理不尽から始まる転生生活   作:こめぴ

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第12話 バレバレのサプライズ

「ジン!早くいこ!」

 

「ちょっと……引っ張らないでっ」

 

その日のユリアのテンションは朝からマックスだった。

 

誰よりも早く起き、誰よりも早く身支度を済ませ、誰よりも早くご飯を早く食べ、誰よりも早く玄関で待っていた。

 

明らかに早すぎだと思ったが待たせるのも悪いと思った俺は、ユリアほどではないにしてもいつもより早く準備をしていた。

 

「はやく!回れなくなっちゃう!」

 

「だいじょうぶだって。まだ朝8時だよ?全然人いないって」

 

と俺は言ったが正直自信はなかった。

これはベスから聞いた話だが、この祭りには開始時間に明確な決まりはない。

強いて言うならその日になった瞬間、つまり夜中の12時を回った瞬間からだ。

さすがに夜中に店を開けるやつはいないが、あいつらも立派な商人。

この祭りは最大の儲け時ということをちゃんと理解している。

だからなるべくはやく店を開き客を呼びたいのだ。

もちろん客もそれをわかっているので朝早くから店を訪れる人もいるらしい。

だから朝早くだからと言って人が少ないとも限らないのだ。

 

「もう!はやくしてよ!」

 

「そんな急がなくたって店は逃げないし人も増えないよ」

 

そんなこと考えずにただ純粋に楽しみなユリアは俺の腕を引っ張って半ば引きずるように町へ繰り出して行く。

 

俺はそれに黙ってついていった。

 

 

 

 

「で、ジン?人がなんだったっけ?」

 

「……すいませんでした」

 

はい。

見事に俺の予想は外れました。

 

外に出た俺たちを迎えたのはいつもの街とは比べ物にならないほどの人混み。

別に歩けないほどではないが、初めて見る量の人にユリアはビビってしまっているようだ。

 

どれくらいの人の量か例えるなら、休日の某ネズミの王国に訪れる人と同じくらいだ。

 

これがお昼時とかなら、まあ街をまるまる使ってるんだから妥当かなと思うんだが生憎今は朝の8時。

 

この朝早くでこれなら昼時とかにはどうなるんだ……。

俺は人知れず憂鬱になっていた。

 

しかし逆にユリアはというと

 

(すごい……こんなにたくさんの人、初めて見た)

 

密かにテンションを上げていた。

 

 

 

ここで立ち止まっていても始まらないということで歩き出したが、いかんせん店が多すぎてどこに行こうか目移りしてしまう。

 

「とりあえず食べ物以外の店に行く?」

 

「そうね。さっき朝ごはん食べたばかりだしね」

 

基本的な雰囲気は前の世界の祭りとなんら変わらない。

屋台があり、それをみんなが楽しそうに訪れているだけ。

今回はただただ規模がでかいということしか違いはない。

それだけ規模が大きければ、開かれる屋台の種類も多い。

前の世界でも見たことがあるようなオーソドックスなものもあれば、あれって楽しいのか?と思うようなものもある。

この世界らしく魔法を使った屋台もある。

それに加えその他にも少し向きを変えると全く違った店が並んでいる。

 

そんな俺でさえ好奇心で飛びついてしまいそうな場所に自分の感情に素直なユリアが来てしまったらどうなるか。

 

「あ!あれはなにかしら!ジン、行くわよ」

 

「今度はあっち!」

 

「なんなのかしらこれ……すごく興味深いわ」

 

「あはははは!見て見てジン!」

 

とまあこんな感じにはしゃぎまくるわけですよ。

 

結局午前中はユリアの突発的な行動に付き合う形で潰れてしまった。

 

「もうそろそろお昼ね。どこかでご飯食べない?」

 

「ああ……そうしようか」

 

正直もう辛い。

孫に連れまわされてばててるおじいちゃんってこんな気持ちなんだろうな……

精神年齢の年の差的には娘と父親だけどな。

 

しかもずっと歩き回っているから足が痛いんだよ。

早くどこでもいいから座って休みたい。

 

「どうする?きちんとした店に入るか?それとも屋台とかの食い歩きにする?」

 

「お昼なんだからどこかに入りましょう。私ももうそろそろ休みたいし」

 

助かった……

 

 

 

いや、もうこうなることはだいたい予想はしていたけど、ここまでとは思わなかった。

 

「なによ!どこも空いてないじゃないの!」

 

「そりゃそうだよ。こんなに人がいるんだから」

 

どこの店に行っても行列、行列、行列である。

 

みんな考えることは一緒なんだな。

そりゃみんな店に入りたがるよな。

 

「どうする?並ぶ?」

 

「ん〜」

 

唸りながら頭を抱えるユリア。

長い時間並んで立ち続けるか、さっさとどこかで買って座って食べるか迷っているようだ。

 

正直俺としてはどちらでもいいのだが、ユリアとしては早く座りたいのではないだろうか。

午前中はテンションがマックスで疲れをある程度は無視できたが、だんだん落ち着いてきて疲れてしまったようだ。

だから俺としても早く座らせてあげたい。

 

「はぁ……どこかで買って座って食べよう」

 

いつまでたっても決まらなさそうなので、もう俺が決めた。

 

「うん……」

 

彼女はそれだけいって俺の後ろをついてきた。

 

「もう、どうしたの?ジン。もうばてた?」

 

さっきまで俺が先行していたはずなのに数分後にはもう追い抜かされてしまった。

そういって飲み物を買ってきて俺に渡すユリア。

今俺はベンチに座ってうなだれている。

 

「うん……ちょっと休憩しない?」

 

「しょうがないわね。まだ1日目なんだもの。少しくらい休んだっていいよね」

 

そういってユリアは俺の隣に腰を下ろした。

 

2人ともなにも話さない。

落ち着いた表情で時折飲み物を飲む。

別に気まずさは感じない。

むしろ心地いいくらいだった。

 

 

 

しばらくすると、ユリアが時計を気にし始めた。

 

「ユリア?どうかした?」

 

「え!?いや、もうそろそろお昼だなって」

 

「なに言ってるの?もう1時だよ。お昼はさっき食べたじゃないか」

 

うっと気まずそうに顔をそらすユリア。

 

こいつ俺に隠し事しているな?

まあ、彼女の性格からわかるように彼女は嘘をつくのがかなり苦手だ。

嘘というか隠し事全般だな。

 

まず隠し事をしていると、わざとと思うくらいに挙動がおかしくなる。

フラフラと落ち着きがないし、なにもないところで転ぶ。

 

実際目の前にいるユリアも目線の動きは落ち着かないし、顔もあっちこっち向いて挙動不審だ。

 

多分こいつ今新たな言い訳考えてるな。

 

「はぁ……ユリアの隠し事はわかりやすいんだから」

 

「そ、そんなことないわ……」

 

ほら、そこで目をそらすとことか分かり易すぎるわ。

 

「と、とにかくもう行きましょ」

 

そういってごまかすようにユリアは勢いよく立ち上がった。

 

「わかったってーーん?」

 

ユリアの座っていたところに何か紙が落ちている。

ユリアが落としたのか?

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんか紙が……」

 

「あっ!」

 

落ちている髪を手に取ってみる。

ふむ、イベントのお知らせのようだ。

 

どれどれ……

 

『バトル オブ ルーマ〜最強は誰だ!〜』

 

紙にはそう書かれていた。

なるほど、こういう祭りでよくある力比べのようなものか。

でもこの説明読む限り結構ガチなバトルらしい。

事前申し込みが必要なのか。

だが俺が1番気になったのは大会参加者欄だった。

 

 

『参加者……ーー・ーー、ーー・ーー、ジン・アルフォード、……』

 

「………ユリア」

 

「な、なに?」

 

ばれたのが気まずいのか引きつった顔をしている。

 

「申し込み……したんだね?」

 

「し、してないわよ」

 

「でもここに俺の名前あるよね?」

 

「ベスさんじゃないかしら?あの人親バカだし、息子の強さを街の人たちに教えてやりたかったとか」

 

「……ユリア?」

 

「………そうよ!私よ!悪い!?」

 

まさかの逆ギレである。

いや落ち詰められたからって逆ギレはちょっと……

感情に素直すぎるのも考えものだな。

 

「いや悪くはないけど、事前に言って欲しかった。ほら、出るなら出るで準備とかあるし」

 

「……怒ってないの?」

 

「逆になんで怒ってると思ってるの?」

 

「いやだって……勝手にそんな危なそうなのに申し込んじゃったし」

 

危ないってわかってるならやめてくれればいいのに。

 

だけど実際好都合だと思ってる。

相手がベスのみだと色々と偏りそうだからな。

そろそろ他の実践相手が欲しかったところだ。

 

「まあ確かに危ないけど結果的には助かったからいいよ」

 

「そっか」

 

ホッとした表情をしたユリア。

いつも大人びた彼女だが、その表情は年相応だった。

 

「それより時計気にしてたってことは時間もうそろそろなんじゃない?」

 

「あ!そうだった!行くよ!」

 

そういって俺の手を掴んで走っていくユリア。

黙って引きずられていく俺。

 

なんかこれがテンプレになりつつあることに不安を感じるジンだった。

 

 

 

 

『さあさあやってまいりました迎神祭のメインイベントの1つ!バトルオブルーマ!

実況は私。そして解説はガリバスさんでお送りいたします!』

 

『きしししし。まあ参加者の奴ら。せいぜい頑張れ』

 

「なにやってんだ先生……」

 

次会った時はまた戦おう!みたいな感じで別れたのにもう再開してしまった。

さすがに戦いはしないと思うが、どこかあの時のやり取りを恥ずかしく感じてきた。

 

っていうかあの人が解説はないだろ。

絶対向いていないと思う。

 

『さて!ここで改めてルール説明をしておこう!まずーー』

 

あいつの説明は余計なことまでグダグダ喋ってわかりにくいので、要点だけ。

 

 

まずは対戦形式。

原則として1対1のバトル。

勝利条件は相手の体に一発攻撃を当てることだ。

かすったものはカウントせず、クリーンヒットしたもので判定する。

制限時間は10分あるが、そこまで長引くことはそうそうないだろう。

そして1本勝負。

この大会は4日の迎神祭の内、すべての日を使って行われるのだが、そうしたイベントはこれだけじゃない。

だから時間短縮が必要なのだ。

 

そして武器について。

武器は運営が用意した武器を使うことになり、いくつでも使っていい。

その武器は体にクリーンヒットすると破裂し、蛍光色の液体が飛び散るようになっている。

クリーンヒットしたら一目瞭然になるわけだ。

それに加え、いつもと重さが違うと戦いにくいやつもいるかもしれないという配慮から重さが加えてあって、普通のナイフや剣と同じ重さを持つ。

重さを加えた方法は御察しの通り魔法だ。

本当になんでもありだな。

 

 

 

俺は今ユリアと一緒に出場者待機室にいる。

 

「なんでこんなところにガキが……」

 

「迷子じゃないか?」

 

「それにしては落ち着いてるが……」

 

「まさか出場するとか?」

 

「ははは。それはないだろう」

 

やはりここでは子供である俺は浮いてしまうらしい。

周りから刺さる視線が鬱陶しい。

そんなこと考える暇があるなら本番の為に精神統一でもしてればいいのに。

 

 

周りには我こそはと力自慢たちが大勢いる。

ムキムキで強そうな奴がゴロゴロいる。

正直街で見たことないやつもたくさんいる。

たぶんこの大会に参加するが為にこの街に来たのだろう。

きっとこの中には冒険者だっているはずだ。

こういう大会でいい成績を残せばそれだけで宣伝になるし、有名なギルドから勧誘が来ることもある。

そういう意味ではみんな誰もが本気だ。

 

でもそういう奴は俺にとって格好の的。

意外といいとこまでいけそうだと心の中でニヤニヤしてしまう。

 

「どうしたのジン。そんなにニヤニヤして。気持ち悪いよ?」

 

「………」

 

本当にニヤニヤしていたようだ。

 

「いや意外といけそうだなって思ってさ」

 

そう小さな声で返した。

わざわざこんなことを大きな声で言って敵視される意味はない。

どうせなら最後まで子供だからと油断させておいたほうが得だ。

 

「ふーん。やけに自信あるけど大丈夫なの?相手大人ばっかりだよ?」

 

「大丈夫だよ。ずっと大人相手に訓練してきたんだ。なんとかなるさ」

 

「でもベスさんもガリバスさんも本気じゃなかったんでしょ?本気の大人とやるのは初めてじゃない?」

 

「確かにそうだけど、まあなるようになるさ」

 

「あまり楽観的になるのは良くないと思うけど……」

 

「なんか言った?」

 

「いやなにも。もうそろそろ一組目が始まるみたい。見に行こ?」

 

「うん、わかった」

 

敵を知るのも作戦の1つ。

 

さあどんなやつがこと大会に出てるのかな?

 

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