跡形もなく消え去った的を見てはやてたちは唖然としていた。
「……凄い……私もここまでの威力は……」
そう呟いたのはフェイト。元のより威力が高いのはおそらく撃った弾の性だろう。今撃った通常弾とはフェイトが撃っていた位の魔力をこのバイオネットを通して普通の銃の弾丸の大きさまで圧縮してあるのだ。魔力が同じでも圧縮されているかいないかでは圧縮されている方が威力は高い。さらに言うなら、弾が小さいせいで弾丸のスピードも遥かに速くなっているのだ。
「驚いたね…… まさか一度見ただけのフェイトの必殺技をマネしちまうんだからね」
「いえ、違う。悔しいけど……確実にあれは私のよりも強い」
「すごいなぁ糺司! いいなぁ、うちもやってみたいわぁ」
三者三様の反応。うん、やった僕も実は驚いてる。いや、まさかあれが消滅するくらいの威力とは思わないでしょ。対人戦では使えそうにないな……
「て言うか、魔力は大丈夫なの? 威力が威力だし魔力も馬鹿にならないんじゃ?」
「うんと、大丈夫っぽい。君と戦うくらいならまだ平気」
「わかった」
そう答えたフェイトはすぐにバリアジャケットに変身する。手に持つバルディッシュはすでにデバイスフォームではなく鎌のようなサイズフォームへと変わっている。早々から接近戦でやるつもりのようだ。それなら、と僕も手に持つ二つのガンブレードに弾は装填しないまま、剣として構える。
「じゃあ、フェイト・テスタロッサ。行きます!!」
「ああ、八星糺司。参る!!」
ほぼ同時に地を蹴り接近する。だが、流石と言うべきだろう。今ぶつかった場所は二人のいた場所の中心よりやや僕側。つまり僕は速さで負けていた。
「でも戦いは速さだけじゃないよ!」
フェイトの初撃を二本の剣で弾き、すかさず連撃を入れる。それでもフェイトは避けて弾き受け止める。すごい。僕は正直にそう思う。自画自賛ではないが今のは僕も避けきれるかは分からない。それほどなかなかにきわどいところに決めたはずだったのに。
そこでフェイトは一度距離を取る
「アークセイバー!!」
『Arc Saber』
その声と共に振り切ったバルディッシュから光の刃が飛んできた。変則的に動くそれは回避はしにくい、だが、これなら受け止められるか……! そしてその刃は僕の目前までくる。そして、
「セイバーブラスト!!」
その声と共にその刃は爆発をする。
「なっ……!」
僕はそれと同時に地面を強く蹴ってその場を離脱する。それでもその爆発に巻き込まれて少しだけ怪我を負ってしまう。
「くぅ、やるね! 流石だ!」
「あれを避けられるとは思ってませんでした。そちらもお見事です」
互いに称えあうがその最中でさえも警戒は怠らない。基本的に模擬戦と言っても戦闘中。戦闘に無駄口は必要ないのだ。
「次は僕から行かせてもらうよ。閃光弾」
『Flash Bullet Laden』
そしてそれをフェイトの足元へ向かって撃つ。
「どこを狙って……! きゃ!」
足元で破裂した閃光弾にフェイトはつい顔をそらして庇ってしまう。もらった、とばかりに接近し斬撃をフェイトに叩き込む。しかし、
『Defensor』
バルディッシュの展開したその防御でその刃は止められてしまう。フェイトからの追撃を恐れてその場はいったん下がる。
「ああ、今のは行ったと思ったんだけどな」
「危なかった……ありがと、バルディッシュ。またよろしくね」
『イエス、サー』
そしてまた睨み合う、どちらも踏み込むタイミングを計っているのだ。下手に入って行ったりしたら、
「行くよ、バルディッシュ」
『イエス、サー。Blitz Action』
刹那、フェイトの姿は消えていた。いや、違う。これは高速移動。一瞬で移動しただけか。そしてその場所は……
「死角か」
「御名答。サイズスラッシュ!」
『Scythe Slash』
その声と共にすさまじい勢いで魔力が強化された刃が襲いかかる。
「チッ!! パンツァーヒンダネス!!」
『Panzerhindernis』
その刃が当たる部分だけに防御壁を張る。速い展開速度と高い防御に比例してこの魔法の消費魔力は高い。それに一応は受け止められているが、それはどこまで続くかは分からない。このすきにとその場から避けて剣で連撃を入れる。ひらりと交わしたフェイトはそのまま距離を取って、サイズフォームからデバイスフォームに戻し、
「フォトンランサー・マルチショット」
『Photon Lancer Multishot』
作り出した4つの
「通常弾4発」
『Normal Bullet Laden, Anzahl Four』
「3連射、分裂!」
少し遅れて発射された僕の弾丸は向かってくるフォトンランサーを次々に撃墜する。分裂とは魔力を加え、発射済みの弾丸を二つにするものだ。魔力を加えるために元の弾丸の魔力は変わらず数だけが増えてゆく。そうしてフェイトのフォトンランサーが消えたときにはこちらの弾丸もすべて相殺して消えていた。
「おまけだよ!!」
そう言って撃ち出されるのはさっき残しておいたもう1発。
「ッ!! フォトンランサー!」
フェイトも同じように1発だけ発射する。それに当たれば弾は相殺されるだろう。でも僕は
「クッ!」
「きゃっ!」
それはほぼ同時に直撃し、双方に傷を負わせる。だがそれだけでは終わるはずもない。たかが1発の被弾で戦いが終わるほどに甘くは無いのだ。僕は直撃の衝撃から戻ると同時に加速した。ダメージをもらった直後のスキを突く、そのつもりで攻撃をしに行ったが、それは向こうも同じようだった。連続でぶつかり合う斧と剣、鳴るのはその金属音。僕もフェイトも一歩も引かない攻防だった。
それでもどちらにも徐々にたまっていく疲労と消耗。忘れがちだが、いくら魔法がある、強化できると言えども僕らはまだたったの9歳なのだ。これもそう長くは続かない。
「ファランクスシフト、行きます」
『Photon Lancer Phalanx Shift』
「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」
フェイトは30もの
『Normal Bullet Laden, Anzahl Dreissig』
僕の意図を汲むかのようにバイオネットは30の通常弾を装填する。
「戦神の正射、避けるに叶わず。されど死すに能わず。故に其力は既に振るえず」
紡ぐのは先ほど作り上げた詠唱。同時にその引き金を引き空中に弾丸を制止させる。これで最後。そう言わんばかりの大声を張り上げた。
「フォトンランサー・ファランクスシフト。撃ち砕け、ファイアー!!!!」
「千弾烈華!!!!」
飛び交う互いの弾丸。フェイトから繰り出される1064発もの弾丸をこちらも弾丸で相殺していく。互いの力のぶつかり合いに当たりは爆風で覆われた。そしてその弾幕が終わり最後まで残っていたのは、僕の16発の弾丸だった。その弾丸は標的を違えることなく魔力をほとんど使い果たしたフェイトのもとへと飛んで行った。
「チェックメイトだ」
「キャアァアアァア!」
それが直撃したフェイトの悲鳴と共にこの模擬戦は終了した。
次回も短いので今日中にもう1話上げたいと思います。
では、感想お待ちしております