Sword Art Online Wizard 作:今夜の山田
技量も学も無いせいで話がどんどん薄くなっていきます。今回三千文字。当初の約半分ですね
さてさて、これで冒頭部分は終わり、次回から冒険していきますよー
今の所原作沿い。オリジナル展開なんて無理やったんや……
広場が完全に喧騒に包まれた時。俺はさっさとこの場を抜け出ることに決めた。
これ以上ここにとどまっていても意味が無い。それどころか危険だ。一刻も早く立ち去らなければならない。
なぜなら――
「……ん? おい、あの白髪の女の子だけ、さっきと変わってなくないか?」
誰かがその言葉を言った。この場において、白髪の女の子と言えば、俺のアバターくらいしかいないだろう。周りはほとんど茶髪か黒髪だ。
俺だけ変わっていないのだ。不審に思う可能性は十全にある。
その言葉を聞いたのだろう近くに居た中年の男が辺りを見渡す。俺を見つけると、驚いた顔をして俺の傍に詰め寄ってきた。
周囲に居る人のこともあって、俺はすぐに逃げ出せず、男に肩を掴まれ、揺さぶられる。
「おい、あんた。……なんで変わってないんだ!?」
か弱い少女のような今の状態では男の方が50cm以上も背が高い。
そのまま押さえつけられるように揺さぶられ続けた結果、後ろに倒れて押し倒される形となった。
「おい、答えてくれよ……何でなんだよ! 何でお前だけが!」
男の声は既に疑問を通り越して怒号と化している。その声にビビリな俺は驚いて、声が思うように出せなかった。
こんな時ヒーローなんかがいれば、俺を助けてくれるんだろうか。とかそんな今はどうでもいい事を思った。
「い、いやあああ!」
突然、女の悲鳴が聞こえた。悲鳴が聞こえた方向を見れば、俺の方を見て、震えている女性が居た。
女の子が男に押し倒されるのを見て、自分も同じような事をされると思ったのかもしれない。
彼女は俺の視線に気付くと、辺りを見回した後人垣の中を駆け出して行った。
「おい! どうなんだよ! 言えよ! お前は何者なんだよ! お前も……お前も奴の仲間か!? 共犯者なのか!?」
「ちょっ……待て、落ち着け、話すから、話すからそこを……」
「放すかよ! お前みたいな不審者を放す訳が無え! みんな集まってくれ! 不審者を捕まえた! こいつだけ姿が変わって無え! きっとあいつの共犯者なんだ!」
辺りの人は離れるようにして俺と男を中心に円を作り出す。そして一定の範囲まで離れると、突然俺に怒号を浴びせる。
「帰してくれ! 今すぐ俺を現実に帰してくれよぉ!」
「何が脳が破壊されて死ぬだ! お前が代わりに死ね!」
「助けろよ……俺をここから出してくれよぉ!」
「人の命を軽く見やがる糞野郎め!」
「違っ……俺は……」
次々に俺に放たれる罵声。声を出して反論しようにも、すぐに別の声にかき消される。
周りに集まる人は時が経つにつれて増えていき、罵声もその分、多くなる。
中には女性の声も含まれていた。子供の悲鳴のような声も聞こえる。様々な人が今ここで俺を罵倒している。
何分経っただろうか、何時間かも知れない。俺の体感時間では半日は経過したように思えるが、広場に差し込む夕日は未だ残っていた。
「俺はこいつに制裁を加えるべきだと思う! みんなはどう思う!」
「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
「犯せ! 犯せ! 犯せ!」
「何を言っ……俺は男……」
必至に抗議を試みるも、すぐに声にかき消される。
肩を押さえている男の腕を外そうとジタバタするも、外れる気配は無い。
「決まったな! 凌辱してから処刑する!」
そう言って俺を男は腰を下ろし、股間から逸物を取り出そうとする。
しかしその様子に人垣から止めようとするものは現れず、それどころか口笛の音や歓声までもが聞こえてくる。
「やめろよ……やめろ……!」
力いっぱい股間を蹴り上げる。しかし街中という事もあって、男への攻撃は不可視の障壁に阻まれる。
そしてついに男の股間から、棒状のモノが出て――
「うぽぁ!?」
――その瞬間、青い光が男を包み、男は奇妙な声を上げる。
その青い光は先ほど幾つも目にした《転移》の準備動作だ。
「キサマ、何を……!?」
そう言い残して、俺の上に乗っかった男が消える。後には、地面に倒れたままの俺と、人垣だけが残った。
静寂。俺が起き上がると、人垣からは「え」だの「あ」だのと呻き声が聞こえてくる。浮かべている表情は困惑だ。何が起こったか分からなかったのだろう。
おそらく、今のはなんらかの犯罪コードに引っかかって牢屋送りにでもなったんだろう。茅場晶彦は思ったより、人道的な人物らしい。少なくとも街中で下半身を露出させようとした男よりは。
静寂は長く続かなかった。
徐々に俺を見る目が、次第に恐怖へと変わっていく。皆が皆、俺が何かしたと思い始めているのだろう。そしてついに決壊する。
「ひ、ひぁあああ! こ、こいつが何かしたんだ!」
人垣の前の方に居たキノコ頭の少年が俺を指差してそう言うと、広場は一転してパニック状態となる。
俺に向かってくる者や、広場から急いで出ようとする者。その場で奇声をあげる者、泣き喚く者。
迫りくる男達をかわしながら、広場の出口へと向かう。俺の進路は自然と、怯えた人が退いてくれるから確保されている。
目標は北西ゲート。街の外だ。
町の外へ出て、すぐに森の中に逃げ込む。森はゲーム序盤では平原以上の危険地帯だ。そこへ逃げ込んだと分かれば、追手はまず来ない。しばらく平原でレベルを上げて、その後に探索隊を編成する期間を要する。
俺はその間に次の街へ向かい、平原よりも安全で経験値効率の良い狩場でレベル上げをして、更に次の街へ向かう。そうすれば、当分は見つからないだろう。
しかし俺の考えとは違って、街からは次々に追手が出てくるのが見えた。人数は二十人ほどだ。数が多ければ平原の
――違う。俺はモンスターの行動パターンを覚えているからなんとか戦闘せずに逃げ込めたが、追ってきた男たちはどうも違うようだった。
俺を追ってきた男達はなんの躊躇も無くモンスターの縄張りに入り込んでいき、モンスターが襲ってきた事で初めて自らが危険地帯に足を踏み入れたことに気付く。
「うわ、わ、わ……うわああああ!」
まず初めに、細身の青年にモンスターは襲いかかった。襲われた青年は驚きの余り尻餅をついて後ずさるばかりだ。よくよく見れば、剣も盾も装備していない。
他の奴らも見たようなもので、身長等は違っているが、皆共通して武装はしていない。俺を追ってきた者達は。今日初めてVRMMOを体験した者達だろう。
――つまり。
「ひ、は……た、たすけ……!」
後ずさった事で別の青イノシシの縄張りに入ったのだろう。二体の青イノシシの突進を受けて、青年の体はあっという間にガラス片のように粉々に砕け散った。
助ける事もできただろう。しかし、そういった気はさらさら無かった。命の恩人になった所で、所詮は一人の命に過ぎない。残る十九名に捕まるのがオチだろう。
チートを使えばどうにかなるか。いや、あの開発者の事だから今頃セキュリティは強化されている事だろう。チートの痕跡を発見されれば、即座に消される。
故に痕跡を残してしまうほどのチートを使えるのは一度限りだ。ログアウトできても、ログインできる保証はどこにも無い。
現時点でキャラデータの維持、隠蔽等自己強化以外のチートを十二ほどマルチタスクで実行しているのだ。これ以上強化されれば、これ以上ゲームにとどまる事すらできない。
――故に助けない。貴重な一度を、ここで使う訳にはいかない。
「ひ、ひいいいい! だ、だれか! 誰か助けてくれぇ!」
目の前で人がHPがゼロになって霧散するのを見た彼らは、一様に腰を抜かして、悲鳴を上げる。
逃げる事もなく、ただモンスターを目の前にガクガクと震えているだけだ。大した装備も無い彼らは、次々に潰されていく。
「ぴぎゃあああああ!」
中には立って、街へと逃げ帰る者も出てくる。しかしそういった者もまた、気付かぬうちに縄張りに足を踏み入れて青イノシシに命を刈り取られていく。
町へと逃げ帰る事ができたと思われるのは、僅かに二人だけだった。
モンスターに襲われると言う恐怖はすぐに街に広がるだろう。そしてその分、俺は遠くに逃げられる。
俺は森の中を走る。森は侵入不可区域ではない。当然、木々は間隔が開けられているので走るのに問題は無い。俺は夕暮れに染まった森を駆け抜ける。その先ある村を目指して。
レイプされかけて犯罪者扱いされて追われたが、一度限りの切り札を使ってたった一人の命を救うということをしない主人公
そんなんで昨今のラノベ主人公が務まるわけないですよね。しかし私の書く主人公がほとんどそういったゲス野郎。うーん、どうしてこうなった
とりあえず次は二年後(予定)。間に小話挟むかもしれません。コンゴトモヨロシク