理不尽から始まる転生生活   作:こめぴ

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第1話 生まれ変わり

目を覚ましてまずはじめに目に入ったのは金髪の女だった。

まるで運動した後のように汗をかき、息も絶え絶えになっている。

しかしやけに安心したような顔をしていて、今にも泣き出しそうだ。

 

周りに目を向けると数人他の人がいる。

帽子をかぶり、口に布を付けているので性別まではわからない。

 というかなんだか視界がぼやけてピントが合わない。

 

そして俺はその人たちの1人に抱きかかえられている。

 

……抱きかかえられている!? 

 おいどういうことだ。

 確かに食べる量は少なくて痩せてはいたが、ここまで痩せた覚えはないぞ。

しかもなんだか体が縮んでいるように感じる。

 

というか俺は死んだはずじゃ……。

 もしかしてあれは夢?

 いや、あんなリアルな痛みが夢なわけがない。

ならやはり誰かが救急車を呼んで助かったのか?

 周りの奴らもどことなく病院の手術をするときの服に見えなくもないし。

 

「ーー! ーー!」

 

「・・・……」

 

 なにやら騒がしくしているがなにを話しているのかよくわからない。

 知らない言語なのか?

 

「おぎゃぁぁあああ!」

 

 は!? なんだ!? なぜだかわからないが急に泣き出してしまった。

 俺がである。

 我慢しようにも全然泣きやめない。

 

 それを見てみんなますます安心したような顔になる。

 

 いやおかしいよな?

 なぜそこで安心する?

 30いく大の大人がみっともなく喚き散らしてるんだぞ?  

 普通だったらドン引きものだぞ。

 

「ーーー!」

 

 次の瞬間扉を勢いよく開けてまた知らない金髪の男の人が入ってきた。

 くるりと巻かれた立派な口ひげが特徴的だ。

 息切れをしていて、かなり慌てているように感じた。

 

 その人はフラフラと金髪の女の人の元へ歩いて行き、涙を流しながら抱きついた。

 

 なんとも感動的なシーンだ。

 周りの人たちも涙ぐんでいる人がチラホラいる。 

 だが俺からしたらまったく状況がわからないから涙も出てこないわけだが。

 

 するの今度は急激な眠気が襲ってきた。

 もうなにがなんだか俺ももうわからない。 

 さっき泣いてしまったことと同じくまったく抵抗ができない。

 

 さっき泣いたばかりなのにまた泣きたくなってきた。

 死んだと思ったらこんな意味不明な急展開。

 

(今後どうなることやら)

 

そんなことを考えながら俺の意識は薄くなっていった。

 

 

 

 

 あれから1ヶ月たった。

 

 あの目覚めのあとそう時間の経たない間に自分が赤ちゃんになっていることを自覚した。

 あの状況が出産の現場に似ていたからだ。

 いや、自覚はしているがどうしても認めたくなかった。認めたくないというよりは信じられなかった。

 死んだと思ったら赤ちゃんになってました。

 いや意味がわからない。

 こんなの頭がついていくわけないじゃないか。

 だがそれを認めないことにはなにも進まない。

 結果、かなり無理矢理ではあるが納得することはできた。

 

 それから俺は自分の状況もきちんと整理し、この世界のこともある程度は理解した……なんてことはなく未だにまったくわかっていることがない状態になっていた。

 

 それもそうだ。

 まだ生まれて1ヶ月だぞ?

 まともに動けるわけがない。

 視力だってまだ悪くて周りがぼやけている。

 

 唯一はっきりとしているのは、俺が生まれ変わったということだ。

 確かに理不尽な人生だったから生まれ変わりたいなとか、ラノベを読んでいいなとか思ったりしたが、実際になってみると戸惑いしかない。

 特に赤ちゃんからの転生となると気まずさマックスだ。

 オムツを変えるときとか自分のアレを直視されるわけで。 

 しかも1日何度も。

 はじめの頃は恥ずかしすぎて泣いてしまい、迷惑をかけてしまった。

 

 あと母乳飲むとき。

 あれはまずい。

 全世界での俺は当たり前だが童貞だったわけで、性に対する耐性もほとんどついていなかった。

 そんな俺なので母乳を飲むのはかなり抵抗した。そのおかげでちょっとした家族会議になった。

 今の俺はもう開き直ってなんとかなるが何かに目覚めそうな気がして危機感を覚えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 俺がこの世に生を受けてから8ヶ月たった。

 

 もう俺はハイハイもできるので比較的自由に歩き回っている。

 前の人生のときと全く高さが違い、見える景色も全てが新鮮でとても刺激になった。

 いや、もちろんこの建物自体初めてなわけだけど。

 

 聴覚も視覚もかなり発達し、日常生活に支障をきたさない程度までになった。

 言葉もずっと聞いているうちに日常会話くらいなら理解できるようになった。喋れないけどな。

 

 

 見て、聞いて、動くことによってさまざまなことがわかった。

 

 まずは両親の名前。

 父がベス・アルフォード。

 母がアイリス・アルフォードだ。

 何度も何度も言ってくるものだから覚えてしまった。

 

 ちなみに俺の名前はジン・アルフォードとなっていた。

 

 あとこの家はそこそこ裕福で、俗に言う貴族と言われるやつらということだ。

 前世は理不尽なことばかりだったが、今世は勝ち組コースとか神様は俺に同情でもしたんだろうか。

 ならもっと早くに助けてほしかったもんだ。

 

 だが貴族と言っても末端のようで、金はそんなにない。だから召使もメイドが1人だけだった。

 彼女の名前はヴィア。

 

 彼女は家事と俺の世話を担当している。

 今の両親は末端だが貴族なので結構忙しいから俺に構う暇なんてないらしい。

 前世と同じく愛情を向けられることは少なかったから寂しさは感じたが、前世と違いやむをえない状態なので嫌悪感はなかった。

 それにたまに会えたときとかこれでもかというほど可愛がられるしな。

 

 

 俺は今絶賛脱走し、ある部屋を探すため屋敷の探検に没頭していた。

 

 探しているのは書庫だ。書庫じゃなくてもいいから本が読みたい。

 

 別に俺は本が大好きな活字中毒者というわけではないが、とにかく言葉を覚えないと。

 この世界のことをなにも知らない俺に一番大切なのは情報だ。

 とにかくこの世界を知らないと始まらない。

 このまま流されるように生きていけばそのうち知ることはできるだろう。 

 だがそんなに待てない。

 俺自身が不安でしょうがないからな。

 だってなにも知らない世界で生き続けるとか恐怖でしかないだろう。

 難しい大人が読むような本は無理だがあの親バカの夫婦のことだ。

 先を見越して絵本でも買ってあることだろう。

 

 いろんな部屋を転々としていると、やっと見つけることができた。

 書斎だ。

 表記は読めないのでわからないがこの本の量からしてそうだろう。

 

 

 が、ここで重大なことに気がついた。

 

 

 (体が小さくて……本が取れない!)

 

 くそ……まさかここで赤ちゃんであることがマイナスになるなんて。

 

 それでもなんとか取ろうと手を伸ばす。

 最近壁に手をついてなら立つことができるようになったので、それをしながら手を伸ばす。

 

 (あと……少し)

 

 一番下の本にあと少しで手が届きそうだ。

 体をこれでもかというほど伸ばす。

 

 

 「ジン様! やっと見つけました!」

 

 (うわっ!)

 

 突然入ってきたヴィアに驚いてバランスを崩した。

 もともとそんなに安定して立っていたわけじゃないからすぐに倒れてしまうのだ。

 そして俺はそのまま尻餅を思いっきりついてしまった。

 

 (いってぇ……)

 

 「ジン様!? 大丈夫ですか?」

 

 ヴィアは慌てて俺を抱きかかえ、お尻を撫でる。

 青髪のショートカットが顔の近くで揺れ、いい匂いがする。

 

 ヴィアがやっているのは、痛いの痛いのとんでけーってやつだ。

 ていうかお尻を撫でるのをやめてください。

 なんか変な気分になるから。

 

 まだ痛みに慣れていない体だからだろうか、前世で感じたより圧倒的に痛い。

 ただ尻餅をついただけなのに階段から転げ落ちたような感覚だ。

 

 (あ……やばい泣きそう。)

 

 「う……ぐすっ」

 

 「ああっ。ジン様。大丈夫、痛くないですからねー」

 

 瞳に涙を浮かべた俺を見て慌てて慰める。

 

 だが俺もなんとか踏みとどまった。

 前までは泣くのを我慢するなんて不可能だったが、ここ最近は頑張れば耐えられるようになった。

 まあ気を抜いたらすぐに泣いてしまうけど。

 

 「よかったぁ」

 

 ヴィアもほっと一息。

 しかしやっと目的の場所にたどり着いたのに、目的は果たせていない。

 

 (せめて本だけでも……)

 

 「ああー。うー」

 

 なんとか声を出して本を指差す。

 まだ舌が発達してないのでこんな言葉しか話せないのだが、これがまた恥ずかしい。

実年齢は1歳にもなってないが、精神年齢は30過ぎなのだ。

そんな大人が赤ちゃん言葉を話すなんて、恥以外の何物でもない。

 

「ん? 本? だめよ? これは。ジン様には難しすぎます」

 

ヴィアは俺に諭すように話しかけた。

やはり予想通りの答えだ。

だが俺は諦めない。

 

「ぅうー。」

 

「わかった、わかりました。これは難しすぎるけど確かご主人様が買った絵本があるはず。それならいいですよ」

 

よし!

 

思わず心の中でガッツポーズ。

やはり買っていたか。

ありがとう、親バカ。

 

 

そのまま俺はヴィアに抱っこされたまま連れて行かれた。

 

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