「ん~いい天気だなぁ」
一人でいつものスーパーでの買い物帰り。はやては図書館に行くと言っていた。よく飽きないものだ、と思うが、こちらの魔法の特訓も全然飽きない訳で。人にとやかく言えるわけでもなかった。
と、そこで一つの影が目に入る。会ったことはある。会ったことはあるが……誰だっけ?
「あーーー! お前は!!」
そうこうしている間に見つかってしまった。いや、見つかったから何があるわけでもないんだが。そいつはいきなり喧嘩を吹っかけてきた、高町なのはの友人。魔導師だった。確か、三島。三島……三島……
「三島太郎さん!!」
「誰だよ! 太郎って!! 名前忘れたな! 八星糺司!!!」
なんと。あちらさんはしっかりと名前を覚えていたようで。一回しか会ったことないにしても、やっぱ負けた相手だから印象強いのかな?
「流夜だ。それくらい覚えてろ。……あれ以来見ねぇが、お前はフェイトのとこ行ったのか?」
「ん? フェイト? ん~あっちから来た、と言うところ? いや、招いたのは僕か」
「ああ? 何言ってんだ?」
「まぁ気にするなってことだ」
「だな……よく分からんがこれだけは言っておく。なのはに手を出すな。なのはは俺が守る。分かったな」
まぁ、よく分からんが、要するにおれの女に手を出すな、ってこと? 僕なら恥ずかしくて言えない台詞ベスト10に入るよね、それ。
「分かった、分かった。ところでお前はどこ行くの?」
「ハァ? お前本気か? あれから1度目の日曜だぞ? なのはたちとサッカーの試合観戦に決まってんだろ?」
はぁって言われても知らんし。何あるんだよ。
「そか、じゃ僕は帰るからとにかく頑張れよ」
「チッ、なんか腹立つなぁ……」
そう言ったっきり返事もなしに彼はその場を立ち去ってしまう。返事を期待したわけでもなかったが。
『糺司!! 助けておくれ! フェイトがピンチなんだよ!!』
突然入るアルフからの念話。その声からも焦りの色はありありと伝わる。どうやらよほどの緊急事態らしい。
「バイオネット」
『自宅付近で交戦中の模様。結界が張られております』
どこかを聞く前に察してそう答える有能なデバイス。それであっても常識外なことはできない。ここからすぐに飛んで行ってやりたいが、それは目立ちすぎる。全力で走って家まで向かう。
◆◇◆
家につき、結界の中に入ってみた光景には絶句した。戦場に使われたであろう家はところどころ壊れ、空にはぼろぼろになったフェイトが立っていた。それもふらふらと今にも倒れて落ちてきそうなほどだった。
そしてその向かい側。そこにはほとんど無傷の仮面の男が立っていた。
「バイオネット、セットアップ!!」
『イエス、マイロード』
すぐさまセットアップし、フェイトのもとへと向かう。少し後ろにいたアルフが声を上げるがフェイトはこちらを向かなかった。いや、むけられなかったと言うべきだろう。仮面の男はそれを許さないだろうから。向いた瞬間にやられていたと言うことも考えられる。
「フェイト、大丈夫か?」
「なんとか、でもそろそろ限界……」
「分かった。……後は任せとけ」
そう言ってフェイトを下がらせる。するとフェイトに向けられていた殺気がすべてこちらに向いた。なるほど、これは目も背けられない訳だ。そしてその仮面から声が届く。
「お前もだったのか……貴様も闇の書か?」
「……言ってる意味が分からないな」
なら仕方ない、そう言ってそいつは、消えた。刹那襲い来る蹴撃。右からのそれに僕はガンブレード二つを盾にして防ぎきる。速い。それだけなら良かったがさらに、巧く、そして何より強い。これは場馴れしているようだ。
「ほう、少しはやるようだな。今のを防ぐとは思はなかったぞ」
「チッ、バイオネット、やるぞ」
『まだ扱い切れていないのでは……』
「だがそんなことを言ってる暇はないようだ」
『了解いたしました。Twin Swords Form』
そう胸のペンダントが言うと手のガンブレードが消え、次には2振りの白い刀が握られていた。100センチほどのそれはまだ体に合わずに不釣り合いに長く感じ、バイオネットが扱いきれないと言ったわけがありありと分かる。これを両方満足に振れるのは言わずもがな魔法のおかげであろう。
「ほう、それは奥の手、と言う奴か?」
「んな訳無いだろう。これはただの接近特化型、だ!!」
言い終わるのとほぼ同時、激突した。
その斬撃は仮面の腕によって止められ、そして反撃をもらう。身を逸らし避ける。そしてまた反撃。
幾多に繰り返されるそれは二人の互角を物語っていた。ただ、互角と言ってもその時点での互角。僕はもちろんあの仮面も本気は出していない。本気を出せばどちらが上か……
一寸の興味はあるが、今はそんなことを気にしていられる状況ではないようだ。
ジュエルシードが発動した。この戦いのさなか、遠くの方で今までとは比べ物にはならないほどの大きな力が出たのが分かる。
「時間がないから終わりにするよ」
「フン、出来る物ならな」
あちらには流夜となのはが行くことだろう。だがあの大きさだ。行っても勝てる保証はどこにもない。
二本の剣を構え、技を繰り出す。それはこの刀ではまだ負担が大きく多用できないが、これを決めるには十分だろう。
「
魔法でブーストされた剣速、剣圧のもと、防御、回避ともに難しい怒涛の20連撃。その姿は舞っているようで、力でも速でもない技の剣術。
仮面は防御を纏ったその腕で防いでいくが、その防御をも貫通してく。
「クッ」
仮面は苦しそうな声を上げる。この連撃が終わるころにはもうその腕はボロボロになっていた。
それでもその眼は闘志を燃やしている。まだ諦めると言う選択肢はないようだ。無理はないだろう。ただ一発、攻撃をもらっただけで諦められると言う人間は少ないだろう。子供に攻撃を当てられたという事実は、まぐれだ、運が悪かった、とでも思ってしまう輩がいないこともない。その間に圧倒的な実力差があれど、外面を気にする奴は子供に押されているなど、認めることはできないのだ。
「こちらも行くぞっ!! ……なに? ……しかし……」
急に止まり、どこかの誰かと通信するようなそぶりを見せる。戦いの中で通信など愚の骨頂だ、と言いたいところだが、そう言うわけでもないようだ。通信の間でもスキは作られてない。そのあたりは流石と言うべきなのだろう。
通信が終わったようで、こちらに向かい、
「スマン、この勝負預ける」
それだけ言うとどこかへ転移していってしまった。こちらとしては好都合だったが、それはそれで気になるものがある。
『マスター!! 非情に不味いです。ジュエルシードの反応、いまだ消えず、撃墜に行った魔導師2人の内どちらかがやられました!!』
考え込もうとしてしまうところでバイオネットのその声が入る。流夜となのはのどちらかがやられた? そんな信じられようもないことに目を丸くしながらも、それは流夜なのだろう、と思う。あの何も考えず猪突猛進するのが治っていなければ怪我をするのは目に見えていたし、何よりあいつは前線だ。
ジュエルシード、別に必要でもないが、町が危険になっているなら問題はそこにあるだろう。なの刃だけでは対処しきれない状態になっている可能性がある。
「バイオネット、その場所に案内しろ」
『イエス、マイロード』
そして僕は向かった。ジュエルシードが発動した場所へ。