理不尽から始まる転生生活   作:こめぴ

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第4話 インドアはつらいよ

 言われた場所で待っていたのはいつもと服装の違うベスだった。

 

 いつもはスーツのような服だが、今日はTシャツにズボンと動きやすい格好になっていた。

 こうしてみると彼のガタイの良さがよくわかる。

 肩幅も広く、二の腕も女の人の足くらいの太さがありそうだ。

 シャツで見えないがあの下にはバキバキに6つに割れた腹筋があることだろう。

 あの筋肉がよくもまあスーツに中に隠れていたものだ。

 

 「ん?どうしたジン。俺のことそんなにじっと見て」

 

 「いや……父さんってすごいムキムキだなって思って」

 

 「そ、そうか?昔は鍛えてたからな。今でも筋力が落ちないようにトレーニングしてるし」

 

 照れてまんざらでもなさそうだ。

 照れる父はそんなに見ないからなんだか新鮮に感じる。

 得意げになってどうだ? どうだ? とボディビルダーのようなポーズを次々ととっているのはちょっとウザいけど。

 

 「で、なにから始めるの?」

 

 そんな父をガン無視して話を進めると

 

 「全部無視……息子が反抗期……」

 

 と目に見えて落ち込んでしまった。

 

 だけどかまったりはしない。

 だってさらにつけ上がりそうだしな。

 

「そ、そうだな。それじゃとりあえず振ってみろ」

 

 と直剣の形をした木刀を1本渡してきた。

 木刀といえども甘く見てはいけない。

 持てないほどではないけど、結構重い。

 多分片手だと持てないなこれは。

 直剣だからそこそこのサイズはあるし、なにぶん俺はまだ5歳児。

 知識こそ他の5歳児に遅れはとらないが、体力や筋力面では他の奴らより同等、いやむしろ劣っている。

 ずっと本ばかり読んで外で遊ばなかったツケがここできたか。

 

 

 「どうした?持てるか?」

 

 「両手ならなんとか……」

 

 「じゃあ両手でいいぞ。振ってみろ」

 

 振ってみろと言われても……前世でももちろん剣道なんてやったこともないし、剣なんて持ったこともない。

 

 とりあえず見よう見まねでやってみる。

 

 剣を剣道の構えのように体の前で持つ。

 

 そのまま頭上まで上げる。

 そのまま振り落ろそう、というところで問題が起きた。

 自分の筋力のなさを甘く見ていた。

 

 両手でギリギリ持てていた木刀を頭上で保てるはずもなく、そのまま後ろに倒れてしまった。

 

 「おいおい……大丈夫か?」

 

 「うん、大丈夫」

 

 心配してベスが俺に安否を尋ねてくる。

 

 尻もちをついただけだからなにも怪我はない。

 

 「これじゃ剣は無理だな」

 

 「そっか……」

 

 魔法ほどでもないけど剣にも少しは憧れのようなものがあったから少し落ち込んでしまう。

 くそ!なんで俺は本ばかり読んでたんだ!

 前世でなにも学んでないのか?

 

 「ジン。お前に課題を与える」

 

 「課題?」

 

 「ああ。筋トレして、筋力をつけろ。まずはそれからだ」

 

 だろうな。

 妥当な判断だとおもう。

 剣を学ぼうにも剣を持てないと意味ないし。

 

 「さてと、時間余っちゃったな」

 

 確かに剣すら持てないというアクシデントのせいでまだ始まって30分も経っていない。

 

 「そうだ!お前に面白いものを見せてやる」

 

 いいことを思いついた! と言わんばかりの顔で俺にそう伝えた。

 面白いものとはなんだろうか。

 剣舞でも見せてくれるのか?

 

 ベスは一本の直剣を持ってきた。

 もちろん真剣だ。

 やっぱり剣舞か?

 本物の剣舞は初めてなので興奮で少し鼓動が早くなる。

 

 「お前さっきアイリスに魔法を教わっただろ?そのときに媒体について教わらなかったか?」

 

 「うん。大きくなるほど強い魔法を使えるんだよね」

 

 「そうだな。媒体って例えばなにがある?」

 

 「えっと……体、杖、あとは魔法陣かな」

 

 「そうだな。主な媒体はそれだ。でも媒体ってのはなんでもいいんだ。だから剣でもいい。剣でやるとこんなことができる」

 

 そういうとベスは剣を両手持ちに切り替え、深呼吸をし始める。

 どうやら面白いものとは魔法関係のようだ。

 

 

 「コンバート・ザ・グラウンド」

 

 そういうとベスの人差し指と中指が茶色く光りだした。

 

 ベスはその光っている2本の指を剣の持ち手の方から先の方へなぞっていく。

 するとなぞったところから剣の腹にまたもや茶色く光る文字が浮き出てくる。

 

 だけどあの文字は読むことができない。

 何かまた知らない言語らしい。

 

 刀身の先から先まで光る文字が浮き出たところで今度は驚くべきことが起こった。

 

 なぞったところから――あれは岩だろうか――茶色い物体が浮き出てどんどん刀身を飲み込んでいく。

 最終的に直剣だったのが特大剣サイズの岩の剣になった。

 

 「……すごい」

 

 素直に口からそう感想が漏れた。

 魔法というのは大概なんでもありということはなんとなくわかっていたが、俺が今まで見てきたのは火の玉だったり、癒したりの規模の小さいものだった。

 いや、癒すのは確かにすごいけどね。

 

 だから初めて見る本格的な魔法に俺は心打たれた。

 

 「どうだ。こんな感じに剣にも属性をまとわせることもできる」

 

 ベスがなにやら説明しているがあまり頭に入ってこない。

 

 「すごい……すごいよ!父さん!」

 

 「そ、そうか?なんならもっとすごいこともできるぞ?よし!見せてやる!」

 

 相変わらず息子に褒められるとすぐ調子にのる父である。

 だが今回は素直にすごいと思った。

 

 「ーーー・・・ーーー」

 

 なにやらベスが長々とした呪文の詠唱に入った。

 さっきのとは比べ物にならない長さだ。

 呪文を唱えるに従ってベスの体も光始める。

 それに俺までどこか威圧めいたものを感じる。

 

 

 いやこれやばくないか?

 呪文の詠唱って高ランクの魔法になればなるほどながいんだろ?

 ならこんなに長いのは相当の威力があるはずだ。

 こんなところでそんな魔法使って大丈夫なの?

 

 これはまずい。

 止めないと木っ端微塵になる。

 そう直感的に悟るが、俺にはどうすることもできない。

 

 (どうする、どうする!)

 

 突然襲われたはやすぎる命の危機に焦りがピークに達する。

 

 

 そこで、向こうから歩いてくるヴィアを見つけた。

 もうこうなったらヴィアにかけるしかない。

 

 「ヴィアさん! 父さんが……」

 

 「わかってます。少し待っててください」

 

 ヴィアは全て知っているとばかりにベスの元に近づき、耳元に手を持って行き――

 

 パァン!

 

 思いっきり手を叩いた。

 別になにを叩いたというわけじゃない。

 ただ単に手拍子しただけだ。

 でもそれでは説明できないほどの爆音がした。

 

 「っ!」

 

 反射的に耳をふさぎ、目を瞑る。

 それでも耳がジンジンしている。

 なんだか周りの空気が揺れているようにすら感じてしまう。

 

 これも魔法なんだろうか。

 そうだとしたらおそらく振動を増幅する風の魔法だろうか。

 

 というか塞いでいてこれなのに耳元でくらったベスは大丈夫なんだろうか。

 

 「父さん!大丈夫?」

 

 目を開けるとそこには

 

 「あぁぁぁああああ!」

 

 耳を押さえてゴロゴロと転がり回る父がいた。

 

 (まあ、そうだろうな)

 

 「ヴィア! なんてことするんだ!」

 

 「すいません。一刻を争う事態だったもので。」

 

 「だとしても他にやり方があるだろう!」

 

 「ですが、旦那様はああなるとちょっとやそっとじゃ正気に戻らないじゃないですか」

 

 ていうかにたような状況が今までに何度かあったことが驚きだ。

 

 「それは……そうだが」

 図星を突かれ目をそらしているベスは怒られている子供のようで、威厳もなにもなかった。

 なんかこっちまで情けなくなってきたんだが。

 

 「だいたい旦那様はいつもいつも……」

 

 なんかそのまま説教タイムに突入したぞ。

 

 長くなりそうだから俺はこっそり離脱した。

 

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