ハリー・ポッターと平凡な天才 作:ただの凡人
空いているコンパートメントを探す。
「すみません、ここいいですか? 他が空いてないんです」
「ん? ああ、いいよ。入って入って」
赤毛の少年が手招きする。私は彼の向かい側、黒髪の少女の横に座った。
「ええと、こんにちは。新入生の、キティ・アボットです。寮はたぶんハッフルパフ。よろしくね」
「僕はロン・ウィーズリー。こっちはハリー・ポッター。で、この子が……」
ロンが黒髪の女の子を覗き込む。
女の子は面倒くさそうに答えた。
「私はサリー」
「サリー? その後は、ポッターだったりして?」
「君——キティか。何故わかった?」
「ええええ! 君、ポッターなの!? ハリーと親戚!?」
「ああ。で、キティ。何故わかったんだ?」
「ん? おばあちゃんが、サリー・ポッターと親しくなるかもね? って言ってたから」
「そのおばあ様は只者では無いな」
「そうかなあ」
「ちょちょちょちょっと待って! 僕、親戚がいるなんて聞いたことない!」
「そりゃ、ペチュニアやバーノン・ダーズリーがわざわざ言うはずも無かろう。忘れられるなら忘れようとでも思ったんじゃないか? というより、親戚がいるなんて聞いたことないと言っているが、親戚筆頭はダーズリーだからな」
「へえ。なんかすごいね」
「そうか?」
「うん。だって、知らなかったことを知るのってワクワクしない?」
「……キティ、君はいい心構えをしているな」
「ありがと」
褒められたので、お礼を言っておく。
「ふん」
サリーはそっぽを向いた。
あれれ、素直じゃないなあ。ツンデレってやつかな?
「あ、車内販売の魔女さんだ! すみません! 魔女鍋スポンジケーキをください!」
「はいよ。ちょっと待ってな。カエルチョコレートはいるかい?」
「あ、欲しいです! 全部で……いくらでしょうか?」
「予算は?」
「十シックルで!」
「了解」
鍋一杯のスポンジケーキとカエルチョコレートを貰う。
ハリーは全て少しずつ買っていた。お金持ちっていいなあ。うちは普通のサラリーマン家庭だからね。
サリーの上にボンとカエルチョコレートを置き、スポンジケーキを食べる。
「ん、おいしいね」
「カエルチョコレートもおいしいぞ」
サリーが私のチョコを勝手に開け、つまんでいる。
「サリー、スポンジケーキも食べる?」
「む、おいしそうだな。少しいただこう」
みんなでお菓子を交換し合い、食べる。
しばらくすると、コンパートメントの扉にノックがされた。
「あ、あの、ヒキガエルのトレバーがどこかに行っちゃったんだけど……知らない?」
「知らないよ」
「あ、一緒に探そうか?」
ぽっちゃりして、泣きそうな男の子がコンパートメントに入って来る。
ロンは探す気がないようだけど、私はかわいそうなので手伝ってあげることにした。
「あ、キティ、待て——」
「ん、なになに?」
出る前にサリーが手招きする。
そして、ささやき声で言われた。
「いいか。絶対に、
「どうして?」
「いいから、そうするんだ。これは誰にも言うなよ? じゃあ行ってこい」
納得いかないままコンパートメントを出る。
「ねえ、君——って、名前が無いとわかりにくいね。私、キティ・アボット」
「僕、ネビル・ロングボトム。キティって優しいね」
「そうかな? 私、たぶんハッフルパフだからかな?」
「僕、絶対ハッフルパフだ」
ネビルが落ち込んで言う。
「僕、ドジだしマヌケだから」
「ネビル、ネビルはハッフルパフに行きたくないの?」
「う、うん……だって、劣等生の寮だって言われてるし」
「ううん、違うと思うな。グリフィンドールは勇気、レイブンクローは知識、スリザリンは狡猾さ。それに比べたら優しさは目立たないと思うよ。でも、私は優しさがとっても大事だと思う。ネビルがハッフルパフになったなら、ネビルは見かけ通り優しいんだよ」
「そっか……。ちょっと気が楽になったかも。ありがとう、キティ」
「どういたしまして。……あ、ネビル、あれがトレバー!?」
「あ、そうだよ! ああ、逃げていく!」
「待てー!」
十分後、再び行方不明になったトレバーを発見および捕獲することに成功した。
「本当にありがとう」
「大丈夫だよ。あ、他にもトレバーを探していた子がいたんだっけ? その子にも見つけたってお知らせしないとね」
「うん。お礼も言わなきゃ」
ネビルと二人でコンパートメントへ戻る。
「ただいま——って、他の人も来てたんだね。こんにちは。私はキティ・アボット」
「あら、こんにちは。私はハーマイオニー・グレンジャーよ。ネビルのヒキガエルを探しているのだけど、あなた知らない?」
「ああ、私も探してたの。さっき見つけたよ」
「うん。キティもハーマイオニーもありがとう」
「いいのよ。見つかってよかったわ」
「はいはい。キリがないからお礼の言い合いはそこまでだ」
サリーが間に入る。
「グレンジャー。そろそろつくだろうからコンパートメントに帰ったほうがいいぞ。ロングボトムもだ。私達は一旦コンパートメントを出るから、ウィーズリーとハリーは着替えろ」
サリーの指示に、みんな従った。
・サリー・ポッター
ワケありな、男勝りな性格。性別は女子。ハリーの親戚だが、血は繋がってないらしい。
・キティ、と聞いて最初はこんにちはキティを思い出したかもしれない。作者も思い出した。だが、これはただの愛称である。