二次創作紀行~とある魔術の禁書目録~   作:鮪瓜

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遅れてすいませんでしたぁ! 最近ほんとに忙しく……と言い訳になってしまうし、長くなってもあれなので。本編どうぞ。


第19話

「お前は、関わるのか?」

 

神裂と出会う前、レンは上条に訊いたことがある。随分と曖昧な言葉、主語も目的語もない、伝わりにくい言い回し、しかし、上条はそれを理解し、神妙な顔をした。

 

「……あぁ」

 

「正直、今回の“闇”は大きいぞ。こんな一都市のものとは比べ物にならない、世界を巻き込みかねんものだ。一度は凌げたが、これからもあんな奴らが来るなら、いつか、死ぬぞ?」

 

もし次また凌げたとしても、次が来る。それを凌げば次が。そしてそれはどんどん数が、強さが増してくる。それはいたちごっこより性質が悪いものだ。永遠に繰り返していき、いつかは力尽きる。勝ち目はないに決まっている。

 

それが分からないほど上条も馬鹿ではない、しかし、上条ははっきりと微塵の迷いもなくまっすぐレンを見て告げる。

 

「俺は、関わる。どんな奴が来てもあいつのために戦う。そして、あいつを闇から引き上げる」

 

「……どうして、そこまで禁書目録(インデックス)を助けようとする。好きなのか?」

 

「……どうだろうか、分からん」

 

そんな短い、補習帰りのちょっとした会話だった。

 

 

 

 

「……夢か」

 

目を覚ましたレンがいたのは病院、しかし、レンは病室のベッドで寝ていたのではなく、廊下に設置している緑色のソファで座ったまま寝ていた。座ったまま変な体制で寝ていた所為か、少し体のあちこちが痛く、レンは軽くストレッチを始める。

 

昨日、上条が倒れてすぐ、レンは上条の元へ駆けた。その際に、神裂に静止するように言われたが、それではレンは止まらず、無数に落ちてくる白い羽を握りつぶして前に進んだ。その所為で、レンの手はボロボロだった。だが、レンは自分の血だらけの手など気にせず、上条と禁書目録に駆け寄った。

 

(息は、してる。よかった生きてるなら大丈夫だ)

 

生きていれば助かるはず、とレンは一息つき、そこでようやく流れる血に自分の手がボロボロだということを気づかされた。

 

しかし、レンは他人ごとかのように興味のない目でその怪我を見た後、月詠のアパートを見上げる。廊下がなく、月詠の部屋にはドアすらない。ここまでなってどうして誰も騒がないのか甚だ疑問だが、そういえば寮でも同じようなことがあった気がするのでレンはあまり気にしないことにした。

 

「おい、魔術師」

 

「なんですか?」

 

「あれ、直せるのか?」

 

直せない、即答された。ほとんどお前らが原因じゃねえかよ、と言う気持ちを込めてレンは神裂を睨んだが、目を逸らされた。

 

「そんなことはどうでもいい」

 

「はぁ!? どうでもよくないだろ、赤毛。あれどうでもいいとか……やっぱり魔術師は変人なのか」

 

その言葉が気に食わなかったのか、神裂はレンを睨んだ。レンはその瞳を特に気にせず魔術師2人に呆れ顔をした。

 

「そんなことより、君は一体何なんだ?」

 

「……へぇ、何者って聞かない辺り、気に入らないな」

 

「戯言はいい。さっさと答え……っ!?」

 

そこでステイルはようやく気が付いた。

 

先ほど、フレイの剣に貫かれた傷跡がないことに。大きく空いた服の穴から見えるのは、少し赤い血が付いた肌色、穴もなければ、肉も見えず、まるで何もなかったかのように、そこだけ時間が早く進んだように、傷が塞がっていた。

 

「もう一度聞く。君は一体何なんだ……!?」

 

 

「と、ここまで思い出す必要はないか」

 

場所は戻って病院、レンはソファから立ち上がり、歩き始める。向かう先は上条当麻の病室、白い羽を頭にくらった上条は目覚めているだろうかとそんなことを考えながら辿り着くと、扉の前で禁書目録とカエル顔の医者がいた。

 

「入らないの?」

 

「うぅ……」

 

そのカエル顔の医者の言葉で、禁書目録は少し緊張しながら、頬を赤らめながら部屋に入った。そしてそれに続くようにカエル顔の医者も入って行く。しかし、レンはそれについて行かず、扉の横の壁にもたれた。

 

『面会だよ? お友達?』

 

『部屋、間違ってませんか?』

 

見えないが、禁書目録がショックを受けたことをレンは察した。

 

『あの……ひょっとしてどこかであった?』

 

『わ、わたしの名前はね、禁書目録っていうんだよ』

 

禁書目録は、儚げな声で続ける。

 

『“偽名じゃねえか!”って言ったんだよ。覚えてる?』

 

『……不思議な名前ですね』

 

(やっぱり、上条当麻は、死んだんだ)

 

学園都市にある書類上では上条当麻は生きている。こうして、病院で話せる。しかし、彼には上条当麻としての記憶はない。もう彼は上条当麻であって上条当麻ではない。そんな彼にいくら話しかけても虚しいだけだ。

 

『ぷ、ぷははははは!』

 

どうしてか上条当麻ではない彼は、自分が何者かも分かっていないはずの彼は笑った。

 

『なーんて顔してんだ、お前。こんなふるい手に引っかかるなよな』

 

『とうま? なんで? え? 光の羽のダメージで記憶全部ふっとんだって聞いたのに』

 

『そのダメージだって魔術によるもんだぜ?』

彼は続ける。

 

『そーゆーこと。自分で自分の頭に向けて右手をブチかまさりゃーはいもとどーりだ。細かい魔術はわんねーが、相手が異能の力なら問題なし』

 

そんな訳がない。レンは確信をもって思った。

 

上条当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)が消せるものはあくまでも異能による1次被害だけ、二次被害以降はどうにもできない。

 

例えば、御坂美琴の超電磁砲(レールガン)、幻想殺しは磁力を消すことはできるが、磁力により、飛んできた金属を消すことはできない。

 

今回だって、魔術によって記憶を失ったのではなく、単純なるダメージによる記憶破壊と言った方が正しいだろう。

 

それは幻想殺しでは消せない。

 

しかし、幻想殺しをあまり知らない禁書目録は先ほどまでの記憶喪失を冗談だと信じて、怒りながら部屋を後にした。

 

『……行っちゃったよ。本当によかったのかい?』

 

禁書目録が出て行くと、カエル顔の医者は話し始めた。彼が記憶喪失でなく、記憶破壊をされたことを。思い出を一切合財なくした彼は上条当麻ではないことを。

 

『……よかったんじゃないんですか』

 

「……?」

 

『俺も手紙に書いてあること全てが真実だなんて信じれませんけど、でも、あの子には泣いて欲しくないって思ったんです』

 

記憶のない、禁書目録のことを知らないはずの彼はどうしてか、彼女を気遣った。普通、記憶喪失者は自分が何者か分からないくて自分のことで精いっぱいのはずなのにどうしてか、彼はそれをした。

 

『案外俺はまだ覚えているのかもしれないですね』

 

『思い出が残ってる? 脳細胞にかい?』

 

『そんなの決まってるじゃないですか。心に、ですよ』

 

そんな非科学的でオカルト側にいる人間もそうそう言わないことを彼は、恥じることなく平然と言ってのけた。

 

「……はぁ、馬鹿は死んでも治らない、てか」

 

それを言うなら、馬鹿は死ななきゃ治らない、なのだが、上条の彼の馬鹿は死んだところで治るものではないらしい。

 

さて、とレンは考える。

 

果たして、彼がやったあれは正解なのだろうか。吐いた嘘は必ずばれるし、時間が経てば経つほどその爆弾は大きくなっていく。それならば、ここでできるだけ早く爆発させておいた方が良い気がする。

 

(ん?)

 

彼にそれを言うか、禁書目録に真実を告げるか、悩んでいると違和感を抱いた。

 

廊下は静かだった。病室だからというレベルではなく、自分の呼吸の音が聞こえるほどに静か、まるで1人取り残されたような、そんな感覚だった。レンはこの感覚を3度、感じたことがある。

 

(人除けの魔術か……いや、それに似ているけど、それならあいつがいるはず)

 

魔術師が仕掛けてきた人除けの魔術、もしそうなら異能を打ち消す幻想殺しを持つ上条は病室にいるはず、しかし、今はその上条すらいない。本当に1人、誰もいない。

 

そうと分かっていても、レンは周りを見渡してしまう。やっぱり誰もいない、生気を感じない。しかし、ぐるりと1周すると、そこには人影があった。

 

「……っ!?」

 

重力無視のツンツン頭がトレードマークの上条当麻が、そこには立っていた。

 

『よぉ……』

 

右手をあげて遠慮がちに上条は挨拶をした。先ほどまで病室のベッドの上にいた彼が何故制服で目の前に立っているのか、レンはなんとなくだが、その理由を理解して笑みをこぼした。

 

感動的なシーンだろう。亡くなった友人がこうしてなんの奇跡か、目の前に現れたのだから。相手が異性だったら、ここで抱きついてキスの1つでもするだろう。そうじゃなくとも握手の1つくらいはする。

 

レンだってそのようで、笑顔で上条の方に歩きだし――。

 

「……お疲れしたぁ」

 

そのまま通り過ぎた。

 

『ちょっと、待てぇ!? ここはもう少し真面目で感動的な場面だろう!?』

 

「あぁ、はいはい。上条当麻としての魂が未練たらしく成仏せずに残っているねぇ。いやいや、感動したした」

 

『だからっ! あぁ、もういいや』

 

上条はレンへの抗議を諦め、再度現れたときの真剣な顔になった。

 

『お前に、お願いがあるんだよ』

 

「…………」

 

上条を見ず、レンはただまっすぐ通路をぼんやりと見ていた。上条からはレンの様子を窺えず、話を聞いているのかいないのか、はっきりとしない。しかし、その場から離れないということは聞く気はあるのだろう、上条はそう判断して話を続ける。

 

『俺はこの通りもうここにはいられない。もう学校に行くことも、お前らと話すことも…………禁書目録を守ることもできない』

 

上条は血が出そうなほど奥歯を噛む。悔しいのだろう、地獄の底までついて行くと決めた相手を1人置いてきてしまうことが。だから、次に来る言葉もきっと断腸の思いに違いない。

 

 

『禁書目録と“俺”のことよろしく頼む』

 

 

その言葉を最後に周りの雰囲気は変わった、いや、元に戻った。世界は生気を取り戻し、呼吸以外の音も聞こえるようになった。

 

「……はぁ、全く、答えも訊かず消えやがって」

 

レンは心底面倒くさそうにして頭をかいた。

 

ここで上条の言うことを守る必要は実際レンにはない。無視しても誰にも咎められないし、レン自身も気にしない。約束を取り付けてきた上条当麻はもう存在しないのだから。

 

頭をかく手を止めてレンはふっと笑う。

 

「でも、まぁ、今回の件、無条件で味方をしてやるって言った気がするし……出来る限りでやってやるよ」

 

レンは振り向いて告げた。目の先には先ほどまでいただろうツンツン頭の少年はもうそこにはおわず、ただ長い廊下が続き、手に収まるくらいの大きさの壁が見えていた。

 

じっと、レンはそれを見つめる。ここでずっとそんなものを見ていても、意味は無い。ここでずっと止めっていても未練たらしいだけだ。決心をしてレンは一言だけ言うことにした。

 

「……さよなら、当麻」

 

上条当麻が死んだ日、学園都市の外、ステイル=マグヌスと神裂火織の2人の魔術師は今回の報告の為にイギリスへ向かっていた。

 

ステイルはどこか憤りのある顔をしながらずっと考えていた。

 

(白神レン、彼は一体何なんだっ……!?)

 

何なんだ――あのときレンが聞かれたその質問、レンは何のおふざけもなく、微塵の嘘もなくただ迷いのない顔で言った。

 

『神様、とか?』




1巻終了。記憶を失う前の当麻、実際のところどんな人間だったのか分かってないんですよね。
さて、ここからはちょっとの間は小話をします。そして、そこからポルターガイストにでも、テレスティーナにでも行かしていただきます。
アドバイスや感想、少しくらいなら批評もお待ちしております。ではではまた会いましょう。

小話、新参から久々のキャラまで出ますよ。
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