魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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アフターストーリー第23話「催事の10月・前編」

Side クルト

 

初日の合同慰霊祭、2日目・3日目の多国間首脳会談(サミット)。

全て、つつがなく終了致しました。

特に合同慰霊祭時の多国籍艦隊による鎮魂の礼砲発射は、好評を博しました。

 

 

そして本日のお祭り4日目には、オスティアを訪問している各国の首脳が入れ替わり立ち替わり二国間での会談を行います。

無論、私もウェスペルタティア王国宰相として各国首脳と二国間での会談に挑みますよ。

例えば今は、アリアドネー・メガロメセンブリアとの三国による大国首脳会談を・・・。

 

 

「・・・大国、ですかねぇ」

「いや、そこで俺を見るのやめろよ」

「おや、バレてしまいましたか」

「目の前でバレるもクソもねぇだろ・・・」

 

 

いや、だってアリアドネーはともかく、メガロメセンブリアは・・・ねぇ?

6年前の段階で各国からいろいろと毟られて、もう虫の息ですし。

宰相府に用意された会議室の中には、私、リカード、セラス総長の3人しかおりません。

その中で私は笑い、セラス総長は苦笑し、リカードは苦虫を噛み潰したような顔をしています。

 

 

「そう思うなら、北エリジウムの賠償要求をどうにかしてくれよ」

「内政不干渉が我が国の原則ですので」

「どの口で言ってんだか・・・」

「この口ですが、何か?」

 

 

メガロメセンブリアは6年前の戦時賠償こそ済ませた物の、旧連合の加盟国から賠償要求攻勢に晒されていて、最近はまたぞろ財政危機だとか。

条件次第では、財政支援してあげても良いですよ?

ただし、かつてメガロメセンブリアが我が国にどんな条件で資金援助をしていたかを思い出してもらう必要がありますがね。

 

 

・・・閑話休題。

会議室の窓を開ければ、わあぁ・・・と、ここまで祭りの歓声が聞こえて来ます。

オスティア祭事務局の統計によれば、4日目にして新オスティアへの入島者数が300万人を超えたとか。

1日に約80万人ほどのペースですか、まぁ、流石に1日で150万人を集めたアリア様の結婚式には及びませんが・・・のべ人数では、過去最大規模の物となりそうですね。

 

 

「いや、盛況そうで何よりですね」

「ええ、アリアドネーの学園祭とはまた別の趣がありますわ」

「うちは・・・いや、まぁ、すげーな」

 

 

アリアドネーは、現在は我が国に次ぐ大国としての地位を保っていますからね。

凋落したメガロメセンブリアや混迷を極める帝国とは違い、格が異なります。

有能な人材と技術力、ソフトパワー国家・アリアドネー。

 

 

「・・・アリア陛下は、今日はお姿を見ませんわね」

「何分、4日目ともなるとお疲れになってしまわれますので。今日は医師からも止められ、休養を余儀無くされています」

「まぁ、それは心配ですわね」

 

 

いやいや、ご心配無く・・・。

・・・さて、それでは。

 

 

「では・・・ヘラス帝国への対応について、話し合いましょうか」

 

 

ま、アリア様にはお休み頂くとして。

その他の些事は、全て私が処理しておきましょう。

 

 

 

 

 

Side さよ

 

「はわぁ・・・想像してたより人が一杯だね、すーちゃん」

「ふぉうふぁは、ふぁーふぁん」

「・・・買ってくるの、早いね」

 

 

ゲートポートから新オスティアに着いたばかりなのに、すーちゃんはもう何か食べてました。

何か・・・お饅頭的な物を。

確かに、船着場の時点でたくさんの屋台が並んでたけどね。

 

 

それにしても、1月に来てから9ヶ月、新オスティアの活気は変わらないね。

お祭りだけあって、凄くたくさんの人がいる。

初めてじゃないし、麻帆良の学園祭の喧騒を知ってるから人込みには慣れてるつもりだったけど。

新オスティアの市街地には、道の両側に所狭しと屋台が並んで、空にはバルーンと花火が・・・。

 

 

「ふええええええぇぇ・・・っ!」

「あ、はいはーい、ママですよ~?」

 

 

花火の音か、あるいはお祭りの混雑に驚いたのか、私が押していた双子用の乳母車から可愛い泣き声が聞こえた。

周りの人は特に気にしてないみたい、私達の他にも家族連れは一杯いますしね。

 

 

乳母車でバタバタと小さな手足を動かして泣いているのは、お姉ちゃんの観音(カノン)ちゃん。

たくさん泣く子で、夜泣きで最初に泣くのは決まってこの子なんです。

先月エヴァさんから貰った新しい身体(3個目?)で、観音(カノン)ちゃんを抱っこします。

4ヶ月目に入って、首がすわってきました。

つぶらな瞳に涙を溜めていて、とっても愛しいです・・・。

 

 

「もふぁえふぁ、ふぃっふぉふぉあふぁふぁいふぁ~?」

「・・・」

 

 

私が観音(カノン)ちゃんを宥めている間に、すーちゃんはしゃがみ込んでもう一人の顔を覗き込んでいました。

そっちは、弟の千(セン)ちゃんです。

お姉ちゃんが隣で泣いていたのに気付きもせず、スヤスヤとお休み中です。

 

 

あんまり泣かない代わりに良く寝る子で、起きててもどこかぽやんっ、としてて可愛いんです。

観音(カノン)ちゃんは私にしがみ付いて離れてくれなかったので、乳母車はすーちゃんに押してもらって、トコトコと人込みの中を歩きます。

それで、待ち合わせ場所の噴水広場まで来たんですけど・・・。

 

 

「ふぁふぃはわふぇ、ふぉふぉ?」

「えーと、噴水広場の所で誰かが待っててくれてるらしいんだけど・・・?」

 

 

観音(カノン)ちゃんを抱っこしたまま、私はキョロキョロと周りを見渡しました。

私達が今日ここに来たのは、お祭りを楽しむとかもありますけど・・・。

もう一つ、重大な目的があって来たんです。

 

 

新しい身体のおかげか、調子も良いですし。

・・・どうでも良いけど、すーちゃん、お饅頭を口に咥えたまま喋らない方が良いよ?

 

 

「・・・さよさん、スクナさん!」

「ケケケ、ミツケタゼ」

 

 

どうしようかと私が思っていた時、どこからか懐かしい声が聞こえました。

その声のする方に、顔を向けると・・・。

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

トントントン・・・人差し指でテーブルを叩きながら、私はさよ達を待っている。

先月に新しいホムンクルスの身体を旧世界連合経由で送ってやったが、問題は無いだろうか。

それを抜きにしても、9ヶ月ぶりの再会だからな。

 

 

「・・・少しは、落ち着いたらどうだい?」

「ああ?」

 

 

コイツ以外には出し得ないような声音で、私は声をかけてきた若造を睨む。

しかし相手の若造・・・若造(フェイト)は私の視線など気にもせずに、長い足を組んでコーヒーなぞ飲んでいる。

・・・それと何故か、「孫子」の本など読んで。

 

 

ここは祭り会場に設置された休憩コーナーで、白い丸テーブルが石畳の上にいくつも並べられている。

運河の見えるカフェテラスのような場所で、若い連中に人気がある。

祭りの喧騒からは少し離れていて、落ち着いて休むには便利だ。

現在、ここには私と若造(フェイト)の他に・・・。

 

 

「はぁっ・・・んむっ♪」

 

 

苺のクレープに齧り付いている17歳の妊婦がいる。

・・・まぁ、つまりアリアなんだが。

ちなみに田中とカムイはいない、目立ちすぎるからな。

 

 

「んふっ? ・・・むぐむぐ・・・何か?」

「いや、別に・・・って言うか・・・」

 

 

アリアのお気に入り、『至福の苺(サプリーム・ブリス・ストロベリー)』の屋台で買った苺のクレープを食べているアリアを見ていると、多少のことはどうでも良くなる・・・が。

じー・・・っと、アリアと若造(フェイト)を見る。

 

 

アリアは青いマタニティーワンピース、若造(フェイト)は白のシャツとスラックスを着ている。

そこまでは良い。

だが、何故に帽子で何故にサングラスなんだ・・・?

まさかとは思うが、それで変装したつもりなのか?

だとすれば、結構なバカだろ・・・。

 

 

「マスター、ただいま戻りました」

「っ・・・と、あ、ああ、茶々丸か」

 

 

すぐ傍から聞こえた茶々丸の声に、私は飛び上がりそうになった。

見てみれば、いつもの身体では無く、10歳程度のボディに換装した茶々丸が立っていた。

頭には、チャチャゼロが乗っている。

そして、その向こうには道を歩く大量の祭り客と・・・。

 

 

「お久しぶりです、エヴァさん、アリア先生・・・と、フェイトさん」

「久しぶりだぞ!」

 

 

そこには、さよとバカ鬼がいた。

どうやらさよの身体に不具合は無いらしく、ホッ、とした。

それから・・・それから、小さな命が2つ・・・そこにいた。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

大きな帽子とサングラスを身に着けたおかげで、私がウェスペルタティア王国の女王だと言うことはバレていないようですね。

もちろん、フェイトが女王の夫君だともバレていません。

 

 

ふふ、お母様達が追っ手を撒いた際に使用したと言う変装術ですからね、年季が入っていますよ。

我がエンテオフュシア家に代々伝わりし、芸術的変装術・・・!

・・・その割には、何かチラチラ見られてる気もしますけど。

まぁ、妊娠するといろいろと気になると言いますしね。

あまり気にしないことにしましょう。

 

 

「お久しぶりです、さよさん、スクナさん」

「我もおるぞー」

「わっ・・・晴明さんもお久しぶりです」

 

 

スクナさんの押している乳母車の籠から、晴明さんが顔を・・・・・・ああ、今度は『蒼星石』にしたんですね。

何でも、さよさんの出産の際には大騒動だったと聞いていますが・・・。

 

 

「・・・その子達が?」

「はい、私達の・・・赤ちゃんです」

 

 

そう言って、さよさんは自分が抱っこしている小さな赤ちゃんを見せてくれました。

その時のさよさんの笑顔が、何と言うか・・・せ、先輩と呼ばせて頂いても・・・?

私とさよさんの間に、何故か格差を感じます。

 

 

さよさんとスクナさんは、共に淡い色合いの和服を着ておりました。

スクナさんは無地の、さよさんは夏の花々が描かれた涼しげなお着物です。

髪は、スクナさんがポニーテールで、さよさんは簪で軽く結い上げています。

そのせいか、2人の赤ちゃんも白い和風の服を着ていて・・・でも、端にフリルがついているこのデザインは。

 

 

「マスターが送った161着の衣服の一つですね」

「ドンダケオクッテンダヨ」

 

 

冷静に、今日は私よりも背が低い茶々丸さんが解説、そしてチャチャゼロさんが突っ込みます。

フェイトは我関せずでコーヒーを飲んでいて、エヴァさんは・・・。

 

 

「わ、私の作った服、使ってくれてるのか・・・」

「はい、たくさん頂きましたし・・・この子達も、気に入ってくれてるんですよ」

「そ、そうか・・・そうか。あ、あー・・・いくつになったんだったか」

「まだ0歳だぞ」

「わ、わかってるっ、バカ鬼は黙ってろ」

 

 

確か、こちらの時間で6月に生まれたので・・・生後4ヶ月目でしょうか。

ふわふわの白い髪に、淡い赤色のクリクリした瞳。

双子の赤ちゃんが、じ~・・・っと、エヴァさんを見ています。

 

 

「む、む・・・?」

 

 

それに気付いたのか、エヴァさんが少し動揺しています。

それを見たさよさんは、少し笑って・・・自分の抱っこしていた赤ちゃんを、エヴァさんに手渡そうとしました。

 

 

「エヴァさん、抱っこしてあげてくれますか?」

「え、あ、いや、私は・・・その・・・」

「首はすわってますから、大丈夫ですよ」

「い、いや、そう言うことじゃ無くて、な・・・何だ、その・・・」

 

 

エヴァさんは慌てたようにパタパタと両手を振って、遠慮します。

しどろもどろになりながらも、赤ちゃんとは見つめ合ったままです。

困ったように眉根を寄せて、どうした物かと言わんばかりの顔で、助けを求めるように周りを見渡して・・・。

 

 

「・・・無理はしない方が良いんじゃないかな」

「う、うるさい! 無理なんてしてないさ・・・私はな!」

 

 

フェイトの言葉に、反発するように叫びました。

すると・・・。

 

 

「ふえええええええぇぇえんっ!」

「おわっ!?」

「あ、あー・・・よしよし、ママですよ~?」

「わ、私か? 私のせいかっ」

 

 

エヴァさんの大きな声に驚いたのか、赤ちゃんが可愛い声で泣き出しました。

乳母車に乗っている子の方は、泣いている方を不思議そうに見上げています。

結局その後は、さよさんが泣き出した赤ちゃんを宥めるのに時間を使ってしまいました。

 

 

エヴァさんがオロオロしながらもあやそうとして失敗して、さらにオロオロして・・・。

さよさんが笑いながら、赤ちゃんをあやして泣き止ませます。

・・・さよさん、本当にお母さんなんだ・・・。

私達がその場から移動できたのは、それから30分後でした。

 

 

 

 

 

Side 山本 章一(女王親衛隊隊長・独身)

 

我々女王親衛隊は、もちろんのこと女王陛下に忠誠を捧げる集団である。

しかし同時に、女王陛下の臣民を守護するのも俺達の重要な仕事だ。

よって不埒な奴が侵入しかねない区画に優先的に人員を配置し、女王陛下と彼女の民を守るべく職務に従事しているわけだ。

 

 

「ハッピ姿でそんなカッコイイことを言っても、様になりませんよー」

「・・・」

 

 

横で親衛隊ハッピを着て日本式焼きそばを作っている親衛隊員の言葉は、軽くスルーだ。

新オスティアには大きな橋がいくつもあるが、その内の丸々一つが俺達の区画(ブース)なわけだ。

道行く無数の人々に対し、親衛隊ハッピを来た店員達(親衛隊員)が威勢の良い声をかけている。

ちなみに売上の半分は福祉施設に寄付、残りは親衛隊の運営資金にさせていただきます。

 

 

親衛隊ハッピは、青地にズバリ「親衛隊」と書いてあるハッピだ。

デザインは、まんま旧世界のハッピ。

背中の字は「女王陛下ラヴ」とどっちにするかで揉めたが、いろいろと分別をつけて前者にした。

 

 

「どうでも良いスけど、モノローグやってると副長の班に負けますよー?」

「・・・」

「おいちゃん、焼きぞば3つー」

「はーい、毎度どーもー!」

 

 

小さな子供からお金を受け取って、横の親衛隊員が焼きそばを渡す。

焼きそばを始め、ここの区画(ブース)の出店では親衛隊員が旧世界のお祭り料理を振舞っている。

フィッシュ・アンド・チップス、ケバブ、たこ焼き、ジャラード、ピザ、トムヤムクン、中華まん、ジンジャークッキー、ハンバーガー、スコーン、ホットドック・・・などなどだ。

 

 

これがなかなか、売れる。

俺がうむうむと頷いていると、手元の黒電話が鳴った。

正確には黒電話型通信機だ、俺はすかさず受話器を取った。

 

 

「どぉしたぁっ!」

『た、隊長っ、大変です!!』

「どぅぉしたぁっ!!」

『じ・・・女王陛下が、ご家族とご一緒にこの区画(ブース)に!』

「何だと!?」

 

 

そう言えば、今日は女王陛下はお忍びで祭りに参加されると、親衛隊の定期回覧板に載っていたな!

しかし、まさかここに来るとは・・・だが、俺達は親衛隊。

常に女王陛下の御ために、動く!

 

 

「女王陛下専用、特別シフトだ――――!!」

『『『了解(イエス)、隊長(マイロード)!!』』』

 

 

俺の命令が電撃的に各屋台に伝達され、あらかじめ用意されていた屋台の出し物が次々と追加される。

苺飴、苺のかき氷、苺のクレープ、手掴み苺ケーキ・・・そして、苺の掴み取り!

 

 

『いらっしゃいませー!!』

『今なら、スコーンに苺ジャムがつきますよー!』

『お値段締めて・・・1アスになります!!』

 

 

ふふ・・・良いぞ、とにかく苺を全面に押し出すんだ。

女王陛下ならば、あるだけ買ってくれるはず・・・!

 

 

『大変です隊長!』

「どぉぉしたぁぁっ!!」

『女王陛下が、苺に見向きもせずにリターン!』

「なん・・・だと・・・!」

『どうも女王陛下のお連れ様の赤ん坊がオムツがどうとか・・・隊長? 隊長ー?』

 

 

・・・至極単純な理由で、女王陛下はユーターンされたらしい。

ファーストラウンド、敗北・・・。

 

 

 

 

 

Side 千草

 

毎年のことやけど、ほんまに賑おうとるなぁ。

オスティアのお祭りは、祇園祭とは勝手が違うて最初は戸惑うとったけど。

流石にもう、慣れたわ。

 

 

「しゃあーっ、行ったれやトサカはーんっ!!」

「うふふ、タレが垂れますえ・・・おおぅ、京都人にあるまじき失態どすー」

 

 

うちの横には、月詠と小太郎が並んで座っとる。

小太郎は両手に鰻の蒲焼きみたいな肉を持って、交互にかぶりついとる。

その際にタレがボタボタ落ちるから、月詠がその都度、拭ってやっとる。

・・・いや、別にそこで人種がどうとかで落ち込まんでもええけど。

 

 

ちなみに、小太郎の肉は鰻やのうてドラゴンの肉や。

・・・いや、ドラゴン、竜、龍やで?

『龍の眉毛』っちゅードラゴンの蒲焼きの出店で買ったんよ、一枚5アス。

 

 

『おぉっと、トサカ選手がガードを下げて左右に身体を振り始めた! こ、これは―――!』

 

 

あと、うちらはオスティアの拳闘大会を観戦中や。

毎年年末にやる世界杯(ワールドカップ)やのうて、2年に1度、「イヴィオン」加盟国の選手を集めて行う「イヴィオン競技会(ゲームズ)」の拳闘大会やな。

小太郎と月詠が見たがった言うのと、トサカはんらのチームには知り合いも多いからな。

一応、休暇がてら応援に来たんよ。

 

 

「毎年のことやけど、凄い人やねぇ」

「うむ、そうだな」

 

 

小太郎らとは反対側に座っとるカゲタロウはんは、いつも通り仮面の御仁や。

うちの隣で、腕を組んでジッとしとるだけや。

・・・それだけ、や。

何となく気恥ずかしい気分で、左手の指を撫でる。

 

 

い、いや、うちもほら・・・結構な年やから。

特別、何がどうってわけやあらへんよ。

ほんまに。

 

 

「失礼、この座席は空いているだろうか」

「え・・・ああ、はい、空いとりま・・・」

 

 

その時、不意に声をかけられた。

そこにおった相手を見て、うちは言葉を途切れさせる。

せやかて、ええー・・・。

 

 

「あ、あんたらは・・・!」

 

 

一人は、黒いローブに仮面。

若干、うちの亭主(ヒト)とかぶってる。

そしてその仮面ローブに寄り添うように、どっかで見たことのある顔と短い白い髪の女の子が立っとる。

・・・と言うか、デュナミスはんとセクストゥムはんやろが!

何で、おんねや!?

 

 

・・・うん?

な、何や、うちの亭主(ヒト)が急に立ち上がって・・・。

 

 

「・・・」

「・・・」

 

 

顔・・・やなくて、仮面と仮面を突き合わせて睨み合いを開始した。

小太郎と月詠も、肉を咥えたまま固唾を飲んで見守っとる。

ゴクリ・・・と、うちも唾を飲み込む。

 

 

ピリピリとした空気が、周囲を包み込む。

あえて言うなら、ここが戦場かのような。

そのまま、緊張感のある沈黙が続いて・・・。

・・・そして。

 

 

「どうぞ」

「どうも」

 

 

・・・って、普通に座席を勧めた!

そして、普通に談笑を始める。

 

 

「いや、本当に凄い人込みですな」

「まったくですな。エリジウムの村人へのお土産を買うのに手間取る手間取る」

「ははは・・・それはそれとして、良い仮面ですな」

「いやいや、そちらこそ粋な仮面で・・・」

 

 

仮面談義を始めた!

アレか・・・共通の趣味で友情でも芽生えたんか。

仮面でか・・・うちの亭主(ヒト)のが万倍カッコええけど。

・・・うん?

 

 

気が付いたら、デュナミスはんの向こう側の座席からセクストゥムはんがうちを見とった。

下唇のあたりで右手の人差し指を左右に振って・・・かすかに、妖しく笑った。

・・・いや、黙っといてなとか言われてもな。

と言うか、あんま一緒におる所を誰かに見られたく無いんやけどなー・・・。

うちの立場的に。

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

この1週間くらい、もう本気で頼み込んだ結果、一日だけ仮退院できたわ。

と言うか、普通に外出許可だけど。

毒の症状がぶり返した時のためのお薬も貰って、お祭りで賑わう街並みを歩く。

 

 

「おまたせー!」

「おせーぞ、爆裂娘」

「ごねんね、シオン。待った?」

「いいえ、私達も今来た所なの」

「無視(シカト)かよ!」

「いやぁね、冗談よ冗談、ロ・・・バカート」

「言い直した意味がわからねぇ!」

 

 

なんてバカな会話をしながら、私は待ち合わせ場所のカフェのテーブルに座る。

私が適当にコーヒーを頼んでいる間に、シオンは手元の端末を閉じて、バカートは変わらずダラダラとテーブルに突っ伏してる。

 

 

いくつになっても、幼馴染を前にすると子供の頃に戻っちゃう。

そう言うことって、あるわよね。

ちょっと恥ずかしいけど、でも嫌じゃないわ。

 

 

「ミスタ・アルトゥーナは仕事を抜けられないそうよ」

「あー、執政官だもんね」

 

 

今日はメルディアナの友達で集まろうって話になってるんだけど、ミッチェルは無理よねー。

メガロメセンブリアの執政官様だもんね。

アリアは、何かお忍びで来るとか言ってたけど・・・大丈夫かしら?

まぁ、合流するのは夜だけどさ。

 

 

「ああ、それとな・・・コレ、校長からだ」

「ドネットさん?」

「おう」

 

 

バカートが、白い封筒を私に渡してくる。

シオンはコーヒーを飲んで目を閉じててくれてるから、その間に受け取る。

表には何も書いて無いけど、裏面にはドネットさんのサインと校章がある。

・・・ふぅん、バカート経由なんだ。

 

 

まぁ、幼馴染と会うついでって感じなのかしら。

エミリーのこともあるけど、私がずっとこっちにいるのは不思議だったし。

何が書いてあるのかしら・・・。

 

 

「・・・お客様、当店はペットの入店は、その・・・」

「え、ええ・・・?(く、クルックー・・・)」

 

 

その時、カフェの入口で誰かが店員と揉めてるのに気付いたわ。

どうも、ペットの入店・・・具体的には、背中に子竜を張り付かせての入店を拒否されてるみたい。

と言うか、ドロシーとヘレンじゃない!

物凄く困った顔で、オロオロしてるのがわかるわ。

 

 

「行くわよ、ロバート」

「合点承知だ、シオン」

 

 

そしたら、シオンとロバートがすっ飛んで行ったわ。

3秒後には、ヘレンを抱き締めて店員に弁護・・・いや、拒否られてるのはドロシーだからね?

私は溜息を吐いて、ドネットさんからの手紙をハンドバッグにしまうと、席を立った。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

ギシッ・・・僕とアリアが乗っている物がかすかに軋み、アリアが小さく息を飲む。

僕の腕を掴んでいる手に力を込めて、大きく息を吐いた。

僕は自由な方の手を伸ばすと、アリアの前髪に触れる。

 

 

「・・・大丈夫?」

「はい、もちろん・・・ただ、久しぶりで驚いただけです」

「そう、無理はしないでね」

「大丈夫です・・・ですから、続けましょう?」

 

 

かすかに微笑む彼女の額に軽く口付けて、僕は頷く。

だけど彼女は身重、腹部や腰に響くようなことは控えないといけない。

だから、短めに済ませるとしよう・・・。

 

 

「・・・キミ、そろそろ引き返してくれるかな」

「はい、了解であります!」

 

 

周囲の風の音に負けない声で、竜騎兵が返事をする。

それに合わせて、ゴンドラを乗せた大型の輸送用騎竜が大きく旋回し、ぐるりと回る。

魔導技術で風と熱から保護されたゴンドラの外側には、新オスティアの島が見える。

 

 

陸軍の竜騎兵による、ゴンドラ遊覧。

僕とアリアが乗っているような騎竜に乗り、新オスティア島を周回する乗り物だ。

陸軍の催し物なだけに、アリアや僕の正体がバレる可能性もあったけれど。

事実、この騎竜の乗り手でありゴンドラ遊覧竜騎兵隊の隊長も兼ねる赤い短髪と無精髭の兵士、ショーン・ヴァーユ中尉などは・・・。

 

 

「・・・何」

「別に、ただ・・・もうちょっと乗っていたかったなと思っただけです」

 

 

ふと視線を下げると、アリアが僕のことを見ていた。

どこか、少しだけ不機嫌さを感じたけれど・・・。

 

 

「8ヶ月前も、一緒に竜に乗りましたよね」

「・・・ああ、そうだね」

「忘れてました?」

「いや、忘れたことは無いよ」

 

 

まだ1年も経っていないのに、忘れるも何も無い。

今年の始めの新婚旅行で、形は違うけどアリアと僕は騎竜に乗っている。

あの時は、アリアも多少の無理ができる身体だったけれど・・・。

 

 

「今日は、ここまでにしよう」

「わかってます。ただ少し・・・浸ってただけですよ」

「・・・そう」

 

 

本当は、こう言う乗り物には乗らない方が良いのだけど。

実際、赤ん坊を連れているサヨ・アイサカやリョウメンスクナは飛行鯨の遊覧船に乗っている。

僕としては、アリアもそっちへ行った方が良いと思ったんだけど。

 

 

・・・そう、そう言うことだったんだね。

それは確かに、アリアに・・・僕らにとって、大事な思い出だものね。

僕はアリアの身体を抱き寄せると、自由な方の手でアリアの腹部に触れる。

腹部を撫でるように手を動かすと、アリアは柔らかく微笑んだ。

 

 

「また来年・・・お忍びで来よう」

「またお忍びですか? ・・・楽しそうですね」

「そう」

 

 

アリアが「アリア」として行動できる時間は、とても限られている。

だからこそ、お忍びで街に出ることに淡い楽しみを見出しているのかもしれなかった。

 

 

「よし行けトリュク! あそこのゴンドラにぶつけるんだ!」

「い、いやいやいや、無理ですってマ・・・じゃなく、お客さん!」

「マスター、あまり揺らさないでください。手ブレ補正にも限度があります」

「ケケケ、バレバレダゼ」

 

 

・・・後ろで、黒い長髪を頭の後ろで結んだ若い兵士をけしかけている声は、この際どうでも良い。

アリアが身体を冷やす前に―――ゴンドラの中は一定温度に保たれているとはいえ―――降りよう。

今の所、僕はアリアのことを第一に考えなければならないからね・・・。

 

         

 

 

 

Side 霧島 知紅(女王親衛隊副長)

 

我々女王親衛隊は、もちろんのこと女王陛下に忠誠を捧げる集団です。

しかし同時に、女王陛下の臣民を守護するのも俺達の重要な仕事です。

よって不埒な奴が侵入しかねない区画に優先的に人員を配置し、女王陛下と彼女の民を守るべく職務に従事しているわけです。

 

 

新オスティアの運河の途上にある橋の上において、私達は女王親衛隊の広報活動を行っています。

装備品の展示や活動内容を紹介したパンフレット配布やプロモーションビデオの上映、そして女王陛下関連の書籍や映画・アニメDVDなどを無償配布しております。

私達の活動にご理解頂くのと同時に、女王陛下の素晴らしさを再確認して頂く。

我々の活動は、とみに重要なのです。

 

 

「見よ! 唸る刃の刻む芸術の嵐を!!」

 

 

ギュララララッ・・・と音を立てて丸太を激しく削り、女王陛下を模した像を作るチェーンソーアートが、どうやら一番人気のようです。

 

 

おおおぉぉ・・・と、作業台を取り巻く祭り客の皆様から、感嘆の声が漏れます。

 

 

チェーンソーアート・・・チェーンソーによる芸術。

行っているのは当然、我が女王親衛隊の柳山鉄心率いる「テキサス・チェーンソー」。

女王陛下の像だけで無く、動物や祭り客自身の姿を象ることもできます。

女王陛下の像は制作が法によって規制されているので、扱いが難しいですが。

 

 

「おひねりはご遠慮ください!」

 

 

一応、チェーンソーアートの作品は販売しています。

視線を巡らせれば、戦車に乗せてもらっている子供や武術を披露している亜人隊員などが見えます。

女王陛下の臣民に対し、我らは常にオープンで無ければなりません。

その点は、女王陛下のお望みでもあります・・・。

 

 

『ふ、副長! 大変です!』

「どうしましたか」

 

 

通信機である白電話が鳴り、私はそれを手に取ります。

受話器の向こうからは、慌てたような隊員の声が。

 

 

『じ、女王陛下が、お忍びでこちらへー!』

「そうですか、わかりました」

 

 

淡々と告げて、私は通信を切ります。

まったく、女王陛下が来られるのは別に想定外のことではありません。

我ら親衛隊、常に女王陛下が傍におられるものとして活動するが常識。

 

 

章一からの連絡もありました、何を慌てることがありますか。

しかし、女王陛下が来られるならそれ相応の対応を。

私は、この区画(ブース)の全員に命じます。

女王陛下を、全力で無視し給うようにと。

 

 

「女王陛下はお忍びでのお時間を楽しまれています、邪魔をすることは許しません」

 

 

聞けば、女王陛下は変装をなされているとか。

何でも、普通にバレバレなお可愛いらしい変装だそうで。

まぁ、変装などで女王陛下から発せられるオーラを抑えられるはずもありませんが。

 

 

とにかく、変装は些事から解放されたいとの願いからでしょう。

であれば、我々が騒ぎ立てて女王陛下のお時間を奪うわけには参りません。

他の兵や市民が陛下にお声をかけないのも、同じ理由からでは無いでしょうか。

この国の民で、女王陛下の普段の多忙さを知らぬ者はおりません。

だからせめて、お休みの時間を邪魔をしてはならないと・・・。

 

 

「畏れ敬うのでも、崇め奉るのでも無く」

 

 

ただ、皆が女王陛下の休息を邪魔したくないと思える国。

女王陛下が、臣民に配慮してくださる限り。

我ら臣民は、彼女を頭上に戴く。

神でも悪魔でも無い、人間の王として。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

少し不安でしたが、軍や親衛隊の方々の出し物も盛況のようですね・・・。

別に媚を売る必要はありませんが、市民の方々に親しみを持って頂くのは重要です。

結果として、認可して良かったですね・・・って、いたたたたっ。

 

 

「あーうー」

「あ、あたたっ、あたたたって・・・」

「あ、ご、ごめんなさいアリア先生っ」

「い、いえいえ・・・いたたっ」

 

 

えーっと、さよさんが抱っこしてる赤ちゃん・・・カノンちゃんに、髪を引っ張られてしまいました。

それほど痛いわけではありませんが、ぐいぐい引っ張るので・・・。

まさかお仕事のことを考えていたから、と言うわけでも無いでしょうけれど。

 

 

「ごめんなさい、観音(カノン)ちゃんってば最近いろんな物を掴むので・・・観音(カノン)ちゃん、ダメですよー?」

「いえいえ、本当に大丈夫ですよ」

「う、うー?」

 

 

ふーむ、赤ちゃんは好奇心の塊みたいなものと聞きますが、カノンちゃんはそう言うのが強いのでしょうか。

でも弟のセンちゃんの方は、乳母車で大人しくしておりますし・・・赤ちゃんによって、個性があるのでしょうか。

 

 

・・・私の赤ちゃんは、どんな子でしょうか。

フェイトみたいに物静かだったり、あるいは逆に元気いっぱいな子だったりするのでしょうか。

つわりが治まってからは、そう言うことを良く考えるようになりました。

 

 

「ふぁあ、いふぁはあはんふぁふぇへほふぃふぁはふぁいお」

「・・・食べるか喋るかどっちかにしろ、バカ鬼が」

「マスター、私は今日は記録に専念しますので大人しくしていてくださいね」

「ああ、わかっ・・・オイ」

 

 

・・・茶々丸さんが、今日はさよさんの赤ちゃん2人にべったりです。

何か、将来の様子を垣間見たような気がします。

 

 

「わっ、カーニバルですよー?」

「雑技団のようだね」

 

 

さよさんの声に、フェイトが応じます。

その視線の先には、新オスティアの広場の一つで行われているカーニバルが。

ちょうど進行方向なので、少し寄ってみることにします。

なかなか人気なようで、多くの人が足を止めて20人ほどの雑技団の演技を見ています。

チャチャゼロさんとかは、ナイフのジャグリングに興味を示したようですが。

 

 

その時、私の目の前にフワリと誰かが舞い降りました。

銀の髪、赤い瞳、褐色の肌にピエロのメイクと衣装。

15歳くらいのその女の子は私を見つめると、ニコリと微笑みを・・・って。

 

 

「・・・ザジさん?」

「はい、アリア先生。お久しぶりです」

「ザジさんじゃないですか! え、何で・・・?」

「姉もおりますよ」

 

 

ザジさんがそう言った途端、ザジさんの隣にシュタッと誰かが降り立ちました。

それは、ザジさんそっくりなピエロ少女で。

 

 

「妹、サボるなポ「ポヨさん!」・・・げ」

 

 

そんな嫌そうな顔をなさらなくとも・・・。

すると、フェイトとエヴァさんが私の前に出て来ました。

え、えーっと、もしかしなくとも臨戦態勢ですか・・・?

 

 

「ご安心ください、我々は現在、誰とも契約を結んでおりません」

「ほぅ? 契約無しで悪魔がこっちにいるのか・・・信じられんな」

「まぁ、本来なら私達だって来たいわけじゃ無いポヨが」

「なら、どうしてここにいるんだい?」

「あ、あのー、もしもし・・・?」

 

 

私の前で、この世界で最強の組み合わせのタッグマッチが実現しようとしています。

でもここ、お祭り会場ですから。

私がそうやってアワアワしていると、茶々丸さんまでもが出て来ました。

そして、ポヨさんに向かってぺこりとお辞儀を。

 

 

「その節は、大変お世話になりました」

「・・・どの節ポヨか?」

「貴女が田中さんの頭を持ち帰ってくれたおかげで、弟は一命を取り留めました。感謝致します」

 

 

その茶々丸さんの言葉に、ポヨさんはあから様に嫌そうな顔をしました。

でも、確かにポヨさんが田中さんの記憶媒体を拾ってくれなければ・・・。

・・・エヴァさんも、舌打ちしながらポヨさんから離れます。

 

 

「お礼なんていらないポヨ、私達はちょっと人探し・・・悪魔探しをしているだけポヨから」

「悪魔探し?」

「お前達には関係無いポヨ、妹も早く仕事に戻るポヨ」

 

 

ポヨさんはそう言うと、こちらの返事も待たずにカーニバルの方へ戻って行きました。

・・・悪魔探し、ですか。

 

 

「・・・すみません、姉はああ言う人・・・悪魔なので」

「あ、いえ・・・」

「旧交を温めたい所ですが、仕事中なので・・・占いなどいかがですか?」

「占いですかー?」

「はい」

 

 

にっこりと営業スマイルを浮かべて、ザジさんはさよさんの言葉に答えます。

そしてザジさんが指差した先には、多くの人で賑わう黒い天幕のような施設があります。

・・・占いコーナーですか。

 

 

「今なら、私の知人と言うことで優先的に入れます」

「あ、じゃあ・・・私は行ってみますね。この子達のこと、占って貰っちゃいます」

「なら、僕(スクナ)も行くぞ」

「僕は遠慮しておくよ」

「私もだ、占いなどくだらん」

「では、私と姉さんは行ってまいります・・・命名占いに」

「コトシハナンボンナイフカエルカナー」

「後学のために、我もついて行こうかの」

 

 

エヴァさんとフェイト以外は、占いに行くようですが・・・。

 

 

「私は遠慮しておきますね、少し疲れましたし・・・」

「では、あちらにベンチがありますから、そちらで・・・」

 

 

ザジさんの示した方向には、確かにベンチがあります。

この身体で並ぶのはなかなかに疲れますので、休ませてもらうことにします。

ザジさんは礼をしながらベンチを示し・・・そのまま、人込みの中に消えてしまいました。

・・・次に会えるのは、いつでしょうか。

 

 

そんなことを考えながら、フェイトとエヴァさんに支えられながらベンチへ。

すると・・・。

 

 

「・・・あれ?」

 

 

さっきまで誰もいなかったはずのベンチに、お婆さんが座っています。

あ、あれ、ずっと見てたのに・・・。

 

 

「・・・うっひゃっひゃひゃひゃ・・・」

 

 

怪しい笑い声を上げるお婆さんは、70歳代くらいに見えます。

亜人のようですが、黒いローブを纏っているので顔が良く見えます。

お祭りには馴染まない、陰気な人ですが・・・雑技団の方でしょうか?

 

 

「あの、もし・・・?」

「・・・は?」

 

 

呼びかけてみると、隣のエヴァさんが訝しげな表情を浮かべました。

そして、肝心のお婆さんはと言うと。

 

 

「ん~・・・んん、うひゃひゃひゃ・・・んん~・・・なるほどのぅ、んん、わかっておるわかっておる・・・聞きたいことはわかっとるでの・・・このヴァレタ婆に任せるが良いて・・・うひゃひゃひゃっ・・・」

 

 

どうしましょう、会話が成立しそうにありません。

と言うか、普通に危ない人です。

私は即座に別のベンチを探すことにしました。

 

 

「お、おい・・・?」

「・・・アリア?」

 

 

いやいや、何故に引き止めようとするんですかフェイト、エヴァさん。

ここは撤退の一手でしょうに・・・。

 

 

 

『インカの老貴族は、年甲斐も無く動く。

 その口は甘く、ストロファンツスの実の汁の如し。

 インカの老貴族の謀は、愚かな乙女達を操り、賢しらな愚者は乙女達に引き摺られる。

 やがて、インカの老貴族は天国に劫火を起こすであろう・・・』

 

『一天に二匹の獅子は居られず。

 銀の雌獅子と金銀の雄獅子は天国にて対決する。

 宵の明星の民と天国の民を巻き込み、天国は荒廃するであろう。

 そして、新世界への道が開けるであろう・・・』

 

 

 

・・・?

やけに朗々とした声に、もう一度お婆さんを・・・。

 

 

「・・・あれ?」

「あれ? じゃなくてだな・・・挙動不審してどうした」

「・・・疲れた?」

「いえ、疲れたって言うか・・・あれ?」

 

 

お婆さん、いなくなってました。

私の前には空いたベンチと、お祭り客の賑わいだけが残っています。

・・・え?

 

 

今のはいったい、何だったんでしょうか。

・・・ザジさんの演出、とか?

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

シャンッ、と軽やかな音楽に合わせて、2人の女性が舞台の上で踊っております。

まるでアラビアンナイトに出て来そうな中東系の生地の薄いヒラヒラした衣装を纏った2人の女性は、パンフレットによれば姉妹だとか。

2人が左手の曲刀(シミター)を打ち合わせると、両手足に付いた鈴が不思議な音色を奏でます。

 

 

手と足の先まで薄い布で覆った方が、長女のタトラ・チゼータさん。

褐色の肌に背中に広がる深紅の髪、にこやかな笑みを浮かべたエキゾチックな美女です。

一緒に踊っているのが次女のタータ・チゼータさんで、こちらは手も足も露出した踊り子。

健康的な色香を漂わせる美女で、見る者を圧倒するような躍動的な踊りに魅力を感じます。

 

 

「これより語るのは遠い遠いお国の物語・・・」

 

 

語り部と音楽を担当しているのは、三女のターニャ・チゼータさん。

露出も少なく、他の2人とはどこか雰囲気が違います。

首の後ろで2つに分けて垂らした髪で、両手でウードと言う撥弦楽器を操っています。

 

 

『アルフ・ライラ・ワ・ライラ』・・・アラビアンナイト、千夜一夜物語。

旧世界にも存在しますが、魔法世界にも同じような物語があります。

まぁ、マスターと言うなまはげも存在しますし、どこにでもあるお伽話の一つですね。

この3人の踊り子は魔法世界でも有名な3姉妹で、帝国では王侯貴族に3人まとめて求婚されたこともあるとか。

 

 

「そのお国には、それはそれは恐ろしい王様が君臨しておりました・・・」

 

 

三女の音楽と語りに合わせて、姉の2人が踊りでそれを表現する。

躍動的でエキゾチックな踊りと、魔力の乗った不思議な鈴の音。

新オスティアの自然公園に設置された円形の大ステージの催し物の一つですが、座席に座っている何百人かの観客だけで無く、立ち見をしている方々もおります。

 

 

ちなみに私達は、最前列の座席に座っております。

夕方5時から始まるこの催し物は、様々なエンターテイナーの方々が次々と登場する目玉イベント。

これはきっと、良い思い出になることでしょう。

 

 

「わっ・・・わー、観音(カノン)ちゃん、千(セン)ちゃん、良かったね~」

「花なんか食えな・・・いや、コレ食べられる花だぞ!」

「うー?」

「・・・ぁむ・・・」

 

 

私の隣では、舞台からカノンさんとセンさんに投げ渡されたお花について盛り上がっております。

双子ちゃんも喜んでいる様子・・・でもセンさん、そのままお花を食べてはいけません。

記録中、記録中・・・。

 

 

そしてさらにその向こうでは、アリアさんが双子ちゃんをとても優しい目で見ております。

少し無理をしてお2人に来て頂いて、正解だったようです。

そしてそれは、おそらくフェイトさんも同様でしょう。

アリアさんのお腹の命に対する想いを、さらに強めてくれることでしょう。

こちらも記録中、記録中・・・今日は本当に忙しいです。

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

「お待たせ~、ゴメン! 道が凄く込んでてさ・・・!」

「あ、ああ・・・別に大丈夫だろ、まだ1個目だしな」

 

 

剣舞が終了した6時頃になって、アーニャとか言うアリアの友人達が席にやってきた。

このイベント、入場券・座席券を持って時間までに来ないと途中入場ができないからな。

例外は、催し物の間の休憩時間だけだ。

 

 

「わっ、ひっさしぶり~・・・って、何そのサングラスと帽子」

「久しぶりね・・・もしかして、変装のつもりなのかしら?」

「さ、流石ですお姉さま・・・っ(クルックー☆)」

「え、えーっと、誰だかわかりませんでしたよ先輩!」

「はは、俺の妹は空気が読めて可愛いだろ?」

「一部を除いてバカにされてる気分です!?」

 

 

友人達からいろいろ言われて、アリアがショックを受けていた。

まぁ、私から見てもあの変装はどうかと思うが。

本人が良いなら良いがな。

そのまま、アリアは学生時代の友人達に囲まれてきゃいのきゃいのし始める。

親しい友人に囲まれることは、普段ではほぼあり得ないからな。

 

 

「まったく、いつまでたってもガキだな」

「記録する側としては、今日はとても素晴らしい日です」

「そ、そうか」

 

 

まぁ、茶々丸も楽しそうだし、良いか。

たまには、こう言う日があっても良いだろう。

ピエロ姉妹(ザジたち)と出会った後、少し挙動不審だったが・・・特に心配する必要は無いらしいな。

体調も悪くは無さそうだ、まぁ仕事漬けの毎日よりは健康的だろう。

たまには運動せんと良く無いとも聞くしな・・・。

 

 

・・・子供、か。

続く、続いて行ける命の、何と素晴らしいことだろう。

さよもアリアもその輪の中で幸福になれば良いと、心から願う。

それは、私にはできないことだから。

 

 

「マスター」

「ゴシュジン」

「・・・あ? ああ、すまん、何だ・・・って」

 

 

横を向くと、茶々丸が赤ん坊を抱いていた。

確か・・・カノンとか言ったか、さよとバカ鬼の子供。

不思議な力を感じる・・・おそらく、将来は大物になるだろうな。

・・・って、そうでは無くて。

 

 

「な、何だ?」

「さよさんが、是非に抱いて欲しいと」

「う・・・」

 

 

茶々丸の言葉に、本気で弱る。

茶々丸の向こうには、どこかハラハラしたような顔をするさよが見える。

参ったな・・・いや、抱きたくないわけじゃ無いんだが。

 

 

むしろ、抱いてやりたい。

この淡い赤色の瞳で、じっと私を見上げている赤ん坊を。

この腕で、抱いてやりたい。

だが、私は・・・その、困ったな・・・。

 

 

「・・・ゴシュジン」

「・・・いや、良い」

「マスター・・・」

「・・・そんな顔をするな、さよが気にする」

 

 

チャチャゼロは知っているだろうし、茶々丸も気付いているのかもしれない。

だからあえて、何も言わない。

言う必要が無いし、言ってしまうのは私の誇りが許さない。

だから・・・。

 

 

 

だから、茶々丸からそっとカノンを受け取った。

 

 

 

赤ん坊など、初めて抱いた。

抱き方はこれで大丈夫だろうか、頭を支えるように、慎重に抱き上げる。

想像していたよりも、ずっしりとしていて・・・温かかった。

ぽかぽかで、柔らかくて・・・・・・涙が、出そうだった。

淡い赤色の瞳が、不思議そうに私を見つめている。

 

 

無垢で、穢れの無い、純粋で美しい瞳だった。

それが不意に細まって、にぱっ、と笑った時・・・本気で、泣きそうになった。

・・・これが、赤ん坊か。

・・・・・・重い、な。

 

 

「・・・何や、アンタらもここやったんか」

 

 

その時、アーニャ達が来たのとは反対方向から、千草達がやってきた。

犬っころが何か肉を食ってるが、それは別にバカ鬼の同類と言うだけだろ。

問題は、千草の後ろにいる・・・カゲタロウの横にいる奴だ。

そいつはカゲタロウと同じように白い仮面をつけていて、しかも若造(フェイト)そっくりな女を連れている・・・って、オイ。

 

 

「何で、貴様らがいるんだ―――――っ!!」

「ふぇ・・・ふえええええええぇぇぇぇぇっ!」

「う、うおおぉぉ・・・っ!?」

「むぅ、赤子を泣かすのは良く無いな、吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)

「やかましい!」

 

 

私がまた叫ぶと、私の手の中でカノンが一際大きな声で泣いた。

ま、不味いぞ、泣き止まん・・・。

ど、どどど、どうすれば、どうすれば泣き止むのだ・・・!?

 

 

え、えーと、えーと・・・。

・・・え、『疑似(エンシス・)断罪の剣(エクセクエンス)』!

 

 

 

 

 

Side アリア

 

最後に登場したのは、移動式サーカス団「奇跡の箱(パンドラ)」。

昼間にザジさん達がいたのとはまた別で、人間離れした身体能力を持つ方々が様々なパフォーマンスを行います。

 

 

魔法世界中の子供に大人気とかで・・・認識できているのかはわかりませんが、カノンさんやセンさんもじーっとサーカスを見ています。

赤ちゃんって、こう言う時にどんなことを考えるんでしょうか。

何というか、不思議な目で見つめますよね。

 

 

「「「皆さん、こんばんは~~」」」

 

 

最初に登場したのは、やけに身体の密着度が高い三つ子のピエロ。

気のせいか、ザジさん達のおかげで耐性がついてます。

そのため、他の観客に比べて冷静に観察できますよ・・・!

 

 

次々と登場するサーカス団員、誰も彼も旧世界ではあり得ないような方々です。

野性的な色香の漂う獣の言語を理解する魔獣使い、やけに動きがシンクロしている双子のダンサー、綺麗な歌声の義手の歌い手と隻眼の奏で手、義足の空中ブランコと盲目の空中綱渡りと言う危険極まりない組み合わせ、そして蛇の肌を持つ男性と黒い執事・・・執事? あ、あとオペ○座の怪人みたいな人もいました。

 

 

「何でもアリだな・・・」

 

 

ポップコーンをポリポリと食べながら、エヴァさんが呟くのが聞こえます。

そして私も同感です、いくら魔法世界とは言え、ここまで人間離れしたエンターテイメントは初めて見ますよ。

 

 

この一大エンターテイメントは、2時間に渡り続き―――その間、カノンさんが2回泣きました。センさんは本当に泣きませんね、逆に心配になります―――最後に、団長のリリス・ミカエル・サンジェルマンさんが閉幕の挨拶をします。

仮面を着けた長身の女性で、肩甲骨辺りまでの緩いウェーブのかかった金の髪がスポットライトを浴びてキラキラと輝いています・・・このパンフレットの「夜の女王」って何でしょう。

 

 

「皆様、今宵はどうやらこれでお別れのようです・・・ああ、嘆かないで、皆様が望む場所に行くが我がサーカス、またどこかでお会いすることもあるでしょう」

 

 

貴族の着るようなヒラヒラのついた服を着て、芝居がかった仕草で口上を述べます。

耳についた宝石のピアスが輝くと同時に、円形劇場の中心にスポットライト。

真っ暗な空間の中で、そこにだけ光があります。

 

 

そしてそこにいたのは、穏やかな表情を浮かべて楽器を手にする一人の男性。

藍がかった漆黒の髪を一つに括り、冷たい月のような銀の瞳。

白い肌を覆うように、ゆったりとした丈の長い衣装を腰帯で留め、白のズボンと皮の短靴を履いています。

 

 

「それでは、最後は流浪の吟遊詩人ザラキエル・ルーナ・コラール による演奏で・・・お別れ。『2つの白の恋歌』」

 

 

団長さんの言葉が終わると、繊細で甘い旋律が会場を覆います。

静かに、しかし力強く、時に激しく時に切なく、歌の場面ごとに調子を変えて、流浪の吟遊詩人の奏でる音が場を支配していきます。

それは聞き手の言葉を奪うに十分で・・・私は自然、隣のフェイトの肩に頭を乗せて、お腹を撫でます。

 

 

フェイトは何も言いませんでしたが、特に拒みもしませんでした。

そして拒まないことが了承の証であることを、私は知っています・・・。

 

 

「・・・」

 

 

耳元でフェイトが何かを囁いて、私は微笑みます。

・・・そう言えば、ここまで完璧に休むのはいつ以来でしょうか。

思えばずっと、駆け足でしたからね・・・。

 

 

横を見れば、エヴァさんはポップコーンを食べるのをやめていますし、茶々丸さん達も穏やかに音楽を聴いています。

さよさん達は、眠ってしまった赤ちゃんを幸せそうに見つめています。

眠っているのは、千草さんの所の小太郎さんも一緒ですけど。

・・・と言うか、デュナミスさんとセクストゥムさんがいるんですけど。

これ、捕まえた方が良いのかな・・・。

 

 

「・・・では、これにて閉幕」

 

 

音楽が終わるとスポットライトが消えて、暗闇の中から団長さんの声。

万雷の拍手、赤ちゃん起きちゃいますね・・・。

・・・今日は本当に、楽しかったですね・・・。

遊び疲れるなんて、何年ぶりでしょうか。

 

 

毎日がこんな風に、穏やかであれば良いのに。

私は、心の底からそう思いました・・・。

 

 

 

 

 

   ◆  ◆  ◆

 

 

王国南端・・・グリルパルツァー公爵領・対帝国国境。

ウェスペルタティア王国にとっては、対帝国の最前線である。

 

 

「交代だぜー」

「おお、やっとかー・・・ったく、今頃は王都じゃ盛大に祭りだってのに」

「そう言うなって、仕事なんだから」

「仕事仕事言うなよ、女王陛下かお前は」

 

 

そのためもあり、帝国は王国の軍事進攻を想定して国境に3重の要塞線を敷いている。

かのグレート=ブリッジ要塞級の要塞が3つあるような物で、極めて強固な防衛設備とされている。

それに対応するように王国南部の国境都市、オンカ・アテーナにはシュコドラ要塞がある。

十万人規模の陸軍が駐留できる設備を持つその要塞は、近隣のファレロン軍港と共に王国の南の壁として機能している。

 

 

その司令部には多数の将兵が常駐しており、今も夜勤の兵士達が昼間に働いていた兵士達と交代している所だった。

彼らの操作する端末は司令室前面のスクリーンに情報を入力するための物であり、彼らは外部の監視映像や国境巡回艦隊から送られてくる情報を処理し、常にリアルタイムの情報を司令部と王都に送信するのが任務である。

万が一、国境に変事があればいち早く王都に伝えられるようにと・・・。

 

 

「無駄口を叩くな! さっさと交代しろ」

「も、申し訳ありません!」

 

 

この要塞の司令官の名はリーマン・フォン・ザンデルス中将、男爵の地位を持つ貴族である。

貴族出身ではあるが、長く前線を経験した百戦錬磨の軍人であり、メガロメセンブリア統治時代には帝国軍との国境線を経験したこともある。

中央の4元帥に比べれば華々しさに欠けるが、地道で着実な実績が評価されて要塞司令官の地位にある。

 

 

グリルパルツァー公爵領に駐留する約3万の王国陸軍は、筋肉質だがどこか丸みを帯びた身体付きをしているこの50代前半の司令官を敬愛している。

ただ、規則に厳しく細かい点をチマチマ注意してくる点には辟易していると言う話である。

 

 

「し、司令官! 国境巡視艇より通信です!」

「どうした、また避難民か」

 

 

ザンデルズ中将は部下の声にげんなりとした表情を浮かべた。

ここ2ヵ月ほど、帝国領から難を逃れて数千から数万人の亜人が国境を越えて来ているのである。

原因は帝国内の軍事的混乱だが、身の安全を求めてくる以上、無視はできなかった。

特にサバ地域で皇帝軍と叛乱軍の市街戦が始まって以降は、流入が加速したように思われる。

 

 

国境の警備を任されているザンデルズ中将としては、頭を抱えるしか無い。

純軍事的な分野を超えた話に付いていける程、彼は柔軟な思考を持ち合わせてはいなかった。

 

 

「そ、それが・・・これまでに無い規模だそうで・・・」

「どの程度だ、まさか一度に一万人が流れて来たわけでもあるまい」

「いえ、そうでは無く・・・」

 

 

冗談交じりの司令官の言葉に、部下は歯切れが悪い。

しかし報告しないわけにもいかないので、彼はありのままを司令官に報告した。

 

 

 

「・・・およそ、十万人だそうです・・・」

 

 

 

・・・その言葉に、その場の全員が沈黙した。

一万人どころでは無い、その十倍の亜人が流れて来るのである。

それは、王国陸軍の全てよりも多いのである。

 

 

「そ、それで・・・」

「な、何だ」

「半数は、王国人だそうです」

「・・・何?」

 

 

半数の約五万人は、ウェスペルタティア人。

その新たな情報に、要塞司令部はさらに混乱した。

そして彼らの預かり知らないことではあるが、国境を巡回していた艦艇には、国境の向こう側からこのような通信がもたらされていたのである・・・。

 

 

 

『・・・こちらはヘラス帝国軍第8親衛騎兵師団長、クワン・シンです。現在、我が軍はサバ地域に居住していたウェスペルタティア人約4万名を保護しつつ南下しつつあり。これは貴国の民の人命を優先した我が皇帝、テオドラ・バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミア陛下のご英断によるものであり、貴国には快く迎え入れて頂くことを期待するや切であります。繰り返します、こちらはヘラス帝国軍・・・』

 

 

 

―――――ヘラス帝国皇帝、ウェスペルタティア王国へ亡命。

その報が魔法世界全土に行き渡るのは、もう数日先のことである。




出し物一覧
・「奇跡の箱」とリリス・ミカエル・サンジェルマン:リード様提案。
・吟遊詩人ザラキエル・ルーナ・コラール:リード様提案。
・艦隊による鎮魂、親衛隊出店・広報:黒鷹様提案。
・「至福の苺 ver屋台」:ライアー様提案。
・チェーンソーアート:カナリア様提案。
・竜騎兵ゴンドラ遊覧(ショーン・ヴァーユ、トリュク・ガスト):グニル様提案。
・三姉妹の剣舞(長女・次女は元ネタ・魔法騎士レイアース):司書様提案。
・ドラゴンの蒲焼きの店『龍の眉毛』:司書様提案。
・占い師ヴァレタと予言:伸様提案。
・ザジ姉妹の路上雑技:伸様・黒鷹様提案。
ありがとうございます。

ウェスペルタティア王国宰相府広報部王室専門室・第21回広報:

アーシェ:
はい、お祭り特別号~ですっ。
いや、本当にすごい賑わいですね~、撮影班も流されちゃって・・・。
今回は出し物がすごいので、紹介とかのコーナーはお休みです。

女王陛下達のお休みも終わり・・・次回からはまたシリアスですよっ。
ではでは、今回は短めにどろーんっ!

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