魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

89 / 101
アフターストーリー第34話「角笛:後編」

Side アリア

 

全能なる始祖と偉大なる国王陛下の名において。

国王の領土たるウェスペルタティア王国及びその他の諸領土の全ての臣民は、正義・自由及び安全を確立し、臣民全体の幸福を増進することを念願し、主権を行使し、ここに憲法を定める。

 

 

臣民の自由な決定の原理に従い、王国は王国に結合する意思を表明する全ての国王の領土に対し、正義・自由・平等の理想を共有すると共に、民主的進展を目指して構成される新たな諸制度を提供する。

また、魔法世界の平和的発展及び秩序の形成に責任を自覚し、これに邁進することを宣言する。

卓越し給う女王アリア・アナスタシア・エンテオフュシア陛下は議会に参集した臣民の助言と同意、権威を承認し、人民に諸権利を授ける。

 

 

「ウェスペルタティア王国女王陛下―――・・・万歳!」

「「「女王陛下、万歳!!」」」

「「「ウェスペルタティア王国に、栄光あれ!!」」」

 

 

・・・本日、2月1日。

ウェスペルタティア王国は史上初となる議会を召集し、かつ憲法の制定を全会一致で承認しました。

これにより私が持っていた三権及び軍権は、内閣・議会・裁判所にそれぞれ分け与えられることになりました。

 

 

2代目宰相であるクルトおじ様が議会中央の壇上で読み上げたのは、その憲法の前文です。

まぁ、2代目と言うより2期目と言った方が正しいのでしょうけど。

さらに言えば・・・別に前文に私の名前を書き込む必要性は無かったと思いますけど。

そして私の目の前には、扇上に広がる議席に座る貴族院議員の皆さん。

各界を代表する、王国の代表者の方々です。

 

 

「それでは、女王陛下よりお言葉を賜ります。一堂、ご起立を願います」

 

 

そう宣言するのは、クルトおじ様では無く・・・貴族院議長、アレテ・キュレネ。

オストラ自治区代表議員として、貴族院に席を占めています。

思えば、昔はいろいろと言われましたけどね・・・。

 

 

一方で私は議場の最奥、議長席の後ろに設置された玉座に座っています。

1人では無く・・・腕の中には愛しい愛しい、私の赤ちゃんを抱いています。

先程の議員の唱和に驚いて、少しぐずっていますが・・・。

・・・玉座に座る私の前に、議会の書記官が一枚の紙片を持って立ち、私が内容を読み上げます。

 

 

「本日、第1回貴族院議会の開会式に臨み、臣民を代表する皆様と一堂に会せたことは、私の深く喜びとする所です。憲法の理念に従い、議会が民の生活の安定と向上、魔法世界の平和と繁栄のため、たゆみなく努力を続け、人民の信託に応えることを切に希望します」

 

 

私の言葉が終わると、起立した全議員が万雷の拍手。

おかげで、私の赤ちゃん・・・愛しい王子がますますぐずってしまいます。

それすらも愛しくて、腕の中で赤ちゃんを揺らしている間に、議事は滞り無く進みます。

 

 

議会の会期、各委員会人事、今年度議会の議案などが定められて・・・最後に。

私、女王の施政方針演説があります。

ここには、議員だけで無く各国大使や「イヴィオン」加盟国の高官なども来ています。

それらの方々に対して、王国の基本方針を示すのが目的です。

私は、赤ちゃんを抱いたまま壇上に立ち・・・。

 

 

「・・・皆様は、王国、「イヴィオン」、そして魔法世界の指導者です。これまで、たゆまぬ努力で人民の権利の昂進に努めて参られました。私ことアリア・アナスタシア・エンテオフュシアはウェスペルタティア王国及び「イヴィオン」の元首の地位にありますが、これは王国のためでも「イヴィオン」のためでもありません。魔法世界の紛争を無くし、平和な時代を築くために、皆様と共に歩いて行くことのできる最善の道であると考えたからこそ、私は元首の地位にあるのです。私と共に、その未来へと進もうではありませんか」

 

 

一旦、言葉を切ります。

視線を動かし、傍で控えるクルトおじ様を見ると・・・ニコニコしておりました。

視線を下におろせば、赤ちゃんが私を不思議そうに見ています。

私は微笑むと、再び前を見ます。

 

 

「皆様がこれからも世界の指導者であるためには、自らが変わらねばなりません。今、この時代が変革して行くようにです・・・現在、我が国は不幸な諍いの危機にあります。先年にも争いが起こり、かつ今やユートピア海では2つの軍事大国が衝突し、帝国すらも未曾有の危機に瀕しているこの時期にあって、私は一つの思考を巡らせます。すなわち、何故に争いが、対立が無くならないのか? この思考に至った時、私は一つの答えを得ます」

 

 

自分では無い他者の存在は、常に対立の対象となるから。

では、対立を無くすためにはどうすれば良いのか。

答えは・・・一つ。

 

 

全てが一つにならなければ、争い・・・少なくとも、国同士の争いは消えない。

これは理想主義ではありません。

現実主義としての、世界の無政府状態を解消する唯一の方法。

強力な、世界秩序。

 

 

「私は今ここに、魔法世界の紛争の元である国家の垣根を取り除き、魔法世界を一つの統一共同体と考える新世界秩序の樹立を宣言します」

 

 

私が共同元首を務める同君連合「イヴィオン」を中軸とする、全魔法世界を覆う統一共同体の設立。

名付けて、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)連邦。

 

 

この統一共同体は連邦と言っても、各国が独立した体勢でまとまる独立主権国家連合体であり、どの国家も政体や元首を変更することなく、一つに纏めようと言う構想です。

「イヴィオン」加盟国以外・・・例えば帝国などは、皇帝の地位を保ったまま参加できます。

これによって、世界を統一し・・・平和を。

 

 

「この世界の未来は、皆様にかかっているのです! どうかこれまでの、そしてこれからの指導者として・・・この変革を受け入れることを、切に望みます!!」

 

 

腕の中に、この温もりがある限り。

私は、戦える。

この子に危害を加える意思の存在を、私は絶対に認めません。

 

 

 

 

 

Side アリカ

 

議会の開設式を終えた後、アリアは王子を連れて私達の部屋を訪問した。

公務の一環としての訪問であって、議会の様子や今後の政治情勢についての説明をしに来たのじゃ。

現にアリアと王子だけで無く、複数の侍女や衛兵に加えてカメラを携えた記者達も宰相府の応接間に入ってくる。

 

 

「ご心配をおかけしております、お母様」

「いや、女王にも何かと都合もあろう。そのような中での王子を連れての訪問、嬉しく思う」

 

 

故に会話も母娘としての物では無く、どこか形式と言う衣を被った物になってしまう。

しかしそれでも、娘と・・・孫に会うのは嬉しい。

アリアも、戻って来た時に比べれば顔色も良くなって・・・。

 

 

・・・婿殿達が戻らぬ日々が続いておる故、けして安穏とした心境では無かろうが。

それでも、王子の存在がアリアの心を留めておるのであろう。

 

 

「お、お~・・・結構、重いんだな」

「はい、落とさないようにお気を付けください」

「おう、へへ・・・」

 

 

そして私が形式的な挨拶を交わしている間に、ナギが茶々丸殿から王子を受け取っておった。

・・・まだ、私も抱かせて貰ったことが無いのに。

 

 

「はーいっ、それではそちらの椅子に並んで座って頂いて・・・はい、ありがとうございます~」

 

 

広報部のアーシェ殿に促される形で、婿殿を除く王室一家が一つのソファに座る。

その間、私はいつか私的な訪問で王子を抱かせて貰おうと心に決めておった。

不謹慎かもしれぬが、私にとっては初孫なのじゃからして、その。

か、可愛らしいのぅ・・・。

 

 

「はい、それでは撮影は5分以内でお願いしますね~」

 

 

アーシェ殿の言葉と共に、記者達の持つカメラが何度かフラッシュを焚く。

その間も、私達の会話は続いておるが・・・インタビューなどは無い。

普段ならある程度、記者達との交流もあるのじゃが。

今日は乳児の王子もおるので、短時間でとのことで撮影を許可した。

まぁ、王子のお披露目のような物じゃな。

 

 

「いやぁ、本日はどうもありがとうございました」

 

 

撮影が終わった後、1人の記者が声をかけてきた。

仲間がカメラを片付けるのを待っておるようで、特に他意は無いように見えるが。

アリアも普段は、こうして声をかけられるのを好むのじゃが。

 

 

「王子殿下の撮影ができたのは嬉しいんですけど・・・できればご夫君もご一緒だと良かったですね」

「・・・そうですね」

「あ、あっ・・・お声かけはご遠慮くださーいっ」

「いやでも、どうなんですかねぇ、実際の所」

 

 

アーシェ殿が慌てて注意したが、あるいは私と同じ感情を抱いたのかもしれぬ。

それは、彼に返答したアリアの声の温度でわかっても良さそうな物で・・・。

 

 

「1ヵ月近く音信が無いって話ですけど、実の所、どんな感じ、なん・・・」

 

 

・・・記者も、流石にそこで口を噤んだ。

いつしか、応接間は沈黙に包まれておった。

それはまるで、空気の一部が凍りついてしまったかのような静けさで。

 

 

「・・・貴方」

 

 

声を出しているのは、アリアのみ。

私の位置からは、ソファに座るアリアの横顔しか見えぬが・・・。

 

 

「・・・どこの、記者ですか?」

 

 

部屋の時間が、止まったかと思った。

アリアの声は、けして激しくは無い。

微動だにせず、ただ記者の方を見つめているだけじゃ。

 

 

先程まで口の軽かった記者は、今や何も話せない。

逆にアリアが、何か言おうと口を開きかけた所で・・・。

 

 

「・・・ふえぇぇ・・・っ」

「うおっ、と、とっ・・・?」

 

 

王子が泣き出し、瞬時に意識を切り替えたアリアが記者を放ってナギの方を向いた。

すぐに王子を受け取って、柔らかな顔であやし始める。

王子にかける声は、どこまでも優しい温かな物じゃった。

 

 

アリアに見つめられておった記者が、ほぅっ、と胸を撫で下ろしておったが・・・。

・・・私は、それ以上にほっとしておった。

 

 

 

 

 

Side クルト

 

王室の写真撮影が行われている時間、私は別の場所でカメラの前に立っていました。

場所は、旧オスティア『浮遊宮殿都市(フロート・テンプル)』。

その内の、完成したばかりの議会議事堂の一室です。

 

 

工部省が全力で取り組んでいる『浮遊宮殿都市(フロート・テンプル)』建設は現在、完成度85%。

アリア様の居城である「ミラージュ・パレス」の一部を除けば、ほぼ完成しているのです。

貴族院議会の開設式に間に合うかが微妙でしたが、何とか議場や行政施設、軍司令部などの建物は完成致しました。

今後、徐々にですが新オスティアから政治・軍事の機能を移転することでしょう。

 

 

「ディズレーリ党首、今回の連立合意について一言、お願いします!」

「そうですね・・・女王陛下のため、王国の民のために一命をかける所存です・・・」

 

 

真新しい会議室の中で記者団を前に私と固い握手を交わしているのは、プリムラ・ディズレーリ保守党党首です。

保守党は今回の選挙で得票率26%、貴族院に15議席を得る第二党に躍進しました。

 

 

我が党だけでも70%と言う圧倒的な議席数を誇りますが、単独で政策を進めるのもアレですので。

大ウェスペルタティア主義を掲げる同党とは政策も近く、連立交渉は割と早くまとまりました。

キリスト教民主同盟の閣外協力も取り付け、第2次ゲーデル政権は議会の9割を制したことになります。

アリア様の魔法世界連邦構想を止められる存在は、少なくとも国内には存在しなくなったことになります。

 

 

「宰相閣下、2期目の目玉政策はやはり新連邦構想なのでしょうか?」

「そうですね、それも一つの重要な政策ではありますね」

 

 

他にもいろいろ、ありますけどね。

経済的には、物価高騰への警戒と経済成長率・輸出・消費の増加率が鈍化していることに神経を尖らせなければなりませんし。

 

 

サバ・シルチス・アルギュレー北部の領有によって、ある程度の資源確保のメドは立ちましたが・・・。

対帝国国境の盗賊発生率は昨年後半の段階で22%増加、鉱山やバナナ農園がゲリラに襲撃されたりしています。

旧帝国領内では軍閥同士の紛争で毎月200人超の死者が出ている有様ですし。

さらに言えば、今回のエリジウムの混乱・・・。

 

 

「女王陛下は何故、このような政策を主導されることになられたのでしょうか」

「それはもちろん、平和を愛するが故でしょう」

 

 

ぶっちゃければ、アリア様は今回のことで嫌気が刺したのでしょう。

ご夫君を一時的・・・あえて一時的と申しますが、一時的に失って、戦争やら内紛やらが絶えないこの世界が嫌になられたのでしょう。

 

 

わかります・・・そのお気持ち、察するに余りあります。

だからこそ、フォエニクスから戻った翌日に議会の開設式に臨むと言うハードスケジュールにも耐えることができるのですから。

 

 

「陛下は大変お優しいお方です。今の魔法世界の人々の境遇に胸を痛められても、仕方が無いでしょう」

 

 

まずは「イヴィオン」の拡大と統一市場化を進め、経済支配権を握ります。

旧帝国諸国を巻き込んで新連邦を形成し、そして魔法世界通貨「ドラクマ」を統一管理する「中央銀行」をオスティアに創設し、金融支配権を握ります。

 

 

そしてアリア様を元首として認めない国家の参加をも認める新連邦の常任議長職。

これを握ることで、世界の政治的・軍事的支配権を握るのです。

そして魔法世界は統一、めでたしめでたし・・・と言うわけですね。

そのためにも、まずはエリジウム問題の解決が先決・・・すでに、準備は整っていますよ。

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

あー・・・忙しいな畜生。

アリアと赤ん坊の傍にいてやりたいんだが、工部尚書の引き継ぎの仕事が忙しくてな。

・・・ん? ああ、私はゲーデルの2期目の政権では工部尚書じゃないんだ。

 

 

と言うか工部省自体が解体されて、いくつかの省に分割されたり別の省に権限が移譲されたりするからな。

だから、その長である私もお払い箱と言うわけさ。

だがもちろん、タダで辞めるわけじゃない。

 

 

「ふふん、アリアめ、驚くだろうな・・・」

 

 

私の次の役職については、私とゲーデルの小僧しか知らないからな。

ふふん、アリアと茶々丸の驚く姿が目に浮かぶ。

若造(フェイト)が戻って来た時の反応も楽しみだ、ふふん。

 

 

「・・・む」

 

 

宰相府の中を歩いている時、見覚えのある顔が廊下に立ち尽くしているのを見つけた。

辞令らしき紙を手に持って、それを見つめている。

小柄な蜂蜜色の髪を持つ軍人で・・・つまりは、グリアソンがそこにいた。

見るからに沈んでいて・・・元気が、無さそうだった。

 

 

当然か、親友が今や叛逆者扱いされているわけだからな・・・。

とは言え、私自身もその叛逆者騒ぎに巻き込まれた口なのだが。

 

 

「グリアソン、戻っていたのか」

「あ、ああ・・・マクダウェル殿か。いや、昨日の夕刻にサバから戻った所で・・・」

 

 

声をかけると、グリアソンは持っていた書類を慌ただしく懐にしまった。

私はグリアソンが書類をしまい込むのを確認した後、告げる。

 

 

「・・・リュケスティス討伐の辞令か」

「・・・」

「・・・そうか」

 

 

グリアソンは何も答えないが、表情は沈痛その物だった。

無理も無い、2人は士官学校時代からの付き合いだと聞くからな。

親友、か・・・。

 

 

「・・・昨夜の内に陛下に召し出されて、討伐軍の指揮を執るようにと」

「・・・そうか」

「翻意を願い出たが・・・リュケスティスから何も言ってこない以上は、どうすることもできないと」

「・・・」

 

 

・・・艦隊はとのかく、陸軍の指揮官でリュケスティスに勝利できるのは、グリアソン以外にはいないだろうからな。

コリングウッドが艦隊を率いてユートピア海・・・アキダリア・パルティアの紛争を調停に行ってしまったから、レミーナしか艦隊を束ねられない。

消去法の上でも、グリアソンしかいないわけだ。

 

 

「・・・そうか」

 

 

それに、リュケスティスの奴も謝罪文や釈明文の類を一つも送って来ない。

連絡が取れないから、アリアとしてもどうにもできない。

・・・若造(フェイト)のことも、ある。

たとえリュケスティスに直接の責任が無いことがわかっていても、あの時の感情は消えない。

それは、私も同じだ。

 

 

あの時・・・アリアの出産の時の無力感と屈辱感は、忘れない。

アリアが感じているのは、それ以上の感情だろう。

 

 

「・・・あまり、思い詰め過ぎるなよ」

「・・・ありがとう、マクダウェル殿」

 

 

・・・別に、お前のために慰めているわけじゃない。

そんな気持ちを込めて、私はグリアソンの腕を軽く叩いた。

その時のグリアソンは・・・私がフった時よりも、情けない表情をしていた。

 

 

「・・・ああ、そうだグリアソン」

「何だろうか?」

「まぁ、内心はどうあれ・・・エリジウム大陸に行くなら、対策を練ってほしいことがある」

「・・・聞いておこう、何だろうか」

 

 

・・・エリジウム大陸と、そして少なくともこの王都オスティア。

私と龍宮真名の、共通見解。

それを、伝えておかねばならない。

それは・・・。

 

 

「事件の背後に、悪魔が・・・・・・夢魔がいるぞ」

 

 

夢魔、人の夢に入り込んで人を操る、下級悪魔だ。

だがそいつの力次第で、街中の人間を操ることもできる・・・当然。

人の心に定着する噂を、流すこともな。

 

 

 

 

 

Side 茶々丸

 

お昼の授乳が終わった後は、赤ちゃんはお昼寝の時間です。

今日は午前中の議会開設式に参加―――参加と言えば参加でしょう―――致しましたので、とても疲れていることでしょう。

 

 

そのせいか、育児部屋(ナーサリールーム)に戻る最中は大変ご機嫌斜めでした。

単純にお母様の傍を離れて不満なのかもしれませんが、赤ちゃんが泣かれますとアリアさんがお仕事どころでは無くなりますので・・・あのアリアさんのお仕事の手を止めるのですから、凄いです。

実は、この国の最高実力者なのかもしれませんね。

 

 

「うぇぇええぇ・・・っ」

「はい、よしよし・・・」

 

 

ナーサリールームに戻ってからも、なかなか泣き止んでくれません。

宰相府の一室に構えられたナーサリールームは、「ミラージュ・パレス」の完成までの仮の部屋ですが、ここだけでも20畳程度の広さがあります。

 

 

シルクのベビーベッドや育児用具、基礎的な調度品からベビーウェア、おむつに至るまで全て・・・。

・・・マスターとスタンさんが送って来た物です。

アリアさんやフェイトさんの手配で用意された物ももちろんありますが、お2人もマスターやスタンさんの気持ちを尊重する形を取ったので、結果としてそうなりました。

高級品と言うわけではありませんが、心のこもった物であることが嬉しかったのでしょう。

 

 

「うえぇぇ・・・っ、ふええぇぇっ」

「おー、よしよーし・・・」

 

 

ミルクを含めた水分を与え、おむつを替え、寝付くまで子守唄。

私はガイノイド、疲れを知りません。

普通の女性であれば育児ノイローゼになることもあるでしょうが、私は大丈夫。

不眠不休で、お世話ができます。

 

 

「お休みになるまで、お傍におりますよ・・・」

 

 

育児責任者(ナース)、それが私に与えられた新たな役職です。

7歳になるまで、子供はナーサリールームで育てられます。

その中で、食事・安全管理・清潔さの徹底・健康管理に教育、全てを私が行います。

 

 

お仕事で忙しいアリアさんは、ご自分で赤ちゃんの面倒を見ることができません。

私の役目は、アリアさんに代わって赤ちゃんを健康に、健全にお育てすることです。

・・・14時頃になって、ようやくお休みになってくれました。

 

 

まだ目元の涙が乾いていない小さな顔には、あどけない寝顔が。

アリアさんやマスターを見る時とは別の意味で、モーターの回転数が上がるのを感じます。

 

 

「・・・では皆さん、今の内に殿下がお目覚めになった際の準備をお願いします」

「「「はい」」」

 

 

静かに返事をしたのは、壁際に並んだナースメイドの方々です。

10代や20代、若い貴族の子女などがほとんどです。

いずれも高等教育を受けた女性達で、力仕事や掃除、洗濯などが役目になります。

 

 

「・・・ああ、デカさん。先にリネン室に新しいシーツが用意できているか、確認してきて貰えますか」

「はい、わかりました」

 

 

綺麗な金髪を短く切り揃えたナースメイドが私に一礼して、パタパタと出て行きます。

何人かもついて行って・・・私は頭の中で赤ちゃんが起きるまでにすることを考えながら、王子以外は女性しかいないはずの部屋で、ただ一人の男性に視線を向けます。

 

 

「クゥィントゥムさんも、お願い致しますね」

「・・・任せてくれ、何が来ても王子だけは守ろう」

「頼りにしています」

 

 

エリジウムでの一件から神経質になったアリアさんは、赤ちゃんの護衛にクゥィントゥムさんをつけています。

クゥィントゥムさんは文句も言わず、ただ淡々と護衛の任務に就いてくれています。

 

 

おかげで基本的には、安心できています。

しかし何が起こるかわかりませんので、私も注意します。

何があっても、アリアさんの赤ちゃんは死守です。

私・・・この小さな命を、守りたい。

 

 

 

 

 

Side アーニャ

 

と言うか、いい加減に退院したいんだけど。

最近の私の、本気の気持ちよ。

そろそろ、エミリーも良い感じに治ってきたし・・・。

 

 

いや、それが無くても何ヵ月入院させられてんのよ、私。

ドネットさんからの手紙で、しばらくこっちにいろって言われたけどさ。

でも病院の外は自由に出歩けないし、だから友達のピンチにも駆け付けてあげられないし・・・。

・・・それに、第一!

 

 

「・・・何でアンタ、四六時中病院にいるわけ・・・?」

 

 

心持ちパジャマで包んだ身体・・・特に胸元を意識して庇いながら、私は言う。

相手は・・・ツンツンした白髪に目つきの悪い、男の子。

年中変わらず詰襟を着てる、センスの無い奴よ。

 

 

今は私の病室のベッド脇のパイプ椅子に座って、経済新聞なんか読んでるわ。

『ウェスペルタティア、アリアドネーと情報保護協定を締結』・・・って、知らないわよそんなの!

 

 

「ちょっと! 聞いてんの!? もう面会時間終わるんだけど!?」

「・・・」

「無視すんな!」

 

 

無視されたのが悔しくて、枕を投げる。

普通に避けられた上に、コイツってば私の方をチラ見して・・・。

 

 

「・・・フッ」

 

 

は、鼻で笑いやがったわね!?

よーし、OK、そっちがその気なら・・・いやいや、落ち着こう私。

深呼吸よ深呼吸・・・すーはーすーはー・・・。

 

 

「・・・はぁ」

 

 

するとコイツ・・・アルトは、経済新聞を片付けて、溜息を吐いた。

それから・・・。

 

 

「ナースコールって、コレだったかな」

「ぶっ飛ばすわよアンタ!?」

「・・・はぁ」

 

 

私がアルトの手からナースコールのボタンを奪うと、今度は何故か物凄く不機嫌そうに溜息を吐かれた。

リアルに、私もムカついた。

溜息吐いて良い?

 

 

「きーきーとうるさい女だな、本当に・・・」

「も、元はと言えば、アンタがいつまでも私の部屋にいるからでしょ!?」

 

 

もう本当、コイツってば四六時中いるのよ!?

おかげで着替えも碌にできないし、・・・病室だからパジャマ一択だけど。

・・・でも、身体を拭いたりとかもできないし・・・シャワーくらい借りれるけど。

・・・で、でも、着替えとか、し・・・は、肌着とかあるし。

ええと、つまり、その・・・あ~もぉ~!

 

 

「つまり、アンタが悪いのよ!!」

「・・・はぁ」

「む、ムカつく・・・!」

 

 

・・・と言うか、本気で何でずっと病院にいるのかしらコイツ。

も、もしかして・・・。

 

 

「か・・・身体が目当て・・・とか?」

「・・・まぁ、そうとも言えるかな」

「嘘ぉ!?」

 

 

冗談で聞いたら、当たりだったわ!

え、嘘、本当に本気で!?

か、身体が目当てだったとか・・・マジ!?

 

 

「この病院には、見張っておかなくてはならない身体があるから」

「そ、そう、なんだ・・・」

「・・・何だ?」

「う、ううん!? 何でも無いわ!」

「・・・静かにしてくれるなら、それで良いけどね」

 

 

とか何とか言いつつ、アルトは別の新聞を読み始めたわ。

『「イヴィオン」加盟国が小麦備蓄協定を締結』・・・だから何よ。

 

 

私は今、それどころじゃないの、隣の狼をどう撃退するか考えなきゃいけないの・・・!

ま、まさか身体が目当てとか、ストイックな顔して嘘、マジで・・・?

え、えーと・・・ど、どうしようエミリー、私が上で良いのかな・・・?

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「うふふ、あんまり急いじゃダメですよー・・・」

 

 

夕食後のお仕事を終えての、就寝前の授乳。

最近は、この授乳の瞬間のために生きていると言っても過言ではあります。

私が優しく声をかけると、赤ちゃんが喜んでくれているような気がするんです。

 

 

ちゅうちゅうと胸に吸いつかれると、少しくすぐったいのですけどね。

案外、力が強いんですね、赤ちゃんって・・・。

 

 

「今日も、良い子にしてましたかー・・・?」

「はい、良く寝て良く泣いておられました・・・あ、いえ、この場合の泣くとは悲しみを表現しているわけでは無く、赤ちゃんの生理現象としての「泣く」ですので、あしからず」

「いえ、そこまで必死に説明しなくてもわかりますけど・・・」

 

 

赤ちゃんの泣き声って、不思議ですよね・・・何と言うか、ママを引き寄せる魔法がかかっているような気がします。

記憶にはありませんけど、私も赤ちゃんだった頃があるのですよね。

・・・物心ついた頃には、旧世界に放置されてましたけど。

 

 

とにかく、私は赤ちゃんはなるべく母乳で育てたい派です。

何でもダフネ先生が言うには、母乳にはカルシウムやビタミンなどの栄養が豊富な上、赤ちゃんにとっても消化に良い最高の栄養源なのだとか。

免疫物質もたっぷりで、赤ちゃんの顎も鍛えられます。

さらに、母子の絆も深められるとか・・・言うこと無しです、愛情をたっぷり注ぎます。

 

 

「・・・はい、ごちそう様ですか?」

「・・・ぅ?」

 

 

私の胸から愛らしいお口を離した赤ちゃんは、今度は眠そうにむにゃむにゃしていました。

可愛い・・・もう、本当に可愛いです。

月並みで陳腐な言葉ですが、可愛いから良いです。

 

 

と言うわけで、今度は赤ちゃんの背中を擦ってげっぷをさせます。

これも結構、大変な作業なのですよー・・・時間もかかりますし。

でも赤ちゃんと密着していられるので、とても幸せです。

 

 

「けふっ」

 

 

5分から10分くらいで、赤ちゃんが可愛らしいげっぷをします。

はい、じゃあお休みなさいですね。

生後1ヵ月間は、育児部屋(ナーサリールーム)では無く母親、つまり私の寝室で眠ります。

もうすぐ1ヵ月経っちゃいますので、少し悲しい気分・・・。

 

 

「ぃよぉ―――しっ、アリアも茶々丸も揃ってるなぁ!!」

「ふぇっ・・・ふええええぇぇぇぇえええんっ!」

「・・・・・・エヴァさん」

「マスター・・・」

「え、あ、いや・・・その、すまん・・・」

 

 

エヴァさんが突然、騒々しくやってきたので・・・赤ちゃん、泣いちゃいました。

でもエヴァさんも本気でヘコんでましたので、それ以上は何も言いません。

・・・泣き声も可愛い。

 

 

「・・・それで、喜び勇んで何の用ですか?」

「だからスマンて・・・」

「いえ、別に怒ってるとかじゃ無いので・・・」

 

 

ちなみに、赤ちゃんが絡むとエヴァさんは死ぬほど及び腰になります。

どうしてかは、今の所は不明。

きっと私の赤ちゃんが可愛いからだと思います。

 

 

「え~・・・次期政権における私の役職が決まった」

「はぁ・・・」

「お~、よしよーし・・・」

 

 

茶々丸さんが赤ちゃんをあやしてくれている間に、エヴァさんが辞令を渡してきてくれました。

そして、そこには・・・。

 

 

 

 

 

Side グリアソン

 

・・・翌日の午前9時、新オスティア空港においてエリジウム討伐軍の閲兵式が行われた。

出陣する兵士を陛下直々に見送ると言う意味合いの閲兵であって、今回のエリジウムへの派兵の特殊性を強調することになっている。

 

 

「ベンジャミン・グリアソン陸軍司令官、エリジウム大陸への派遣軍の総司令官職を命じます」

「・・・・・・は、勅命、謹んでお受け致します」

 

 

俺の背後に3000の陸軍兵と50隻の艦隊が出発を待っている。

背後に居並ぶ兵達の士気の高さをピリピリト感じながら、俺は総指揮官の証である銀の剣を女王陛下から直々に賜る。

 

 

・・・すでに、議論の余地は無い。

俺はもちろん、リュケスティスの叛逆を未だに信じてはいない。

当然だが、叛逆の声明があったわけでは無い。

だが逆に、釈明も弁明も無い。

だからこうして、女王陛下は征伐軍を俺に預けた上で・・・。

 

 

「元帥がエリジウム大陸の政治・軍事を掌管した後、私自ら軍を率いてエリジウムに入り、治安の回復を確認することとします」

 

 

後詰として、女王陛下自らがフォエニクスまで軍を進めることになっている。

女王陛下ご自身の手で信託統治領の治安を回復することと、一度はエリジウムから追い立てられたと言う敗北の記録を雪ぐことになる。

 

 

だが・・・だが、リュケスティスを女王陛下に討たせるわけにはいかない。

女王が臣下を討つと言う前例を作るわけにはいかない・・・とにかく、リュケスティスに女王陛下に釈明する機会を与えなければ話にならない。

 

 

「・・・現在、先んじてエリジウム総督府に特使が向かっています。本人の強い要望でもありますが・・・そちらの成否によって、元帥の役割は変わります、わかっていますね?」

「は・・・」

 

 

特使と言うのは、第2次ゲーデル内閣において社会秩序尚書となる閣僚のことだ。

社会秩序省は国内の地方自治や海外領土を管轄している。

まぁ、事実上は宰相府の外部局のような省でもあるが・・・警察も社会秩序省の管轄だ。

 

 

そして次の社会秩序尚書に自ら立候補して、かつ今回の特使にまで立候補した彼女。

・・・俺も、リュケスティスを救うために出征するのだから。

 

 

「それでは、女王陛下・・・」

「はい・・・貴方達の頭上に、幸運があることを祈っています」

「「「仰せのままに(イエス・ユア・)女王陛下(マジェスティ)!!」」」

 

 

兵士達が「始祖よ女王を守り給え(アマテル・セーブ・ザ・クイーン)」を高らかに歌い、出征が始まる。

・・・この出征が、「出征」にならないことを祈るばかりだ。

そうだろう、リュケスティス・・・。

 

 

 

 

 

Side テオドシウス(ウェスペルタティア王国前外務尚書)

 

ウェスペルタティア王国社会秩序尚書。

それが、私の次の役職名だ。

これで私は、王国の地方自治・信託統治領の運営に責任を持つ立場となった。

 

 

正式な辞令は2月2日付け、すなわち今日の午前0時を過ぎた段階で、私は正式に社会秩序省のトップになった。

長く務めた外務尚書の地位に未練が無いわけではないけれど、閣僚ポストの横滑りなんて物は珍しいことじゃないし、あまり長くやっていると官僚との関係も変質するからね。

 

 

「外務尚書・・・いや、社会秩序尚書殿自らがご来訪とは、痛み入るな」

 

 

そして私は今、軍の進発に先立つ形でエリジウム大陸総督府を訪問している。

訪問と言う言い方には語弊があるし、それほど友好的な物でも無い。

現に私の目の前に座るアイスブルーの瞳の男は、けして友好的な雰囲気を持ってはいない。

 

 

レオナントス・リュケスティスと言う名のその男は、私に怜悧な目を向けている。

そしてその奥にある物が読みとれなくて・・・私は、苦悩している。

何を持ってすれば、この男・・・レオを説き伏せることができるのか。

 

 

「本国では昨日、壮麗な議会開設式典が催されたらしいが、貴殿は参加しなくて良かったのか?」

「私は女王陛下の勅命をもってここに来ている。貴官に心配されるいわれは無い」

 

 

閣僚であり、そして貴族院に議席を持つ私は開設式に参加する資格を持っている。

ただ今回の特使としての役目を果たすため、委任状を出して欠席させて貰っている。

・・・つまり、女王陛下としても落とし所を探っていると言うこと。

それは、条件次第で彼を・・・レオを公的に許せる可能性があると言うことだ。

 

 

「レオナントス・リュケスティス総督、貴官に女王陛下からのお言葉がある」

 

 

私はこの時のために、陛下に書状をしたためて貰っている。

それはつまり公的には勅命であって、王国の臣下である以上は従属しなければならないはずの物。

 

 

内容はまず、昨今の不穏かつ不適切な風評に対して態度を明確にすべきであることが記されている。

そして先のブロントポリスにおける不祥事の責任の明確化と被害状況の調査を行った上で、女王の前に屈し、忠誠の有無を表明すること。

・・・つまり、非武装での王都への召喚命令だった。

 

 

「・・・そうか」

 

 

読み終えた後、レオはしばらく何も言わなかった。

何も言わずに考え込んだ後・・・顔を上げて、私に告げる。

 

 

「外務・・・いや、社会秩序尚書、貴殿を軟禁させて貰う」

「・・・!」

「俺は一度世間から叛逆者扱いをされた身だ、一度が二度でも同じことだろう・・・連れて行け、くれぐれも丁重にな」

「・・・レオ!」

 

 

両側を屈強な衛兵に固められて、私は総督の執務室から追い出される。

その際、当然、私は声に非難の色を込めるわけだが・・・。

 

 

「・・・非武装で我が女王の御前に行くのは良い。だがそれで、何かが解決するのか」

 

 

・・・最後に、レオのそんな声が聞こえた。

解決、解決って・・・キミのやり方で、何が解決するって言うんだよ・・・。

 

 

「さ、こちらへどうぞ」

「・・・ああ」

 

 

仕方が無いので、衛兵に従って廊下を歩く。

いずれにせよ、もう少し時間はあるはずだ・・・その間に、何とか説得を。

その時、金髪の従卒の少女とすれ違ったけれど。

 

 

「・・・」

 

 

チラッ、と視線が交差しただけで、特に何かを思ったりはしなかった。

今の私には、他に考えるべきことが多すぎて・・・。

 

 

 

 

 

Side 近衛近右衛門

 

ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・。

若い連中が、どうやら騒がしいようじゃのぅ。

いやいや、獄中にあるワシのような老人には、何もわからんて・・・。

 

 

「じーさん、アンタすげーな、マジで叛逆っぽいっつーかさー」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・いやいや、賢明な総督閣下が叛逆などするはずが無いじゃろうて」

 

 

ワシにできることと言えば、牢番の小僧と仲良くお喋りをすることくらいじゃ。

他にできることも無いしのぅ、じゃからして外で起こっておることはワシとは無関係じゃ。

ワシは無力な老人じゃしの、最近、腰も痛いしのぅ。

 

 

「えー、でも女王陛下を暗殺し損ねたって噂なんだぜ?」

「いやいや、総督閣下は無関係じゃよ。決まっておるじゃろうが、のぅ?」

 

 

実際、ブロントポリスの件には無関係じゃろうしの。

細かいことは・・・そう、細かいことはワシにはさっぱりめっきりどっきりわからんのじゃ。

うむうむ、牢獄にいては何もわからんのぅ・・・いやはや。

 

 

「総督閣下はのぅ、今、本国におる君側の奸を討とうとしておるのじゃよ。女王陛下がお若いのを良いことに権力を握る輩を打倒して、陛下をお救いしようと言うわけじゃよ」

「へぇ~、じーさんは本当に物知りだなぁ」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・いやいや、年の功じゃよ」

 

 

・・・さて、それはさておき、タカミチ君はどうしておるかのぅ。

セブレイニアの開拓地で元気にしておるかのぅ・・・。

元気にしておると良いのぅ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。

 

 

夢でも現でも、最近ではワシに会いに来る者もおらんでのぅ。

それこそ、牢番の小僧と話すくらいじゃ。

・・・悪魔とか、さっぱりめっきりどっきり、わからぬのぅ。

ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・。

 

 

「つまりのぅ、総督閣下は宰相閣下を打倒してその陰謀からお救い申し上げようと言う・・・」

「へぇ~・・・確かにあの宰相、怪しいもんなぁ」

「まぁ、噂じゃよ。とにかく総督閣下は・・・」

 

 

それにしても、ネギ君達はどうなったのじゃろうなぁ。

・・・ネギ君もその子供も、大事な子供であるこことには違いないでのぅ。

子宝と言う言葉のように、まさに子は宝じゃからな、大切に扱うべきじゃと言うのにのぅ。

 

 

うむうむ・・・子は、宝じゃ。

大切にしておいてこそ、その価値は高まろうと言う物じゃのになぁ。

やれやれ・・・。

 

 

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・」

 

 

・・・掌中の玉が輝きを増せば増す程に。

ワシの手札も、増えて行くと言う物じゃよ・・・。




アリアの演説:元ネタはガンダムW、提案は伸様。
ありがとうございます。

ウェスペルタティア王国宰相府広報部王室専門室・第31回広報:


アーシェ:
はーいっ、久しぶりに出番をゲットした私です!
でも女王陛下がすげー怖かったです!
ギャグ風に言うと、目のハイライトが消えてました・・・。
リアルに言うと、「ウェスペルタティアに下品な男はいらない」みたいな目をしてました。
・・・ご夫君、早く帰ってきてくれないかなー・・・。


あ、では今回ご紹介するお国はこちらでーす。


・アキダリア共和国
魔法世界中央の海、ユートピア海に浮かぶ島国。
首都はアル・ジャミーラ、人口2000万人程度の立憲共和国(元首はウェスペルタティア女王)。旧連合時代は砂糖とコーヒーのプランテーション経済を押し付けられていたので、経済構造は歪。現在はウェスペルタティア王国からの経済援助で経済再編・再建を目指している。独立後の6年間で有償資金協力は370万ドラクマ、無償資金協力が420万ドラクマ、技術協力援助が105万ドラクマ。交通の要衝である分、王国からの直接投資も多い。
独立後は南北の国と国境紛争を抱えていたが、北の龍山連合とは国境が確定し、軍事協力を進めている。問題は南のパルティアとの関係で、アキダリア系住民の多く住む島嶼を巡って今も銃火を交えている。なお、何故パルティアにアキダリア系住民が住んでいるかだが、旧連合の一部の富裕層がリゾート開発のために奴隷として強制移住させたからだとされている。
最近の選挙で右翼政党連合「統一」が勝利を収めたため、領土紛争に対して強気になっている。


アーシェ:
・・・でしたー!
では次回は、えー・・・うん。
戦争かも!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。