Sword Art Online Wizard   作:今夜の山田

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ど、どうもー。
今回も僅かに約五千文字と量が足らない感じ……原作沿いでもこれだよ!やばいね
主人公の独力の奮闘(?)によって死者が格段に減ったのが地味なチートポインツ。悪名は格段に広まってます。ビーター<レッド<主人公みたいな感じ。悪名チート
攻略も少し早めに進んだ感じ


大変長い時間経過

 俺は迷宮の壁にもたれ掛って、懐かしい記憶を思い出していた。

 ゲームの正式サービスの開始。あれから約一年と少し経った今も、俺の逃亡生活は続いている。

 あの逃亡の追手二十名。その内の十八名は俺が殺した。そういった噂が広まっていたのだ。あの時逃げ出した二名によって。

 話は急激に広まり、街から出る初心者は俺を警戒して固まって移動する事になった。中には単独で街を出て行ったものもいるが、極少数だ。

 強盗対策のモンスターの狩りによるレベル上げも怠ることは無く、死者が多数出ると思われたゲーム最序盤の死者は、意外にも二桁に留まった。

 

 そして俺は、あの逃亡からしばらくして《インヴィジブルレッド》という二つ名を与えられた。

 SAOでは犯罪を犯した者はカーソルの色が変わり、他者と区別される。オレンジはアイテム盗む等の軽犯罪だが、レッドはプレイヤーキルを行った重犯罪者だ。

 しかし俺のカーソルはグリーン。故の不可視の赤(インヴィジブルレッド)。二つ名はかっこいいと思うが、実際は大量殺戮者につけられた異名、というわけだ。

 当然、終始誤解されっぱなしだ。俺の容姿が特徴的な事もあって、容易に判断できるという事もある。誤解を解こうにも十八人が死んだことは事実であり、俺が殺していないと言っても聞く耳を持ってくれない。

 人が死ぬ度に俺が裏で何かやっているんじゃないか。という噂が出るほどだ。ベータテスト時代のフレンドも尽く、俺の期待を裏切って俺の目の前から消えて行ってしまった。

 

 一部のアインクラッド攻略組による討伐隊も何度か派遣されたことがある。

 普段は上の階にいる連中が下に降りて、一層ずつ見回るというものだ。発見者は無し。当然だ。俺はずっと最前線にいたのだから。

 階が攻略されたら即座に上の階に上がり、誰も来ないような奥地の村で食料や武器を補充してレベルを上げる。正式サービス開始から今に至るまで、それの繰り返しだ。

 そのおかげか、今や俺のレベルは現在の最前線である第七十四層よりも遥かに高く、限界(レベル100)が見えている。

 

 現在、俺は迷宮区の露払い中。危険な罠を解除しながら、邪魔な敵を倒しながらマッピングを続けている。

 俺だって何もせずに過ごしているわけでは無い。こういった地味な事をやって、攻略組を支援していたりもする。

 本当の理由は自衛だ。階層が進んでいけば、攻略組のレベルにもある程度ばらつきができる。俺を追えるほどに強い奴が減るのだ。

 勿論、戦死もある程度起こるかもしれないと考えている。現在の死者はおおよそ三千名。非戦闘員が三千名。中層プレイヤー二千名。準攻略組千五百名。攻略組――五百名。

 これが現状だ。当初は三千名を数えた準攻略組もいまや半数。攻略組も、かつての半数だ。

 俺としては、この数の減りが嬉しくもあり、悲しくもある。今となっては追手に過ぎないが、ひょっとしたら友人になっていたかもしれない奴らだ。

 死んだ中にはテスター時代の友人も含まれている。ジクトリクスも、五十層の攻略の際命を散らした。

 

 現在の外の日付は二〇二四年八月四日。最前線七十四層。アインクラッド、未だ攻略されず。

 

 

 

 

 

 迷宮区のマッピングを粗方終え、帰路につこうとした時だ。距離は僅かに遠く、通路の角の向こうから剣戟の音が聞こえだした。

 大方、どこぞの攻略組パーティが仲良く攻略に勤しんでいる事だろうと当たりを付ける。まったく羨ましい限りだ。

 俺は通路の角から少し顔を出して戦闘している奴らの顔を拝むことに決めた。俺には鍛え上げた《隠蔽スキル》がある。同ランクの《索敵スキル》でなければ発見は難しいだろう。

 ――と言っても、俺の隠蔽スキルは《完全習得》。同じく完全習得された索敵スキルを持つ者にしか、隠蔽(ハインディング)された俺を見つけることはできないと言ってもいい。

 

 誰かさんが通路の角の奥で対峙しているモンスターはレベル82のリザードロード。半人半蛇の怪物だ。

 驚いたことに単独だった。同じく完全習得された索敵スキルで戦闘パーティの数を調べる。――数、一。

 俺は咄嗟に角に隠れ、驚きを露わにする。

 

「単独って、おいおい、ソロプレイヤーかよ……。ここ最前線だよな、何やって……攻略か」

 

 攻略組の二割が属するものがある。属すると言っても、何らかの組織に入っているわけでは無い。むしろ、どこにも所属していない奴らだ。

 奴らはソロプレイヤーと呼ばれる。生き残るのに仲間はいらないと判断した利己主義者達。そのほとんどがベータテスターであり、攻略組だ。その最大の特徴は、こんな最前線の迷宮でも一人でいる事だ。

 俺も一応ソロプレイヤーに該当されるんだろうが、そこはまあ置いておくとしよう。

 ソロプレイヤーの最大のメリットはあらゆるリソースの独占が出来るという点だ。情報、金銭、ドロップアイテム。それらが分配する必要無く、自分一人だけの物になる。

 当然、複数人で攻略するよりも危険度は大幅に上がる。パーティならば状態異常は仲間に治してもらえばいい。しかし、ソロではそれができない。ただのバッドステータスが死に直結する。

 ソロプレイヤーには幾らかスキルのテンプレートというものがある。その中には、隠蔽と索敵も含まれる。敵に見つからず、無防備な敵を攻撃する。単独行動時の定石だ。

 今は気付かれてはいないはずだが、戦闘後に安全のために近くの敵を探ろうとしようとした時に間違いなく見つかる。マッピングした限りでは帰り道はこの一本のみ。《転移》のクリスタルを使おうにも、このマジックアイテムは大変貴重だ。

 普通のプレイヤーなら、街に帰れば高値で売っている輩に出会う事もあるだろう。しかし俺は違う。この特徴的な容姿と二つ名のせいで迂闊に街には戻れない。《圏内》から一歩出たら即袋叩きだ。

 故に俺がこのアイテムを得るには、ダンジョンやクエストを攻略して得るしかない。当然、クエスト中はその階層に留まることになる。日をまたぐ長期的なクエストなら最悪だ。階層を下りるのももっての他。

 発動するために街の名前を言ってしまう点も問題だ。未開の街の名前を聞いたプレイヤーの行動は恐らく探索。その街で強力な武具や美味しいクエストがあるかもしれないから一度は訪れようと思うだろう。

 

 そんな事を考え、マジックアイテムの使用を躊躇していると、何かが粉々に砕け散ったような音がする。リザードロードが負けたか、ソロプレイヤーが負けたかしたんだろう。

 ここまで来れば、もう後は正面突破あるのみだ。単独で来てる奴が索敵スキルを発動するよりも早く駆け抜ける。

 角から飛び出し、駆けだそうとする。ソロプレイヤーを視界に収める。奴は現在壁にもたれかかって休んでいる。そして最早意味をなさなくなった隠蔽スキルを切り、猛烈なスタートダッシュを決める。

 ――だが、壁にもたれかかって休んで居た奴は即座に起き上がると、俺の進行を妨害(ブロッキング)した。咄嗟に後ろに跳ばなければぶつかっていて、おそらく俺はオレンジになっていただろう。

 

「なんつー反射神経してんだよ!」

 

 咄嗟にそう口に出してしまったのも仕方ない事だろう。対峙することになったソロプレイヤーは俺の容姿を見て一瞬驚き、直ぐに戦闘態勢へと入る。

 

「……その容姿、インヴィジブルレッドだな。こんな所で何をしている」

 

 向こうは童顔な顔つきをして、黒色の装備で身を固めている。なにより特徴的なのは、その手に持つ黒の片手剣と、片手剣なのに盾を持たないスタイルだ。

 噂の《黒の剣士》だろう。その有名プレイヤーが今、偶然俺の目の前に居る。実力は既に情報としてある程度出回っているが、まだまだ底が見えない。との事だ。

 

「いや何、ただのお手伝いだ。危険な罠を解除したり敵を掃除したりマッピングして攻略組を支援してる訳。君も来る時敵が少ないと思ったんじゃないかなー?」

「…………」

 

 ニヒルに笑いかけるが、黒の剣士は無言でこちらを睨み続ける。思い当たるフシはあるが、俺がやったとは思えない。そんな感じだ。

 

「疑うか? 何なら、マッピングデータを譲ろう。情報料として転移アイテム一個くらいは譲ってほしいが……まあ、見逃してくれるなら特別に無料で譲ってやろう」

「…………」

 

 その言葉を聞いてか、黒の剣士は少し反応する。しかし、剣先をこちらに向けたまま、何も言いはしない。

 

「そのままそこでずっとブロッキングされてちゃたまったもんじゃない。早く帰らないと夜になって危険な敵がうじゃうじゃ出るぞー。そんな中、歩いて帰ろうとは思えないだろ。だからさ、マップデータ渡すからそこを退いてくれよ」

 

 さっさと未開の街に帰りたい俺はトレードウインドウを出して、迷宮データを送ろうとする。

 あとはお互いに送信を押せば、無事に迷宮データは向こうの手に渡るという訳だ。

 

「……何が目的だ」

 

 目の前の黒の剣士がようやく沈黙を破ったと思ったら、口から出た言葉は何が目的か。何言ってんだこいつ。

 

「……退いてもらうのが目的、かな」

 

 頬をかいて優しげにそう言うと、目の前の黒の剣士はきょとんとしたような仕草をした後、大きくため息を吐く。自分が変な事を聞いたと自覚したのだろうか。

 とは言え、ようやく戦闘解除する気になったか。そう思って緊張を解そうと一歩下がった瞬間、黒の剣士は即座に眼前に近寄り、手に持った黒の片手剣で俺の首を斬ろうとする。

 咄嗟にしゃがむ事でかわしたが、どうやら端から当てる気は無かったようで、切り払う事なく剣を途中で止めていた。

 黒の剣士は俺が咄嗟に避けた事に目を見開いて驚く。驚きたいのはこっちも同じだ。

 

「何だと!?」

「『何だと!?』、じゃねえよ! いきなり何すんだよ! ぼうりょくはんたーい!」

 

 声高だかにそう反論する。その後安全のため後ろに大きくバックステップして距離を確保する。

 向こうには端から交渉に乗る気は無く、俺を投降でもさせようと思っているのだろうか。

 だとしたら、残るは迷宮の奥地に逃げ込んでMPK(モンスタープレイヤーキル)か、PKか、決闘で負かして平和的に決めるかだ。

 前者二つは俺の良心的に無理。残るは決闘しかないが、これが断られるといよいよPKしか手段が無くなる。

 一年と少し守り続けた殺人の貞操を守れず、この手を赤く染め、正真正銘のレッドになるしか無いだろう。

 

「OK。じゃあ、こうしよう。お互いオレンジになるのは嫌。それはもう分かりきっている。だからここは安全に、デュエルといこうじゃないか」

「……デュエル?」

 

 乗った。乗ってくれた。良し、良し、良しッ。これに勝てば、俺は無事にこの場を切り抜けられる。

 噂の黒の剣士の実力はわからないが、少なくとも俺はリザードロードよりも強い。リザードロード相手に苦戦するような相手には負ける気はしない。

 

「ああ。俺が勝ったらここを通してもらうよ。君が勝ったら、俺にできる限りの事なら一つだけ、望みどおりに動こう」

 

 俺は背中から深紅の長槍を取り出し、装備する。槍の名前は《レイジングブル》。怒り狂う猪という名は一層の赤イノシシを彷彿とさせるが、この槍はそれどころの強さではない。

 常に俺と共に第一線を潜り抜けた自慢の槍だ。俺の自慢の長槍レイジングブル。うん。なんだろう、どこか卑猥。

 

「……いいだろう。だけど、俺が勝ったらあんたには大人しく牢獄に入ってもらう」

「うへー、まあ、二言は無い。大人しく従ってやるよ。……負けたらな」

 

 軽々しく笑ってデュエルの申し込みをする。この時初めて、黒の剣士の名前を見た。

 Kirito。キリトか。黒の剣士改め、キリトとの1vs1デュエル開始まで、あと六十秒。

 

「言っておくが、俺はここまで独りで上がってきたんだ。暢気にパーティー攻略してる甘ちゃんくらい、訳無いぜ」

「俺だって安全マージンは過分に取ってるんだ。負けても文句言うなよ」

 

 軽く言葉を交わして、後はカウントが零になるのを待つ。残り二十五秒。一分の半分にも満たない時間が、酷く長く感じる。




きりとさんまじ最強乙
次回の戦闘描写どうしよう
きりとさんが最強すぎて何か無理っぽい
エタったら御免

※ネタバレ
ジクトリクスさんが漏らした情報はチーターのみ
しゅじんこうさんじゅうにさいとかネカマとかは言ってない

ご指摘や感想を待ってます。特に指摘。

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