理不尽から始まる転生生活   作:こめぴ

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第8話 剣の3流派

ラミアとユリアがこの家に住み始めて早いもので1ヶ月たった。

 

 彼女らがこの家に住んだことで俺の生活も変化ができた。

 

 まあこれは当たり前だけど、やることなすことにユリアが関わるようになった。

 いやはやまるで本当に双子ができたような感覚になるな。

 

 まずは魔法の勉強。

 

 これの先生がアイリスからラミアになった。

 というか俺からお願いした。

 このせいでアイリスの機嫌が2週間ほど悪く、飯が不味くなったりと周りに被害があったりした。

 主にベスに。

 

 「だって息子に迷惑かけるわけにはいかないじゃない?」

 

 というのがアイリスの言い分だ。

 だったら父親だったらいいのかと突っ込みたくなる。

 父親は母親の尻に敷かれるというのはどこの世界でも共通のようだ。

 

 俺が彼女に頼んだのは言うまでもなくエルフだからだ。

 エルフといえば魔法のスペシャリスト。

 そんな人に教わった方がいいと思ったのだ。

 

 悲しみにくれるアイリスを見た途端決意が鈍りかけたことなんてない。

 そんなことない。

 そんな事実確認されていない。

 

 それに加え、ユリアも一緒に魔法の勉強をし出した。

 俺から逃げていた時のようにエルフは無意識で魔法を発動してしまう時がある。

 前回は自己強化の魔法だったからよかったが、破壊する魔法だったら危険だ。

 だから早いうちに知識をつけて自分で制御できるようにするんだとか。

 ユリアも勉強は嫌いだが、魔法に関しては例外なようだ。

 そのうち超えられそうな勢いで知識を吸収している。

 最近なんて

 

 「ほら! 楽しい魔法の勉強の時間だよ!」

 

 なんてことを満面の笑みで言うもんだから、俺まで楽しみになってきている。

 

 別にユリアの楽しそうな顔が見れるから楽しみなんて言ってない。

 

 

 

 あとはそうだな、ユリアとは四六時中一緒にいる。

 勉強の時間、ご飯の時間、休憩時間ずっと一緒にいる。

 しかも寝る時間も一緒だ。

 っていうか部屋まで一緒だ。

 男女で同じ部屋はまずいんじゃないかなんて思ったが、俺たちはまだ6歳。

 だから問題ない。

 そう、問題ないんだよ。

 ちょっと一緒にいる時間が長すぎる気がするけど、それだけ気に入られてると考えると悪い気はしない。

 むしろ嬉しいくらいだ。

 

 1番困ったのはユリアが風呂を一緒に入ろうって言ってきたときだな。

 もちろん断ったよ。

 俺は紳士だからな。

 でもユリアがごねてしまった。

 結果、一緒に入ることになってそれが毎日の日課になりつつある。

 いやべつにへんなことじゃないよな?

 まだ6歳児なんだ。

 家族で一緒に風呂に入ることなんて普通のことだろ。

 ジンハウソツカナイ。

 

 

 

 さて、そんなこんなであいつらが来る前より圧倒的に充実した日々を過ごしている俺なわけだが、最近悩みができた。

 

 それは、剣の腕の伸び代がなくなってきたことだ。

 

 

 

 カンッカンッ!

 

 アルフォード家の庭に木刀同士がぶつかり合う音が響く。

 もう俺は筋力もつき、木刀を片手で持てるようになっていた。

 

 だから剣の訓練も模擬戦の割合が自動的に多くなった。

 ベス曰く、頭で考えるより体を動かせ、だそうだ。

 

 

 頭上からベスの木刀が振り下ろされる。

 俺はそれを木刀の腹を滑らせるようにして受け流し、そのまま振り下ろす。

 

 だけどこんなことで一本取れるわけじゃない。

 ベスは滑って下に移動していた木刀を思いっきり上に切り上げ俺の木刀を弾く。

 

 「うわっ」

 そのせいでのけぞるような形になり体制が崩れる。

 そこを見逃すベスじゃない。

 

 (まずいっ!)

 

 横から迫る斬撃をほとんど反射でしゃがんで避ける。

 

 (危ない……)

 

 そんなことを考えている暇はない。

 すぐに反撃するべく、左から右へ切り払おうとするが――

 

 「これで一本」

 

 顔を上げたときにはもう目の前に寸止めされた木刀があった。

 

 「また負けたぁ」

 

 思いっきり庭に寝転がる。

 模擬戦のときには感じなかった疲労が一気にきて、息切れを起こす。

 

 「お疲れ。またダメだったね」

 

 「ユリア」

 

 起き上がり家の方を向くと、タオルと水を持ってくるユリアの姿があった。

 

 さっきユリアとはほぼ一日中一緒にいると言ったが、剣の訓練の途中でもそれは変わりない。

 だがユリアに剣の特訓をさせるわけにはいかないので見学をしているだけだ。

 だけどそれだけじゃ悪いと言ってマネージャーのようなことをやりだした。 

 まあ、タオルとか飲み物持ってくることくらいだけどな。

 でもそれも十分ありがたい。

 飲み物は言わずもがなだし、この訓練は結構動くのに加えずっと集中しているから汗が結構出るのだ。

 だからタオルを持ってきてくれるのもありがたい。

 

 それにしても……最後にベスから一本取れたのはいつだったか。

 もちろんベスは本気じゃないが、俺のレベルに合わせて手の抜き加減を調節している。

 本気が10だとすると、最初は1。

 その状態で一本とってベスに認められたら2、その次は3といった感じでレベルアップしていく。

 それまでは順調に次のレベルに進めることができていたんだが、最近急にできなくなった。

 別に俺に特別悪いところは見当たらないらしい。

 これはやっぱり――

 

 「向いてないって……ことなのかなぁ」

 

 ボソッと声に出してしまう。

 いや、ただ逃げているだけということはわかっている。

 だけど今まで怖いぐらいに順調だったから余計にそう感じてしまう。

 余計に成長の停止が怖く感じてしまうのだ。

 

 それに言い訳じみてくるけど、正直言って今のやり方は……やりずらい。

 

 どうしても直剣に振り回されるのだ。

 いや、筋力は足りている。

 筋力不足で振り回されるってわけじゃない。

 ただこれは言い訳に聞こえるかもしれないが、このやり方は俺に――

 

 「合ってないかもな」

 

 ベスは突然にそういった。

 

 「もしかしたら俺の戦い方はお前には合ってないのかもしれない」

 

 「俺の努力不足ってことは……」

 

 「それはないこともないが、お前は十分すぎるほどよくやってるさ」

 

 「でも……だからってどうすればいいの?」

 

 「戦い方を変えればいい」

 

 それはつまり独学で頑張れ、ということか?

 

 正直それはきつい。

 

 「と、いうことで家庭教師を雇おうと思う」

 

 「「家庭教師?」」

 

 俺とユリアは声を揃えて聞く。

 

 「家庭教師の話をする前に、流派について教えておこう」

 

 ベスの話をまとめるとこうだ。

 

 この国には

 

 ・ストレンタス流

 

 ・フィアース流

 

 ・ディーミュレット流

 

 と3つの流派がある。

 

 ストレンタス流は一言で言うならパワー重視で、ベスもこれに当てはまる。

 冒険者に多い。

 

 使う武器は長剣や大剣など大きな剣だ。

 守りなんて二の次。

 圧倒的なパワーで全てをぶち壊す。

 そんな考え方の流派だ。

 要するに脳筋だな。

 だが1番わかりやすく単純なのでこの流派の人間は他の流派に比べ多い。

 

 次にフィアース流はスピード重視。

 アサシンや殺し屋に多い。

 

 よく使われる武器はダガーや投げナイフ、短めの剣など小さく、軽いものが多い。

 

 戦術としてはヒットアンドアウェイ。

 当てては逃げ、また当ての繰り返しだ。

 もしくは遠距離から投げナイフで牽制しつつ、隙ができたらダガーで攻撃、なんてこともする。

 1番相手にすると戦いにくい流派とされている。

 当たらなければ何の問題もないという考え方の奴らだ。

 

 最後にディーミュレット流。

 こいつは守り重視。

 命を大事にってやつだ。

 この流派は衛兵など、どこかを守っている奴らに多い。

 

 他の奴らは盾を使うことはあれど、ほとんどおまけにちかい。

 運が良ければ防げるんじゃない?レベルの使い方だ。

 

 それとは違いこの流派は盾を主に使う。

 盾を組み合わせた攻撃とかもある。

 バックラーなど他の流派でも使いそうな小さめの盾を使うことがあれば、体全て隠せるくらいの馬鹿でかい盾を使う奴もいる。

 使われる武器は普通の剣に加え、剣ではないが槍とかも使われる。

 使われる武器の特徴は盾を構えながら使えるということだ。

 

 彼らは負けなければそのうち勝てるでしょ?という考え方をしている。

 

 

 この3つの流派に属する人間の数は

 

 ストレンタス>>ディーミュレット>フィアース

 

 といった具合になっている。

 

 フィアースに人が少ない理由はただ1つ。

 怖いからだ。

 

 フィアースはスピード重視のため、体の装備も軽装備だ。

 だからひどいときには1発当たっただけであの世行き。

 それが怖くてこの流派には入らないらしい。

 

 だが極めれば最強だ。

 どんな攻撃も当たらなければ意味はない。

 ほぼ一方的に攻撃できる。

 

 

 

 ベスはこの3つの中から1つ選び、その流派のやつを家庭教師に呼ぶと言っている。

 

 ちなみにストレンタスを選んだ場合はこのまま続行だ。

 

 今のところ第1候補はフィアース流だ。

 なぜかというと当たらなければ何の問題もない、という考え方にすごく共感したからだ。

 

 「うん、決めた。フィアースにする」

 

 「……本当か?」

 

 一瞬ベスの顔が歪んだ気がする。

 気のせいだろうか。

 もしかして自分の流派じゃないから自分が教えられないのが悲しいとか?

 いやそんなまさか……十分ありえるな。

 

 「本当にいいんだな?」

 

 「うん、いいよ」

 

 「最後に聞くぞ? 本当に、いいんだな?」

 

 「だからいいって言ってるじゃん」

 

 「……わかった。教師に連絡しておく。多分明後日には来るだろう」

 

 それだけいってベスは家に帰っていった。

 

 「そんなに自分が教えられないのがショックだったのかな」

 

 「そんなわけないでしょ。さすがのベスさんもそこまで子供っぽくないわよ」

 

 「それもそうか」

 

 この時はこれでこの話は終わった。

 

 だが数日後、ベスがなぜ苦い顔をしていたのか思い知ることになる

 

 

 

 

 家庭教師の話が出てから2日たった。

 今日はその家庭教師がくる日だ。

 柄になくワクワクしてしまう。

 午前の魔法の時間もソワソワして注意されてしまった。 

 どんな人が来るんだろうか。

 怖い人はちょっと嫌だな。

 

 「どんな人が来るんだろうね」

 

 「まあ、そうだな……期待はするな」

 

 問いかける俺に対してベスはなにか煮え切らない返答をする。 

 どうしたんだろうか。

 

 そうこうしている間に来客を知らせるベルが鳴る。

 

 

 

 「キヒヒヒヒ。お前がフィアースを習いたいっていう命知らずなガキか? 俺はガリバス。よろしくなガキィ」

 

 「……チェンジで」

 

 「あぁ!? なんだって?」

 

 「い、いえ、何でもないです」

 

 いけない。

 思わずチェンジなんて言ってしまった。

 

 「ちょっと父さん」

 

 手招きをしながら小声でベスを呼ぶ。

 

 「ちょっと父さん? もうちょっとまともな奴いなかったの?」

 

 「すまんな。あれが1番まともだ」

 

 なるほど。

 これがベスがあの時苦い顔をしていた理由か。

 教師の性格がいかれている。

 確かに常に命の危機と隣り合わせみたいな流派に常人が入ると思えない。

 

 「フィアースの奴らはだいたい怖いもの知らずとか死にたがりとか変人が多いんだよ」

 

 「で、どうなんだ? ガキ。やるのか? やらないのか?」

 

 ……正直、やめたい。

 やめるというか、教師を変えたい。

 だけどこれは俺が自分で決めたこと。

 だから最後までやりきってみせる。

 

 「やります。よろしくお願いします」

 

 「……いい目だガキ。じゃあベスさん、あとは任せな。契約書通りやらせてもらう」

 

 「……ああ、よろしく頼む」

 

 そういってベスは屋敷に帰ろうとした。

 が、俺の横を通り過ぎる時俺の肩に手を置き、

 

 「ジン……頑張れ。そして、死ぬな」

 

 そういって歩いて行った。

 

 いや……死ぬなってなんだよ……

 

 そんなに危ないことするのか?

 

 「あの……」

 

 「どうした?嬢ちゃん」

 

 「見学しててもいいですか?」

 

 「見学!? 見学とはまあまた勉強熱心なことで結構結構。でもすまんな。ちょっと刺激が強いかもしれんからダメだ」

 

 「そうですか……」

 

 見学を申し読むも断られユリアは落ち込んでしまう。

 

 いやそんなことより刺激が強いってなんだ!?

 いったい何をやらせるつもりなんだ?

 

 「じゃあジン、頑張ってね」

 

 「ああ……うん」

 

 ユリアが激励の言葉をくれるも、ちょっと他のことで頭がいっぱいで生返事になってしまった。

 

 

 「じゃあみんないなくなったことだし始めるか」

 

 「でも剣も何もないですよ?」

 

 「ああ、大丈夫だ。剣は今日は使わん」

 

 剣の特訓なのに剣を使わない?

 どういうことだ?

 

 「じゃあお楽しみの特訓内容の発表だぁ!」

 

 フィアースとはどんな特訓をするのか……

 さっきから聞こえる不穏な言葉も合わせ、とても気になる。

 

 

 「今から1時間俺はお前を攻撃する。お前は避けろ。せいぜい死なないように気をつけな」

 

 

こうして俺の地獄の特訓が始まった。

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