「フブキとサイタマの結婚」
リクエストがリクエストなので、サイフブ全開です。
桜色のドレスを着たエヒメが、ポツリと呟く。
「……あるアメリカンジョークを思い出しました」
「どんな?」
困っているような呆れているような、そして同時に微笑ましそうなという何とも微妙な顔をしてエヒメが呟いたから、私は続きを促した。
「教会の入り口に花嫁さんがいるのを、親子が見ました。子供は、『何でお嫁さんは白いドレスを着るの?』と親に尋ねました。親は『白は人生で一番幸せな日に着る色だから』と教えました。
すると子供はもう一度、尋ねました。『じゃあ、隣の男の人は何で黒い服を着ているの?』」
「……あぁ」
エヒメの思い出したアメリカンジョークを聞いて、何故この状況でそんな微妙な表情で思い出したのかを理解して、思わず私も同じ顔になる。
ただ、リリーは何故か戸惑うような顔をして、恐る恐る私たちに尋ねる。
「……え? ……あの、それは『結婚は人生の墓場』的なブラックジョークですか?」
その質問で、リリーの勘違いに私もエヒメも気づき、苦笑しながら訂正する。
「違いますよ、リリーさん。だって教会での結婚式なら、花婿は教会の中、牧師さんの前で待ってるはずですもの」
「教会の入り口に花嫁と一緒にいるってことは、その男は花婿じゃなくて介添え人。たぶん花嫁の父親よ」
私たちの訂正でリリーは軽く目を開いてから納得したように頷き、そして彼女も私たちと同じ顔になる。
困っているような呆れているような、けれど微笑ましく思っているような何とも微妙な顔で彼女は言う。
「なるほど。ブラックジョークじゃなくて、しんみりするけど微笑ましいジョークなんですね」
女三人で何とも微妙な苦笑をしながら、改めて私は周りを見渡す。
「フ、フブキ様……、お美しいです……お美しいですが……ううっ!」
「おい、もう泣くな! フブキ様の門出は笑って送ると決めたのだろうが!!」
私の控室で、黒い礼服に白いネクタイでむせび泣く部下たちを見て、エヒメは苦笑しながら私に言う。
「まさしく、フブキ組の皆様にとっては人生最大の不幸な日ですね」
「あなたがそれを言う? 彼らの不幸の元凶の妹が」
エヒメの言葉に少しだけ皮肉気に私は笑って言いながら、纏めた髪の代わりに肩にかかる長いベールを掻きあげた。
* * *
とりあえず、控室の中でむさい男どもが号泣されてたら私が落ち着けないからという事で、エヒメとリリーがフブキ組の男どもを部屋から追い出した。
女だけが部屋に残って一息ついたところで、リリーは両手を拝むように合わせて目を輝かせる。
「あぁ、それにしてもフブキ様、本当にお美しいです。フブキ様自身がお美しいのはもはや自明の理ですが、それを損なわせない、むしろさらに美しさを際立たせるドレスが素晴らしい」
女の子なんだから、好きな色のドレスを好きなように着なさいと言ったのに、こんな時までフブキ組のイメージカラーを尊重して、黒いミニドレスを着たリリーが、うっとりとした顔で改めて私と私のドレスを褒める。
私もそう思うわ。やっぱり、信頼できる相手にオーダーメイドした甲斐があったわね。
「ありがとう。それと。エヒメもありがとね」
「頑張った甲斐がありました」
「え?」
私の言葉と、エヒメの返答にリリーが少し呆けた声を上げてから、もう一度私のドレス、私の身体のラインにぴったり沿ったマーメイドラインに、ベールやドレスの裾の刺繍やレース、そして胸元や髪に飾るコサージが花ではなく、雪の結晶をモチーフにしたこのドレスを見て叫ぶ。
「このドレス、エヒメさんが作ったんですか!?」
「はい。自信作です!」
そう。私の結婚が決まった時、エヒメにドレス制作を頼んだ結果がこれ。
初めの方は「私なんかの素人よりはマシ程度が作るよりはちゃんとしたプロの方に頼んだ方が……」とか言って恐縮してたけど、私にとってこの子の作るものは既に「私に相応しいブランド品」だったからね。ゴリ押してやったわ。
けど、なんだかんだで作り出してからは、私よりもノリノリだったけどね。私よりもドレスの資料を集めてすっごい楽しそうに、このデザインはどうですか? こんな柄はどうですか? 生地はこれとこれどっちがいいですか? とこだわりまくっただけあって、我ながらに私に相応しいと言うより私だけにしか似合わないドレスになったと思う。
リリーは私の許可を得てからベールの裾を持ち上げて、エヒメに「いえ、本当にすごいですね。もうこの道でエヒメさんやっていけるんじゃないですか」とか言いながら、改めてまじまじとその繊細なレースに感心する。
「あはは、ありがとうございます。でも、さすがに今回で凝りました。作るのは実に楽しかったですけど、いくら時間があっても足りませんから」
リリーの称賛にエヒメは笑って礼を言いつつ、謙遜する。まぁ、この子の場合は謙遜じゃなくて本音でしょうけど。
ちなみに時間が足りないというのは、いくら縫っても縫っても終わらなくて間に合わないとかじゃなくて、いくらレースを編んでも刺繍をしてもまだもっと作りたいという、この子の創作意欲の問題だったりする。
うん、ある意味この子はこの手のプロに向いていない。
「そうよね。どんどんゴージャスになって完成度が上がっていくのは私としては嬉しいけど、いつまでも完成しないサグラダ・ファミリア状態にされたら私はいつ結婚しろっていうのよ?」
私の軽い皮肉に、エヒメはまた困ったように笑って謝る。
「すみません。ジェノスさんにも、怒られちゃいました」
「鬼サイボーグが?」
「えぇ。私がフブキさんのドレスをずーっと作ってるから、かまってくれないって言って拗ねちゃいました」
エヒメの返答に、リリーは苦笑。私は取り繕う気もなく、顔をげんなりさせた。
うん、知ってた。あいつが私の為に「早く完成させろ」と怒る訳がないことくらい知ってた。仮にそういう意味合いで怒ったとしても、それ私の為じゃないし。あいつの師匠の為だし。
……何なのあのサイボーグは。本物の小姑より小姑っぽいんだけど。
「そういえば、鬼サイボーグさんはどうしたんですか?」
苦笑してから、もはやエヒメとワンセット状態のあれがそういえばいないことにリリーが気付いてエヒメに尋ねると、今度はエヒメの方が苦笑する。
「ジェノスさんはお兄ちゃんを説得してる最中のはずです」
「説得?」
エヒメの言葉に、リリーがオウム返しする。その問いに私やエヒメが答える前に、もう一つ疑問の声が上がった。
「……説得? 何、あのハゲは今更になって私のフブキが、こんなに可愛い私のフブキを嫁にもらうのが不満だって言ってるの!?」
「お姉ちゃん!?」
「タツマキさん!?」
いつの間に部屋に入って来ていたのか、裾に黒いバラの刺繍を施した緑のドレスに身を纏ったお姉ちゃんが、宙に浮きながら髪を逆立てて戦闘モードになっていた。
私とエヒメがお姉ちゃんの勘違いを訂正しようと口を開くけど、その前にお姉ちゃんのマシンガントークが掃射される。
「フブキ! やっぱり考え直しなさい!
確かにあのハゲは、私に匹敵するくらい強いし、正義感もあって頼りになるし、見るべきところをちゃんと見てるし、適当に見えてやらなくちゃいけないことはどんなことでも貫き通すし、やる人間がいたら任せるけど、基本的に自分で家事もちゃんとして……あれ!? 実は旦那としては結構な優良物件!?」
結婚を考え直せと説得しようとしたはずが、何故かお姉ちゃんは実は結婚相手としてかなり優良だと自己完結してしまった。
そうね、改めて考えてみるとあいつは結婚相手としてはかなりの好条件よね。ハゲだけど。
まぁ、ここで自己完結したからってお姉ちゃんの暴走は止まらないんだけどね。これくらいで止まってくれるようなら、私は今まで苦労なんかしないし、下手したらあいつにも会っていない。
……ある意味、私のキューピットはお姉ちゃんなのかしら? 感謝する気はあまり起きないわね。
「で、でもね、フブキ! あいつにはいいところがいっぱいあるかもしれないけど、でもあのハゲはそのいいところを全部台無しにするレベルで、デリカシーがないわ!!」
……私だけじゃなくて、エヒメとリリーも頭を抱えて黙り込んだ。
……うん、知ってる。本当に、あいつのデリカシーのなさはもう嫌になるくらい知ってる。
だってお姉ちゃんから私を庇ったかと思ったら、私の関係は友人どころか知人と言い切った奴だもん!!
あれほど、こいつの首を電球みたいにねじり切ってやろうかと思ったことはないわ。
「……何か、お兄ちゃんが本当にごめんなさい」
「「エヒメは悪くないわよ!!」」
遠い目をして兄の代わりに謝罪するエヒメに、思わず私とお姉ちゃんでフォローする。
あなたは悪くないから! むしろ、あいつのデリカシーのなさの一番の被害者だから!!
「……何を騒いでいるんだ、タツマキ。廊下まで聞こえていたぞ」
もうお姉ちゃんが私を説得してるのか、私たちがエヒメを慰めているのか訳の分からない状況に陥っていたら、心底呆れた口調で言いながら、鬼サイボーグが部屋に入ってきた。
っていうか、どいつもこいつもノックくらいはしなさいよ。
「ジェノスさん! お兄ちゃんはどうだった?」
鬼サイボーグの文句にお姉ちゃんは顔を歪ませたけど、二人のケンカが起こる前にエヒメが間に入って話を変える。
「すまない。努力はしたが、俺では説得しきれなかった。フブキ、もうお前が直接言った方が良いんじゃないか?」
鬼サイボーグの返答で、お姉ちゃんの機嫌がまた一気に急降下したけどその不機嫌が爆発する前にエヒメの方が爆発した。
「あー、もうそうだね。もうここにいる全員で、何とか説得しよう」
そんなことを言ったかと思ったら、エヒメの姿が一瞬で掻き消える。
そしてまたこの部屋に現れるまで、10秒もかからなかった。
いきなりエヒメに引っ掴まれて、テレポートでこちらまで引きずり出されたフロックコートのハゲはバランスを崩して地面に転がるけど、エヒメは倒れた兄に手を貸すでもなくむしろ兄の前に仁王立ちしてまず言った。
「お兄ちゃん、いい加減に腹をくくりなさい! 結婚式の新郎なんて添え物なんだから、そこまで恥ずかしがらない!!」
「うるせー! そんなんわかってるわ! わかってるからと言って、『はい、そーですか』と納得できるもんじゃねーだろ!!」
女は結婚式に一生分の夢があるけど、男はむしろ恥ずかしすぎるから目を閉じて駆け抜けたいって思うとは聞いたことあるけど、こいつはその典型だったのねと、私は呆れながらもうじき旦那になるサイタマと義妹のケンカを眺めた。
* * *
「っていうか、なんで寄りにもよってこんな一番恥ずかしい服なんだよ! タキシードとかも柄じゃねーけど、こんな王子様みたいな恰好、俺に似合うわけねーだろ!! どう見ても趣味の悪い漫才師じゃねーか! 俺の正装はヒーロースーツなんだから、もうそれでいいだろ!!」
『いいわけないだろ!!』
サイタマのセリフに、この場にいた女全員の怒りが唱和した。
「どう考えてもそれこそ、売れない漫才師にしか見えないから!」
「あんたはこんな着飾った綺麗なフブキの前で、あんなくたびれたスーツ姿で横に並ぶ気!?」
「逆にそっちの方がすごい度胸ですね!!」
「っていうか、それやったら速攻破談にしてやるから」
「先生、すみません。さすがに今のはフォロー出来ません」
私たち女性陣だけじゃなくて鬼サイボーグにまで「お前が悪い」と言われたて、さすがにサイタマは黙る。
黙りはしたけど、子供のように地面に胡坐をかいて、ふてくされた様子なので明らかにまだ諦めて素直に私の横に並んで入場する気はないみたい。
その様子にさすがに私もイラってしたけど、私より先にキレたのはもちろんお姉ちゃん。
「何なのよ、あんたは! 私の妹が、フブキのどこが不満だっていうのよ!!」
「不満があるんじゃなくて、嫁が美人過ぎるから横に並ぶのが恥ずかしいって言ってんだよ!!」
お姉ちゃんが宙に浮かんで髪を逆立ててまた戦闘モードに入りながら問うた言葉に、ほとんど売り言葉に買い言葉でサイタマは即答して、しばしその場に沈黙が落ちる。
あぁ! どうしてこいつは、デリカシーがないからこそ思ったことをそのまんま口に出すのよ!! どう考えてもあんたの格好よりそのセリフの方が恥ずかしいわよ!!
恥ずかしさで顔が火照って化粧が落ちそうだけど、どうしても口元が緩んでにやけてしまいそうな自分の単純さが、なおさら恥ずかしい。
「……そ、そう。それなら、仕方ないわね」
「タツマキさん、納得しないで! 説得してください!!」
サイタマの言葉で戦意とか敵意がお姉ちゃんから喪失して、むしろ少し満足そうに胸を張ってお姉ちゃんは床に下りたけど、エヒメが突っ込む。
その言葉にお姉ちゃんじゃなくて鬼サイボーグが応えるように、サイタマに向かって真顔でこいつは言い放った。
「大丈夫です、先生! 先生もフブキに負けず劣らず、本日は素晴らしく輝いてます!!」
『ぶはっ!!』
「うるせーっ!!」
鬼サイボーグのセリフで、女性陣は一斉に噴き出してお腹を抱えて撃沈。そしてサイタマは盛大にキレた。
鬼サイボーグ的には他意のない、似合ってる、カッコいいと同意語で「輝いてる」と言ったのはもちろん全員わかってるけど、あいつの頭でそのワードは反則。もう物理的に光が反射して輝いているようにしか聞こえない。
この後しばらく、鬼サイボーグは何で自分のセリフが笑われて、サイタマがキレているのかがわからず、「輝いてる」を連呼してしてしまったせいで、私たち女性陣は式前だというのに化粧が崩れるほど笑わされて、サイタマも終いには「あぁ、どうせ俺は輝いてるよ! もうカメラのフラッシュ代わりに使え!!」とか言って拗ねたけど、結果としてはもうこのやり取りでどうでも良くなったのか、素直に式に出ると言い出した。
うん、結果としては鬼サイボーグがグッジョブなんだけど、もう腹筋がねじれるかと思うほど笑ってお腹も痛いし、息が出来なくなるまで笑わされたから礼は言わない。
* * *
何とか崩れた化粧を直してもらって、ようやく一息をつく。まぁ、あと10分ほどで新郎新婦の入場になって、また忙しくなるけどね。
ゲストがもう式場で着席して、控室には私と何故か自分の控室に帰らないサイタマだけが残される。
特に会話はないけど、気まずくない空間。……こいつと二人きりが、こんなに落ち着いて居心地がいいなんて、出会ったころは到底考えられなかったなぁと、昔のことを思いだしていたら、唐突にサイタマが「なぁ」と声をかけてきた。
「良かったのか? 教会とかで式をあげるんじゃなくて」
その問いに、思わず私は苦笑する。苦笑にしては、やけに嬉しそうで楽しそうな笑みであることは、見なくてもわかった。
「あら、ついさっきまで恥ずかしいから嫌だって駄々をこねてた奴のセリフとは思えないわね。
……安心なさい。私だって、バージンロードの歩き方だの指輪の交換の仕方だとか、そういう堅苦しいものは面倒だし、誓いのキスなんて人前でする気はないわよ」
こいつは本当に、マイペースで割とわがままに見せかけて、結構人に気を使う奴なのよね。
安心なさいよ。私だってそりゃ結婚式に夢は持ってるし、レトロな教会で結婚式っていうのに憧れは持ってたけど、その辺のマナーとかやらなくちゃいけないこととかを知っちゃったら、憧れもロマンも「面倒くさい」「恥ずかしい」が上回ってどうでも良くなったわよ。
私には、この披露宴だけで十分よ。
でも、私の言葉にサイタマはあからさまにホッとした様子を見せたのが、少しだけムカッと来た。
わかってるけど、あんたが自分の感情を隠せない奴だってことはもう嫌になるくらい知ってるけど、けど私の気を使ったんなら最後まで使いなさいよ!
そう思ったから、少しだけ意地悪したくなった。
「けど、少しは憧れてたのは事実なのよね」
私は立ち上がってドレスの裾をつまんで歩く。
そして、きょとんとしてるサイタマの前に立って言う。
「人前でする気はないし、信じていない神に誓ってもらっても嬉しくはないから、だから、今ここで、私に永遠の愛を誓いなさい」
「げっ!!」
「げっ!!」とは何よ、「げっ!!」とは。本当にもう少し他の反応はなかったの?
「え?」とか言って狼狽える程度なら、「冗談よ」と言って勘弁してあげようと思ったけど、もうその反応で勘弁する気は完全に失せた。
自業自得だと思って、腹をくくりなさい。
「どうしたの、サイタマ? 誓ってくれないの? ヒーローなのに、嫁を生涯守り抜く自信がないの?」
私が豪快に顔ごと目をそらすサイタマの頭を掴んでこちらに向きなおして言ってやれば、こいつはばつが悪そうに「口紅が落ちんぞ」と悪あがきの言葉を吐く。
「口紅くらい、すぐに塗り直せるわよ」
そう言いかえされることくらいわかってたでしょうに。
サイタマは、諦めたように深いため息をついてからいつもの赤いグローブじゃなくて白い手袋に覆われた手を私の後頭部に添える。
「誓ってやるから、お前も誓えよ」
髪飾りやベールがずれないように、不器用ながらに気を遣いながらサイタマは私の唇に…………
* * *
……目が覚めたら、自室とは比べ物にならないくらい狭くて古くて、なのに自分の家よりも落ち着けるワンルームだった。
一瞬、パニックになりそうだったけど台所からエヒメが、「あ、フブキさん。おはようございます」と声をかけてきて、だいたい思い出した。
そうだ、昨日はサイタマの家で何故かキングも一緒になって飲み会して、全員が飲み過ぎたから男は隣の鬼サイボーグの部屋に、私はこの部屋に泊まったんだった。
うん、それだけ! 何も疚しいことなんかない、健全極まりない外泊よ!
あれは、夢! ただの夢!! エヒメの服じゃサイズが合わないから、サイタマのTシャツをパジャマ代わりに借りたとか、起きた時サイタマの枕を抱きしめてたとか関係ない! Tシャツに至っては、サイタマのだけど新品だし!
ほら、夢って突拍子のない内容なのに見てるときは何も疑問に思わないものじゃない! 何故か夢の中で勇者になってたり、現実では絶対に出会わない、仲良くなるわけない人間と一緒だったりするじゃない!
あれもそういうたぐいの夢!
絶対に、私の深層意識とか願望とかは全く何の関係もない!!
「……フブキさーん? 着替えないんですか?」
私が布団の上で亀みたいに丸まって自分に言い聞かせていたら、エヒメが困惑した様子で声をかけつつ、私の服を持って来た。
「……ありがとう」
まだ、夢のインパクトが消えてないけどこれ以上情けない姿を見せるわけにもいかないので、私は自分の服を受け取って着替える。
気を取り直したつもりだったけど、私の顔色はよっぽど悪かったのか、エヒメは心配そうな顔で「どうしたんですか、フブキさん? 具合が悪いんですか?」と尋ねたので、私はついうっかり「夢見が悪かっただけよ」と答えてしまった。
幸いながら、エヒメは私がどんな夢を見たかを聞かなかったのは助かったけど、「そうなんですか。あ、そういえば私、面白い夢を見ました」と続けられた言葉に、血の気が引いた。
「ふふっ。あのですね、フブキさん。私、フブキさんがお義姉さんになる夢を見ちゃいました」
「……………………ありえないわよ!!」
エヒメの言葉に数秒間フリーズしたのち、私は大絶叫で否定した。
あ、ありえないありえないありえない!!
同じ夢!? そんなわけないでしょ! そう、あれはただの突拍子のないリアリティも整合性もない、ただの夢なんだから!!
私の願望も深層意識も関係ない、予知夢なわけがないただの悪夢にすぎないんだから!!
「おーい、朝っぱらからうっせーぞ。何があったんだよ?」
「うっさい、死ねハゲ!!」
「お兄ちゃん!?」「先生!?」「サイタマ氏!?」
私の大絶叫を何事かと思って様子を見に来たサイタマに、私は超能力で思いっきり吹っ飛ばしてしまった。
わ、私は悪くないわよ!!
ナハト・リコリスさんリクエスト、「フブキとサイタマの結婚」でした。
夢オチまでリクエストだったので夢オチにしましたが、一応夢の世界は2年後あたりを想定して書きました。
なので、一度しか交わしていないけどエヒメとジェノスの会話で二人の口調にも注目して頂けたら、作者は嬉しいです。