魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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第3部最終話「Royal wedding ・午前」

Side 千草

 

今日は、大事な日や。

魔法世界最大の経済・軍事大国の女王陛下の結婚式。

年明け早々の、ビッグイベントや。

 

 

新郎(フェイトはん)も新婦(アリアはん)も数年来の付き合いやし、知らん仲でも無い。

私人として祝う気持ちも、もちろんある。

せやけど身内だけの慎ましやかな一般人の結婚式ならともかく、そうやない。

公的な国家行事なんやから、うちも公人として参加せなあかん。

天ヶ崎千草個人やのぅて、旧世界連合の一員として参列せなあかんねや。

やから・・・。

 

 

「おかぁさん、刀を持ってったらアカン?」

「アカンに決まっとるやろ! ほら、背筋伸ば・・・し!」

「ぐえっ」

 

 

招待客の入場は午前8時過ぎからや言うても、ギリギリで行くわけにはいかん。

せやから、こうして朝5時に起きて準備してんねん。

 

 

新オスティアの自宅の寝室、大きな姿見の前で月詠を相手に着付けをしとる所や。

女の子は特に時間がかかるから、先に小太郎とカゲタロウはんの方は済ませとる。

と言っても、男はモーニングでって招待状に書いてあるけどな。

むしろ、この場合は女の子の方が大変や・・・!

 

 

「ええかー、昨日教えた通りにするんやで?」

「周りの人と同じことをする、そして余計なことは喋らない、ですやろ?」

「万が一、話をせなあかんようになったら?」

「まず、お祝いの言葉を述べますー」

「後、うちの傍を離れたらアカンで?」

「はいー」

「・・・っし、OKや!」

 

 

振袖にするか訪問着にするかが難しい所やけど、未婚やしな、袋帯を二重太鼓にして・・・と。

紅色の和服、結婚式やから華やかにせなな、花嫁より目立つんは御法度やけど。

 

 

「・・・っと、次はうちが着替えなな、ホテルの長を迎えに行かんとやし」

 

 

今日の結婚式には、うちだけやなく旧世界連合の首脳も何人か参加する。

流石に全員は無理やけど、長である近衛詠春はもちろん参加や。

他の国や組織もトップが参加すんねんから、当然と言えば当然やけどな。

 

 

頭の中で式場に到着するまでのスケジュールを確認しながら、うちが自分の着物に手を伸ばした時・・・。

ドドド・・・バンッ、とモーニング姿の小太郎が部屋に入って来た。

 

 

「かぁちゃん! ちょっと、アイツどうにかしてんか!?」

「何やね、騒々しい!」

 

 

小太郎が言う「アイツ」言うんは、カゲタロウはんや。

この子も月詠とは別の意味で式中に変なコトせぇへんか心配やけど、昨日、よう言い聞かせたし・・・。

でも母親と姉が相手とは言え、女子の寝室に突然入ってくるあたり、成長が無いなぁ。

 

 

「どないしたんですかー?」

「おぅ、月詠のねーちゃん、綺麗やん」

「嫌ですわ、お世辞なんて言うても何もでませんえ?」

「それより小太郎、何かあったんちゃうの?」

「せや! あのおっさん、着替えたはええけど仮面とるのは嫌や言うて、ゴネてんねんけど!?」

 

 

はぁ!?

 

 

「アホか!? 女王の結婚式に仮面で参列なんてできるわけないやろ!?」

「俺に言わんといてや!」

「く・・・ああ、もう、月詠、適当におだてて仮面脱がしてきぃ!」

「はいなー」

「仮面取った方が素敵やとでも言えば、あの人、絶対脱ぐから!」

 

 

経験則的にそんな感じや、あの人。

月詠と小太郎を送り出した後、溜息を吐いて姿見を見る。

 

 

・・・さて、と。

今日は長丁場になるやろうから、気合い入れて行こか。

 

 

 

 

 

Side シャオリー

 

近衛騎士団、女王親衛隊、王国傭兵隊、王国陸軍及び王国艦隊地上警備要員に社会秩序省管轄の王都警察要員・・・。

警備のために動員された数は、合計して約2万人。

 

 

だが、今日のために世界中から集まった民衆の数は、確認できているだけでも約150万人。

私達に、どうしろと言うんだ・・・。

 

 

「シャオリー、楽隊の準備と浮き島間の封鎖は終わったぞ」

「ああ・・・」

 

 

仕事の困難さに挫けそうになっている私とは裏腹に、黒髪の同僚・・・ジョリィは張り切っているようだ。

紅潮している頬が、興奮の程を私に教えてくれる。

 

 

「いや、式に参列できないのは残念だが・・・ここ宰相府で、いや「夏の離宮」で女王陛下達の馬車が来るのをお待ちするのも、興奮するな!」

「ああ・・・そうだな・・・」

 

 

女王陛下の結婚式は、旧オスティアに再建されたオスティア大聖堂で行われる。

そこへの招待客は約2000人、いずれも名のある方ばかりだが・・・。

オスティア大聖堂への道は、7つの大きな浮き島を氷の橋で繋ぐことでできている。

今頃はセリオナ・シュテット率いる魔導技術兵団がそれぞれの島の下で橋を支えていることだろう、支援魔導機械(デバイス)は大型化すればする程、扱いやすく、かつ大きな事象を引き起こせる。

氷の橋の下には小型艦艇がアンカーで固定されて、土台になっていると聞く。

 

 

そして今、ジョリィは浮き島間の民衆の移動を止めてきた所だ。

今は7時で、あと1時間もすれば氷の橋を通って招待客達が大聖堂に向かうだろう。

 

 

「陛下達のパレードの先導役の胸甲騎兵は準備できたし、聖堂周辺は艦隊の陸戦要員で固めた。浮き島ごとの沿道警備は王都警察が、角の要所には陸軍兵が配備されているし、この離宮に入るコースは我ら近衛で固めている、万全と言うべきだろうな!」

「女王陛下が昨晩ご宿泊されたホテルの警備は傭兵隊のライラ・ルナ・アーウェン。フェイト殿のご宿泊されたホテルの警備は同じく傭兵隊のユフィーリア・ポールハイトが責任者だったな・・・」

「聖堂は傭兵隊長の龍宮真名だな、参列すると言うから羨ましい限りだ」

 

 

心の底から羨ましそうに、ジョリィは何度も頷く。

それに苦笑しつつ、私は自分達が立っている宰相府・・・いや、ウェスペルタティア王家「夏の離宮」の正門から、沿道に立ち並ぶ無数の民衆を見つめた。

皆、女王陛下のパレードを今か今かと待ち焦がれている。

結婚式の様子は、各所に設置された120台の巨大スクリーンで見ることができる。

 

 

聞く所によれば、3日前から泊り込んで場所取りをしている者もいるのだとか。

警備はもちろんだが、仮設トイレや水分補給所の敷設も、苦労したな・・・5000箇所用意したのだが、足りるかな・・・心配だ。

女王陛下は大聖堂からフェイト殿と馬車に乗り、旧オスティアの復興済みの七つの浮き島と新オスティアを一巡りしてここへやってくる予定だ。

 

 

「きっと、お美しいだろうな」

「・・・そうだな」

 

 

ジョリィの言葉に、私はそこだけは心から頷いた。

今日と言う日は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

当然と言えば当然だけど、僕は結婚式への参列はできません。

と言うか、求められてもいないんだけどね。

まぁ、求められても困るんだけど・・・。

 

 

メルディアナのお祖父ちゃんも、政治犯・・・国事犯収容所でもあるこの屋敷の中にいて、アリアの結婚式には参加していません。

その代わり・・・。

 

 

「凄い人ですねー・・・」

「・・・はい、そうですね、のどかさん」

 

 

僕は今、軟禁されている部屋に備えられた新型の映像装置で結婚式の様子、正確には結婚式の様子を映している民間のニュースを見ています。

この映像装置は『立体テレビ』と言って、平面では無く立体で映像が見れると言う特徴があります。

8時を過ぎた頃から、招待された各界の著名人の人達が続々と結婚式場のオスティア大聖堂に集まり始めている。

 

 

ニュースキャスターによるとこの大聖堂は2年前に再建されたばかりらしいけど、僕もあまり詳しくは無いです。

宰相府の方から、集まった観衆を退屈させないように、楽隊の人達が音楽を奏でながら行進している様子も映っています。

 

 

『・・・しかし、本日の注目は何と言っても、女王陛下のウェディングドレス姿でしょうね!』

『そうですねぇ、各所で予想が立てられているようですが、一切の情報がカットされておりましたからな・・・』

『ウェスペルタティア王家の婚姻は、先々代の・・・』

 

 

ニュースキャスターがアリアの花嫁姿を気にしている中、大聖堂には多くの人が集まっている様子だった。

そしてそれを・・・。

 

 

「・・・楽しそうですね・・・」

「・・・うん」

「・・・ネ・・・じ・・・け・・・」

 

 

最後の方は何を言っているのか聞こえなかったけれど、のどかさんは食い入るように映像を見ています。

その表情の中には、憧れ以外の何かが混ざっている気もしました。

・・・結局の所、のどかさんは僕と一緒にいることになりました。

 

 

『今さら旧世界に戻されても、私・・・・・・困ります』

 

 

そう言われてしまうと、僕はもう、何も言えなくなってしまう。

だって、今ののどかさんの状態は、どう言い繕ったって僕のせいで・・・。

・・・明日菜さんのことだって。

それに・・・。

 

 

「え・・・?」

 

 

映像の向こうで、人々のザワめきが大きくなるのを聞こえました。

見てみると・・・新しく誰かが、大聖堂に到着したみたいで。

でも、そこに映っているのは。

 

 

「父さん・・・と、か・・・」

 

 

ここに軟禁されてから、何度となく僕を訪れてくれる人達が、映っていました。

つまり、父さんと・・・。

 

 

「・・・母さん・・・」

 

 

言い慣れなくて、未だにしっくり来ないその言葉を、僕は唇に乗せた。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

オスティア大聖堂。

伝説によれば創造神が降臨した場所だとも、始祖アマテルの友が使い魔と出会った場所だとも言われていますね。

 

 

代々、ウェスペルタティア王家の婚礼の儀が執り行われる場所でもあり、2年前に再建されたばかり。

修復と言うよりは新しく作り直したと言った方が正しいので、真新しい建造物ですよ。

天を刺すように尖った塔を持ち、垂直感のある造りのこの大聖堂は、2000人の招待客を収容できる十分なスペースを持っています。

 

 

「ふむ・・・生憎の天気ですが、まぁ、大丈夫でしょう」

 

 

空を見上げれば、生憎の曇り、気象部によれば雨は振らないようですけど・・・。

大聖堂の鐘の音が鳴り響く中、それ以上の音を響かせる民衆の歓声。

それに対して選挙用スマ・・・心からの笑顔を向けつつ、手を振ります。

 

 

ザワッ・・・!

 

 

その時、観衆が大きくドヨめきました。

理由は、私の後に大聖堂に到着した人物にあるのでしょう。

 

 

「・・・ゲーデル宰相」

「アレは、そちらの意向ですかな?」

「これはこれは、今をときめく王国陸軍最高司令官殿と信託統治領総督殿にお声をかけていただけるとは、光栄の極みですね」

 

 

大聖堂の中に入った時、私とほぼ同時に到着したらしい王国の高級軍人の参列者の中から、軍服姿のグリアソン、リュケスティス両元帥が私に声をかけてきました。

私はそれに対してにこやかに対応したつもりでしたが、どうやら相手には大した感銘を与えはしなかったようですね。

 

 

リュケスティス元帥などは胡散臭そうな表情を隠そうともせず、唇の片端を皮肉気に歪めてすらいました。

・・・まぁ、別に彼らと私は10年来の親友と言うわけではありませんしね。

むしろ、どちらかと言うと仲は良く無い方ですから。

 

 

「アレはそちらの差し金ですかな、宰相閣下?」

「差し金とは心外ですね、元帥閣下?」

 

 

眼鏡を軽く直しながら、私はリュケスティス元帥から視線を外します。

 

 

「あの件については、今日に合わせて公表すると伝えてあったはずですが?」

「ああ、聞いていたな、午餐会でやるとな」

「ええ、午餐会でしますよ・・・事実の公表はね」

 

 

視線を後ろへ向け、私はそこにいる御方を視界に収めて、目を細めました。

赤毛で能天気そうな笑みを浮かべているバ・・・ナギ・スプリングフィールドのエスコートを受けて娘の結婚式場にやってきた御方を見て、目を細める。

 

 

夫とは違って、どこか緊張と動揺と狼狽を含んだ固い表情を浮かべた、金髪の美しい女性。

淡い青色で、肌の露出の少ないドレッシーな絹製のアフタヌーンドレス。

同じ色合いのリボンのついた帽子と手袋、小さなバックに淡い色のパンプス。

久しぶりに目にする・・・25年ぶりに目にするアリカ様の礼装姿に・・・。

 

 

私は、心の中で頷いたのでした。

あとは、アリア様ですね。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

昨日はお仕事をお休みして頂いて、ぐっすりと休んで頂きました。

結婚式が過労による発熱で中止と言うのは、誰にとっても不幸でしょうから。

 

 

午前6時、珍しくいつもよりも寝起きが悪くはあった物の、しっかりと起床。

午前6時30分、洗面の後、シャワーを浴びて頂きました。私もご一緒して身嗜みを整えるのを補助。

午前7時45分、軽めの朝食を終了。緊張を和らげる意味を込めて30分ほど歓談、テレビは禁止。

そして午前8時25分、再度の洗面の後、準備を始めます。

 

 

この際、私と共に着替えのための部屋に入っていたのはユリアさんを含めた王室女官11名。

老舗服飾店「ゴットフリード」の女性職員3名。

宝飾店「シュトラウス」からは総支配人リーゼロッテ・S・ゴットフリードさんを含む女性職員5名。

魔法世界で最高の絹を作ると評判の「輝虹絹」から、女性職員2名。

小物・インテリアで有名な「アトリエ・リリア」から女性職員2名。

合計、24名で準備をします。

 

 

本当は私一人で全て済ませても良かったのですが、今日に限っては補助はありがたいです。

私としたことが、何故か手先が震えるのですから・・・。

今日はハカセも来ているはずなので、後で看てもらいましょうか。

 

 

それはそれとして、作業です。

髪を最適な状態に保つ魔法の付与された「アトリエ・リリア」製の櫛、「リリアの櫛」で長い白い髪を梳きます。

表面に苺の花を模した装飾が成された「リリアの櫛」で髪を梳いた後、王室女官の皆さんに手伝って頂きつつ、ドレスに負けないよう髪を整えて行きます。

 

 

さらに、普段はほとんどしないお化粧も、今日はしっかりとさせて頂きます。

もちろん、化粧など必要無い程のきめ細やかな肌ですが・・・今日は特別です。

派手になりすぎないよう、かつ結婚式に相応しいように。

幾度となくイメージした、その通りに・・・。

 

 

そして最後に、ウェディングドレスの着付けを済ませた後、ベールを被せて・・・。

・・・目を閉じてされるがままになっていた白髪の花嫁から、私は数歩下がります。

 

 

「・・・終わりました」

 

 

道具類や余った宝石などをユリアさん達に預けてから、私はそう言いました。

その数秒後、ベールの向こう側で宝石のような青と赤の瞳が揺れるのを、私は確かに見ました。

それを見ると、何故か・・・胸部が震えます。

モーターの回転率が断続的に上昇と下降を繰り返し、何とも言えない状態に私を追いやります。

白髪の花嫁・・・アリアさんは、微笑もうとして失敗したかのような表情を浮かべていました。

 

 

「ありがとう・・・茶々丸さん」

 

 

その言葉を耳にした私は、渇くはずが無いのに、喉が渇いたかのような錯覚を覚えました。

正直な話、私は抱擁を望まないわけではありませんでしたし、アリアさんもどこか望んでいたようにも見えますが・・・。

実際には、陳腐な言葉を述べるに留めただけでした。

 

 

「・・・お幸せに」

 

 

私は・・・私達は、ただそれだけを祈っております。

部屋中に、何とも言えない柔らかな雰囲気が・・・。

 

 

 

「いぃ―――やぁ―――だぁ―――!!」

 

 

 

・・・雰囲気が、粉々に打ち砕かれました。

まぁ、そのおかげでアリアさんがクスクスと笑われたので、良しとしますが。

マスター・・・。

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

・・・「闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)」って知ってる?

まぁ、他にもいろいろと物騒な呼び名があるんだけど、とにかく最強最悪の大魔法使い。

最近ではウェスペルタティアの重鎮としての顔の方が有名だし、軍の一部に熱狂的な支持組織があるとかで、そこまで悪人呼ばわりはされないみたいだけど・・・。

 

 

とにかく、魔法世界じゃ泣く子も黙る伝説の大悪党なわけよ。

でも、どうしてかしら、最近じゃ全然怖くないの・・・。

 

 

「嫌だ! 絶対に絶対に嫌だぁ―――――――っ!!」

「ゴシュジン、イマサラナニイッテンダヨ」

「今さらもことさらも無いわ! 私は絶対に嫌だ!!」

「キノウマデハイイッテイッテタジャネーカ」

「良いなんて言って無い! 仕方無いと言ったんだ!」

「オナジジャネーカ!」

「違うって言ったら違う!」

 

 

・・・いや、だって、アレのどこに恐怖心が刺激されるのよ。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル―――所々にフリルをあしらった可愛い青のドレスを着た女の子―――は、使い魔の人形と何か言い争ってた。

 

 

私達はアリアが花嫁衣装に着替えて出てくるのをホテルの廊下で待ってるんだけど、コレが結構、時間がかかるのよね・・・もう1時間くらい経ってるわよ?

 

 

「遅いわねー」

「でもアーニャさん、花嫁がホテルを出るのは10時50分ですよ。まだまだ時間に余裕はあります」

「わかってるわよ、でも、早く見たいじゃない。アンタ達もそう思うでしょ?」

 

 

いつものように肩には乗らずに、床の上で私を嗜める使い魔(パートナー)のエミリーにそう返した後、私は一緒にいる同級生と後輩にそう聞いた。

アリアの花嫁衣装、凄く興味があるもの。

私が振り向いた先にいたのは、シオン、ヘレン、ドロシーの3人。

3人とも、私とお揃いのドレスを着ているわ。

 

 

ブライズメイドドレスって言う、花嫁付添人(ブライズメイド)が着るドレスよ。

クリーム色のミディアム丈のワンピースタイプのドレス。

小さな宝石のついたネックレスとパンプスも、もちろんお揃い。

「シュトラウス」と「ゴットフリード」のブランド物よ?

髪の色は違うけど、髪型は同じで、頭の後ろで結い上げてるわ。

プロの人がメイクまでやってくれて・・・流石はロイヤルって感じね。

 

 

「そうね、ミス・スプ・・・じゃないわね、女王陛下のドレスについては情報が外に漏れていないから、私も気になるわ」

「お姉さま、綺麗でしょうね・・・(クルックー☆)」

「で、でででも、本当に私達が付添人で大丈夫でしょうか・・・?」

「本人が良いって言ってるんだから、良いんじゃない?」

 

 

花嫁付添人(ブライズメイド)って言うのは、わかりやすく言えば花嫁の世話役兼引き立て役。

本来は姉妹とか親族がやるんだけど、友人や学友がやっても問題は無いわ。

花嫁に先だってバージンロードを歩いて、指輪交換のときにブーケやグローブを預かったり、披露宴で花嫁の身の回りの世話をしたりするの。

お揃いのドレスを着て、花嫁と似たブーケを持つ・・・。

 

 

ちなみに、花嫁付添人(ブライズメイド)のリーダーは花嫁付添人代表(メイド・オブ・オーナー)って言って、花嫁と特に親しい間柄の人がやるの。

これは、茶々丸さんの役目。

茶々丸さんを含めて、付添人は6人。

つまり、もう一人いるんだけど・・・。

 

 

「・・・」

 

 

私達から数m離れた位置に立ってる、セクストゥムって子がそうよ。

フェイトとアルトの妹で―――ああ、アルトって言うのはクゥァルトゥムの略、長いのよアイツの名前―――かなり、寡黙な子。

私達と同じドレスを着ていて、アリアが来るのをじっと待ってる。

あんまり、話したことは無いけど・・・。

 

 

「いぃ―――やぁ―――だぁ―――!!」

「・・・ところで、彼女は何をゴネているのかしら?」

 

 

・・・最初はシオンも、エヴァンジェリンに対して敬意を表していたんだけどね。

 

 

「アレよ、ほら、アリアって公式的に父親がいないじゃない? もちろん、もっと適役はいたんだろうけど、本人が・・・」

「何が悲しくて、私が若造(フェイト)にアリアを渡しに行かにゃならんのだ!?」

「・・・と言うわけなのよ」

「な、なるほど・・・」

 

 

本来は、父親が花嫁と一緒にヴァージン・ロードを歩いて、花婿に花嫁を受け渡す。

でも少なくとも公式的に、まだアリアの父親はいないことになってる。

だから、父親以外に誰かやるか、アリアが一人で歩くか、いっそ花婿と歩かせるか・・・って話だったんだけど・・・。

 

 

「アリアガ、ゴシュジンガイイッテイッタンダローガ!」

「100万歩譲って結婚は認め・・・み、み、認めてやっても良い・・・だが! コレは無理だ!」

「ジャー、ホカノヤツニカワッテモラウカ?」

「いやダメだ! 他の奴には任せられない!!」

「ドーシロッテンダヨ!?」

「・・・よし、中止しよう!」

「シネーヨ!」

 

 

・・・使い魔の人形、チャチャゼロとエヴァンジェリンの不毛な言い争いは、際限無く続いて行くかと思えたけど、意外と早く終わった。

アリアが着替えに使ってる部屋の扉が、開いたから。

 

 

「・・・ぁ・・・」

 

 

誰かが、あるいは全員が、声を漏らした。

女官が開いた扉から出てきた白髪の花嫁に、皆が見惚れたから・・・。

 

 

「・・・エヴァさん」

「あ、いや、その・・・何だ、アレだ・・・」

 

 

エヴァンジェリンは目に見えてうろたえたけど、ベールの向こうのアリアの表情を見て、口を閉じた。

それから、数秒だけ目をそらして・・・また戻して。

 

 

「・・・綺麗だ、アリア。本当に・・・その、綺麗だ」

「ありがとうございます」

 

 

エヴァンジェリンの言葉は陳腐だけど、感情がこもってた。

それがわかったからか、アリアがはにかんだように笑って、そっと左手をエヴァンジェリンに差し出した。

 

 

「・・・お願いします、エヴァさん」

「む・・・」

 

 

エヴァンジェリンは、その場にいる全員の顔を見渡して、それからまたアリアを見て・・・。

・・・静かな表情で、頷いた。

 

 

「・・・・・・わかった。ちゃんと送り届けてやるからな」

 

 

エヴァンジェリンはそう言って、アリアの手を取った。

 

 

 

 

 

Side 5(クゥィントゥム)

 

「・・・まだかな」

「まだも何も、僕達はホテルを出たばかりだけど」

 

 

隣に座る3(テルティウム)に対して、僕はそう答えた。

今日のために用意された黒塗りの装甲車の窓からは、沿道に立ち並ぶ無数の民衆が見える。

まぁ、大した興味は無いけど・・・3(テルティウム)と揃ってたまに手を振ってやる。

 

 

ガタンッ・・・と車体が揺れたのは、旧オスティア地区へ入ったからだ。

今、僕達の乗っている車両は氷の上を走っている。

旧オスティアの七つの大島を氷属性の道で固めて繋ぎ、魔導技術でさらに舗装した道を通る。

観衆は氷の橋以外の陸地に集められ、浮き島間の移動は原則禁止だ。

今は曇りだからそれ程では無いけれど、日が出ていれば氷に光が反射してさぞ美しかったろうね。

 

 

「・・・まだかな」

「まだホテルを出て2分程度だよ。大聖堂までは3分もすれば着く」

「・・・そう」

 

 

僕達がユフィーリア・ポールハイト達に見送られてホテル「サルヴェ・レジーナ」から出発したのは、2分前のことだ。

3(テルティウム)は先程から表蓋に苺の花が刻印された金無垢の懐中時計を見ているのだから、そのくらいのことはわかると思うのだけど。

 

 

・・・どうも、3(テルティウム)の様子がおかしい。

ブラックジャケットとダークグレーパンツの組み合わせのモーニングコートを着た3(テルティウム)を、横目に見やる。

ちなみに僕は普通のモーニングだよ。

 

 

「・・・」

 

 

・・・特に、いつもと違う所は見受けられないけど。

花婿付添人代表(ベスト・グルーズマン)としては、役目として新郎の世話をしなければならないからね。

ちなみに、4(クゥァルトゥム)3(テルティウム)の付添人(グルーズマン)だよ。

 

 

「・・・まさかとは思うけど、緊張してるわけじゃないよね」

「・・・」

 

 

・・・返答が無いのは、どう受け取れば良いのかな。

実の所、大した根拠も無く適当に聞いただけなんだけど。

アーウェルンクスシリーズが緊張するなんて話は聞いたことが無い。

いや、それを言ったら結婚するなどと思うはずも無いし・・・。

・・・4(クゥァルトゥム)のアンナ・ユーリエウナ・ココロウァへの執着や、6(セクストゥム)の裏面の変化などの説明ができない。

結論として・・・。

 

 

「・・・到着したよ」

「・・・そう」

 

 

結論として、そうだな、龍宮真名ならばこう表現したかもしれないね。

『あの王子様、実は凄く楽しみにしてるんじゃないか』・・・とかね。

 

 

 

 

 

Side 美空

 

ひゃ~・・・豪華なメンバーだねぇ、流石はロイヤル。

午前10時20分の段階で、王国要人だけじゃ無く、魔法世界や旧世界の関係者の有名どころは揃ってる感じだもんね。

 

 

魔法世界の結婚式に出るってシスターシャークティーに言われた時はどうしようかと思ったけど、実際に来てみれば単なるお仕事だもんねぇ。

何しろ、25年前の崩落で大聖堂の人間も大半が死んじゃって、今じゃ大司教が一人いるだけ。

もちろん、それなりの人員の補充計画はあるんだろうけど、この聖堂自体が再建されて2年だからね。

花嫁とも親交のある私達が手伝ってくれれば・・・的な話。

そして、午前10時50分になった時。

 

 

「お待ち致しておりました、アンバーサ大司教」

「おお・・・この通り盲目でしてな、どうか御助力願いたい」

「誠心誠意、務めさせて頂きます」

 

 

参列者が起立して出迎えたのは、ドミニコ・アンバーサ大司教。

オスティア崩落の時に盲目になったって言う話で、60代前半の白髪のお爺ちゃんって感じの人。

シスターシャークティーが赤と金の司教服を着た大司教のお爺ちゃんの手を取って、祭壇まで案内する。

近くで見ると、意外とゴツいお爺ちゃんだけど。

 

 

「・・・司教って言うより、武闘家が無理してる感じ」

「ミソラ、失礼ダゾ」

「わかってるよ、言ってみただけ」

 

 

大司教とシスターシャークティーの後ろ、つまりは祭壇の隅に、私とココネを含めた宗教関係者が立ってる・・・ペーペーの司祭とか私達以外のシスターとかね。

もちろん、ドレスじゃ無くてシスター服だよ、私達はね。

祭壇にいるから、ドレスで着飾ったお歴々が良く見える。

 

 

えーと・・・帝国のテオドラ陛下と婚約者のジャック・ラカンさん。

一時期、合同でやるんじゃないか、とか噂もあったけど。

モーニング姿のラカンさんと、帝国のイメージカラー、つまり赤色のドレスにパールネックレスのテオドラ陛下。

うーん・・・露出は少ないけど何か色っぽい気がする、肌の色かな?

 

 

「うーん・・・胸かな」

「私は色っぽイカ?」

「・・・ココネって発育、早いよね」

「一応、帝国人だカラ」

 

 

それから、黒のシックなドレスに鮮やかな色合いのコサージュと靴を合わせたアリアドネーのセラス総長、アリアドネーの色だもんね、黒と赤って。

・・・お? エミリィさん達もいるじゃん、こっちは軍服っぽいけど。

見るからに緊張してるね~・・・足元のモーニング姿の金色の毛並みの猫の妖精(ケット・シー)が何か話しかけたら、表情が和らいだけど。

 

 

「何を言われたんだろ・・・あの猫の紳士に」

「あの人の紅茶、美味しイゾ」

「飲んだことあるんだ・・・」

 

 

それと、メガロメセンブリアのリカード主席執政官とミッチェル・アルトゥーナ執政官。

女性が少ないから、華やかさで他に負けてる気がするね。

・・・アルトゥーナ執政官が妙に挙動不審だけど。

 

 

「・・・花嫁攫ったりしないかな」

「不謹慎だゾ」

 

 

それからある意味で一番目立ってるのが、旧世界連合・・・特に旧関西組だよね。

瀬流彦先生はモーニングだし、ドネットさんはモカブラウンのドレスに薄い黒のショールを合わせてる。

まぁ、結婚式では普通な部類だよね。

和装の旧関西組は、組織としては間違って無いけど目立つなぁ・・・。

・・・まぁ、亜人とか獣人の参列者もいるから、悪目立ちはしてないんだけどね。

ちなみに、旧関西の参列者はトップの近衛詠春さんと大使の千草さんとその家族。

 

 

「・・・千草さんの横にいる男の人、誰?」

「さぁ・・・知らない人ダ」

 

 

後は、関係者兼旧3-A代表ッてことで私―――シスターとしてだけど―――と、ハカセと龍宮さん。

若草色のドレスの龍宮さんと、ライトミントグリーンのドレスのハカセ。

ドレスもアクセサリーもシンプルなデザインの龍宮さんと、ちょこちょことリボンベルトとかフラワーモチーフとかついてるハカセ、何か性格が出てる気がする。

 

 

そうそう、旧3-A参加者って言えば、ある意味で一番の驚き。

家族席(一番前の方)に座ってる、相坂さんの存在だよね・・・。

何か・・・同級生がああなるって、ちょっと感慨深いよね・・・。

 

 

 

 

 

Side さよ

 

「ふぅ・・・」

 

 

本当は新郎が入ってくるまで立ってなきゃいけないんだけど、座らせて貰いました。

正直な所、立ってると辛いし・・・。

ポンポン、と最近一段とふっくらしてきたお腹を軽く叩く。

そうすると、別の感触が身体の中から返ってきて・・・自然、頬が緩むのを感じます。

 

 

「さーちゃん、大丈夫か?」

「うん、平気だよ、すーちゃん」

 

 

隣から気遣わしげに声をかけてくれるすーちゃんに、私は微笑みを返します。

すーちゃんも今日はちゃんとした礼装姿です。

いつもは野ざらしな長い髪もきちんと梳いてまとめられていて、窮屈そうだけど服を乱したりはしない。

 

 

一方、私の格好はと言うと・・・まぁ、そう言うドレスです。

綺麗な透け感にベルベットの千鳥柄が浮き立つノーブルなドレスで、袖とスカート部分は落ち感が良いようにバイヤス使いになっています。

腰の後ろのオーガンジーの大きなリボンが、全体のイメージを引き締めてくれます。

お腹回りはもちろん、最近ちょっと大きくなった胸周りのサイズも合わせて貰いました。

 

 

「アレのおかげで、今日は随分と体調が良いの」

 

 

私の視線の先には、聖堂の四隅に設置された大きな箱みたいな支援魔導機械(デバイス)があります。

『箱庭の風』と言う大き目の精霊炉をコアにした設置型の魔導装置。

最近、亜人の体調不良が問題になっているから、その改善を目的として開発された医療用の装置。

生成収束させた魔力に軽い治癒や身体活性、精神安定などの効果を付与し周囲に散布するリラクゼーションシステム・・・らしいです、私も詳しくは無いんですけど。

とにかくアレのおかげで、私の体調も凄く良いんです。

 

 

本来なら赤の他人なのに、家族として招待してくれたアリア先生。

本当なら、いけないことだと思うけど・・・でも、嬉しいと思うのも事実。

官位を持たない私は、一番私人に近い形でアリア先生のことを祝える。

・・・木乃香さんと刹那さんは、来れないけど、その分もお祝いしたいから・・・。

目を閉じれば、今までのことが昨日のことのように思い出せます。

 

 

「アリア先生・・・どんな花嫁衣装なんだろ」

 

 

そして、午前11時。

大聖堂の外からかすかに聞こえる軍艦の礼砲と共に、結婚式が始まりました。

21発の礼砲が撃ち鳴らされた後、聖堂内の楽隊が演奏を始めます。

 

 

今度は私もちゃんと立って、まず新郎・・・フェイトさんを出迎えます。

フェイトさんよりも先に、フェイトさんの付添人(グルースマン)であるクゥァルトゥムさんとクゥィントゥムさんが入場します。

こうして並ぶと、本当にそっくりですよね・・・「弟」なので、変では無いと思うけど。

 

 

参列者に挟まれた赤い絨毯の上を、黒のモーニングコートを着たフェイトさんがゆっくりと歩きます。

祭壇の前にまで来て、シスターシャークティーの補助を受けたアンバーサ大司教と、短いけど伝統に則った重要なやりとりを交わします。

あの人が、これからアリア先生と結婚するんだ・・・。

 

 

「良いなぁ・・・」

「む?」

 

 

私が漏らした呟きに、すーちゃんが鋭く反応しました。

小さく首を振って「違うよ」と伝えた後、私は祭壇に視線を戻しました。

良いなぁ・・・私もこんな風に式を挙げたいな、和風とか良いよね・・・。

 

 

私がそう考えた、直後。

たぶん、この場にいる全員が待ち望んでいるだろう女性が、やってきました。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

その瞬間、付添人の存在とか、参列者の顔ぶれとか、そう言うことは気にならなくなった。

まぁ、最初からそれ程に注意を払っていたわけじゃないけれどね。

 

 

付添人達が祭壇を背に一列に並んだ頃、曲調がそれまでの西洋式な物から変わった。

楽隊が演奏を止めて、代わってその後ろにいるオリエンタルな服装の人達が演奏を始める。

日本の結婚式で演奏されると言う「平調 越天楽」。

オリエンタルな服装の集団に交じって龍笛を吹いているのは、晴明だ。

アリアの花嫁衣装争いで敗れた代わりに、「入場曲は我がやる!」とか言っていたね。

だけど、それすらも今はどうでも良かった。

 

 

「・・・」

 

 

ほぉ・・・と、この場にいた全員が息を吐いていたと思う。

それを責める気にはなれなかった。

この場にいる誰よりも、僕が見惚れていたのだから・・・。

 

 

ベールの向こう側に隠された白い髪は、どうしてかいつもより艶やかで輝いて見える。

ベールに包まれたアリアは、かすかに顔を伏せているように見える。

数mはあるアンティークベール、先々代の王が娘―――つまり当時のアリカ王女―――のために7年がかりで作らせた物で、可憐な花と幾何学模様が白銀の糸で縫い込められている。

アリカ女王の処刑の後は使われること無く保管されていたらしいけど、今日になって日の目を見たわけだね。

 

 

輝虹絹(きこうけん)と言う最高級のシルクを素材とする純白のドレスは、アリアが一歩進む度に光の粒を振り撒くように淡く輝き、純白のドレスを白銀に染める。

上品に開いた胸元に、控え目でたおやかな印象を見る者に与える肩口のライン。

手元はレースで繊細に、そして歩く度に表情を変えるスカートはプリンセスラインで、ふんわりと足元まで隠している。

形の整った真珠や小さくカットされたダイヤモンドがいくつも縫い付けられていて、同じ色の糸で花が彩られている。

スカートから稀に覗く靴は、白のハイヒール。

真珠やダイヤモンドをあしらわれたペンダントとイヤリングは上品で清楚な造りになっていて、まるでアリアの可憐さを引き立てるために作られたかのようだった。

 

 

手には、小さな花が覆いかぶさるようにまとめられたキャスケードタイプのウェディングブーケ。

アリアらしい清楚で品のある仕上げになっていて、鈴蘭、撫子、アイビー、ヒヤシンス、ギンバイカなどの花で彩られている。

 

 

「フェイト・・・」

「・・・アリア」

 

 

気が付いた時には、アリアは僕のすぐ目の前にいた。

ベールの向こうで、青と赤の瞳が僕を見上げている。

アリアの左手を取っている吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)は、怒っているような、泣きそうな、それでいて笑っているような、そんな顔をしている。

 

 

何か言いたそうにも見えるけど、何も言うことは無い、と言いたそうでもある。

ただ静かに、アリアから手を離した。

そして僕が、代わってアリアの手を取った。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

・・・まるで、夢を見ているような気分です。

ウェディングドレスを着る前は、実の所かなり緊張していたのですが・・・。

着せられた後は、また別の感情が生まれました。

 

 

何故か、いろいろな人にお礼を言いたい気分になったんです。

朝から出会った人達、式に出席してくれた人達、集まってくれた民衆。

式場に視線を向ければ、各国首脳に著名人、そしてそれに混じって、私と私的な関係のある方々もたくさんおります。

クルトおじ様を始めとする王国の仕事仲間に、スタン爺様を始めとする村の人達もいます。

皆、私を祝福してくれています。

私は今、私を祝福してくれる全ての人達に、ありがとうと言いたい気分なんです。

隣に、この人がいると思うだけで・・・。

 

 

「それでは、結婚の誓約を・・・」

 

 

気が付けば、オストラで何度か顔を合わせたこともあるアンバーサ大司教のそんな声が耳に入りました。

大司教の補助をしているシスターシャークティーと目が合った時、かすかに微笑まれたような気がしました。

それに微笑みを返す前に、私の目は再び隣に映ります。

 

 

私の横に立っているフェイトが、私の右手を取ったから・・・。

アンバーサ大司教の言葉に続ける形で、フェイトが結婚の誓約を口にします。

 

 

「「私はこの女性と結婚し・・・

 

 

  夫婦となろうとしています。

  私は健やかなる時も

  そうではない時も

  この人を愛し

  この人を敬い

  この人を慰め

  この人を助け

  私の命の限り

  固く節操を守ることを

  神聖なる婚姻の契約のもとに

 

 

           ・・・誓います」」

 

 

フェイトらしい、感情の見えない穏やかな口調。

いつもとほとんど変化は無いけれど、でもやっぱり、どこかいつもと違う気もします。

わかっているのは、ただ・・・今の私には、フェイトしか見えていない。

フェイトの言葉しか・・・きっと、聞こえていない。

フェイトも同じであってほしいと思うのは、不思議なことでしょうか?

 

 

フェイトの右手を、今度は私が握ります。

大司教の言葉が耳に届いているのが、むしろ奇跡だと思えるくらい。

私は・・・。

 

 

「「私はこの男性と結婚し・・・

 

 

  夫婦となろうとしています。

  私は健やかなる時も

  そうではない時も

  この人を愛し

  この人を敬い

  この人を慰め

  この人を助け

  私の命の限り

  固く節操を守ることを

  神聖なる婚姻の契約のもとに

 

 

           ・・・誓います」」

 

 

・・・きちんと言えたでしょうか?

大司教の言葉の後に続けるだけなので、暗記する必要は無いのですが。

その代わり、一つ言葉を繰り返すたびに、どうしようも無い気持ちになってしまいます。

まさかとは思いますが、強制証文(ギアス・ペーパー)ではありませんよね、なんて・・・。

 

 

きゅっ・・・と、指先でフェイトの手を握ります。

本当に、夢の中にいるような気分です。

ふと、フェイトが私の右手を離しました。

・・・どうして? と少し不満な気持ちになりましたが、すぐに左手を取られました。

 

 

フェイトの手にはリングがあって、リングピローを持ったクゥィントゥムさんが離れて行くのが見えました。

気が付けば、茶々丸さんが私の持っていたブーケを預かってくれていました。

あ、指輪の交換ですか・・・少し、いえかなり恥ずかしい勘違いをしてしまった模様です。

と言うか私、本当に周りが見えていないんですね、今・・・。

 

 

「・・・」

 

 

フェイトが私の左手の薬指に嵌めてくれた指輪は、昨日まで着けていた婚約指輪とは違う指輪です。

蔦が絡み合う模様の入った上品な銀の指輪で、内側にはイニシャルが刻まれています。

何でも、ウェスペルタティアの銀山で採掘した銀で作るのが慣例だとか・・・。

でも、どこで作られた何であっても、どうでもいい気分です。

 

 

だって、フェイトが着けてくれると言うことに意味があるのですから。

きっとフェイト以外の誰から何を貰っても、こんな気持ちにはならないでしょう。

それから自分の身体が自分の物では無いような気分で、流れに乗るようにフェイトの左手を取り、同じように指輪を嵌めました。

えっと、コレで指輪交換は終わりですかね・・・。

 

 

「・・・それでは、誓いのキスを・・・」

 

 

大司教の言葉に、胸が高鳴ります。

期待半分、恥ずかしさ半分・・・と言った所でしょうか。

だって、こんな大勢の前でキスをするのは、初めてですから・・・。

 

 

でも、嫌ではありません。

 

 

お腹の上に両手を重ねて、軽く頭を下げます。

フェイトは親指だけをベールの内側に入れて、残りの指を揃えて・・・ゆっくりとベールを上げます。

その際、私とフェイトの顔が近付いて、見つめ合う形になりました。

フェイトは私の髪を梳くようにベールの裾を直し、私の両手を取って、私は頭を上げます。

とてもゆっくりな動作だったと思うのですが、どうしてか、そうは感じませんでした。

 

 

フェイトが私の肩にそっと手を置いて、私に顔を近付けて来ました。

私は特に何をするでもなく、身体の前で手を組んで軽く目を閉じ、ただ待ちます。

ふ・・・と、柔らかな感触を唇に感じた時。

 

 

軽く触れるだけの、3秒にも満たないキス。

それだけのことなのに、何故か私の目からは涙が流れました・・・。

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

・・・誓いのキスが終わった。

指輪の交換も終わったし、これでアリアは若造(フェイト)のモノか・・・。

いや、若造(フェイト)がアリアの婿なのだから、若造(フェイト)がアリアのモノになったのか?

 

 

だが同時に若造(フェイト)はコレでペイライエウス公の爵位を得て、大貴族の一員になる。

・・・その場合、私は若造(フェイト)のことも敬称で呼ぶ必要が生じるのだろうか?

・・・・・・今からでも無かったことには・・・・・・。

 

 

「私は、お二人の結婚が成立したことを宣言致します。お二人が今、私達一同の前でかわされた誓約を始祖アマテルが固めてくださり、祝福で満たしてくださいますように」

 

 

・・・無理そうだな。

大司教であり宮内尚書でもあるアンバーサの言葉に、私はそう思った。

若造(フェイト)の隣であんなに幸せそうに笑っているアリアを前にして、そんなことはとてもできん・・・。

 

 

・・・だって、そんなこと言ったらアリアがきっと泣く。

泣かないまでも、凄く悲しそうな顔をするだろうと思う。

私が本気で反対したら―――今までだって本気だったが―――アリアはもしかしたら、聞いてくれるかもしれない。

だが・・・。

 

 

「それでは、サインを・・・」

 

 

気が付けば、結婚証明書の署名が始まっていた。

結婚証明書とは、要するに読んで字のごとく、結婚を証明するための文書だ。

新郎と新婦、大司教と・・・証人が署名する物だ。

この場合、大司教とアリアとフェイト、クゥィントゥムと茶々丸かな。

私も、結婚の作法には詳しくないからな。

 

 

・・・と考えていると、目の前にその結婚証明者が示された。

何かと思って傍のアリアを見ると、幸せそうに微笑んでいた。

 

 

『お願いします、エヴァさん』

 

 

ホテルで手を取った時のアリアの言葉が、脳裏を掠める。

再び目を落とすと、結婚証明書にはこう書かれている。

 

 

『お二人が誓いを立て、始祖アマテルの元、夫婦になった事を承認します』

 

 

・・・わ、私もサインするのか!?

え、い、良いのか、コレ!?

い、いや、そもそも何で私が・・・!

 

 

キッ・・・と睨みつける。

アリアじゃないぞ、若造(フェイト)をだ。

くっそ、このガキ・・・やっぱりダメだ、認めん!

私はサインなどせんぞ、絶対にしないからな!

 

 

・・・・・・ああ、サインしたよ! 文句があるか!?

 

 

この場でサイン拒否とかできるわけが無いだろ・・・!

くそ、くそぅっ・・・良いか若造(フェイト)、幸せにしろよ!!

絶対だぞ、できなかったら100回殺すからな・・・!!

 

 

くそ、目の前が歪んでアリアと若造(フェイト)が良く見えん・・・。

・・・な、泣いてなどおらんぞ!?

 

 

 

 

 

Side アリカ

 

「これより、お二人は夫婦です。ご列席の皆様、お二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれたお二人を、始祖アマテルが慈しみ深く守り、助けてくださるよう祈りましょう」

 

 

それが、アンバーサ大司教の閉式の言葉でもあった。

1時間以上に及んだアリアの結婚式も、残す所わずか・・・か。

 

 

・・・始祖アマテルよ、今日結婚の誓いをかわした二人の上に、満ち溢れる祝福を注いでください。

二人が愛に生き、健全な家庭を作れますように。

喜びにつけ悲しみにつけ信頼と感謝を忘れず、貴女に支えられて仕事に励み、困難にあっては慰めを見出すことができますように。

また多くの友に恵まれ、結婚がもたらす恵みによって成長し、実り豊かな生活を送ることができますように・・・。

 

 

「いや、良い式でしたな」

「ええ、本当に・・・」

「コレは今夜の舞踏会も期待できそうですな」

 

 

周囲の人間がそう囁き合うのを耳にして、頬を綻ばせる。

アリアは、皆の祝福を受けて結婚できたのじゃな・・・。

私は必ずしもそうでは無かった―――自業自得じゃが―――故、本当に嬉しい。

 

 

隣のナギを見ると、ナギも嬉しそうに笑っておる。

まだ周囲の目が気になるが、アリアの幸福そうな顔を見ると、それを上回る嬉しさが込み上げてくるのじゃ。

私達は最後尾の列にあって、結婚式に参列することを許された。

 

 

私達のことを話すのは、午後になってからじゃから・・・親として傍で見守ることは許されんのじゃ。

元より、今さら親面をしてアリアの結婚式にしゃしゃり出るつもりは無かった。

少し寂しいのは事実じゃが、せめて参列できるようにと手配してくれたクルトには感謝せねばな。

じゃが・・・本当に私のことを話しても良い物だろうか。

話さずにおいたほうが、波風も立たずに済むのでは・・・とも思うのじゃが。

じゃが、クルトの献身と長年の努力を思えば・・・。

 

 

不意に、ナギが私の手を握った。

見てみれば、いつものように快活に笑っておる。

私はそれを見て、口元をかすかに緩める・・・この男は、本当に・・・。

 

 

その時、聖堂内の楽隊が盛大な音楽を奏で始めた。

 

 

結婚行進曲・・・入場の音楽とは違う、軽快かつ荘厳な音楽に顔を上げれば、アリアが婿殿と腕を組んで退場する所じゃった。

アリアが使っておるベールは、亡き父上が私のために作らせた物じゃが・・・私はついに使えなんだからな・・・。

保管されていることを知ったアリアが、使いたいと言ってきた時は本当に嬉しかったの。

 

 

婿殿と幸せそうに腕を組み、ヴァージン・ロードを歩く純白の花嫁の姿に。

私は、万感の想いを抱かずにはおれなかった・・・。

・・・目尻に涙が浮かぶのを感じたが、クルトやエヴァンジェリン殿やスタン殿のように号泣はしなかった、とだけ言っておこうかの。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

大聖堂の外に出た私達を待っていたのは、晴れ渡った青空でした。

さっきまで、曇っていたのに・・・。

 

 

さらにオスティア郊外で陸軍砲兵隊が放った21発の礼砲と、青空を駆ける親衛隊機竜部隊によるアクロバット飛行・・・。

そして何より、大勢の民衆の祝福の声でした。

拍手と歓声、そして鐘の音・・・。

とても、良い気分です・・・今なら、誰にでも優しくなれそうな気分です。

純粋な、心からの笑顔で手を振ると、観衆の人達の声がさらに大きくなります。

 

 

「・・・行こうか」

「はい」

 

 

旦那さま・・・えへへ、旦那さま、だって。

フェイトの言葉に頷いて、式場の出口から歩いて行きます。

 

 

これから、パレードです。

左右に整列しているパレードの参加兵の方々の閲兵を行いつつ、大聖堂の前に用意された馬車に乗ります。

クラシカルな作りのランドー四輪馬車、前後から幌がかかる向かい座席の客馬車です。

これに乗って、旧オスティアの7つの浮き島と、新オスティアの中心市街地を抜ける形で一巡りして、宰相府へ向かいます。

そこで午餐会・・・昼食会を経て、また別のスケジュールが始まります。

でも、今は・・・。

 

 

「・・・大丈夫かい?」

「はい、もちろん」

 

 

今は、私の手を取って馬車に乗せてくれる旦那さまと、一緒にいられることを喜びたいんです。

10年前には、こんなコトになるなんて想像もしていませんでした。

自分がこんな・・・幸せな気持ちになれるなんて。

幸せで幸せで、どうしようもなくなってしまう時が来るなんて。

 

 

そしてこんな幸せな一日が、まだ半分も終わっていないだなんて!

ウェディングドレスの長い裾を、花嫁付添人(ブライズメイド)の茶々丸さんやアーニャさん達が苦労して馬車の中に収めてくれます。

そして馬車の扉を閉める際に・・・。

 

 

「アリア、おめでとう!」

「お姉さま、とっても綺麗です・・・!」

「え、えと、いつまでもお二人仲良く、お幸せに・・・」

「それでは、女王陛下、行ってらっしゃいませ・・・なんてね?」

「・・・これで、本当にお義姉さま」

 

 

周りの兵の方々に聞こえないような小声で、アーニャさん、ドロシーさん、ヘレンさん、シオンさん、セクストゥムさんが口々に私達を祝福してくれました。

それが心からの物であるとわかるから、本当に嬉しい。

私が心からのお礼を言うと、5人は馬車から離れました。

最後まで立っていたのは、茶々丸さんで・・・。

 

 

「・・・行ってらっしゃいませ」

 

 

まるで、自分のことのように嬉しそうに。

これまでで一番の笑顔で、私を見送ってくれています。

 

 

「・・・ありがとう」

 

 

他に言いようが無いくらい、胸の中に感情が溢れています。

他に、何と言えば良いのかわからないくらい・・・。

茶々丸さんが離れるのを確認するのと同時に、御者の方が馬車を走らせます。

 

 

胸甲騎兵の先導を受けて、4頭の白馬に引かれた馬車が走り出します。

観衆の声に、私とフェイトさんは片手を振って応えます。

もう片方の手は、馬車の中でお互いの手を握っています・・・。

どうしてか、今は笑顔を見せるのがとても簡単です。

 

 

ニコニコしていると、馬車の傍の護衛兵の方と目が合う度に、兵士の方が顔を紅くします。

・・・軽く首を傾げていると、フェイトの方を見た途端に今度は顔を青くします。

・・・・・・?

・・・あ、観衆の最前列でフェイトのことを呼んでいる若い女の子が、フェイトのファンクラブでしょうか。

いつもなら嫉妬全開―――自覚はあるんですよ、一応―――ですが、今日は違います。

この人が、私の旦那さまなんです、良いでしょう? ・・・そんな気分です。

 

 

「フェイト」

「・・・何?」

「呼んでみただけです」

 

 

不思議そうに首を傾げて見せるフェイトが、可愛くて仕方がありません。

私の手を握る力を少しだけ強めたフェイトが、愛しくて仕方がありません。

もう、どうにかなってしまいそうなくらい。

でもそれが、嫌じゃないんです。

むしろ、嬉しくて嬉しくて、どうしようも無いんです。

 

 

「フェイト」

「・・・何、アリア」

「何でも無いです、フェイトは?」

「何も無いよ、アリア」

「一緒ですね」

「・・・そうだね」

 

 

何が嬉しいのかはわかりませんが、フェイトは私の顔を見て、表情を緩めたように感じました。

何故かはわかりませんが、フェイトが安らいでいるのなら、私も嬉しいです。

 

 

「・・・アリア」

「はい、何ですか?」

「何でも無いよ、呼んでみただけさ」

「・・・そうですか」

「そう」

「フェイト」

「・・・アリア」

 

 

やってみると、胸の中にポカポカした物が浮かんでくる感じでしたが。

やられてみると、くすぐったいような、別の温かさを感じますね。

名前を呼び合ってみると、止まらなくなりそうです。

 

 

パレードが進む間中、私達は民衆に手を振って、手を握り合って。

そしてたまに、思いついたように名前を呼び合ってみたりしました。

意味なんてありませんけど、そうしたかったんです。

そうしたいと思った時にそうできる幸せを、行使したかったのかもしれません。

 

 

「フェイト」

「アリア」

 

 

今日と言う日は、まだ始まったばかりですが・・・。

私はすでに、どうしようもない程の幸福感の中にいました。

これ以上、幸福になったら・・・死んじゃいそうなくらいに。

 

 

 

 

        ・・・しあわせ・・・

 

 

 

 




アーシェ・フォーメリア:
・・・へ? あ、私!?
え、えっと、広報部のアーシェです、今回は後書きを担当させて頂きます。
今回は女王陛下のウェディングドレス姿を始めとして、多くの写真を撮らせて頂きました。
その中で一番の目玉は・・・。
フェイト公爵のモノローグにおいて、女王陛下の花嫁姿への反応が激し過ぎた件でしょうか。
素材まで見抜くとなると、実は事前に情報が漏れていた可能性が・・・。


今回初登場のアイテム・キャラクター・ウェディング案などは以下の通りです。

・リーゼロッテ・S・ゴットフリード:リード様提供。
・老舗服飾店「ゴットフリード」及び宝飾店「シュトラウス」。
 及びウェディングドレス(ベール含む)を含むドレス、宝石・指輪類:リード様提供。
・白虹絹及び輝虹絹:ATSW様提供。
・立体テレビ:黒鷹様提供。
・「アトリア・リリア」及びリリアの櫛:フィー様提供。
・フェイト公の懐中時計:ライアー様提供。
・箱庭の風:フィー様提供。

・氷の橋:Agudogarudo様提供。
*本来は式場その物を氷でと言うことでしたが、一部採用と言うことで。
・艦艇・陸軍による礼砲:伸様・黒鷹様提供。
・アクロバット飛行:黒鷹様提供。
・結婚証明書・宣誓文:伸様提供。
・平調 越天楽:伸様提供。

ありがとうございました!


アーシェ・フォーメリア:
それでは次回は、午後の部ですね。
次回はお食事会な感じですかね・・・大人しめかもです。
なるべく定期投稿できるよう努力する、とのことですが・・・。
何分、作者が慣れていない場面なので、少し予定が狂うやもしれません。
その際は、どうぞご容赦ください。
では、仕事に戻りますね、そりゃーっ!

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