夏休み、なんと素晴らしい響きだろうか。学生にとって春、夏、冬で最も長い休暇で楽しめる行事もたくさんある。秋も休み作ったらいいのに、という愚痴は今のところ保留にしておくとして夏休み、レンは原因不明の停電の所為で最悪の始まりとなってしまった。しかも隣人の叫び声による目覚めというダブルパンチだった。
片方の
レンは眠たい体を叩き起こして廊下に出て隣の部屋のドアを叩く。中から「今出ま~す」という軽い感じで声がした後、上条が姿を現した。
「あれ?レンどうしたんだ?」
「うるさい、安眠を邪魔された。2000円のホットドッグを所望する」
「いや、意味がわk「え!?2000円のホットドッグあるの!?・・・・・・黙れ!エセシスター!」
上条越しに上条の部屋の中を見るとそこには黒い(偏見かもしれないが)一般的な修道服ではなく、白に金のラインが入った修道服を着た銀髪の少女がいた。よく見ると目は緑色だ。どうやら日本人ではないらしい。そんな少女が男子の部屋にいる。そこから出される結論は1つだけだ。
「当麻・・・・・・誘拐した上にコスプレさせるのは・・・・・・友達の縁切っていいか?」
「レン、お前の中では俺はそういうキャラ確定なのか?この前もそうだけど俺をロリコンにしたのか?」
「したいっていうか・・・・・・ロリコンだし」
「決定事項!?待て!とりあえずあいつと俺の話を聞け!」
「・・・・・・・・・・・・わかったよ」
上条と違い危機察知のアンテナを持つレンは白いシスターから感じ取れる面倒くさいことオーラを感じ取った(目の前に白いシスターがいたらどんな人間でも何か思うことはあるとは思うが)。幻想御手なんていう厄介事ももしかしたら関わるかもしれないのにこれ以上巻き込まれたくない。だが、見てしまったものには関わってしまうレンはため息を吐きながらも上条の部屋に入った。
*
「信じられるか!」
白いシスター、インデックスの話を聞いた結果、上条は叫んだ。それもそうだろう、科学に街の学園都市においてインデックスは魔術なんてオカルトな言葉を口に出したのだから。さらにどんなものだと聞いたら魔力が無いと言うのだ。
「魔術に
「え!?レン信じんのか?」
「うぅ、あるったらあるもん!」
「ほう、なら証明してみろよ、エセシスター」
さっきから話が全然進まない。上条は魔術がないと言ってインデックスは魔術があると言う。一切譲る気がない2人は完全に水掛け論だ。そしてついに何かの線が切れたのか、インデックスが包丁を持ってきた。
「ちょ、ちょっと待て!?悪かった、だからそれを置け!」
「刺してみて」
「え?」
「この服は布地の織り方、糸の縫い方、、刺繍の飾りまで全て計算されて作られた"服の形をした教会"なんだよ。布地はトリノの聖骸布を正確にコピーしたものだし・・・・・・強度は法王級なんだよ?包丁で刺されたってへーきだもん!」
これまた分からないワードばかり出してきた。あれだ、とりあえず凄そうな言葉を並べて相手の判断を鈍らせるやつだ。それにしても見た目は唯の服、いくらインデックスの言う言葉が本当だとしても女の子に刃物を向けるのは抵抗があるだろう。
「出来るわけねえだろ!?」
「ほらほら、思いっきり刺してみる!」
「だぁあ!やめろ!」
2人は包丁の押し付け合いを始める。先ほどと変わらない出来る出来ないの水掛け論Part2だ。変わっているのは包丁による危険性の上昇だけだ。
レンはそんな2人を眺めてため息を吐いた。そして立ち上がって上条から包丁を掻っ攫った。
「な!おい、レン」
「いや、刺せばいいんだろ?」
「いやいや、信じんの?」
「どちらかが妥協しないといけないだろう。だったら刺そう」
さり気なく凄いことを言っているレン。インデックスの言うことなど信じていない上条はレンがシスター殺人犯にさせない為に必死になって止めながらこの状況の打開策を考えていた。
「そ、そうだ!レン、俺の右手には
「イマジン、ブレイカー?なにそれ?」
「こいつの右手はどんな異能でも打ち消すらしい。それが例え神様の奇跡だろうが」
レンはインデックスに説明しながら上条の思いついたことを察した。
「なるほど、幻想殺しでインデックスの歩く教会に触れて無効化されたら魔術が証明されるのか」
「むぅ、なんかそれ、嘘っぽいかも」
「なんだと!?」
「まぁ、ものは試しだ。俺着替えてくるから勝手にやっといて」
レンはそう言って上条の部屋を出た。と、そこで冷静になったのか1つ疑問点が頭に浮かんだ。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
上条の断末魔は再びこの寮に木霊した。
*
「はぁ、幼女を拉致してコスプレを強要した上に全裸にするとは・・・・・・
「まてまてまてぇ!てめぇはどうしても俺を犯罪者にしたいんでございますかぁあ!!?」
現状、補習の為に制服に着替えてきたレンはベッドの上で必死に修道服修復(もう少し頑張れば早口言葉になりそうだ)の作業に没頭しているインデックスを憐れみの目で見ながら携帯で警備員《アンチスキル》に通報する一歩手前まできていた。
上条は「それだけは勘弁してください」と言いながら土下座をしている。身体中には噛みつき跡があちらこちらに付いている。どうやらインデックスには噛みつき癖があるらしい。
「大丈夫か、インデックス?よかったら俺が縫おうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いい」
どうやら完全にご立腹の様子、取りつく島も無いようで。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「や、やめろ!俺をそんな目で見るな!」
「はぁ、まぁこの件に関しては一旦保留として。成績不振者の俺とお前はこれから補習なんだが?」
「げ!?もうこんな時間かよ」
小萌の補習を遅刻でもすればあの幼女の容姿で泣かれて周りから白い目で見られるだろう。ミリアなら自身の体を抱いてモジモジするだろうが、あいにくレンも上条も白いもの好きの変態ではないのでただ罪悪感に押しつぶされてしまう。
そう思ったのか、はたまた唯単に遅刻は駄目だと思ったのか上条は急いで玄関に出ようとした。だが、その際に角に小指をぶつけ飛び回って痛がったら携帯が落ちてその所為で携帯のディスプレイが見事に割れた。
レンは、ああまたか、と思いながらそれを眺めていた。一方インデックスは修道服の修理(といっても巨大安全ピンで布を合わせただけなのだが)が終わって布団から出てきた。
「あはは、不幸っていうかドジだね」
その後、敵が来るかもしれないという理由でインデックスは上条の部屋から出ていった。上条は敵に狙われている少女をいかせまいとしたが「地獄の底までついてきてくれる?」という言葉で口を紡いでしまった。レンは、上条が巻き込まれたことなので知らんぷりだった。
「はぁ、上条、いくじない」
「な!?あれは仕方がないだろ?てかお前だって止めなかったじゃねえか・・・・・・」
「まぁな、今回巻き込まれたのはお前、手助けはするが中心に行く気は俺には無いんだ」
そうかよ、と言って上条は歩き出した。レンは少し駆け足で追いかけた。
「まぁ、フードをおいてったてことは関わる気がまだあるってことだな」
そしてそう言って上条を追い抜いていった。
「なっ!?」
後ろから上条が言い訳を言った気がするが聞こえない。あ~あ~聞こえない。