羽は結構な数がある。それに注意しながら進むだけでも辛いのに禁書目録が立ち上がる。戦場は4(のはず)対1で戦っているはずなのに不利としか思えない。

 

「――新たな敵兵を確認。戦場思考の変更、戦場の検索を開始――現状、上条当麻の破壊を優先します」

 

立ち上がった禁書目録は走ってくる上条の方を向く。そしてまたレーザー、もとい竜王の殺息を放った。

 

まっすぐ禁書目録に向かった上条にそれを避ける暇などなく、右手もぼろぼろで竜王の殺息を防ぐこともできない。

 

「魔女狩りの王!?」

 

しかし、竜王の殺息は上条に当たらない。凄まじい炎とともに魔女狩りの王が盾となって上条を守った。

 

「別に、君の口車に乗せられたわけじゃない。確実にあの子の命を救えるなら、そのためなら何でも壊す!」

 

「……あぁ! わかってらぁ!」

 

「行け! 能力者」

 

魔女狩りの王が盾になり竜王の殺息は上条に当たらない。上条の手はあと数歩で禁書目録に届く。

しかし。

 

 

禁書目録の頭上に炎の剣が浮いていた。

 

 

(なっ!)

 

「フレイの剣!?」

 

北欧神話に登場する豊穣伸フレイの剣、賢い者が持てばひとりでに戦い、勝利をもたらしてくれるという伝説がある武器。

 

それを、この場面で禁書目録は出してきた。

 

フレイの剣は上条の方に向き――

 

 

飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレイの剣が飛んだ瞬間、上条は背中を押された、「行けっ!」という声とともに。そしてフレイの剣が確実に何かをさした音とともに。

 

(えっ?)

 

いきなり押され、少しよろめきながら上条は振り返ろうとする。

 

しかし。

 

「う、しろを向くな! さっさと助けてこい!」

 

レンの声だった。

 

「っ! あぁ!!」

 

上条は振り向くのを止め、禁書目録を見る。

 

 

竜王の殺息は魔女狩りの王により、止められている。

 

 

フレイの剣は1本レンに使い、そして再び発現するのに少しのタイムラグがある。

 

 

もう、上条を止めるものは誰もいない、何もない。

 

(この物語(せかい)神様(あんた)の作った奇跡(システム)の通りに動いてるってなら)

ぼろぼろで限界であるはずの右手を上条は前に突き出す。

 

 

(まずはその幻想をぶち殺す!)

 

 

禁書目録の前にある(まほうじん)は破壊された。

 

「警……こく、首輪、致命的なハカイ……再生、不可……消」

 

「い、禁書目録!」

 

上条は倒れた禁書目録に駆け寄る。そして息をしていることを確認して安堵した。

 

レンはお腹の傷を押さえながら、その様子を見ていた。

 

(つぅ……結構ダメージあるな)

 

レンの足元には血だまりがあり、まだ傷口からは血が出ている。

 

その傷口に注意がいっていたレンは見逃してしまった。

 

 

上条の頭に1枚の羽が落ちたことに。

 

 

「え……?」

 

レンがそれに気が付いたのはドスッという上条が倒れる音がしたときだった。

 

倒れた上条は禁書目録を庇うように上に覆いかぶさった。

 

指1本動かない上条だったが、確かに笑っていた。

 

その夜。

 

 

上条当麻は『死んだ』

 

 




パワードスーツ2万体……レンならいける! と思っているmaguro328です。

ちなみにレンの強さは

バードウェイ本人の前で「魔法少女サディスティック★バードウェイ」なるものを提案して、生き延びれることは確実です。

分からない人は原作を読もう!
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