魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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伸様・まーながるむ様・ATSW様・灰色様のご希望要素が含まれます。
また、鬼○犯科帳的な描写があるやも。
では、どうぞ。


アフターストーリー第8話「オスティア犯科帳・前編」

Side アーニャ

 

5月1日(旧世界時間では4月1日)、私は久しぶりに魔法世界に行くことになった。

1月のアリアの結婚式以来だから・・・4か月ぶりぐらいかしらね。

理由は、ヘラス帝国皇帝の結婚式に招待されたから。

 

 

「本当なら私が行きたいのだけれど、来週から旧世界連合の総会がアメリカで開かれる予定で、調整がつかないのよ」

 

 

4月の中旬にメルディアナ魔法学校の校長室に呼び出された私は、ドネットさんにそう言われた。

旧世界連合は帝国とは交流が無いから、必ず行かなければならないわけじゃない。

けど招待その物を無視してしまうと、後々のためにならない。

 

 

そこで、旧世界連合は全権を与えた代理を出席させることにしたの。

そしてその人選で、5年前の戦い以降、何かと向こうの要人と関わりがある私が選ばれたってわけ。

 

 

「授業も大変でしょうけど、お願いするわ。向こうで何かあったら、日本のアマガサキさんに相談して頂戴。何せ魔法世界政策の全権を任せられている有能な人だから、頼りになるはずよ」

 

 

確かに、何度か面識はあるけれど。

でも・・・失礼だけど、そこまで仕事がデキる人には見えなかった。

だけど実際に魔法世界での旧世界連合の利益を確保してるんだから、きっと私の目の方が間違ってるのね。

 

 

とにかく、私は5月1日の午前に魔法世界に入って、まずは天ヶ崎さんに挨拶に行った。

それから天ヶ崎さんと昼食を一緒にして、夕食はシオンとヘレンと一緒にした。

そして旧オスティアの村に行って、お母さんの家で眠った。

久しぶりに食べるお母さんの朝ご飯は、凄く美味しかった。

それで・・・。

 

 

「遠路ようこそ、歓迎します。ココロウァ特使」

「過分な歓迎、感謝致します。ウェスペルタティア王国女王陛下」

 

 

ウェスペルタティア王国宰相府に赴いて、女王陛下に挨拶。

2日・・・つまり、今日のお昼に、アリアに会ったの。

まぁ、お互い立場があるから、昔みたいに手を合わせて再会を喜ぶなんてことはできないけど。

宰相府の応接間で、向かい合って座るのが限界。

 

 

それにしても・・・んん?

茶々丸さんが出してくれた紅茶に口を付けながら、不躾にならない範囲でアリアの顔を見る。

白い肌に、薄い紅色の頬・・・昔から綺麗な子だったのはわかってたけど。

何と言うか、ますます・・・?

 

 

「ココロウァさん?」

「あ、ああ、いえ、大丈夫です」

 

 

ちょっと見つめすぎたのか、アリアが怪訝そうな顔を浮かべてた。

慌てて大丈夫だと伝えると、アリアは安心したみたいに微笑んだ。

・・・や、やっぱり、前より綺麗になってる・・・?

 

 

「良かった・・・ではクゥァルトゥムさん、お願いしますね」

「・・・了解」

「へ?」

 

 

いつの間にか、アルトが応接間の扉の前に立ってた。

何か、相変わらず不機嫌そうな顔をしてる。

・・・それを見て、少し安心する自分が、何か腹立つ。

 

 

で、でも、いつの間に?

わ、私がアリアに見惚れてる間に、どんな話が展開されてたの?

 

 

「当日までに、我が国の艦艇で帝国までお送りします。それまでの間は、私の義弟がココロウァ特使のお世話をさせて頂きます」

「へ・・・?」

「え・・・何か?」

「・・・い、いえ、その・・・ありがとうございます」

 

 

表向きはそう言ってるけど―――いや、ここで「良いです」とか言えないし―――私の内心は、まったく別のことを叫んでた。

何と言うか・・・。

 

 

いや、ちょ、何で私がアルトなんかに世話されなきゃいけないわけ!?

アリアも何「良い事しました」みたいな顔してるのよ、仕事のしすぎでおかしくなってない!?

あ、仕事のしすぎでどうにかなるなら、もっと前になってるわね、つまりシラフ!

・・・もっと悪いじゃない!

ちょっと、もうっ・・・ただでさえ気まずいんだからさぁ~~~~!

 

 

 

 

 

Side 暦

 

アーニャが帰った後、女王陛下はフェイト様と一緒に昼食。

てっきりアーニャも一緒にするのかと思ったけど、クゥァルトゥム様と一緒に宰相府から出た。

街でも案内するのかしら・・・。

 

 

「女王陛下、お薬のお時間です」

「・・・ああ、そうでしたね。ありがとうございます」

 

 

昼食が終わるのを見計らって、お水とカプセル剤を乗せた小さな盆を女王陛下の前に出す。

お薬と言っても別にそんな大した物じゃ無くて、ただの風邪薬、それも依存性の弱いタイプ。

最近、女王陛下は微熱が続いていて・・・フェイト様もとても心配してるみたい。

まぁ、それでもお仕事には差し支えない程度らしいけど・・・。

 

 

「ん・・・ありがとうございます。下がって構いません」

「はい」

「・・・ああ、暦君。悪いけど、栞君にコーヒーを持って来て欲しいと伝えてくれないかな」

「かしこまりました」

 

 

空になったコップと水差しの乗った盆を持って、食堂から下がる。

・・・すっかり、ただの侍女になっちゃった気分。

もちろん、それを望んだのは私だけど。

 

 

「それで、次の仕事は何・・・」

「イスメーネ伯爵と言う方と会見を・・・」

 

 

でも・・・やっぱり、考えてしまう。

もし、あの場所にいるのが私だったらって・・・どうしようも無いことを。

そんなことを考えてしまう度に、溜息を吐いてしまう。

環達は、どう思ってるのかわからないけど・・・私とは、少し違う気もする。

 

 

「あ、暦さん。こんな所にいたんですか」

「・・・あ、ハンナさん」

 

 

女王陛下とフェイト様のいる食堂から少し離れた廊下で、侍女仲間の一人とはち合わせた。

ハンナって言う私より一つ年上の女の人で、ウェスペルタティア西部出身の人族。

詳しいことは知らないけど、3か月くらい前から一緒に働いてる。

気立てが良くて優しくて、侍女仲間からも慕われてる。

軽くウェーブのかかった金髪が、窓から漏れる日の光を反射してるみたいに輝いて見える。

 

 

「厨房のスズキさんが、呼んでおりましたよ」

「スズキさんが・・・何だろ」

「さぁ、たぶん食材の納入に関してだと思いますけど」

「ふぅん・・・」

 

 

でも困ったな、盆を下げて栞に所に行って、それからになっちゃうんだけど・・・。

 

 

「ああ、そのお盆は私が帰しておきますね」

「あ、本当? ありがとう!」

「いえ・・・陛下専属の医師の所に行けば良いのですね」

「うん、そう」

 

 

私が盆を返す場所を教えると、ハンナさんは軽く頷いて引き受けてくれた。

女王陛下のお薬は、国立オストラ病院のレイヴン・ブラックさんが作ってるの。

で、管理は陛下専属の侍医がやってる。

盆や水差しも、暗殺とかあっちゃいけないから、何重にも監視しながら扱う。

 

 

まぁ、お盆の返却とかならそこまでじゃないけど。

それから、何人かの侍女仲間とすれ違いながら、私は栞の所に急いだ・・・。

 

 

 

 

 

Side エミリー

 

・・・これは、いったい。

アーニャさんの服の中で丸まりながら、私は外の様子をチラチラと窺っています。

外と言っても、新オスティアの街並みを見ているわけじゃ無いです。

 

 

むしろ何と言うか、街を見てる場合じゃないです。

私、小動物的にピンチです。

 

 

「・・・ねぇ」

「・・・何」

「疲れたんだけど」

「・・・」

 

 

・・・し、無視(シカト)しました――――!

クゥァルトゥムさん、アーニャさんを無視しましたよ!?

 

 

アーニャさんは今、クゥァルトゥムさんと連れ立って新オスティアの市街地を歩いてます。

相変わらず多様な人種が歩いてる国際都市ですけど、でも今はそんなことを気にしてられません。

宰相府で帝国への旅程の予定について担当者と1時間ほど話した後、のんびりと移動してたんですけど。

でも、雰囲気が全然、のんびりじゃ無いです・・・。

人ごみの中、クゥァルトゥムさんから30センチほど離れた後を、アーニャさんが歩いてます。

 

 

「・・・ねぇ」

「・・・何」

「・・・どこに行くのよ」

「・・・」

 

 

・・・ま、また無視(シカト)しました――――!

クゥァルトゥムさん、アーニャさんの質問に答える気が皆無ですか!?

アーニャさんのこめかみに、心なしか青筋を浮いてるように見えるのは気のせいでしょうか。

 

 

かと思えば、クゥァルトゥムさんが急に立ち止まりました。

その背中にぶつかる直前で、アーニャさんも立ち止まります。

 

 

「ちょ・・・何よ!」

「・・・疲れたんだろう」

 

 

クゥァルトゥムさんの視線の先には、小綺麗な路上カフェがありました。

・・・え、何ですかそれ、キュンと来たんですけど。

その無愛想で不良然としていながらも実は優しいんだよ、的な行動は何なんですか。

 

 

「・・・わ、わかってんじゃない」

「・・・ふん」

 

 

そして何でしょう、このアーニャさん。

素直になれないだけで本当は嬉しい、みたいなその態度。

半年くらい前までは、もっとこう・・・頑なだったじゃないですか!

ちょ、私の知らない間に何が・・・。

 

 

ドンッ・・・。

 

 

アーニャさんに、誰かがぶつかりました。

服の中にいる私は、むぎゅっ、と潰されました。

 

 

「あ・・・ごめんなさいっ」

「え・・・ちょっ、待っ・・・エミリー、大丈夫?」

「だ、大丈夫です・・・」

 

 

服の中からモゾモゾと出つつ、アーニャさんにそう答えると・・・軽くウェーブのかかった金髪の女の人が、どこかに人ごみに紛れこもうとしているのが見えました。

・・・あ、また人にぶつかってる、ドジな人なのかなー・・・。

 

 

・・・と、思った次の瞬間、クゥァルトゥムさんが目の前から消えました。

私達の目の前から消えて・・・気が付くと、さっきの金髪の女の人とぶつかった男の人の右手を、捻り上げていました・・・。

 

 

 

 

 

Side 4(クゥァルトゥム)

 

「あででででででっ!?」

 

 

先ほどあの女(アーニャ)にぶつかった女・・・にぶつかった男の右手を捻り上げている。

ギシギシと骨を軋ませ、折れる寸前まで。

 

 

「あででで、あーででででっ!?」

「・・・これ、キミの?」

「え・・・」

 

 

僕の手の中にある物を、金髪の女に見せる。

・・・どこかで見た気もするけど、人間の顔を覚えるほど暇じゃ無い。

そして僕の手の中にあるのは、小さな赤い袋。

男がスった際に傷がついたのか、留め紐が半分とれていて中身が覗いているけど。

中身は・・・。

 

 

「・・・薬?」

「・・・っ」

 

 

赤い小さな袋の中身は、何の変哲も無いカプセル剤だった。

透明なカプセルの中には、白い粉が入っている。

それが、袋の中にぎっしりと詰まっている。

 

 

「・・・ふん?」

 

 

・・・どう言うわけか、金髪の女は顔色を青くして駆けて行った。

袋を見て、次いで僕の顔を見て、そして顔を青くしていたようだけど。

・・・この薬、何かあるのかな。

 

 

「・・・ねぇ、キミ」

「あででででっ!? な、何だよぉ!?」

「これ、何か知ってる?」

 

 

片手で器用に袋の中を探り、カプセル剤を一つだけ摘まんで見せる。

スリの男は、関節を極められる痛みに顔を歪めながらも、怪訝そうな表情を浮かべてカプセル剤を見た。

それから、首を傾げつつ・・・。

 

 

「・・・何ですかい、そりゃあ?」

「知らないの?」

「へ、へぇ・・・」

「・・・ふぅん」

 

 

・・・本当かな。

本当は知っていて、盗もうとしたんじゃないかな。

あるいは、相手の女が逃げてしまったのを考えれば、実はグルで受け渡し方法がスリだったとか、無いかな。

その可能性も、あるよね。

いや、むしろ、そうであってくれた方が僕としては楽しいね。

最近、あまりそう言うことには駆り出されていなくてね・・・。

 

 

「・・・ひっ!?」

 

 

ふん、何を怯えているのだろうね、この人間は。

僕はただ、キミのお喋りを少しばかり、手伝ってあげようと言うだけなのにね。

さて・・・。

・・・どうやって。

 

 

「クゥァルトゥム・アーウェルンクス!」

「・・・」

 

 

ちっ・・・と舌打ちしつつ振り向くと、あの女(アーニャ)が立っていた。

赤い髪に、同じ色の燃えるような瞳の女。

さらに良く見れば、僕達の周りだけを避けるように、人間共が輪を作っていた。

不躾な好奇の視線は、あまり好きじゃ無いね。

・・・人間、風情が。

 

 

「・・・軽犯罪者の拘引に、立ちあっても?」

「・・・お好きに」

 

 

その言葉に、スリの男がホッと身体を弛緩させるのを感じる。

だから、さらにキツく腕を極めてやった。

さて・・・。

 

 

「逃げた女は、どうしようかな」

「あ・・・じゃあ、私、追いかけてみます!」

「え・・・エミリー! ダメよ、危ないわ!」

「大丈夫です、さっきぶつかった時に、匂いも覚えたので・・・すぐ戻りますっ!」

 

 

あの女(アーニャ)が呼び止めるのも聞かずに、オコジョ妖精が飛び出して、人ごみの中に消えた。

群衆の足元を器用に抜けて、オコジョ妖精の姿が見えなくなる。

・・・まぁ、使い魔なのだから契約で繋がっているだろう。

 

 

それよりも、今は・・・この薬か。

はたして、久しぶりに何か、面白いことになってくれるのかな・・・。

そんなことを考えながら、僕は群衆をかき分けて近付いてくる警官を見つめていた。

 

 

 

 

 

Side 環

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ!

 

 

「・・・今日も、お疲れさまでした」

「でしたー」

「ど、どうしていつも、角をぶつけ合うの・・・?(クルックー?)」

 

 

陸軍竜舎の最後の点検も終わって、私は同族のキカネと角をぶつけ合いながらお互いを労わる。

ドロシーはいつもと同じ質問、いい加減、ちょっとしつこい。

竜族は、お互いの角をぶつけるのが挨拶って、何度言えばわかってくれるの。

ルーブルはまだ子供だから、わからないかもしれないけど。

子供は、角をぶつけちゃダメ。異性ならなおさらダメ。

 

 

カツンッ、カツンッ、カツンッ!

もう一度キカネと角をぶつけあって、それで終わり。

・・・本当は、両方の角を使うんだけど、キカネは片角だから。

 

 

「じゃあ、また明日」

「明日は朝の5時半からね」

「じゃあ、また・・・(クルックックー!)」

 

 

ルーブルが私の頬に頭を擦りつけて、それでお別れ。

また明日。

空を見上げれば、夕焼けに赤く染まってる。

 

 

竜舎から出て、陸軍の竜舎管理事務所の短距離転移ポートへ。

精霊炉を原動力とするこの転移装置も、今年から本格配備。

まだ短距離(具体的な数字は、軍事機密)だし、小人数しか運べない。

軍用に少量しか生産されていないって言うし・・・女王陛下のお部屋とかには、もちろんついてるけど。

 

 

「あ、環! 環も帰りなの?」

「暦」

 

 

宰相府内に設置されてる転移ポートエリアに出ると、そこで暦とはち合わせた。

 

 

「暦も、どこかに行ってたの?」

「ああ、うん。クママさんの所に行ってたの」

「クママさん?」

 

 

知ってる、新オスティアの酒場で働いてるクマの人。

5年前から、何かとお世話になってる。

ちなみに凄く強い、子供に大人気。

 

 

「最近、スズキさんって人事に異動したらしくてさー・・・」

「ふんふん」

「何か、クママさんに辞令? 的な物が出て・・・何か、女官になってくれないかってさ」

「ふーん」

 

 

クママさん、王宮に来るんだ。

それは、ちょっと楽しみかも・・・。

 

 

「失礼」

 

 

その時、急に道を塞がれた。

廊下を歩いていたんだけど、前後に合わせて5人の男の人が現れた。

ウェスペルタティアの紋章の入った、黒い服を着てる。

 

 

「失礼ですが、王宮女官の暦様でいらっしゃいますね?」

「・・・そうですけど・・・」

「申し訳ありませんが、ご同行願います」

 

 

抑揚の無い口調で、前面の3人の真ん中の人が喋る。

凄く、事務的。

でも、だからって私達まで事務的にならなきゃいけないわけじゃない。

 

 

「・・・誰」

「これは申し遅れました。我々、こう言う物です」

 

 

男の人が出したのは、王国官僚が持つ平均的な身分証明書。

そこには、写真と、所属が記されていて・・・。

 

 

「宰相府、公安調査局・・・」

 

 

知ってる、政治警察。

秘密警察ではないけれど、外部の情報を収集する親衛隊防諜班と対を成す、王国内部の調査機関。

でも、何で、そんな人達が暦に・・・?

 

 

暦と視線を交わすと・・・不安そうだった。

それで、私の行動も決まる。

皆に・・・そして、フェイト様に知らせないと。

暦が、危ない。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

「・・・今、何と申しましたか」

「暦さんを始めとする王宮女官6名を捕縛致しました・・・重要参考人として」

 

 

・・・暦君?

ピクリと・・・書類をファイルに綴じていた手を止める。

アリアの処理が必要な書類には、形式的な物と実際的な物がある。

だからこうして整理することで、決済の速度を上げられるようにすることができるわけだね。

 

 

「私は、聞いておりませんが」

「火急の用件と判断いたしましたので、暫定内閣法の規定に基づき、私が決定致しました。事後承諾となってしまったことをお許しください」

「・・・火急・・・? 私の夫の侍女を無断で拘束する程の火急の事態があるのでしょうか」

 

 

暦君が、拘束された。

それも宰相府・・・とどのつまりはクルト・ゲーデルの部下によって。

僕はもちろん、アリアも知らない内に。

 

 

「まぁ、まずはこれをご覧ください」

 

 

そう言ってクルト・ゲーデルが指を鳴らすと、黒服を着た彼の部下が2人ほど入って来た。

彼らの押す台車には小さな薬瓶と、小さな水槽に入った小さな魚。

あの薬は、確か・・・。

 

 

「・・・私が服用してる、風邪薬じゃないですか」

 

 

そう、アリアがここ10日ほど飲んでいる風邪薬。

どうも最近、微熱が続いているらしくてね。

 

 

クルト・ゲーデルはアリアの言葉には答えずに部下を下がらせると、薬瓶を手に取った。

そしてその中の一粒を取り出し、カプセルを開いて水槽の中に注いだ。

すると数秒後には・・・水槽の中の魚が、もがき苦しんで死んだ。

プカ・・・と、身体を変色させて、浮かんで動かない。

 

 

「おわかりかと思いますが、あえて言わせて頂きます。これは毒薬です」

「毒・・・」

「調査の結果、ストロフェルトと言う種類の極めて強力な毒薬であり、効果の見ての通りです」

 

 

ストロフェルト。

パルティア奥地の特殊な植物から採取できる毒薬。

平均的な成人男性で言えば、致死量は3ミリグラム以下、解毒剤は無い。

変な話だけど、裏の世界で入手しようと思えば10グラムで30万ドラクマはするだろう。

 

 

「・・・それがどうして、暦君の捕縛に繋がるのかな」

 

 

僕が尋ねると、クルト・ゲーデルは僕のことを見つめた。

僕には、アリアと閣僚の間の会話に割り込めるだけの政治的権限は無い。

僕に認められているのは、あくまでも非公式な権利なのだから。

 

 

「・・・端的に言えば・・・」

 

 

ただそれでも、クルト・ゲーデルは答える。

相手はあくまでも、アリアだけど。

アリアへの報告と言う形で、クルト・ゲーデルは僕の質問に答える・・・。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「順を追って説明致しましょう・・・もっとも、私がアリア様に順を追って説明しなかったことはありませんが」

 

 

一言余計です。

目でそう促すと、クルトおじ様は眼鏡を指で押し上げました。

それから懐からもう一つ、別の小瓶を取り出しました。

私の風邪薬の薬瓶とまったく同じ瓶と薬。

 

 

「ちなみにこちらは正真正銘、アリア様の風邪薬です」

「はぁ・・・」

「なお本日、新オスティアの路上で4番目のアーウェルンクスが捕縛したスリが所有しておりました」

「・・・は?」

 

 

・・・何で、私の薬瓶を新オスティアのスリが持っていたんですか。

スリはスリで問題ですけど、観光客の多いこの街では珍しくはありません。

軽犯罪の撲滅も、難しい問題の一つですからね。

と言うか、4番目・・・クゥァルトゥムさんですよね。

アーニャさん、一緒だったはずですが。

 

 

「そしてこちらのそっくりな毒薬の薬瓶、こちらはアリア様専用の薬棚にありました」

「・・・すり替え」

「まぁ、すり替えですね」

 

 

フェイトの言葉に、クルトおじ様が無視を装った返事を返します。

 

 

「事は単純にして明快、本日、アリア様の薬棚の風邪薬が毒薬とすり替えられました」

 

 

特に言葉を飾ることも無く、クルトおじ様ははっきりと言いました。

私の風邪薬が、毒薬にすり替えられていたと。

つまり、暗殺。

 

 

「・・・にしては、回りくどいようですが」

「ですが、アリア様が微熱気味であることは、お世話をする侍女であれば誰でも知っております。そして、医務室のカルテを見れば、明日もお薬を飲む可能性が高いこともわかるでしょう」

「・・・」

「あるいは、毒薬にすり替えられることをこちらに伝える意図があってのことかもしれませんが・・・」

 

 

もう一度、眼鏡を押し上げるクルトおじ様。

ただ、いつもの飄々とした雰囲気ではありません。

 

 

「もし、すり替えが昨日行われていたとしたら?」

「・・・」

「本日の昼食後、アリア様は昨日までと同じように迷い無く、侍女の差し出すお薬をお飲みになっておりました。もちろん監視体制は万全ではありますが、本日、実際に起きてしまいました・・・もし、昨日だったら」

 

 

もし、昨日だったら。

私は、間違い無く死んでいたでしょう。

だからクルトおじ様は、多少の独断専行を承知で果断速攻、動いた。

 

 

「アリア様にお薬をお渡ししたのは、暦さんを含めて7名。とりあえずはその7名を重要参考人として拘束致しました。絡繰さんがその中に入っていないのは、この際は好都合と考えるべきでしょうか」

 

 

その他、宰相府の医務室の医者、看護師、定期的な出入りができる人間が合計で24名。

そちらは、宰相府の公安調査局が監視しているとか。

ですがどうやら、クルトおじ様はそちらの線は薄いと判断しているようで・・・。

 

 

「・・・ですが現在、一人だけ行方を掴めぬ侍女がおります」

「誰です?」

「詳細は私もまだ存じませんが・・・ハンナと言う名前の侍女だとか」

 

 

ハンナ、さん・・・。

・・・さて、あまり良くは知らない方ですが。

 

 

「なお、暦さんの他には、親衛隊副長を兼ねる霧島知紅、ユリア・・・」

 

 

・・・どうも、事態はかなり大きい方向に動いているようですね。

帝国への外遊も含めて、外交環境は油断できない状態ですし。

ヴェンツェル事件からこっち、汚職の摘発と綱紀の粛清で内政も慌ただしいですし。

気のせいで無ければ、時が経つほどに面倒事が増えて行く気がします。

 

 

・・・ふと、フェイトの顔を見ます。

正直に、言って・・・どんな顔をしていてほしいのか。

私にも、わかりません。

 

 

 

 

 

Side 4(クゥァルトゥム)

 

「・・・エミリー、帰ってこないわね」

「・・・」

 

 

特に答える必要は感じなかったから、僕は何も言わない。

場所は変わらず、あの路上カフェだ。

もう6時間以上は居座っているから、店主が何か言いたげに僕らを見ている。

知ったことじゃ無い。

 

 

「エミリーとは契約で繋がってるから、場所はわかるはずなのに・・・」

「・・・」

 

 

どうやら、契約による通信が途切れているらしい。

それだけでどうと言うわけじゃない、使い魔との通信が途切れる状況は、ちょっと考えただけで10種類は考えつくことができる。

最悪の場合、殺されたとかね。

 

 

「どうしよう・・・エミリーにもしものことがあったら・・・」

「・・・たかが使い魔だろうに」

「ただの使い魔じゃないわ!!」

 

 

ガタンッ、と立ち上がって、あの女(アーニャ)が叫ぶ。

使い魔はただの使い魔でしかない。

人間と同じで、すぐに壊れる哀れで儚い生き物だ。

 

 

「・・・7年間、一緒にいるのよ! 家族同然に過ごしてきたわ!」

「使い魔にしろペットにしろ・・・あんな小動物を家族呼ばわりする連中は、理解できないね」

「アンタだって・・・家族、いるじゃない」

「家族?」

 

 

僕に、家族なんて低俗なコミュニティは存在しない。

まったく、人間と言うのは・・・。

群れなければ、何もできない。

 

 

「エミリー・・・どこにいるのよ」

「どうでも良いが、僕はいつになったらキミの世話と言う仕事から解放されるのかな。少なくとも、キミを旧オスティアの自宅まで送り届ける必要があると思うんだけど」

「・・・エミリー、探さないと。何かに巻き込まれたのかもしれないし・・・」

 

 

・・・はぁ。

舌打ちで無く、溜息を吐いた。

まったく・・・面倒な女だ。

面倒過ぎて・・・苛々する。

だがこの苛立ちは、他の人間に対する苛立ちとは少し違う気もする。

 

 

それに、また苛立つ。

頭の隅と針で刺すような苛立ちを、あの女(アーニャ)を見ていると感じる。

ああ・・・苛々する。

 

 

「・・・どこに行くのよ」

「・・・」

 

 

いちいち、煩い女だ。

少しは黙ると言うことを知らないのだろうか。

飲んでもいないコーヒーを置いて、座席から立ち上がる。

 

 

「あの、お代金・・・ひっ」

「・・・」

 

 

店主に代金を押し付けて、そのまま立ち去る。

付き合っていられるか。

 

 

「ま・・・待ちなさいよ」

「・・・何でついて来る」

「アンタが自分で言ったんじゃない、私の世話をしないとアリアに怒られるんでしょ」

「・・・ふん」

 

 

今度は、舌打ち。

本当に、苛々する女だ。

まったくもって・・・苛々する。

 

 

この女だけじゃない、この世界全てが。

僕を、苛々させる。

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

エミリーとは、7年前からずっと一緒にいる。

初めて会ったのはもう少し前で・・・カモミールがメルディアナで女子の下着を漁って捕まった時だったかな。

上級生総出でタコ殴りにしたっけ・・・。

使い魔契約を交わしてからは、本当にずっと一緒にいる。

 

 

初めてロンドンの裏路地でお店を出せる場所を確保した時も、麻帆良に行った時も、5年前の戦争の時も、メルディアナの先生になった時も、今までも・・・。

ロンドンでの最初の夏、路地裏が蒸し暑くて、一緒に熱中症になって倒れた。

最初の冬、路地裏のお店は寒くて・・・一緒に身を寄せ合って寒さを凌いだ。

エミリーの身体は本当に温かくて、お客さんが一人も来なくても頑張れた。

私の家族。

だから、探さないわけにはいかないのよ。

 

 

「・・・ねぇ」

「・・・何」

「・・・どこに行くのよ」

「・・・」

 

 

まぁた、無視されたわ・・・実はバカにされてるんじゃないかしら。

いや、絶対にバカにしてるわね、コイツ。

今日、何度も同じことを感じた。

感じる度に、声をかけようとするんだけど・・・。

 

 

『なら・・・試してみる・・・?』

 

 

その度に、あの夜のことを思い出してしまって。

そうすると、もう何も言えなくなってしまって。

ほとんど記憶は無いんだけど・・・でも、霞んだ記憶の中で、ぼんやりと覚えている。

 

 

むせ返るような、お酒の匂い。

肌の熱と、汗の手触りと、シーツの感触。

アイツの声と、他人のように聞こえる私も知らない私の声。

試したのは私だったのか、それともアイツだったのか・・・。

 

 

「・・・ねぇ」

「・・・何」

「・・・ちゃんと、来たから」

「・・・」

 

 

今度も無視されたけど、だけどその代わりアルトは足を止めて、振り向いた。

相変わらず、何かに苛ついてるみたいな顔。

 

 

「・・・何が」

「・・・わからないなら、良いわよ」

「・・・」

 

 

また舌打ちして、アルトはまた歩き出した。

それについて、私も歩く。

・・・エミリーの行き先に、心当たりがあるのかしら。

 

 

気が付けば、ロンドンの裏路地みたいな場所に入ってた。

不潔で、陰気くさくて・・・ジメジメしてる。

路地裏と言うより、スラム・・・?

新オスティアにも、こう言う場所あるのね。

だけど、ここに何しに・・・。

 

 

その時、肩を掴まれた。

 

 

振り向くと、薄汚れたボロを着た小男が、私の肩を掴んでた。

な、何・・・?

 

 

「へっへっへっ、姉ちゃん、こんな所になにょうっ!?」

「え・・・へ?」

 

 

私が何か対応する前に、その小男が吹っ飛んだ。

何でって・・・アルトが殴り飛ばしたから。

小男が吹っ飛んで、路地裏の壁に2回ぶつかって地面に叩き付けられて、倒れた。

・・・ちょ、ちょっと、やりすぎじゃないかしら。

 

 

「て・・・てめぇ! 何しやがる!?」

「なんだなんだぁ・・・揉め事かい?」

「そいつは良くねぇなぁ・・・俺らの庭でよ」

 

 

し、しかも何か、ゾロゾロと物陰から人が出て来たんだけど。

誰も彼も、あまりよろしく無い顔色と言うか、見るからにヤバそうな連中が・・・。

な、なんたってアルトはこんな所に・・・。

 

 

「・・・げ」

 

 

アルトと背中を合わせる感じで、私も身構える。

・・・んだけど、どうしてか明かりを持ってる男達が、アルトの顔を見た瞬間。

 

 

「「「「あ、あぁぁにきいいいいいぃぃぃ―――――――――っっ!!??」」」」

 

 

・・・あ、兄貴?

え、アルトって・・・普段、何してるの?

 

 

 

 

 

Side エミリー

 

・・・トタタ、と、建物の管の中を走っています。

あの金髪の女の人は、新オスティアの外れに向かって行きました。

新オスティアの端、ナイーカ村の郊外。

アーニャさんとの契約通信ができない距離になっちゃったけど・・・。

 

 

アーニャさんは、クゥァルトゥムさんに任せておけば大丈夫だと思います。

もしかしたら、もう私はいらないのかもしれませんけど。

・・・そんなことは、無いと信じたい。

まだ私は、アーニャさんのお役に立てると信じたい。

 

 

「だけど、この建物・・・使ってる人がいないのかな」

 

 

建物・・・と言っても、25年前の戦争の時にすでに廃棄された、廃工場ですけど。

あの金髪の女の人は、この中に入って行きました。

・・・何か、嫌な予感がします、アーニャさん。

 

 

タンッ、と管を抜けて、今度は廊下を走ります。

人気は無いけど、複数の人間の匂いがします。

 

 

「・・・どうす・・・で・・・」

「ゲー・・・粛・・・」

 

 

話し声。

誰かの話し声が聞こえました。

そっちの方に走ります。

 

 

「・・・ゲーデ・・・清が始ま・・・」

「・・・ンスの流した分・・・も、十分に・・・」

「・・・ら、領地に・・・退・・・」

 

 

何の話だろう・・・?

扉の所に近付いて、聞き耳を立てて見ます。

何・・・?

 

 

・・・精霊炉・・・魔導具・・・?

指輪・・・量産品、代金、情報・・・独立?

・・・領地・・・兵・・・毒・・・?

西部・・・連合・・・時代・・・宰相・・・粛清?

 

 

良く聞こえない、もう少し近付いてみます。

と言うか、姿を見ないと、何人いるかもわかりません・・・。

もう少し。

 

 

「・・・・・・叛・・・・・・」

 

 

・・・叛・・・?

扉の横の荷台に乗って、1メートル半くらいの位置から中を覗いてみます。

すると・・・。

 

 

目の前に、目がありました。

誰かと、目が合ったんです。

 

 

「・・・そこで、何をしているんですか・・・?」

「・・・っ」

 

 

反射的に飛び退くと、次の瞬間に扉が開きました。

その向こうから、あの金髪の女の人が。

青いメイド服のロングスカートを靡かせて・・・。

 

 

「どうした、何かいたのか」

「・・・使い魔に、聞かれたようです」

「何だと!? では気付かれたのか・・・!?」

 

 

使い魔だと、気付かれた!? 一目で・・・魔法使い!?

 

 

「ご安心を、伯爵様」

 

 

伯爵さま・・・?

・・・後ろにいるのは、貴族?

でも、どこの・・・って、ここは王国だから王国の貴族?

 

 

「気付かれたかどうかは・・・」

 

 

女の人が、袖から薄いナイフのような物を手に落とすのが見えた。

に、逃げる・・・ぎっ!?

 

 

「使い魔の中身を調べれば、わかりますから」

 

 

・・・速い!? 身体を掴まれ・・・!

アーニャさ・・・!!

 

 

 

 

 

Side クルト

 

宰相府司法監視局民事裁判課課長、ボリス・テンペホール。

民事訴訟に関する汚職17件に関与・・・投獄。

宰相府防災事務局次長、ミシェル・フォン・クラウド。

収賄9件を主導、及び22件に関与・・・投獄。

法務省出入国管理局西部国境課第2室長、マルティン・オットー。

不法入国者350名に金銭を要求・・・投獄。

財政省造幣局中央課課長、シレジア・ウィンポッド。

収賄・公金横領45件に関与・・・投獄。

経済産業省商務情報政策局政務官、ドブルク・ファンメイ。

物資横領・談合27件に関与・・・投獄。

・・・。

 

 

「地方官僚508名、下級官僚70名、中級官僚35名、上級官僚3名・・・削除」

 

 

ネイスタイ子爵家。

帝国国境警備の任にありながら、帝国の盗賊を領内に引き入れ略奪を代行させる。

・・・取り潰し。

イスメーネ伯爵家。

パルティアからの密輸に関与、脱税の疑惑を受けること34件。

・・・取り潰し。

しかも伯爵自身は王都に逗留しているので、捕縛はたやすいでしょう。

 

 

「残存貴族84家中、家ごと不正に関与している家は9家・・・削除」

 

 

シャ・・・ッ、と、最後の書類にサインします。

私の前には、ヴェンツェル事件の際に手に入れたリストの名前に多少水増ししたリストがあります。

何のリストかと言われると、照れてしまうのですが・・・。

 

 

粛清リストです。

 

 

いや、お恥ずかしい。

こう言う物は人目に晒すわけには参りませんので、こうして自室で隠れて作っているのですよ。

明日の朝にアリア様に上奏して、勅命として公布します。

そして実行は、公布の直前に電撃的に行います。

 

 

「しかしどうやら・・・先に反応してくれたおバカさんがいるようですねぇ・・・」

 

 

机の隅に置かれている薬瓶を指先でつつきながら、呟きます。

こんなにも早く、尻尾を見せてくれるあたり・・・ヴェンツェルも存外、役に立ちましたね。

この国のゴミ掃除の道具程度には、役に立ってくれたようです。

 

 

薬のすり替え程度で、アリア様を殺せるはずもありません。

私がいるのですから。

アーウェルンクスや吸血鬼がいる限り、実力でアリア様を殺すことはできない。

そして私がいる限り、謀略でアリア様を殺せるはずも無い。

暦さんの捕縛は、相手にアクションを起こさせるためのただの餌です。

 

 

「前時代の膿、アリア様を気に入らない奴ら、アリカ様を恨む連中、ナギを毛嫌いしている善良な人間、そしてアーウェルンクスを邪魔に思う存在・・・」

 

 

アリア様もアリカ様も、お優しいお方ですから。

彼らのような存在も、許しておしまいになるのです。

だから私が、夜なべして粛清リストを作って差し上げなければ。

 

 

「・・・む、通信ですか」

 

 

その時、私の手元の通信機が鳴り響きました。

出て見れば・・・片目を覆い隠してしまう程に長い黒髪の女性、ユフィーリアさんが相手でした。

ふむ、旧オスティアの政治犯収容施設の警備を担当している方ですが。

さて・・・。

 

 

『夜分に申し訳ありません。ご報告が・・・』

 

 

・・・ふむ、ふむ・・・何ですって?

聞き間違い、とかではありませんよね。

だとすると・・・。

ユフィーリアさんとの通信を切った後、私はそのまま宮内尚書に通信を繋ぎました。

 

 

『何でしょうかな、宰相閣下』

「・・・夜分に失礼。火急的な事態が・・・生じてしまいましてね、ある意味で国家転覆レベルです」

『・・・聞きましょうかな』

 

 

いやぁ・・・問題と言うのは次から次へと出てくるものですね。

退屈しないで済むと言う物ですが、さて。

これは、どうした物ですか。

旧オスティア政治犯収容施設で・・・。

 

 

 

 

ノドカ・ミヤザキが懐妊しました。

 




ウェスペルタティア王国宰相府広報部王室専門室・第8回広報


アーシェ:
再び、アーシェです(どーんっ)。
最近ここで出番貰えてるからか、本編で登場できない!
ま、まさかこのまま・・・?

暦:
まぁ、元気出そうよ。

アーシェ:
おお、今日のお客さんの暦さん。
今回は牢屋からお送りします。

暦:
登場できても、捕まるとかあるし。

アーシェ:
捕まってもいいから、出番欲しいです。

暦:
そ、そうなんだ・・・。

アーシェ:
今日のベストショットは・・・

「攫われる暦さん」

です。

暦:
攫われてないよ!?
私、自分でついてったもん!

アーシェ:
出番ー!

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