Sword Art Online Wizard   作:今夜の山田

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ノリに乗って書いたはずが内容が薄っぺらい。
今回も四千前後。なかなか進まないです。あと主人公がかなりちょろい子になってます。



事後で承諾させる

「団長! なんであんな奴を入れたんですか!」

 

 五十五層にある主街区の《グランザム》は鉄の都とも言われている。

 街の建築物が他の層の街にあるような石材ではなく、鋼鉄でできているのがその所以だろう。

 そのグランザムに、血盟騎士団の本部――ギルドハウスがある。

 

「彼女は私との決闘に勝ってね。その勝者の権利をもって、彼女の入団を認めただけだよ」

「それであんな犯罪者を入れたんですか!? 一体何を考えてるんですか!」

「アスナ君、彼女が行ったとされる犯罪は(ことごと)く誤解だ」

「何が誤解なんですか! まさか団長は小さい女の子が好きな……っ」

「人の話を聞きたまえ」

 

 そのギルドホームのとある一室で団長が副団長を説得してくれています。

 内容は「何故俺を血盟騎士団に入団させたのか」。

 昨日コロシアムにいた団員はなんとか納得はしてもらえたものの、翌朝に団長からメッセージが送られた事で俺の入団は全ギルドメンバーが知る所となり、結果コロシアムに居なかったメンバーが押し寄せた。

 今部屋に居るのは俺と団長と副団長、それとキリトだけだが、廊下には他の団員が大勢いる。代表として副団長と、ついでにキリトが入室したというわけだ。

 副団長は団長の対面の椅子に座り、そして俺の対面にはキリトが座っている。ぶっちゃけ気まずい。

 

「えーっと、名前で呼んだ方がいい? それとも黒の剣士サマ?」

「……名前でいい」

「そっか。知ってるだろうけど、俺はコクロウ。よろしくな」

「…………キリトだ」

 

 気まずい。隣では団長と副団長が口論してるし超気まずい。

 

「今レベルお幾つ?」

 

 うああああ。お幾つって何だ。何歳聞くように言ってるんだよ。っていうか何レベル聞いてるんだよ。他に話題有るだろ。

 

「……95だ」

「俺は99。言っておくが、チートじゃないからな」

「…………」

 

 キリトはじっと俺を見つめる。

 うわー、わー。

 何かもう正座したい気分だ。沈黙が痛い。しかし隣からは副団長の怒鳴り声が聞こえてくるので決して静かではない。

 何か今、「殺されかけた」とか聞こえた。それって七十四層のあの事じゃないよな。頼むから団長頑張ってください。俺もこっちで頑張ります。

 落ち着け俺、とにかく話題だ、話題。できるだけ楽しそうで、長く続きそうで、無難な話題。

 

「……彼女とかいます?」

「「はあ!?」」

 

 あれ、声が二重に聞こえる。

 それもそのはず、目の前で口を開けて驚いているキリトの横には、同じく口を開けて驚く副団長がいる。

 

「ちょっとあなた、何聞いてるんですか! ふざけないでください!」

「え、あ、すみません。ごめんなさい。違います。そんなつもりは毛頭ありません」

「まったく! ――それで、彼女はですね」

 

 怖ええええ。副団長マジ怖ええええ。今のは鬼気迫るものがあった。

 なんかこう、謝らなかったら首絞められてた気がする。圏内だから大丈夫だろうけど怖いもんは怖い。

 何が違って何のつもりが毛頭ないんだろうか。よくわからないが、ああ言わなかったら大変な事になっていたと思う。

 

「えーっと、まずは準備期間中に呼び出しちゃったみたいで……その、ごめんなさい」

 

 本来であれば、キリトには二日間の準備期間があったそうだ。

 しかしそれは今朝のニュース――俺が入団したこと。で予定が狂った事だろう。一先ずはその事について謝っておかねばならない。

 

「気にしないでいい、俺はただのアスナの付き添いだ。制服もまだ着ていないしな」

 

 そう言うキリトの服装は黒系の装備で固められている。先日の服装とまったく同じだ。

 現実なら不潔とか言うんだろうが、この世界はゲームだ。汚れなんてつかないし、風呂に入っても清潔になるわけでもない。

 沼地に顔を突っ込んでも不快感はあるが一切汚れないし、触手系のモンスターに襲われて粘液をかけられても戦闘終了後には何事もなかったかのように元通りだ。 

 

「その装備、気に入ってるのか?」

「ああ。隠蔽ボーナスも高いからな、できればこのまま着ていたいんだが……」

 

 よし、良し。良い感じに話が弾んでいる。衣食住は話題展開の基本だ。

 ここらで小粋なジョークをかませば、この室内に広がった淀んだ空気も吹き飛ぶはず。

 

「ハハハ、騎士団に入ったら、むしろ目立ちそうだ。森に隠れるなら木にならなきゃな!」

「…………」

 

 あ、なんか滑った空気がする。視線が痛い。白けきったキリトの視線が痛い。

 うおおお、この場を打開する話題は無いか――神よ俺に天啓を授けたまえ――閃いた。

 

「好きな女の子のタイプってなんですかぁ?」

 

 

 

 うわああああああ。何聞いてんの。何聞いてんの俺。

 しかも若干声が上擦ってた気がする。やばい。今の発現で室内の時が止まってる。

 この時が止まった感じってやっぱりみんな考え事してるんだろうな、今の俺みたいに。

 キリトとアスナは口をパクパクさせている。横目で団長を見ると、掌で顔を覆って机に肘を付いていた。すみません団長。

 

「な……、」

「な……?」

 

 副団長は口をパクパクさせながら、俺を指差す。

 な、って何だろう。ナイル川――いや、違うか。

 

「何聞いてるのよあなた!!」

「すみません! 何でも無いです忘れてください忘れます!」

「…………、それで、その事についてですが――」

 

 

 副団長怖ええええ。鬼気迫るって言ったけど今のは正に鬼が迫ってきた感じがする。

 今度からなるべく怒らせないようにしよう。とりあえず副団長の前で好きな女の子とかはダメだ。

 うむ。となるとあとは食と住だな。好きな食べ物とか、何処を拠点に住んでるかとか――寒気がするから、多分これ聞いたら副団長怒鳴るんだろうな。

 

「……ところで、コクロウは団長に勝ったそうだが、どうやって勝ったんだ?」

 

 考えあぐねていたら、キリトの方から話題を振ってくれた。

 さっきの会話も決して無駄ではなかったと言う事だろうか。

 それとも初めから何もしなかった方がよかったとかそういうオチだろうか。いや、認めない。後者は認めない。

 よって前者と採用。さっきの会話は無駄じゃなかった。うん。

 俺は精神を落ち着かせるため腕を組んで胸の前に持ってくる。こうすれば心を押さえれるとかそんな気がする。

 そして高ぶる気持ちを押さえてキリトの問いに答える。一応、団長に勝ったと言う事は自分の実力が証明できたという事でもあるからかなり嬉しい。

 

「距離を離しての突貫(ぶちぬき)。これ最強だよ、ふふん」

 

 少し興奮が冷めきっていなかったようで、鼻息が少し出てしまった。少し恥ずかしくて顔が熱くなる。

 突貫戦法は俺が最も得意とする戦法だ。これで勝てなかった奴は今の所存在しない。対人戦に限るけど。

 そしてこの戦法は先日の一戦で広場においても最強だと証明された。これができるのが槍くらいなものだから、今頃攻略組では空前絶後の槍ブームかもしれない。

 

「……そんな単純な戦法で勝てたのか?」

「いやいや、キリトにも勝っただろ。ほら、あの戦法」

「…………あれか」

「まあ、防がれたんだけどな」

「あれを防いだのか……」

 

 キリトは横目で団長を見る。確かに、防いだことには俺も驚かされた。

 今になって思えば、あの時の団長は人間の限界とやらを色々超えていた気がする。

 

「でも勝ったって事は削れたんだよな」

「一撃で四割。あれには私も驚いてしまったよ。いったい君の能力値はどうなっているのだ」

 

 キリトの問いに横から団長が答える。達成感で溢れてるから、恐らく副団長をなんとか説得できたんだろう。団長GJです。

 一方、副団長はなんかもう口から魂が出ていそうなほど疲れ切っている。ご愁傷様です。

 

「ちょっと待ってくださいね。今読み上げますから…………えーっと、ヒットポイント約一二八〇〇〇〇、STR(筋力)二六九二、AGI(敏捷)二八四九。あ、チートじゃないですよ」

「信じられるか!」

「…………」

 

 おおう、キリトからツッコミが。

 うーん、《竜の血》だの《スピードリンク》だの能力増強(ドーピング)アイテムをひたすら食いまくっただけだというのに、理不尽な。

 団長ですら無言なのがまたきつい。いや、あれは考えてくれているのだろうか。――さすが団長、最高です。

 

「それは……能力増強アイテムによるものか?」

「やっぱり団長は分かってくださるんですね! ええそうです。もう二〇〇〇くらいは能力増強してますよ、ヒットポイントなんかは死ぬのがこわいからひたすら狩って狩って飲みまくりましたよ、ええ!」

 

 ああ、団長は心のオアシスだ。団長がほとんどの誤解を解消してくれる。

 もうずっと団長の隣に居たい。凄くありがたい。後光が見えます。

 

「ステータス限界を設定……いや、能力増強アイテムはやはりボスドロップに……」

 

 おおう、何か団長がまた悩んでる。悩む団長も素敵です。声が小さくてよく聞こえなかったが、まあ気にしないでおこう。

 いやー、それにしても悩む団長も絵になるなぁ。携帯持ってたら間違いなく撮って待ち受けにしていると思う。マジリスペクト。

 

「団長……素敵……」

「!」

 

 おっと、口が滑って思ってる事を口に出してしまったようだ。

 まあ、団長が凄いからこそ、口から漏れだす程って言うかなんて言うか。――痺れる憧れる。

 副団長も覚醒したようだ。心なしか嬉しそうに見える。何かいい事でも思いついたのだろうか。

 

「団長、他の団員には私から伝えておきます。……キリト君、行こっ」

「あ、ああ」

 

 そう言って副団長はキリトと一緒に部屋を出る。俺もしばらくしたら出ようかな。今出ていったら間違いなく囲まれるし。

 

 ――あれ、これ団長と部屋に二人っきりじゃね。すごい、すごいぞ団長効果。護衛も無しにギルドマスターと二人っきり。

 早速、犯罪者の汚名は返上できているようだ。俺もそれほど信頼されているって事だな。俺も頑張ってその信頼に応えなければ。

 ふふふ、今は平団員だが、これからどんどん活躍してすぐに幹部に上り詰める。そしていずれ、副団長の座を俺の手のものにする。

 目指すは団長の右腕、そんな存在。

 

「団長、俺頑張ります! 頑張って、団長の隣に並べるような……そんな存在になります!」

 

 立ち上がり、隣の席に座る団長に笑いかける。

 

「…………ああ、頑張りたまえ」

 

 団長も苦々しいながらも笑い返してくれた。これはもう頑張りまくるしかないな。

 まずは七十五層をクリアすることが目標だ。マッピング、露払い。今までこそこそやってきた事が晴れて皆の知る所で出来る。

 俺の活躍を見れば、信じてくれなかった人たちもきっと俺を改めて見てくれるはずだ。




他の団員たちとキリトとアスナは別室行きました。
vsクラディールはまだまだ。茶番が続きます。
アスナは恋敵とかじゃないと知って生気を取り戻しました。
団長は若干引いてます。恋愛方面に勘違いしてるけど子供の事だからまあ否定しないでおこうとかそんな優しさを発揮してる感じです。
本来なら文中で察せるようにしないとダメなんでしょうね。
とはいえ、この辺の描写はどうねじ込めばいいのか分からず、知ってる人がいれば教えてください。
ご指摘お待ちしております。

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