ヴィリエ・ド・ロレーヌさんの華麗なる貴族ライフ   作:ぜんざい

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とくにないです


02.ヴィリエさんと平賀才人

「コケ」

コカトリスという怪物をご存じだろうか。

鶏の身体に竜の翼、蛇の尾を持つとされる鳥型の魔法生物だ。

その奇抜な見た目の他にも眼から石化光線を出すという某眼鏡の魔法少年が世界を救う物語に登場した事で一躍有名になったバジリスクのパチモンみたいな能力を持っているが、これはコカトリスの起源がバジリスクにまつわる伝承の誤表記からだというのが原因である。

 

一部の自尊心の強いコカトリスからすれば『自分が先でバジリスクが後だ』と主張したい所であろうが、ことハルケギニアにおいては両種が似たような生息域に存在している。結局の所、どちらが先であってもそれを証明する手段はないのである。

 

「これを『バジリスクが先かコカトリスが先か理論』と命名しようと思のですがどうでしょうかコルベール先生」

「そうですな。コカトリスは雄、バジリスクは雌で同じ種族であるという説が現状最有力ですぞ」

「そうですか。これから宜しく『ナゲット』」

「コケ」

「名前に悪意を感じるんだけど」

「流石の僕も人間大の鶏を食べる気にはならないなぁ。

 逆に僕らが美味しく頂かれそうだ」

 

 

ナゲットを召喚して5時間後。

時刻は既に昼を過ぎてそろそろティータイムに差し掛かろうという頃。

ティー↑タイムハダイジニシナイトネー

勝手に出て来るな。

ナゲットと戯れながら使い魔召喚をし続けているルイズを見守っているとついに彼女が使い魔を召喚した。

見た目は…黒い髪の毛に青いパーカー…。多分原作通りの平賀才人だ。

よしよし。流石にそこまで原作崩壊はしていないか。

もしこれでゴンさんとか召喚されたらどうしようかと心配していたんだ。

この世界に念能力の概念が存在する以上十分にありうる。

 

 

「やり直させてください!」

「これは神聖な儀式だ。やり直しはさせられないし出来ません」

「ヴィリエだってやり直してたじゃないですか!それも2回も!」

「彼の場合は仕方ないでしょう。

 私が静止する前に行動してたんですから。

 使い魔を召喚ゲートに送り返すなんて前代未聞なのです」

使い魔のクーリングオフはお早めにって事だな。

善意で召喚に応えてくれた使い魔からすれば堪ったもんじゃないが。

オレが叩き出した奴らは吐き気を催す邪悪だったから大丈夫大丈夫。

 

 

「おい、話聞けって!ここは一体どこなんだ!?

 お前らは一体何なんだ!?」

ルイズとコルベールが言い争っている最中、完全無視されている日本人の青年、平賀才人は声を荒げる。ただし日本語で。

どう見ても相手は外人なんだし責めて英語喋れよとは思うがまあ相当パニクっているだろうし仕方ないか。

ここは助け船を出してやろう。

 

「オイ」

「えっ、おわァッ!?な、なんだその…にわとり?

 品種改良か?それとも環境ホルモンの異常!?

 福〇か、また〇島から放射能が漏れたのか!?」

どうやらこのサイト、アニメや原作よりやや現代っ子らしい。

スマホとか持ってるんだろうか。

 

「トリ、は気にするナ。

 オレ、お前の言葉、少しだケ分かル。 オーケー?」

むぅ、流石に16年ぶりに話すだけあって上手く喋れん。

こっちに来てから日本語を話す機会なんて無かったからな。

 

「お、オーケー。なあ、ここは何処であんたらは誰なんだ?俺はさっきまでアキバ、東京、つまりジャパンに居た筈なんだ!それなのに気が付いたらこんな所に居て…。もしかしてドッキリか!?嫌だなぁ、そういうのは事務所通して貰わないと、いや別に俺アイドルとかじゃないけどさ。こういうのってもしかしたら怪我するかもじゃん?その辺を配慮して最近はなくなったと思ってたんだけど。いやー、驚いたよ。でもこんな大掛かりなドッキリ一般人に仕掛けますかフツー。あ、さっきパソコン落としたんですけどこれ保険効きます?」

 

「……ラナ・デル・ソル・ウィンデ。

 衝撃のォ…!!」

引き絞った右腕、その背中に小型の竜巻のような爆風が巻き起こる。

 

 

 

「ファーストブリットォ!!!!」

「グボハァッ!?」

渾身の右ストレート、それがサイトの腹部に突き刺さった。

 

「心配するナ、峰打ちじゃケェ」

「お、お前の拳…マジエッジ効いてたぜ…」

「オ前、話すの早イ。ゆっくりしていってね」

「おう…でもいきなり殴るのは酷くないか?」

「…お前ノ言葉難しイ。ちょっと何言ってるか分かりませんね」

「おい」

「…ハルケギニアでハこれくらい挨拶ダ。イイネ?」

「アッハイ」

 

 

「成程…、つまりオレはあの子の使い魔として召喚されたのか」

サイト召喚からルイズVSコルベール先生の口論が3R目に入るまで。

そろそろルイズの語彙と理論武装が剥がれて反論が『ハゲ』とか『ワキガ』しかなくなりもう口論じゃなくてただの口喧嘩になりつつあった頃。

現状右も左も分からないサイトに一通りの状況説明を終えたオレは彼と今後について話し合っていた。

 

因みに口プロレスの審判はかの微熱なチョロインで有名なキュルケさんです。

 

「焼き殺すわよ」

「なに、ヴァリエール、ツェルプストー周辺の人間は読心術でも使えるの?」

 

 

「…えっと、あまり期待はしてないけど帰る方法とかは?」

「あるにはある。伝承によると過去にお前の世界から来た奴は皆既日食の中からゼロ戦で飛んで来たらしい。

 恐らくこの世界の皆既日食は召喚ゲートと同じ役割を果たしているんだろう。

 幸いにも次の皆既日食は近いし移動手段もイザとなれば風竜なりを借りればいい」

「突如現れたドラゴンに日本が大混乱を起こしそうだ…。

 それにしても皆既日食の…中ぁ?なんか非科学的すぎやしないか」

「数分前に非科学の力を喰らったばかりだろ」

「右ストレートが非科学だったら俺だって魔法使えるわ。

 …それにしても上達はえーなオイ。もう普通に日本語話してるじゃねえか」

「さっきも説明したがオレは所謂神様転生オリ主だからな。

 16年のブランクで忘れてただけで母国語は日本語だ」

「神様転生ってマジであったんだな。で、これからどうなるんだ?

 使い魔って要するに奴隷みたいなもんだろ。

 残念ながら俺にマゾヒストの気なんてないんだけど」

「そうは言ってもなぁ。オレにお前をどうこうする権利も義務もないし。

 脱走するくらいなら手伝うがこの世界は野盗とかオークとか普通に居るぞ」

「ああ、自由=即死のパターンか。世知辛いな。

 なんとかまからない?ホラ、『親しき者にも礼儀あり』っていうじゃん」

…………ああ、なるほど。

 

 

「『高貴なる者に伴う義務<ノブレス・オブリージュ>』って言いたかったのか?」

「16年日本語に触れてない奴に負けた!?」

「語源がフランス語とか全然関係ない間違いだったな。

 まあそんなに自由が欲しいなら餞別くらいやらんでもないが。

 オレも学生風情だから精々一週間分の生活費くらいしか出せんぞ?」

念能力を無理矢理目覚めさせる事も出来なくはないがアレ下手したら死ぬし。

あの裏技ってゴンとかキルア並の才能がないと衰弱死待ったなしだからなぁ。

 

 

「大人しく使い魔になるしかないのか…」

「それが一番安全だな。

 ま、ルイズもそう頑固な奴じゃない。別に使い魔を一生手元に置かなきゃいけない法律なんてないし、事情を話せば故郷に帰る許可くらいはくれるだろ。使い魔契約も解除したけりゃ幾らでもやりようはあるし」

要するに心肺停止すればいいのだ、そのくらい水魔法でどうにでもなる。

 

「…そうだな。

 都会の喧騒にちょっと疲れてた事だし暫くこっちで暮らしてみるわ。

 俺の主人になるって子も顔は結構かわいいし」

「……帰るまでに髪の毛が残ってる保証はしないけどな」

「なにそれこわい」

『毛刈り』の事だ、いつ癇癪を起すか分からん。

すぐキレる性格さえ改善されれば貴重な常識人なんだがなぁ。

イザとなったら『発』で治せるがオレ自身が狙われたら本末転倒だし。

既にコルベール先生を見捨てている以上、此処は非情に徹しようと思う。

すまないサイト、オレの毛根の為に死んでくれ。

 

 

 

その後、彼は無事にルイズと契約しました。




ノブレス・オブリージュって語感なんかいいよね。
筆者はこの言葉を最初新しいシャンプーか何かと勘違いしていました。
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