ヴィリエ・ド・ロレーヌさんの華麗なる貴族ライフ 作:ぜんざい
「コケコッコ―!!」
だいたい早朝6時ごろ。
いきなり耳元で鳴り渡った爆音で目を覚ます。
「コケコッコ―!!」HEYテイトクゥ―!!
「う、うるせぇ…」
杖…、オレの杖は何処だ…。
「コケコッコ―!!」HEYテイトックゥー!!
「お前まで混ざんな。消えろ」コウチャガノミタイネー
ああ、そういや昨日はメガネの横に置いたんだった。
「コケ「サイレントォ!!」…」
やっと静かになった。
「で、何だこのニワトリ。またあの駄メイドの仕業か?」
いや、よく見ると額に使い魔のルーンがある。
…そういや昨日召喚したんだっけ。
「…………」パクパク
「サイレント解除。
にわとりには酷かもしれんが寮内で鳴くの禁止な。
明日からは外に出してやるから好きなだけ鳴け」
「コケ」
と小さく鳴いて首を縦に振る。
使い魔のルーンの影響か人語を理解するくらいは出来るらしい。
昔聞いた話だとニワトリが鳴くのは早朝4時らしいしある程度我慢していたのだろう。何も考えていないような目をしているが意外に主人思いな奴だ。
「いや、そもそも魔法生物であるコカトリスにニワトリの習性があるかどうかなんて魔法生物学を専攻していないオレにはさっぱりなんだが」
あとでギトー先生にでも聞くか。風の魔法生物には詳しい筈だ。
さて、二度寝って気分でもないしナゲットを連れ出す序に散歩でもしよう。
「I’ll be there for you~ フフフンフンフンフフーン」
「コケー」
流石に16年以上昔に見たアニメのOPなんて(以下略。
でも原作が始まって死ぬ危険が高くなってきた今日この頃、そろそろこの言い訳をしている場合でもないか。
自分の意思ではないとはいえ折角転生したんだから原作介入したいし。
そういや原作知識を忘れないように書いておいたノートがあった筈だ。
実家にある筈だから今度帰省する時にでも読み返しておこう。
駄メイドに取ってこさせても良いが絶対愚痴を言われるから嫌だ。
仮にも従者に言い負かされる主人ってどうなんだろう。
いや、オレまだ当主じゃないんだけど。
あのクソ親父とっとと引退しないかなぁ…。
「フゥー…。冷てぇなあ畜生」
そんな事を考えていると洗い場の方角から何処かで聞いた事のある声が聞こえてくる。見ると其処には女性ものの下着を手に取るサイトの姿があった。
咄嗟に『絶』で気配を消してナゲット共々身を隠す。
つい憲兵さんに通報したくなる衝動に駆られるも一応原作を読んで事情を知っている身として彼にこれ以上の仕打ちをする事なんて出来なかった。
拉致された上に半ば強制的に奴隷に就職。仕事は主に癇癪持ちなロリの身の回りの世話とパンツ洗いか…。人によっては就職希望しそうだ。
「グッドモーニング」
「うおぉわッ!?」
気配を消したままサイトの右肩に手を置く。
うむうむ、相変わらず警戒していない奴には良く効くな。
「び、吃驚した…。ってお前か」
「名乗って無かったな。ヴィリエ・ド・ロレーヌだ。
気軽にヴィリエとでも呼んでくれ」
ちなみに前世の名前は忘れた。転生した初期は覚えていたから多分ノートに書いてると思うけど。まあ今更使わないし覚えている必要もないだろう。
「俺は平賀才人だ。サイトでいい」
そういやサイトの名前はすんなり憶えられたな。
先生方の名前を覚えるのに数か月。キーファとマゾコルヌの名前なんて未だにあやふやなのに。やっぱ他の奴と語感が違うからか?
ルイズは身の危険を感じたので死ぬ気で覚えました。
名前を間違えて爆発とか洒落にならん。
「で、こんな朝早くに何やってたんだ?
この状況、場合によっては憲兵さんを連れてこないといかんのだが」
「やましい事は何一つしていない。
ルイズ、ああオレのご主人ね。そいつに命令されて洗濯に来ているんだ」
「そうか…、態々メイドの仕事を取らんでも良いだろうに」
「どういうことだ?」
「この学院の生徒は貴族の子女だってこと。
金持ちが自分の手で洗濯なんてすると思うか?」
「ああ、なるほど。…うちのご主人てもしかして痴女なのか?」
「初対面の男にキスしたのは仕方ないにしても、必要ないのに態々自分のパンツを洗わせる辺り否定できんな。無自覚の可能性もあるが」
タイトルを『痴女の使い魔』に変えた方が良いかも。
…嫌だなぁそんな王道ファンタジー系ラノベ。
「まあその辺は相談してみろ。
今日の所は。ラナ・ハガラーズ・デル・ソル・ウィンデ…『洗濯』」
杖をまだ洗っていない洗濯物に向ける。
すると洗濯物が水球に包まれ、あっという間に洗浄、乾燥されていった。
「こんなもんだろ」
水と風のラインスペル『洗濯』である。
一応オレが独自に開発した呪文なのだがラインスペルの割に効果がショボイので普及を期待するのは諦めている。
大量の洗濯物を一気に洗う時とかに便利な呪文なんだがなぁ。
ちなみに魔法耐性の無い生物に向けて使うと綺麗なミイラが出来る。
魔法って怖い、改めてそう思った。
「おおっ!スッゲー!魔法って本当にあったんだな!」
「お前昨日何見てたの?」
「右ストレートと爆発しか記憶に無い」
さよか。
「体は剣で出来ている…。
投影開始<トレース・オン>!!」
机上に置かれたボタ石に向けて杖を振るう。
しかしなにもおこらなかった…!
「チッ、やっぱアヴァロンが入ってないと使えないか。
グラデーション・エアなんて別名なんだし風系統でも良いと思うんだけど」
「真面目にやりなさいミスタロレーヌ」
あれから一気に時間が飛んで午前10時。
オレやキーファの所属しているクラスで土系統の教師であるミセスシュブルーズの下、『錬金』の呪文の抜き打ちテストが行われていた。
原作ではこれが行われる前にサイトの朝食イベントやルイズの爆発イベントがあったりしたのだがサイトの朝食は口出しできないしこの世界のルイズは『毛刈り』の悪名で恐れられているのでミセスも彼女の事を知っていたのだろう。
因みにサイトの朝食は肉と野菜の入った具だくさんスープと白パンだった。
原作よりはマシだったと思うけど後で差し入れでも持って行こう。
彼は貴重な人材なのだ。栄養失調で身体を壊されちゃ堪らない。
「はいはい、血潮は鉄で心は硝子…『錬金』」
今度は真面目(?)に唱える。
ボタ石は一瞬光り輝いて不純物だらけのガラスと鉄の塊に変わった。
溶かせば使えないことも無いと思う。
「30点…ですね。もっと頑張るように」
「へーい」
まあオレは風メイジだしあれくらいできれば問題ない。
土系統は風と相性最悪なのである。
両方とも十分に使える奴なんて精々学院長のオールドオスマンくらいだろう。
あの人今ではただのスケベジジイだけど昔は凄かったのだ。
彼と同世代の親父が言うのだから間違いはない。
「流石の『衝撃』のヴィリエ君も土系統ではボクに及ばないね」
「『青銅』のキーファ君は土系統しか使えないだろうが」
「ハッハッハ、負け犬の遠吠えは止したまえ。あとボクはギーシュね。
ま、精々そこで見ていないよ。『青銅』の美技に酔いしれるといい」
「ミスタグラモン。早くしなさい」
「あっはい、では…『錬金』」
ギーシュはボタ石を青銅に変える。
誠に遺憾ながらオレの錬金とでは純度が段違いだ。
「おお…流石はラインメイジですね。
100点満点をあげましょう!」
「ありがとうございますミセスシュブルーズ。
フフフどうだいヴィリエ!これが錬金というものだよ!」
「…『鬼狂い金剛<クレイジーダイヤモンド>』」バーニングラァブ!
余りにムカついたので『発』で石に触れて特殊能力を発動する。
「おや…?ボタ石に戻っていますね。
どうやら一時的に変わっていただけのようです」
「え、そんな馬鹿な!?」
『鬼狂い金剛』の特殊能力は『念獣の手で触れたものの時間を巻き戻す』こと。
大型ゴーレムとかなら兎も角ただのボタ石程度、巻き戻すのは造作もない。
「25点。本来なら錬金とすら呼べない精度ですが、まあ一瞬とは言え成功していたのでこのくらいでしょう」
「プププ、ねえどんな気持ち?
得意の土系統で失敗して今どんな気持ち?」
「ぐ、ぐにゃぁ~っ!」
「そんなことばっかりしてるから女子にモテないんだよ」
「マゾコルヌに言われるとスッゲー傷付く」
「マリコルヌね」
「次は…み、ミスヴァリエール」
「はい!」
彼女の名を呼ぶミセスシュブルーズの声が若干震えている。
まあコルベール先生の惨状は知っているだろうし無理もないか。
髪は女性の命ともいうし誰だってハゲたくはない。
「あの…ミスヴァリエールはやらなくてもいいんですよ?
あなたの実力は座学の方でしっかり証明されていますし実技試験は免除にしても良いと学院長から通達を受けていますので…」
「大丈夫です。行けます!この日の為に魔力は十分溜めてあります!」
マ〇ンテでも使う気かこのロリペド体型。
無自覚のテロリストほど恐ろしいものはない。古事記にもそう書いてある。
「そ、そうですか…。なら少し待ってください。
皆さん、万が一失敗した時の為に…って行動速いですね」
ルイズの名前が呼ばれた時点で全員机の下に避難完了している。
タバサなんて教室の外まで逃げたぞ。オレも逃げ出したいが出口が遠い。
原作知識が無いことがここまで裏目に出るとは…。
「では私も少し距離を取らせて頂きますね。
あ、教室の備品は昨日の内に固定化を掛けておいたので大丈夫ですよ」
この教室で爆弾処理でもするつもりかってくらい準備万全である。
やることはあんまり変わらない所か確実に失敗する分もっと酷いのだが。
「では…始めて下さい」
「気合!入れて!行きます!」
お前三女だろ。
その日、土系統の教室が爆風で吹き飛ぶ惨事が発生。
奇跡的に死傷者はゼロだったという。
勝手は!ルイズが許しません(爆発)!
悲報、ストックが切れました。
暫く力を溜めて来ます。