魔法世界興国物語~白き髪のアリア~   作:竜華零

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王室日記③「ファミリー」

Side アリア・アナスタシア・エンテオフュシア(27歳)

 

世の中には、驚くべきことがいくらでもある物なのですね。

私もそれなりに経験を積んで、ある程度の事態を前にしても驚かない自信があったのですが。

いえ・・・まぁ、悪いことでは無いので、素直な気持ちを告げることにしましょう。

 

 

「おめでとうございます、アーニャさん」

「・・・・・・ありがと」

 

 

珍しく政務・公務が途絶えたとある休日、私はアーニャさんの訪問を受けています。

事前に打診があったので、スケジュール的には問題はありません。

ですが、具体的にはアーニャさんとクゥァルトゥムさんの「2人での」訪問です。

 

 

訪問の目的は、もちろん事前に知らされていますが。

いざ、実際にこの耳で聞くと驚きを禁じ得ません。

以前からもしやとは、思ってはいましたが・・・。

 

 

「それで、あの・・・アーニャさん」

「・・・・・・何よ」

 

 

アーニャさんは、どことなく不機嫌そうです。

話の内容は明るいのですが、何とも空気が重いです。

場所は『水晶宮(クリスタル・パレス)』の第3応接室・・・私がプライベートで人と会う時に使う部屋です。

 

 

だからアーニャさんを迎え入れることもできているわけですし、これからやってくるシオンさんやヘレンさんなどが来ても問題はありません。

また、クルトおじ様や千草さん、テオドシウス尚書も来る・・・こちらは公的な意味で。

ちなみに今、この部屋にいるのは・・・アーニャさん達の他には私とフェイト、茶々丸さんとエヴァさんです。

 

 

「えっと・・・結婚式は、いつ?」

「・・・・・・来月」

 

 

そう、今日はアーニャさんとクゥァルトゥムさんの結婚の報告を聞いています。

クゥアルトゥムさんは一応、公的には公子と言うことになっていますので・・・。

 

 

それを抜きにしても、何と言うか・・・アーニャさんが不機嫌すぎます。

結婚式って、もっと楽しそうに報告する物じゃ無いんですか・・・!

気のせいか、対照的にクゥァルトゥムさんは勝ち誇った顔をしてますし。

 

 

「ああ、もうっ・・・何でこうなるのよ!?」

「ふっ・・・」

「あ、今笑ったわねアンタ!」

「・・・ふっ」

 

 

い、いったい、何がそんなに気に入らないのでしょう。

助けを求めるように左右を見ても、フェイトさんはコーヒーを飲むばかりですし、エヴァさんはそもそも興味が無いようですし。

茶々丸さんは・・・あ、「そっち」の録画ですか。

 

 

「油断したっ・・・本当に、油断した! ねぇアリア、どうして妊娠って女にしかできないのかしらね」

「それは私も以前から不思議でしたけど」

 

 

苦笑しながら、アーニャさんに言葉を返します。

どうやら、そうとうキているようですね。

まぁ、10年以上何があっても「結婚」だけは避け続けてましたからね・・・自分から申し込むのがあり得ない、みたいなお2人でしたから。

 

 

それが今、「結婚」に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれています。

それはさっきアーニャさんが口にした言葉、「妊娠」、コレがヒントです。

そして事態はもはや「妊娠」の一歩向こうに進んでいまして・・・。

 

 

「ふぇっ・・・ふぇえええぇぇぇぇっ!」

「・・・ぐすっ・・・ぐすっ・・・」

「げ・・・ごめん、ウチの子が」

「ああ、いえ・・・私達は慣れてますから」

 

 

アーニャさんが慌ててソファから立ち上がろうとするのを、制止します。

その間に、茶々丸さんが手慣れた様子で赤ちゃんをあやして、瞬く間に泣き止ませます。

・・・「2人」の、赤ちゃんをです。

ここで言う「2人」は、人数の話でして・・・。

 

 

この部屋に備え付けられたベビーベッドは、「2つ」。

1人は私とフェイトの「4人目」の子供にして三女、アリア・アンジェリク・エンテオフュシア。

ふんわりした金色の髪と青と緑の色違いの瞳(オッドアイ)が可愛らしい、生後3カ月の赤ちゃんです。

名前でわかるかもしれませんが・・・私の名前を、受け継いでいます。

 

 

「どうぞ、アーニャさん」

「あ、ありがと・・・茶々丸さん」

 

 

そして茶々丸さんからアーニャさんに渡された赤ちゃんも、生後3カ月。

加えて言えば、時間こそズレがありますが・・・アン(三女のことです)と同じ日に産まれたそうで。

言ってくれれば、病院とか手配したのに・・・アーニャさんは本当に今の今まで教えてくれなくて。

 

 

とにかく、アーニャさんの腕に抱かれているのは・・・赤い髪と瞳の赤ちゃんです。

アーニャさんと、クゥァルトゥムさんの間に産まれた子供で・・・名前は、ルチア。

ルチア・コンスタンツァ・ココロウァと言う名前なのだとか。

何だかんだ言いつつ、アーニャさんが娘を抱く顔は・・・。

 

 

「失礼致します。陛下、ご友人のフォルリご夫妻とボロダフキン様がご到着されました」

「・・・わかりました。ここへ通してください

「畏まりました」

 

 

知紅さんの知らせに指示を与えて・・・ああ、そうそう。

シオンさんとロバートは結婚して、5年前に子供ができて・・・。

・・・クルトおじ様も結婚して、すでに子持ちです。

 

 

まぁ、何と言うか・・・うん。

・・・世界って、変わり行く物なんですね。

 

 

 

 

 

Side ファリア・アナスタシオス・エンテオフュシア(10歳)

 

母様達がお客様の相手をしている間、僕はお客様のご子息の相手をしなくてはならない。

これはある意味では僕が将来、誰かをホストする時のための練習でもあるのだと思う。

もちろん、子供部屋にいる2人の妹の面倒も僕が見ないといけない。

 

 

「殿下、お客様をお連れしました」

「ありがとう、暦」

 

 

侍女(ナニー)の暦が連れて来たのは、赤髪赤瞳の男の子だった。

5歳くらいだろうか、初めて会う。

何だか不安そうに、キョロキョロしてて・・・。

 

 

「ロナルド・フォルリです、5歳です。ロンって呼んでください。よろしくお願いします」

「・・・ファリアです」

 

 

礼儀正しくお辞儀をするロナルド・・・ロンに、僕も自己紹介する。

5歳のロンに王子がどうとか言うのもアレなので、簡潔に済ませる。

そしてまず、お客様にすることは・・・。

 

 

「暦、お客様に苺の準備を」

「畏まりました」

「・・・いちご?」

「お嫌いですか?」

「ううん、好きです」

 

 

そうだろう、母様も「苺が全人類を友達にするのです」と力説していた。

母様が嘘を吐くはずも無い、そして何より僕も苺が大好きだからね。

実際、ロンは不安そうな表情を消してにっこりと笑った。

 

 

暦が部屋から出て行って、たぶん苺・・・と、お茶の準備をしにいったのだと思う。

さて、じゃあ親睦の苺が来るまでに何をしようか。

母様のお客様のご子息を、退屈させるわけにはいかない。

 

 

「兄様っ」

「・・・おにぃさま」

 

 

その時、2つの声が僕の名前を呼んだ。

振り向いてみると、僕の2人の妹がトタトタと部屋の隅からこちらへと駆けて来ていた。

2人の手は、侍女(メイド)服を着たユエの手を掴んでいる。

 

 

「・・・ごめんね、ユエ」

「い、いえ・・・別に、はい」

 

 

・・・1人は、シンシア。

シンシア・アストゥリアス・エンテオフュシア・・・7歳。

腰まで伸ばした金色の髪は光に輝いて、深い空色の瞳には生気が溢れてる。

白い肌をうっすらと彩るのは、母様の普段着に良く似た薄桃色のドレス。

僕の1人目の妹・・・1番僕にくっついてくる妹。

 

 

2人目は、ベアトリクス・アタナシア・エンテオフュシア。

3歳になったばかりで、僕の2人目の妹。

アンが産まれたから、末っ子じゃなくなった。

シアと同じように薄桃色のドレスを着て・・・でも、どこかまだ頼りない足取り。

金色の髪に赤い瞳、片手にタヌキのぬいぐるみを抱えていて・・・僕に似て物静か。

 

 

「兄様っ、向こうで一緒にゲームでもしましょう?」

「・・・お客様の前だよ、シア」

「あら、ごきげんよう! 貴方も一緒に遊びましょう?」

「は、はい・・・ロナルドです。ロンって呼んでください」

 

 

僕がどう扱おうか悩んでいる間に、シアが真っ先にロンと打ち解けていた。

シアは、もしかしたらこう言う才能があるのかもしれない。

 

 

「さ、兄様も早く!」

「・・・あそぶ」

 

 

シアの声に、ベアトリクスが僕の服の端を掴んでくる。

タヌキのぬいぐるみを抱えて、僕を見上げて来るのはルビーみたいな綺麗な眼。

・・・はぁ、溜息を吐く。

 

 

「・・・苺が来てからね」

「あ、苺さえあれば良いんで・・・いえ、申し訳ありません・・・」

 

 

・・・?

僕が見つめると、ユエは慌てて押し黙った。

別に、睨んだわけじゃ無いのだけど・・・。

 

 

 

 

 

Side ユエ・マクダウェル(10歳)

 

ファリア様達は、お客様のロナルド様を交えてボードゲームに興じておられます。

スゴロクと言う旧世界のゲームで、魔法世界の物と異なり全て手動で行うレトロなゲームです。

何でも人間の人生を象ったゲームで、結婚や出産、果ては破産など実にリアルなルール設定だとか。

 

 

正直、私が混ざるのは畏れ多いので、最初は遠慮したのですが・・・。

途端にシンシア様が不機嫌になられてしまわれたので、私も参加することになりました。

シンシア様は、とても強引なお方なので・・・。

 

 

「この数字は何て読むかわかりますか、ベアトリクス?」

「・・・さん?」

「はい、良くできました~。じゃあ、この駒を3マス進めて~」

「・・・さん、すすむ?」

 

 

そのシンシア様も、妹君のベアトリクス様に対しては甲斐甲斐しくお世話をしています。

今も、ベアトリクス様にルーレットの回し方や駒の進め方を嬉しそうに教えておられます。

ベアトリクス様がお産まれになられた時、1番喜ばれたのはシンシア様ですから。

何と言うか、姉と言う立場を楽しんでおられるようで・・・。

 

 

「はい、次はロン君の番ですよ!」

「は、はい・・・えっと、あぅ、1・・・」

「あははっ」

 

 

そして今は、ロナルド様を弟のように扱って楽しんでおられるようです。

何と言うか、年下の子供に対しては気遣いを見せたがると言うか・・・。

一方、長兄であるファリア様はそれを静かに見守られております。

時折、ご自分の番が来ると静かに自分の駒を動かしています。

 

 

物静かなファリア様、お元気なシンシア様、大人しいベアトリクス様。

そして産まれたばかりのアン様に、女王陛下や夫君殿下・・・。

・・・皆様、私にとても良くしてくださります。

まるで本当の家族のように扱ってくださるばかりか、学校やお医者様のお世話まで・・・。

 

 

「ユエの番!」

「え・・・あ、はい、申し訳ありません」

 

 

ぼんやりと考えていたら、早々と私の番になっておりました。

私はボードのルーレットに手を伸ばして、カラカラと回して・・・。

 

 

「・・・それ、なぁに?」

「え?」

 

 

ベアトリクス様が指差されたのは、私の手首のあたりです。

侍女服の袖がかすかにズレて、白い包帯が巻かれているのが見えています。

・・・慌てて、私は手を引っ込めました。

 

 

「な、何でもありません。少し怪我をしただけで・・・」

「怪我したの? じゃあダフネ先生に診て貰いましょうよ」

「ああ、いえ・・・ちゃんと治療はしていますので、どうかお気になさらないでください」

 

 

心配そうなシンシア様の声やファリア様の視線に曖昧な笑顔を向けつつ、私は自分の手首を撫でます。

いえ、本当に大した怪我では無くて・・・お母様との訓練で、少し。

もう慣れましたし、本当に大したことでは無いのです。

 

 

「はーい、お待たせしました!」

「・・・苺と、ジュース」

「わぁっ、苺!」

「いちご・・・」

 

 

その時、暦様と環様が苺とお茶を持ってきて・・・シンシア様とベアトリクス様が歓声を上げました。

ファリア様はまだ私を気にしておられるようでしたが・・・話題が変わったので、私はほっとしました。

あまり、触れてほしくは無いことなので。

 

 

・・・お母様のことは、本当に。

昔から厳しくて、厳しくて・・・褒められた記憶はあんまり無くて。

それに、最近は・・・怖い。

訓練が厳しいとかじゃ無くて、何と言うか・・・お母様は、どうして。

どうして、私と同じくらいの年齢にしか見えないのでしょう・・・?

 

 

 

 

 

Side エヴァンジェリン

 

時間が経つのは、本当に早い。

ついこの間にファリアが産まれたかと思えば、瞬く間に3人も姫が産まれた。

姫は皆がアリアに似ているので、ゲーデルなどは狂喜乱舞しているだろうが・・・。

 

 

と言うか、若造(フェイト)は何回アリアを孕ませれば気が済むんだ?

いつまでも新婚気分で、毎晩毎晩イチャイチャしおってからに・・・。

・・・まぁ、年齢的には当たり前かもしれんが。

 

 

「いやぁ、まさかあの爆裂娘が結婚たぁなぁ」

「うっさい、死ねバカート」

「相変わらずひでぇな、オイ」

「ミス・・・いえ、もうすぐミセスになるのかしら?」

「残念ながらね」

 

 

時間と言えば、アリアの友人達も以前とは立場が随分と変わった。

例えばこのシオン・フォルリとか言う女は、オスティア・ゲートポートの主任管理官になった。

その夫のロバート・フォルリは、オスティアに開設された麻帆良・メルディアナの共同分校の事務員長だし。

 

 

「アーニャ先輩の赤ちゃん、抱っこしても良いですか・・・?」

「良いわよ、別に」

「あ、ありがとうございますっ・・・」

 

 

そこでアーニャの子供を抱かせて貰って喜んでいるドロシー・ボロダフキンにした所で、今やオスティアのカリスマ若手美人女獣医だしな。

・・・ドロシーの気を引くためにペットを飼い始める男がいるとか、聞いたことがある。

 

 

「それで、結婚式は身内だけで済ませるんですか?」

「うん、出来ればね・・・でもアイツ公子だし、友人としてアンタを招待したら・・・」

「・・・すみません、どう考えても身内でしめやかに・・・とかは無理になっちゃいます」

「そうよねぇ・・・」

 

 

今、アリアは学友に囲まれてプライベートな話をしている。

私はと言えば、アリアの4番目の子供が寝ているベビーベッドの近くで茶々丸の淹れてくれた紅茶を飲んでいる。

私が混ざれる話題など無いし、たまにはアリアも友人と昔に戻って楽しく話せば良いだろうさ。

 

 

一方、視線を動かせば、若造(フェイト)はクゥァルトゥムのガキの相手をしている。

何を話しているのかは興味が無いが・・・結婚生活のイロハでも教えてるんじゃないのか?

ま、あのガキとアーニャが結婚するなら、新旧両世界の架け橋にもなれるかもしれんしな。

王国の貴族と、旧世界の女教師・・・組み合わせとしては、微妙かもしれんが。

 

 

「失礼致します、陛下。ゲーデル宰相ご夫妻と、テオドシウス尚書とご子息、並びに旧世界連合の天ヶ崎ご夫妻がお見えになりました」

「あ・・・わかりました、部屋を変えますのでそちらに通してください」

「畏まりました」

 

 

知紅の知らせに、アリアがそう返す。

・・・私は、アリアの4番目の子の安らかな寝顔を見ながら、溜息を吐いた。

時間か・・・本当に、過ぎるのが早い。

 

 

何しろ、ゲーデルやテオドシウスが普通に結婚して子持ちだしな、今や。

ユエも10歳になって、最近よそよそしくなったような気がするし。

・・・反抗期か、アレは?

 

 

 

 

 

Side ファリア

 

妹達がボードゲームに飽き始めた頃、暦がまたお客様を連れて来た。

今度は3人、男の子2人と女の子1人。

2人は知ってる、僕と王宮の家庭教師が同じ人だったから。

 

 

それにしても、今日はお客様がたくさんだ。

母様は、僕を試しているのだろうか・・・?

 

 

「あ、レオ君だ」

「お久しぶりです、王女殿下」

「うふふ、くすぐったい」

 

 

1人はグリルパルツァー公爵家の長男、レオパルドゥス・マリア・フォン・グリルパルツァー。

僕よりも1歳半くらい年下の8歳で、水色の髪と青銀色の瞳が綺麗な、女の子みたいな男の子。

貴族らしく礼をして、駆け寄って来たシアの手の甲にキスしたりしてる。

それから、シアの後をついて来たベアトリクスにも同じことをする。

僕も、ねだられてたまにやるけど・・・うん、たくさんお話をしよう。

 

 

「シア、シアは女の子達と向こうで遊んでくれる?」

「えー、皆で一緒に遊んだ方が楽しいでしょう?」

「こう言うのは、男女で別れる物だって母様も言ってた・・・良いね?」

「んー・・・兄様がそう言うなら。じゃあ、ベアトリクス、クロエちゃん、行こう?」

 

 

シアが連れて行ったのは、妹のベアトリクスと・・・新しくやってきた女の子。

クロエ・ゲーデル・・・クルトおじさんの娘。

長い髪と眼鏡の奥の切れ長の瞳はどちらも金色な、6歳の女の子。

良い子だと思うけど、ただ・・・。

 

 

「はいっ、殿下のご意思に従いましゅっ・・・従いますっ!」

 

 

・・・凄く、噛んだ。

ああ、いや、それは良くて・・・何と言うか、お父さんのクルトおじさんの真似をするのが好きみたい。

今もシアに手を引かれて、凄く嬉しそうに表情を緩めてる。

 

 

まぁ、女の子の方はシアに任せるとしよう。

僕はロンを呼んで、それからレオの服の襟を掴んで部屋の反対側へ進む。

 

 

「あ、あの・・・王子殿下?」

「うん、向こうの方が静かにお話できそうだからね」

「静かである必要性の説明を求める」

「その旨を却下する」

 

 

ズルズル・・・あ、忘れる所だった。

僕は振り向いて、興味深そうにベアトリクスの後ろ姿を見送っていた男の子を見つめる。

その子の名前は天ヶ崎月影、9歳。

肩先で斬り揃えた黒髪に黒い瞳、どことなくオリエンタルな服装。

 

 

そして彼は、何故か狐のお面を横かぶりしている。

月影がベアトリクスの方を見ているので、そのお面の目が僕を見ることになる。

少しだけ、怖い。

 

 

「行くよ、月影」

「ん・・・はいな、王子様」

 

 

呼びかけると、快活に笑う。

月影が笑うと、八重歯がちらりと見える。

それに、僕はふっ、と口元を緩めた。

 

 

・・・一応、彼らが僕の「友達」。

外では、もちろんこんな風には付き合えないからね。

 

 

 

 

 

Side シンシア・アストゥリアス・エンテオフュシア(7歳)

 

兄様に任されたからには、私が女性陣を・・・えーと。

・・・女の子達を、そう、ホストするの。

でも、ホストって何をすれば良いのでしょう・・・?

 

 

「ねぇ環、ホストって何をすれば良いのでしょう?」

「・・・お茶を飲みながらお喋り、とか?」

 

 

壁際に立っている環に聞いたら、そんな答えが返って来ました。

なるほど、お茶を飲んでお喋り。

母様がそう言うの、「ガールズトーク」って言っていたような気がします。

 

 

「じゃあ皆、がーるずとーくをしましょう!」

「はいっ、王女殿下の仰せのままにゅっ・・・仰せのままにっ!」

「がー・・・?」

「ガールズトークです、ベアトリクス様」

 

 

クロエちゃん、ベアトリクス、ユエ。

私のお友達、これだけ集まれば素敵な「ガールズトーク」ができるはずです。

で、えー・・・。

 

 

「環、環・・・がーるずとーくって何をすれば良いのでしょう?」

「・・・いつもと同じで良い」

「そう・・・わかりました。いつもと同じ話、同じ話・・・」

 

 

私がいつも、ベアトリクスやアンに話していることを言えば良いのでしょう?

なら、とても簡単です。

調がやってきて、私達4人が座るテーブルにジュースと苺のクッキーを置いて行くのを待って、私はいつもと同じ話を始めます。

 

 

「今日の兄様についてなのだけど・・・」

「本当に同じ話ですね・・・あ、いえ、大丈夫です、はい」

「・・・おにぃさま?」

「王子殿下のお話ですか?」

 

 

これはまだママにしか言ったことが無いけど、私、将来は兄様のお嫁さんになるの。

だって、兄様はとてもカッコ良いもの。

パパもカッコ良いけど、パパは優しくしてくれないから・・・。

 

 

でも、兄様はいつも私に優しい。

だから、ずっとずっと前から決めてたんです。

兄様のお嫁さんになるって・・・。

 

 

「王女殿下が、お望みにゃらっ・・・お望みならば!」

「・・・わたしもー」

「えー、ベアトリクスも兄様のお嫁さんになりたいの? んー、じゃあ、ちょっとだけですよ?」

「いや・・・うーん・・・は、はい、良いんじゃないかと・・・うーん」

 

 

ほらっ、皆も良いって言ってるでしょう?

えへへ・・・早く、大きくなりたいな。

そうしたら、兄様のお嫁さんになるんです。

 

 

ママの結婚式の映像を茶々丸に見せて貰ってから、ずっとずっと兄様のお嫁さんになりたいって思ってたんです。

そうしたら、茶々丸もウェ・・・「うぇでぃんぐどれす」を作ってくれるって。

もちろんユエとかクロエちゃんとか、お友達も皆、呼びましょうね。

私と兄様の、結婚式に・・・。

 

 

 

 

 

Side アーニャ・ユーリエウナ・ココロウァ(28歳)

 

まぁ、良いんだけどね・・・別に。

赤ちゃん可愛いし、アイツのことは嫌いじゃ無くも無いと言ってあげても良いくらいには・・・まぁ、アレなわけだし。

それなりに付き合い長いし、良い年だし、納得してあげなくも無いわ。

 

 

・・・だけど、あの勝ち誇った顔はムカつく。

ああ、もうっ、男が妊娠できれば間違いなく私が勝ってたのに!

そこの所だけが、ホントにムカつく!!

 

 

「ど、どうどう、アーニャさん・・・えーと、それで、どんな形に収まりそうですか?」

 

 

アリアが私を宥めながら視線を向けたのは、旧世界連合の千草さんと、最近また外務尚書になったグリルパルツァー公爵。

経緯は良く知らないけど、10年前のゴタゴタで退役した元帥さんと結婚したんだって。

 

 

私とアイツ・・・アルトの結婚は、新旧両世界の「関係者」間での初めてのケース。

だから一応、外交的・法律的な観点から会談を持ったみたい。

むしろ、今日はその話を非公式に内々でするのがメインみたいな物だから・・・。

千草さんはこっちの人と結婚したけど、旦那さんは魔法世界の組織の人じゃないから。

シオンとロバートもいるけど、庶民同士だったからスルーだったし・・・。

 

 

「特に問題は、無い・・・と言う結論になりました」

「ああ、法的には何の問題もあらへんけど・・・どやろな、お互いの世界の関係者を集めて大々的に友好を演出しようって言う連中もおるんやけど」

「げ・・・」

 

 

千草さんに睨まれて、慌てて口を押さえる。

でも、冗談じゃ無いわよ・・・見世物なんてゴメンだわ。

ああ、もう、だから面倒だったんだけど。

 

 

でも、子供までできちゃったら逃げられないしね。

・・・いや、別に子供を言い訳に使うわけじゃ無いけどさ。

 

 

「それは・・・困りましたね」

「まぁ・・・夫君の弟が旧世界の関係者と結婚ってことになると、気を回す連中もおるから・・・」

「あー・・・実はその話、もう宰相府の中で噂になってますよ。花嫁がココロウァさんとはバレてませんけど」

「げ・・・」

 

 

同じ行動を繰り返す私、でも何で噂になってるのよ。

今や王国の庶民院(下院)の議員さんになってるヘレンを睨むと、ヘレンは苦笑しながら肩を竦めた。

く・・・政治家になってからかわし方が上手くなったわね・・・。

 

 

「もしかしたら・・・あの人が振り撒いているのかも」

「あの人・・・」

 

 

そう言って指差すのは、男性陣の輪の中にいるクルト宰相。

・・・いや、何でもかんでもあの人のせいにしたら良くないと、思うわ、うん。

指差したヘレンの左手の薬指には、キラリと光る銀のリング・・・。

・・・どいつもこいつも、とっくに結婚してんのよねー。

 

 

「あら、ミス・ボロダフキンはまだよ?」

「ドロシーはモテるから良いのよ」

「え、えぇ・・・っ?」

 

 

シオンとドロシーとも絡みつつ、私は溜息を吐く。

公子様の妻、か。

厳密には公子じゃ無いらしいけど、それでも女王の夫君の弟と結婚。

・・・面倒くさいわねぇ。

 

 

まぁ、それを言ったらアリアなんてもっと形式ばった夫婦生活とかしてるのかもだけど。

うーん、この機会に聞いてみようかしら。

 

 

「ねぇアリア、貴女の旦那様の良い所ってどんな所?」

「え? 悪い所がどこかあるんですか? フェイトは優しくて気立てが良くてハンサムで強くて良く気のつく人で昼はもちろん夜もとても優しく気遣ってくれて」

「ゴメン、本当に私が悪かったわ・・・」

 

 

たまらず、途中で遮った。

うん、聞く相手を間違ったかもしれない。

 

 

「あら、ロバートは何かと手のかかる人だけど私がいないと靴下の場所もわからないダメな所がとても可愛くてでも実は激しい所もある・・・」

「え、えーと・・・アーニャ先輩、あの人は皆から変態とか胡散臭いとか言われますけどそれは実は照れ隠しみたいな物で本当は誠実で熱烈な王室ファンで・・・」

「あ、これうちも言わなアカン雰囲気か? うちの人はなぁ、子供に好かれる素敵な人で最近は小太郎も懐いて来た感じがするねんけどもう1人子供欲しいなぁみたいな話を・・・」

「・・・わ、私も? えーと、アイツはいざと言う時に何かプライドが邪魔してズレた決断をしたりするけどそれは裏を返せば真面目ってことで」

 

 

納得した。

アウェーだわ、ここ。

 

 

「・・・ドロシー、私達親友よね」

「え、えぇ・・・?(くるっくー?)」

「うん、ルーブルも親友よ」

 

 

ドロシーとルーブルだけが味方だった。

と言うか皆、まくしたて過ぎよ!

何で息継ぎもせずに旦那の自慢話が延々と続くのよ・・・!

 

 

「・・・はぁ。まぁ・・・良いわよ」

 

 

観念してあげようじゃない、将来は娘と2人でバカにして過ごしてやるんだから。

それに、アイツの得意気な顔を見るのも嫌いじゃないしね・・・。

 

 

「・・・え、良いって・・・じゃあ、大々的にやります?」

「・・・へ?」

「いや、まぁ・・・うちらはええけど」

「いや、ちょ・・・」

「それなら、我が家で貴族令嬢としての立ち居振る舞いやマナーを学んで貰わないと」

 

 

え、えええぇぇぇ・・・?

いやいや、待って待って、違う違う。

違うのよアリア、私が「良い」って言ったのはそっちじゃなくてね・・・!

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

・・・女性陣は、何やら楽しそうに騒いでいるけれど。

男性陣(こちら)は、まぁ、静かな物だよ。

特に共通の話題があるわけでも無いし、あるとすれば・・・。

 

 

「いやぁ・・・本当にお可愛らしいですねぇ、アリア王女殿下は!」

「やかましい、こっちに来るな変態」

 

 

・・・向こうで、1人輪から離れてアンのことを見つめているクルト・ゲーデルくらいかな。

吸血鬼(エヴァンジェリン)が煙たそうにしているけれど、あえて頑張れと言いたいね。

娘が生まれる度に狂喜されるのは、正直どうかと思うし。

流石に10年経って年齢を感じさせる容姿になったけど、まだまだ現役。

あれから2回の選挙の洗礼を受けてなお、まだまだ宰相として前線に立っている・・・。

 

 

「・・・粗茶ですが」

「ああ、いやいや、お構いなく」

「ど、ども・・・」

 

 

茶々丸が持ってきた緑茶を受け取るのは、カゲタロウとアリアの友人の・・・ロバート・フォルリ、だったかな。

まぁ、庶民的な話に華を咲かせているようだね。

 

 

だけど僕は、もっと別のことを話しておかなければいけない。

それは・・・「子供を作った」4(クゥァルトゥム)に向けて話すべきことだ。

僕達アーウェルンクスが子供を作ると、どうなるのか。

 

 

「・・・4(クゥァルトゥム)、キミは」

「ふん・・・」

 

 

僕が何かを言おうとすると、4(クゥァルトゥム)は鼻を鳴らして制止してきた。

何も言わずに詰襟の衣服の腕の袖をズラす、そこには・・・。

・・・・・・そう、か。

 

 

「・・・デュナミスに」

「必要無いさ」

 

 

どこか不機嫌そうにそう言うと、4(クゥァルトゥム)は服の袖を直す。

実は今、デュナミスには比較的に連絡が取りやすくなっている。

デュナミスの率いる政党「新生完全なる世界(ネオ・コズモ・エンテレケイア)」が、新グラニクスを中心とする中央エリジウム自由国で政権党の地位にあるからだ。

 

 

私的にも公的にも、連絡の手段がある。

何しろ相手は、「イヴィオン」加盟国の政治指導者なのだから。

事実、僕はこの10年ですでに3度ほどアリアに秘密で会っている・・・。

 

 

「勘違いするなよ3(テルティウム)、僕は別に人間としての幸福を求めたわけじゃない」

「・・・4(クゥァルトゥム)

「お前だって、そうだろう」

 

 

・・・僕は何も答えずに、首を振る。

言葉で否定する程に間違っているとは思えない、けれど肯定もするつもりも無い。

けれど・・・。

 

 

「・・・良いのかい?」

「何がだ? 僕はただ手に入れたかっただけさ・・・相手を屈服させて奪う、その後は知ったこっちゃ無い」

「・・・そうかい」

「ああ、そうさ」

 

 

・・・それでも。

それでも、結婚式はしてあげても良いと、考えているんだね。

それに、貧民街(スラム)の人達のためにキミがこの10年でしていたことは・・・。

 

 

・・・僕が何を言っても、意味は無いのだろうね。

もし何か意味のあることを彼に言えるとしたら、それはきっとこの世で2人だけだろう。

アリアの傍で笑ってる女性と、そしてあそこでスヤスヤと眠る赤ん坊だけ。

 

 

「・・・もう、こんな時間だね」

 

 

時計を見れば、すでに午後4時を過ぎている。

僕はそれに・・・何も言わず、眼を閉じた。

 

 

 

 

 

Side ファリア

 

楽しい時間と言う物は、すぐに過ぎる物。

僕達が遊んでいる間に母様達のお話も終わったみたいで、次々に迎えが来た。

私的な場で皆で話せるのはめったに無い機会だから、次はいつになるかわからないけど。

 

 

「またね、月影」

「ん、王子様も元気で・・・また手紙送るわ」

「静かにしぃ・・・そしたら、また次は公的な場で」

「はい、ではまた・・・お送りしなさい」

「はっ」

 

 

母様と父様に連れられて、『水晶宮(クリスタル・パレス)』の北大(アリア)門までお客様達をお送りに出る。

もちろん、シアとベアトリクスも一緒に。

アンも、茶々丸に抱っこされて一緒にいる。

 

 

今見送った月影・・・旧世界連合の方々の馬車が最後。

他は身分に応じて、それぞれの門からそれぞれの馬車で市街地や貴族街の方に。

結局、クゥァルトゥム叔父上は公式な場で結婚式を挙げられることになったらしい。

詳しい話は、母様はまだ僕には教えてくれないけれど。

早く公務に就けるようになって・・・母様のお手伝いがしたいな。

 

 

「・・・ふぅ、では今日の予定は終了です。ファリア、良くお客様のお相手をしてくれましたね」

「・・・はい」

 

 

人目があるから、頭は撫でてくれないけれど。

でも、母様が褒めてくれた。

恥ずかしい、でも嬉しい。

 

 

「・・・シンシアも、ね」

「はいっ!」

 

 

父様に褒められると、シアも嬉しそうに返事をする。

まぁ、シアは父様が大好きだからね・・・将来は父様のお嫁さんになりたいとか考えているのかもしれない。

僕も、母様をお嫁さんにできると良いのだけど・・・。

 

 

「では茶々丸さん、夕食の準備をお願いします」

「畏まりました」

「さぁ、子供達は夕食の前にお風呂に入ってしまいましょうね」

「はい」

「はぁい」

「・・・はい」

 

 

母様の言いつけに、アン以外の妹達も僕と一緒に返事をする。

お風呂・・・嫌だな。

でもちゃんとしないと、父様に叱られるし。

 

 

「では厨房に指示を伝えて参りますので・・・その後、ファリア様のお世話をさせて頂きますね」

「え・・・」

「きちんとご入浴されるよう、いつものようにお手伝いさせて頂きます」

「いや・・・うん、良いよ、1人で・・・大丈夫」

 

 

茶々丸は今でも、僕の頭を洗ってくれたりとかするけど・・・何だろう、最近。

それがとても、恥ずかしい気がする。

どうしてだろう・・・?

 

 

「え・・・でも」

「えと・・・茶々丸は、シア達の面倒を見てあげて。僕は暦や栞にお願いするから・・・」

「え・・・私も兄様と一緒に」

「シンシア? はしたないですよ?」

「えぅ・・・」

 

 

シアが母様に注意されている間に、僕はそそくさとその場から離れる。

茶々丸が来る前に、お風呂から上がらないと・・・。

 

 

・・・でも、どうしてだろう。

暦や栞、環とかなら全然、入浴を手伝われても何とも思わないのに。

どうして、茶々丸だけ・・・?

 

 

 

 

 

Side ユエ

 

「今日は楽しかったか、ユエ?」

「・・・はい。皆様に良くして頂いたので・・・」

「そうか、良かったな」

「・・・はい」

 

 

浮遊宮殿都市(フロート・テンプル)のミラージュ・パレス内の道を走る馬車の中で、お母様とそんな会話をします。

お母様は私を見て小さく微笑まれた後、頬杖をつきながら馬車の窓の外を眺め始めます。

 

 

お母様の向かいの座席に腰掛けた私も、何となく窓の外を見つめます。

窓の向こうには、無数の塔で構成される光輝く女王陛下の居城・・・『水晶宮(クリスタル・パレス)』、その一部が見えます。

・・・お母様は、今も女王陛下ご一家のことを考えておられるのでしょうか?

 

 

「・・・今日は訓練、できなかったからな。代わりに寝る前に魔導学の本を読んでおけよ」

「・・・はい、お母様」

「・・・ん」

 

 

時折、思い出したように訓練や課題、勉強のお話をします。

お母様は、自ら私に一流の教育を施してくださります。

アリアドネーの大学教授の部屋にあるような難しい高価な本を何十冊も用意してくれたり、魔法薬の調合用の希少な材料をいくつも買ってきてくれたり・・・どれもこれも、オスティアの王立学校の授業ではお目にかかれない品物ばかりです。

 

 

そして何より、自ら私に訓練を施してもくれます。

訓練と言っても、基礎訓練を終えた後は一方的にお母様に殴られる毎日です。

もちろん、お母様は手加減してくれて・・・・・・いると、思います。

でも私は、それについていけない・・・お母様の期待通りのスピードで、訓練をこなせない。

動きが遅い、物覚えが悪い・・・だから毎日、怪我をしたり痣を作ったり・・・。

 

 

「・・・? どうかしたのか?」

「・・・いえ、何でもありません、お母様」

「・・・そうか」

 

 

ああ、また・・・お母様は不機嫌そうに、窓の外に視線を戻します。

ハッキリと物を言わない、言えない私に苛立っているのかも・・・。

・・・でも、私・・・お母様に聞きたいことが、ある、のかも・・・。

 

 

私の目の前のお母様は・・・その、どう見ても私と同年代にしか見えない。

ファリア様やシンシア様のお母様・・・女王陛下とは、違う。

どう見ても、10歳の子供がいる母親には見えないんです。

ウェーブのかかった長い金髪、青い瞳・・・透き通る白い肌、まるでお人形さんみたい。

ずっと・・・。

 

 

「・・・」

 

 

・・・ずっと、ずっと前から、気になっていました。

気になって・・・でも、聞けなくて。

お母様・・・お母様、ねぇ。

 

 

ねぇ、お母様・・・貴女は。

貴女は、本当に・・・私の。

 

 

 

私の、お母様ですか?

 

 

 

・・・そして私は、今日も。

お母様に、何も言えませんでした・・・。

 

 

 

 

 

SIde アリア

 

今日は、子供達も楽しめていたような気がします。

ファリアやシンシア、それにベアトリクスも嬉しそうに夕食の席で今日お友達とお話ししたことを教えてくれましたから。

 

 

ファリアは普段はメルディアナの寄宿舎に入っていますし・・・今日のような長期休暇の際には、戻ってきてくれますが。

シンシアはオスティアの学校なので、そう言う意味でもファリアの傍にいたがるのかもしれませんね。

あの2人は、本当に仲が良いので。

その内、ベアトリクスやアンがやきもちを焼いてしまうかもしれませんね。

 

 

「それでは、おやすみなさいませ」

「「「おやすみなさいませ、女王陛下、夫君殿下」」」

「はい、おやすみなさい」

 

 

寝室から出て行く茶々丸さんと侍女達を、私はベッドの上から見送ります。

・・・以前から思っていたのですが、茶々丸さんって実は複数の身体を同時に使ったりしているのでしょうか?

私やフェイトのお世話だけでなく、育児部屋(ナーサリールーム)の子供達のお世話までしているので・・・同時に別の場所で出没している可能性があります。

 

 

今度、聞いてみましょう。

私は強く、そう心に決めました。

 

 

「・・・それで結局、アーニャさんの結婚式は完成したばかりの浮遊宮殿都市(フロート・テンプル)の聖堂を使用することになりそうです」

「・・・そう」

 

 

アーニャさんの結婚式は、公爵にして夫君の弟に相応しい格式で執り行われることになります。

これで一応、アーニャさんも王国貴族の端に加わることになるかもしれませんね。

 

 

私とフェイトの結婚式の際に祝福してくださった、アンバーサ大司教が結婚の宣誓を行ってくれます。

誕生日も同じなアーニャさんの娘さん、ルチア。

私とフェイトの3人目の娘、アンと仲良くなれると良いのですが・・・。

 

 

「そう言えば、私とフェイトも結婚して10年経っちゃいましたね」

「・・・そうだね」

 

 

私の言葉に、フェイトが小さく微笑んでくれます。

傍目には無表情なので、きっと私にしかわかりません。

英国式に錫婚式なんてして、ブリタニアメタルの食器なんて交換したりしました。

 

 

10年・・・長いような短いような、あっという間に過ぎちゃいましたね。

あ、もちろん、これまでの結婚記念日の贈り物は大切に保管していますよ。

このままずっと、変わらずに贈り物を交換できると良いな・・・。

 

 

「・・・じゃあ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい・・・んっ」

 

 

ちゅっ・・・とおやすみのキスをして、私とフェイトはベッドの上に横になります。

それから私はフェイトの腕に包まれて、彼の胸に額を押し付けます。

 

 

結婚してから今まで、一部を除いて離れて眠ったことなんてありません。

いつもこうして、抱き合って眠ります。

こうして眠るのが、一番安心できますし・・・それに・・・。

 

 

「・・・ファリアとシンシア、ロン君やクロエちゃん達と仲良くしてましたね」

「そうだね」

「・・・やっぱり、弟や妹が増えたみたいで嬉しいのでしょうか」

「・・・そうかもね」

 

 

ベアトリクスやアンが産まれた時、シンシアなんて大喜びでしたもの。

ファリアも妹がたくさんできて、嬉しそうです。

でも、まだ弟がいませんから・・・ロン君のような存在は、嬉しいのかもしれませんね。

 

 

「・・・何?」

「・・・」

 

 

・・・何も言わずに、視線に込めてみます。

・・・・・・・・・あ、ダメですね。

もうっ・・・。

 

 

私はフェイトの腕から抜け出すと、軽く身体を起こします。

それからフェイトにしなだれかかるように、フェイトの胸に手を置きます。

 

 

「・・・もう1人くらい・・・」

「うん?」

「もう1人くらい、男の子・・・欲しい、かも・・・」

「・・・そう」

 

 

フェイトの手が、私の頭の後ろに回されます。

もう何度、繰り返したかわからない行為。

ゆっくりと引き寄せられる内に、眼を閉じて・・・。

 

 

「・・・ん・・・」

 

 

最初は優しく、それから強く、深く。

舌先が触れるだけだったキスが、いつしか貪るような激しさに・・・。

徐々に大きくなっていく波に身を任せながら、フェイトの背中に腕を回します。

 

 

頭の奥が甘い何かで溶かされるまで、そう時間はかかりませんでした。

・・・私の愛しい、旦那さま。

いつまでも、私と子供達の傍にいてくださいね・・・。




レオパルドゥス・マリア・フォン・グリルパルツァー:リード様提案。
ありがとうございます。

クルト:
どうも、アリア様の永遠の宰相、クルト・ゲーデルです。
現在、第3次内閣を率いさせて頂いております。
憲法で4選禁止になってますので、そろそろ手を打つべきかなと思っております。

まぁ、それはさておき今回は「10年後の魔法世界」についてご説明致しましょう。
アリア様の帝こ・・・こほんっ。
(キラキラした笑顔で)魔法世界人の皆様のための世界ですから、懇切丁寧にご説明致しましょう。
まぁ、私主観ですけどね。


ウェスペルタティア王国
統一オスティアを王都とする立憲君主制国家、それが我がウェスペルタティア王国です。
国民性は明るくてお祭り好き、あと基本的に王室支持者が多いです(私を含めて)。その王室はアリカ様を最後に絶える寸前まで行きましたが、アリア様が立て続けにご懐妊されておりますので、その意味では安泰ですね(王女殿下が3人も産まれて、私の忠誠心も保てると言う物です)。
経済的には過去10年間で総生産が年平均9.8%成長、名目失業率も0となり完全雇用を達成。
物価・エネルギー供給も安定しておりますので、とても住みやすい良い国ですよ(にっこり)。
軍事的には、国際旅客飛行鯨のルート上の全ての国家と同盟条約を結び軍を駐留させている他、新連邦加盟国を中心に約7000名の兵士達が平和維持活動や道路・港湾・施設補修などを行っております。
え、占領? ははっ、バカなことを言わないでください。
全ては愛と平和と自由のためですよ(キラキラ~)。

「イヴィオン」
現在は独立したエリジウム22カ国やシルチス・サバなどの国々を含めた30カ国体制となっております。
もともとは反メガロメセンブリア同盟と言う形でスタートしましたが、今やアリア様の非公式帝国です・・・おっと、今のはオフレコでお願いします。
アリア様を元首に戴く同君連合であり、条約によって統一された軍を持ちます(オスティア条約機構軍)。また経済協定も改訂して物品貿易関税の撤廃や投資の自由化などが行われておりまして、魔法世界北部は自由貿易圏となっております。もちろん、加盟国間の特恵マージン制度も存在しますが。

「魔法世界連邦(ムンドゥス・マギクス)連邦」
現在、アリア様のご意思により進められている構想ですね。昨年に39カ国で発足、ヘラス帝国とアリアドネーも加盟しております。表向きは各国平等の共同体として機能しております。
しかしその実、ウェスペルタティア王国の意思が根強く表れる組織構造になっております。例えば、加盟国元首で構成される「連邦元首会議」。これは安全保障理事会や連邦総会にも影響を与え、かつ各国元首が方針を確認する重要な機関なのですが・・・実は加盟国のほとんど(正確には30カ国)の元首はアリア様なので、アリア様お1人で30票(議決権の過半数)を行使することが理論上は可能なのです。
いやぁ・・・不思議ですねぇ、構想の段階ではこうなることはさっぱりめっきりどっきり予期することができませんでした。
うーん、私のお馬鹿さん。


ヘラス帝国
はい、現在「北のヘラス帝国」「南の神聖ヘラス帝国」「ヘラス人民共和国」に分裂している国家ですね。その他、小さいながらも数十の都市が自治を宣言しております。
内乱のそもそもの原因は、現テオドラ陛下の皇帝位継承問題と外国人勢力の流入に反発した市民感情が複雑に絡んだことですね。まぁ、テオドラ陛下が内部を掌握しないままに皇帝位に就いたことと、彼女が民の心情に鈍感だったことが原因だったと言えるでしょう。そのテオドラ陛下も、まだご懐妊されていないようですし・・・姉姫様とジャック・ラカンの関係も噂されたままですしねぇ。
外交的には「一つの帝国」方針により統一されたままですが、分裂後10年が経って諸外国は実務的な関係を後者2国と結びつつあります。
テオドラ陛下の支配下にある帝国北部・東部からはニャンドマ・ノアチスを経由してエネルギー供給のためのパイプラインが完成しており、経済関係の再構築が進んでおります。なお帝国内の通信基地局の8割、新造船受注の7割、港湾・道路整備・鉱山開発の7割は我が国資本が占めております。


アリアドネー
アリア様提唱の新連邦に原加盟国として参加、外交権を新連邦に譲渡する代わりに自由都市(正確には自由学術都市)として10年で生まれ変わりました。我が国と学術・文化・技術交流を進めております。なお、ベアトリクス王女殿下がご成長された暁にはアリアドネーに入学することが検討されています。
何、両国の平和と友好のためですよ(キラキラした笑顔で)。


クルト:
ふぅ、大体このような所でしょうか。
旧世界との関係では、帝国の内乱とエリジウムの混乱で、ゲートの修理が遅れていることですかね。
いやぁ、もうしばらくオスティア・ゲートの独占状態が続きそうですね・・・予期できないことが多くあるのが国際政治ですよね(うんうん)。


クルト:
では次回は、おまけ最終話ですね。
次回を含めてあと2回で終わりです・・・ああ、そうそう。
次回の後書きは、アリア様達のお子様方の説明をさせて頂くそうです。
今回でも良かったのですが、何しろまた増えるかもしれませんので。
もちろん、天ヶ崎大使や他の方々のお子様の説明も致します。
では、失礼致します。

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